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読後はページに星座のような形が浮かぶ…たった2時間で10冊超を読了する達人が実践するスゴい"本の汚し方"

プレジデントオンライン / 2024年9月5日 17時16分

■目次を読むと自分の「未知」がわかる

読む準備ができたら実際に本を開きます。松岡は十数冊を2~3時間で並行読みすると言いましたが、このとき使っている技法が2つあります。

1つ目は「目次読書法」です。目次は本の間取り図であり、とくに新書はどの出版社も目次を丁寧につくっています。そのおかげで、目次を読めば、どこにどのようなことが書いてあるかおおよそ勘が働きます。

勘が働くところは既知の内容である可能性が高く、逆に見当がつかないところは未知の内容である可能性が高い。見当がつかないのに目次を読んだだけで心惹かれる箇所は、その本との決定的な出会いになる可能性が高い。そこを真っ先に読み、そうでないところは後回し、あるいは無理に読むことはしない。そのように当たりをつけて本に向かうのが目次読書法です。

読書経験が豊富なほうが目次読書法の精度は高まりますが、方法そのものは至極単純。今日から使える技法なのでぜひ試してください。

使いこなすまで時間を要するものの、本の理解や速読に大いに役立つのが「マーキング読書法」です。これは本に線を引いたり、印をつけながら読む読書法です。

読みながら傍線を引く人は少なくないと思いますが、松岡のマーキングはかなり複雑です。色は青と赤の2色。印は括弧や四角で、目的によって大きさも変えます。たとえば歴史書で赤の丸括弧は人物名、青の丸括弧はその時代固有の歴史用語です。

その章や節で重要な概念は「キーワード」として囲みます。さらにキーワードを補足する言葉は「ホットワード」として囲み、キーワードと線で結びます。そうすると星座のような形ができて、本の内容がゲシュタルト的な像をともなって記憶に定着しやすくなります。このように本をノートにするような感覚で書き加えますが、「本は汚すもの」が松岡の持論。自分なりのルールで本を汚していきましょう。

マーキングしていたらかえって読むのが遅くなると考えるかもしれませんが、それは本を一度しか読まない人の発想でしょう。初めてのまちを歩くとき、ナビを見るのに一生懸命で、途中にあった面白いものを見逃してしまった経験はないでしょうか。あるいは洋画を初めて見るとき、字幕ばかりに気を取られ、監督の演出に気づかなかったという経験はありませんか。実は読書も同じで、初読時は著者の言い分を直線的に受け取ることで精一杯。分析したり、構造を理解するためには、2度3度と読む必要があります。

マーキング読書法は、初読でもある程度の構造読みを可能にするメソッドです。初読である程度の構造読みができていれば、再読の際はとても速く読めます。自分がマーキングしたキーワードやホットワードを追っていくだけでも、初読時に気づかなかったものが俯瞰的に見えてくるはずです。

著者の「書くモデル」を意識することも、多読の助けになります。著者は生身の自分を本にさらけ出すのではなく、「書くモデル」を演じながら主張を伝えます。アメリカの認知心理学者ロジャー・C・シャンクは『人はなぜ話すのか』の中で、3つの話し手モデルを提示しました。何か説明するときにインデックスを示しながら話す「司書モデル」、ロジックで説明する「論理学者モデル」、自分の好きな話ばかりする「おじいさんモデル」です。書く場合も同じで、著者は何かしらのモデルを体現しながら本を書いているとみなすのが松岡の方法論です。

■「年表づくり」が読書体験を高める理由

書くモデルを掴むには、本の中身より、キーワードの使い方や形容詞の強さ、文章のリズムなど、全体の雰囲気に注目することをおすすめします。私が惹かれるのは、旅人が見知らぬ土地を訪ねてさまざまなものと出会うようにして文章を書く「旅人モデル」や、最初に謎かけをして最後にきちんと伏線を回収してくれる「推理作家モデル」。逆に強い言葉の繰り返しが多い「通信販売モデル」には警戒感が湧きます。このように書くモデルを意識して、読者は著者に従属することなく、対等な存在として振る舞うことが大切です。

セイゴオ流多読術では読後も読みっぱなしにしません。あとで引用できそうな箇所をノートにまとめたり、本と本を関連付けたりして、読書体験をさらに豊かなものにしようと試みます。

松岡がよくやるのは年表づくりです。特定のテーマについて年表ノートを用意して、読んだ本の内容を抜き出して書き込みます。複数の関連本から抜き出して並べることで、そのテーマが体系的に理解しやすくなります。

本の収蔵方法も重要です。松岡の書棚は、図書館の十進分類法とは異なる独自の配列です。たとえば昭和史と昭和の文学は、図書館だと歴史が200番台、文学が900番台なので、棚どころかフロアが違います。一方、松岡は昭和の作家は昭和の歴史と切り離せないと考えて、同じ棚に置く。そのうえで、関連する本をセットにして、読み解き可能な文脈をつくりながら本棚に並べます。このように自分なりに本をつないで並べると、本棚が自分の知のマップの役割を果たしてくれます。

実は多くの人は、自分の読書体験を豊かにするキーブックとすでに出会っています。読後の年表づくりや、本棚の整理は、自分のキーブックを知るのにも役立つのでおすすめです。

【図表】多読とは「読み方を多様にする」という意味

読んだ本の数を競うことに意味はありません。大切なのは、読前、読中、読後を通して読書体験を深めること。そのためにセイゴオ流多読術を活用してもらえればと思います。

プレジデントオンラインアカデミーはこちらから
動画でも学ぶ「実践! 読書が得意になる」
プレジデントオンラインアカデミーでは、太田香保さんによる「多読の達人はなぜ、『目次読み』を勧めるのか」のレッスンをご覧いただけます

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月30日号)の一部を再編集したものです。

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太田 香保(おおた・かほ)
松岡正剛事務所代表取締役
慶應義塾大学の図書館司書を経て1989年に松岡正剛事務所に入社。松岡正剛のマネージャー、プランナー、エディターとして、書籍からミュージアムまで、さまざまな編集プロジェクトに携わる。2020年から現職。イシス編集学校・松岡正剛直伝「離」の総匠を務める。

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(松岡正剛事務所代表取締役 太田 香保 構成=村上 敬)

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