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「賢いドライバー」なら知っている…レンタカー業者がゴリ押しする「免責補償」の不都合な真実

プレジデントオンライン / 2024年8月28日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hispanolistic

レンタカーを利用する際に勧められるのが、万が一に備えた免責補償だ。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんは「独自に複数社のレンタカー業者に確認したところ、免責補償に加入する人は全体の8~9割に上る。一方、実際に補償の恩恵を受けたのは100件のうち1~2件だった」という――。

■免責補償と自動車保険はまったく別物

レンタカーやカーシェアを借りる際、アプリや店頭で「免責補償」を勧められた経験を持つ人は少なくないだろう。免責補償は利用者の約8~9割が付けるそうだ。筆者は免責補償をほとんど付けないが、店頭で「免責補償をつけずに事故を起こした場合、最大15万円のご負担となりますがよろしいですね?」などの脅し文句に心が揺らぐこともある。

そもそも「免責補償」「車両・対物事故免責額補償制度」(CDW)の内容や条件をよく理解せず、恐怖心を煽られ「付けておいたほうがよさそう」と勧められるままに付けている人もいるだろう。とくに、これまで一度も車を所有したことがなく、自動車保険のシステムも良く分からない人にとっては、免責補償と保険の違いを明確に理解するのは難しいかもしれない。

勘違いしている人もいるかもしれないが、実は免責補償と保険はまったく別の物である。一般的なレンタカーの場合、対人・対物・車両の基本補償はレンタカー料金の中に含まれているから、免責補償はいわゆる自動車保険とは違う。

「免責補償に入らないと事故が起こっても保険が出ない。最悪、数百万円~数千万円を自腹で払わないといけない」ということではない。

■免責分5万~10万円を補償するもの

免責補償とは「免責金額分の補償」である。レンタカーには基本の補償が含まれているとはいえ、それらのほとんどは5万~10万円の免責金額が設定されている。

車両保険の免責金額が10万円にされている場合、レンタカーで事故を起こした際の修理代が10万円以下なら保険金支払いの対象にはならない。つまり10万円までは自腹ということだ。

また修理代が35万円なら免責分の10万円は自腹で支払い、のこり25万円が保険から支払われる。1日1000円程度の免責補償を付けていれば、これらの免責分10万円を支払う必要がない。これが免責補償のシステムだ。

■自分に過失がなくても2~5万円を請求

また、免責補償と一緒に勧められるのがNOC(ノン・オペレーション・チャージ)補償だ。

NOCとは、事故でレンタカーを損傷させたり、車内で嘔吐して汚したりした場合、修理や清掃のため車が使えない間の「休業補償」のことである。

概ねどこのレンタカー業者でも自走して営業所までレンタカーを戻せる場合なら1回2万円、自走できない、つまりレッカー業者が車を引き取りに来るような場合は1回5万円に設定されている。

注意すべきは、利用者に過失がない「当て逃げ」事故でも扱いは同様ということ。NOCとは車が営業用として使えないことへの補償となるので、自分に非があってもなくても車が使えない場合はノン・オペレーション・チャージ(NOC)が発生する。本来レンタカー会社が稼げたはずの利益を生み出せなくなるため、その損害分を利用者に請求するわけだ。

■1日1650円は安いか、高いか…

レンタカー台数や店舗数が日本最大のトヨタレンタカーの公式サイトには免責補償やNOC補償についておおむね以下のように説明されている。

①基本の補償(レンタカー料金に含まれる。対人・対物・車両補償で一部に免責金額設定あり)
②免責補償(24時間1100円を払えば、免責分を補償する)
③免責補償+NOC補償(24時間1650円払えば、②に加えてNOCも補償する)

【図表1】トヨタレンタカー 免責補償+NOC補償で1650円
トヨタレンタカー公式サイトより。免責補償+NOC補償で1650円
【図表2】ニッポンレンタカー 免責補償+NOC補償で1540円
ニッポンレンタカー公式サイトより。免責補償+NOC補償で1540円

レンタカー会社各社もほぼ同じようなシステム+金額となっているが、タイムズカー(カーシェア)は①②までは利用料金の中に含まれており、基本補償は対人・対物・車両いずれも免責金額が設定されていない。

そのため、利用時に尋ねられるのがNOCなどを補償する「安心補償サービス」(1利用あたり550円)だ。

■カーシェアの場合、忘れ物でもNOCが発生

タイムズカー(カーシェア)の場合、以下の理由でサービスを停止した場合、営業補償の一部として1回2万円/5万円のNOCが発生する。

1.会員様のご利用中に発生した事故や、会員様の過失等により、車両に損害(汚損等含む)を与えた場合
2.会員様のご利用方法に起因して、車両(車内・外を問わない)の損害又は忘れ物の有無等を確認した場合
3.その他、会員様のご利用方法に起因して、車両のサービスを停止する必要が生じた場合

ここで注目すべきは2番の「忘れ物の有無等」である。基本、24時間無人のステーションで車を借りるカーシェアならではのNOCといえるもの。忘れ物をスタッフが回収する場合や車の鍵を紛失した場合なども、実費+NOC(2万円)を請求されるので要注意である。

カーシェアを利用すると、必ず安心補償サービス加入を勧められる
筆者提供
カーシェアを利用すると、必ず安心補償サービス加入を勧められる - 筆者提供

■実際に恩恵を受けるのは100件に1~2件

筆者がこれまで借りたレンタカーのカウンターには、「免責補償加入のお願い」と書かれた紙が10~20枚貼られているところもいくつかあった。とくに、沖縄や北海道など外国人観光客のレンタカー利用者が多い場所では強く勧められる。

実際にはどれくらいの人が加入して、そのうち免責補償の恩恵を受けるケースはどれくらいあるのか?

いくつかのレンタカー会社に聞いてみたが、どこも公式には「非開示」であった。日本レンタカー協会にも聞いたが、「免責補償はレンタカー会社がそれぞれの基準で運営している制度なので協会では把握していない。統計も出していない」という回答だった。

そこで筆者が独自に複数社のレンタカー業者に確認したところ、

・免責補償に加入する人は全体の8~9割
・NOCまでつけるのはそのうち6~7割
・実際に免責補償やNOC補償の恩恵を受けるのは100件のうち1~2件

という結論が得られた。

ところで、免責補償の加入に制限をかけているケースがあることをご存じだろうか?

近年は中古車を使った格安レンタカーが続々登場している。格安レンタカーの草分け「ニコニコレンタカー」(6時間2525円~)や大手中古車販売店が運営する「100円レンタカー」(10分100円~)、若い世代に人気の「ガッツレンタカー」(6時間2200円~)などがそれにあたる。

■レンタカー業者が指定する「要注意ドライバー」

これら格安中古車レンタカーにも免責補償やNOC補償のシステムはあり、価格も大手レンタカー会社と同様だが、以下のような条件に該当する場合、免責補償制度に加入できないとしているところもあるので注意が必要だ。

①21歳未満の運転者
②免許取得から1年未満
③70歳以上の運転者
④国際免許証や外国運転免許証でレンタカーを運転する場合
⑤過去に事故歴があり、不適当と認められた場合

いくつかのレンタカー会社に聞いたところ、初心者や外国人ドライバーは保険を使って修理するような事故を起こす確率が高く、免責補償やNOC補償が適用されるケースが多い。レンタカー会社としては、採算が取れない危険性が高いということで加入に制限をかけているのだ。

■免責補償を付けたほうがいい人とは?

免責補償を付けたほうがいい、というより「付けるべき」は以下のようなドライバーである。

・普段、あまり車に乗らない
・マイカー以外の車に乗る機会がない
・借りる予定のレンタカーがマイカーよりも大きい
・若者グループ
・国際免許証や外国運転免許(+翻訳証)で運転する外国人
・まったく運転したことがない土地でレンタカーを借りる場合

要するにこのような人たちは事故リスクが高いということである。また、若者グループではドライバーが複数になることが多く、事故や故障の責任の所在で免責金額の支払いにおいてモメごとになることもある。

前述したが比較的、若い層の利用が多いタイムズカー(シェア)では、利用料金の中にガソリン代とともに免責分も含まれているので免責補償は不要だが、NOC補償(1日550円)はごく短時間の利用以外はつけておくほうが安心だろう。

事故で大破したカーシェア車両
事故で大破したカーシェア車両。中には数週間、ステーションに置かれたままの車両も……(写真提供=カーシェアマニア)

さて、筆者自身、近々レンタカーを借りて実家の下関から熊本~阿蘇に行く予定がある。いつもは免責補償を付けないが、車好きの友人や業界の知人など色々な人に話を聞くと、ほぼ全員が免責補償を付けていることが分かった。そこで今回は珍しく免責補償(1100円×4日分)を付けることにした。

もちろんいつも通り何事もなく無事に返却できるよう、安全運転に努めるつもりではある。

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加藤 久美子(かとう・くみこ)
自動車生活ジャーナリスト
山口県下関市生まれ。大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。95年よりフリー。2000年に自らの妊娠をきっかけに「妊婦のシートベルト着用を推進する会」を立ち上げ、この活動がきっかけで2008年11月「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)においてシートベルト教則が改訂された。育児雑誌や自動車メディア、TVのニュース番組などでチャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難・詐欺・横領・交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。

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(自動車生活ジャーナリスト 加藤 久美子)

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