なぜ年齢と共に「使えない人」化してしまうのか…45歳から脳がヨボヨボになる人と元気な人の決定的違い
プレジデントオンライン / 2024年9月2日 7時15分
※本稿は、加藤俊徳著『1万人の脳を見た名医が教える 好奇心脳』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■脳が衰える「やってはいけない」NG習慣
45歳を過ぎて脳が衰えていく要因には、長年にわたって続けてしまっている悪習慣があります。
習慣とは、日々の積み重ねですから、自分自身では間違いに気づきにくいことが大きな問題です。心当たりがある人は、これを機にやめていただきたいものです。
本稿では、脳の劣化を招く「やってはいけないNG習慣」と、ぜひ実践したい「脳が成長する生活習慣」を、1万人の脳のMRI画像診断をしてきた脳内科医の立場から、それぞれ紹介していきます。
■やってはいけないNG習慣①
休日をぼーっと寝て過ごす
仕事や学業に従事する人にとって、休日は心身を休め、リフレッシュするための大切な時間です。だからといって、だらだらとベッドの上で過ごしていては、好奇心が生まれることは絶対にありません。また、脳にとっては何の意味もないどころか、かえってマイナスです。
脳にとって理想の休日は、普段していないことをすること、つまり、使っていない脳の部分を使うことです。
普段デスクワークが多い人は、散歩をしたり、音楽を聴いたり。音楽を聴きながら体を動かしたりできればより理想的です。日常的に体を酷使している人は、読書をしたり、映画や動画を楽しんだりしてもいいでしょう。
また、家族や友人、ご近所の方々など、職場などとは違う人間関係で会話や食事を楽しめば、好奇心も掻き立てられて、記憶に残るような1日となり、記憶力も向上するはずです。
■やってはいけないNG習慣②
スマホを持って寝室に入る
寝る前にベッドの中で、スマホでメールをチェックしたり、動画を見てしまったりする人は少なくないようです。
しかし、スマホのライトの明るさは、睡眠ホルモンの「メラトニン」の分泌を抑えてしまうため、入眠や熟睡を妨げてしまいます。
また、いったんスマホを見始めてしまうと、手放すことが難しくなります。寝室に入る数時間前からスマホは手放しましょう。
■やってはいけないNG習慣③
食事の時間が不規則
脳にとって、食事の時間はとても重要です。食事の時間が決まっていないと、概日リズム(1日周期のリズム)が乱れてしまうことがあるからです。
近年、朝食を食べない日本人が多いことが問題視されていますが、朝食は脳を覚醒させる働きのある一方で、食べないほうが頭がスッキリするという人もいます。
そういう人は、無理して1日3食食べる必要はありませんが、食べる時間は整えたほうが、脳にとってはいいでしょう。
また、脳の神経細胞はグルコース(ブドウ糖)に敏感なので、食事と食事の間が空いてしまうと、血糖値が下がって脳がエネルギー不足になり、脳の劣化を招きます。
自分に合った食事時間を見つけましょう。
■やってはいけないNG習慣④
お腹いっぱいまで食べる・飲む
食事の時間だけでなく、食事の量も脳にとっては重要です。お腹いっぱいの状態よりも、少し空腹を感じているときのほうが、仕事や勉強の能率が上がる体験をしたことはありませんか。
食べすぎや飲みすぎでお腹がいっぱいになると、脳に血流が回っていかず、イライラしたり気が散ったりして、脳の働きが衰えます。
甘いものの食べすぎも脳にはNGです。砂糖を摂取すると、脳内に「ドーパミン」が分泌されます。ドーパミンは、幸福感を高めたり、やる気を促したりする働きのあるホルモンですが、砂糖のとりすぎでドーパミンが過剰に分泌されて中毒になり、やめられなくなることもあります。
ただし、砂糖には脳をリラックスさせる効果もあります。長時間同じ仕事をした後にアメを1個なめるなど、脳の切り替えのために上手に使うといいでしょう。
■やってはいけないNG習慣⑤
口を開けて呼吸する
人は呼吸をして生きていますが、呼吸はただ息を吸って吐けばいいというものではありません。
「酸素不足」の原因の1つに、「口呼吸」があります。口呼吸は、鼻呼吸に比べて1回の酸素の吸入量が低下し、二酸化炭素の排出量は多くなります。その結果、全身への酸素の供給量が少なくなって、脳だけでなく、全身の不調を引き起こします。また、睡眠障害の原因になることもあります。
口呼吸に加えて長時間マスクをすれば、よりいっそう、脳が低酸素状態になるのは当たり前ですね。
口呼吸を自覚して、鼻呼吸にするために口にテープを貼って寝ようとする人がいますが、いきなりこれをやるのは自殺行為のようなことにもなりかねません。なにしろ鼻呼吸ができないために、口を開いているのですから。
無理をすることなく、徐々に、鼻呼吸に慣れるように意識していきましょう。
その際、口を閉じていると息苦しくなって90秒も我慢できない、口を閉じて片方の鼻腔を押さえて、他方の鼻だけで息を吸うときに引っ掛かる、などの自覚症状がある人は、鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)や肥厚性(ひこうせい)鼻炎のために、鼻腔自体が狭くなって鼻呼吸ができていない可能性があります。
一度専門医に相談してみるといいでしょう。
■今日から実行したい「脳が成長する」生活習慣
私たちの「脳力」(能力)は、生まれたときから準備されたものではなく、日常生活の中で脳を刺激し、鍛えることで身につき、伸びていきます。
NG習慣に続いて、ここからは今日からぜひ実行してほしい、「脳が成長する」生活習慣を紹介しましょう。
■脳が成長する生活習慣①
こまめに体や、足と口を動かす
脳を成長させるためには、まずは「動くこと」です。あなた自身はもちろん、ご家族や、会社・職場の部下や同僚などにも、ぜひ運動をすすめてください。
運動といっても、激しく体を動かす必要はありません。自主的にこまめに体を動かして、「運動系脳番地」を刺激することが、とても大事です。「運動系脳番地」を刺激するとストレス解消にもなります。「午前10時と午後3時」などと時間を決めて行うとより効果的でしょう。
ランチを買いに行く、荷物を出しに行くなど、外出の回数を増やすのも有効です。自然と交わるために、散歩やウォーキングも効果的でしょう。外に出て歩くだけで、足と目を使うため、「運動系脳番地」と「視覚系脳番地」が活性化します。
1日8000歩を目標に、50分から1時間歩くと、好奇心ややる気も出てきます。疲労回復、認知症の予防になるなど、“いいこと”ばかりです。ぜひ習慣にしてください。
■足と口を動かすと「マンネリ脳」を脱け出せる
リモートワーク・巣ごもり生活で起こりやすい「マンネリ脳」から脱却するには、「足と口を動かす」ことです。
特に足の10本の指1本1本を別々に動かしたり、土踏まずに刺激を与えたりしてみましょう。足の裏には、多くのツボがあるだけでなく、脳の広い範囲とつながっているので大きな効果が期待できます。
「口を動かす」という意味では、会話の回数を増やすこともいいでしょう。
あえて必要のないことも、「脳への刺激のため」と意識して、オンラインや電話で会話をしてみるといいと思います。それを重ねていくことによって、リモートワークにおける「孤立化」を避けることにもなります。
■脳が成長する生活習慣②
ラジオを聴く
コロナ禍以降、自宅でラジオを聴く率が上がっているといいます。これはとてもいいことです。
実はラジオには脳を切り替える効果があるのです。音楽を聴くこともそうですが、人は無意識のうちに、自分自身の脳を切り替えることができるコンテンツに手を出すものなのです。
寝るときにも、タイマーをかけてラジオを聴きながら眠ると、すんなりと入眠できることもあります。ぜひこの方法も試してみてください。
■脳が成長する生活習慣③
ちょっとだけやり方を変えてみる
「マンネリ脳」から脱却するために、生活習慣で大切なのは、「ちょっとだけやり方を変える」ことです。
いつも通っている駅までの道を変えてみる、炊飯器をやめてお鍋でご飯を炊いてみるなど、些細なことでいいのです。“ちょっとだけ”やり方を変えてみてください。
それだけで、認知機能の向上にもつながります。
■脳が成長する生活習慣④
自然の中で情報をシャットアウト
脳にとっては、「鍛える」のと同じくらい、あるいはそれ以上に「休ませる」ことが大切です。現代社会は、情報量が膨大で、脳は常に刺激を受け続けて、休めない状況だからです。
1日1回、脳を休めることを習慣にしましょう。それには、テレビやパソコン、スマホのない自然の中で、情報をシャットアウトするのがいちばんです。
■脳が成長する生活習慣⑤
1日3分のゆっくり深呼吸
日常の呼吸は「鼻呼吸」が基本ですが、脳へたっぷりと酸素を送るために、1日3分程度、ゆっくりと長い深呼吸をしてみましょう。
人は集中して何かをしているときに、知らず知らずのうちに呼吸が浅く、短くなっています。これによって、脳が低酸素状態になり、衰えてしまうのです。
深呼吸すると呼吸筋が動くため、「運動系脳番地」への刺激にもなります。
深呼吸の方法は以下のとおりです。
②鼻から息を吸って、下腹を膨らませる(1~2秒)
③ゆっくり口から息を吐く(15~20秒)
たったこれだけで、脳が変わります。コツは、吐く時間をできるだけ長くすることです。長く吐くことによって、全身の筋肉がゆるんでリラックスでき、ストレスも軽減します。
自分の呼吸を意識することは、「自己認知」の向上にもつながります。ゆったりと深い呼吸をしていると、対外的な心配事や悩み事などから思考が離れ、自分自身に意識が集中できるようになるからです。
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脳内科医
昭和大学客員教授。医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。MRI脳画像診断・発達脳科学の専門家で、脳を機能別領域に分類した脳番地トレーニングや脳科学音読法の提唱者。1991年に、現在世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。著書に『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『アタマがみるみるシャープになる!! 脳の強化書』(あさ出版)、『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)など多数。
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(脳内科医 加藤 俊徳)
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