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「死ぬまでに読みたいなら今読め」初文庫化でバカ売れ…ガルシア・マルケス『百年の孤独』が3分でわかる

プレジデントオンライン / 2024年9月4日 10時15分

豪雨が4年続き、日照りが10年続く……7世代にわたる荒唐無稽な長編小説

■ノーベル賞作家の代表作「初の文庫化」で話題に

「長い歳月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、恐らくアウレリャノ・ブエンディア大佐は、父親のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思いだしたにちがいない」

この有名な一文で始まる本書は、南米コロンビアの作家、ガルシア=マルケスのベストセラーだ。1967年にアルゼンチンで出版されるや世界に衝撃を与え南米文学ブームを牽引。著者はノーベル文学賞を受賞した。全世界での累計発行部数は5000万部超。日本での初版は72年で著者没後10年となる2024年、初の文庫化である新潮文庫版が話題になっている。

マコンドという架空の村で暮らすブエンディア一族の百年の盛衰、というのが大まかな筋だが、登場人物が多いうえに、時間はたびたび前後し死者がよみがえり、虚実ないまぜで荒唐無稽。西欧の批評家から「マジック・リアリズム」と称されたゆえんである。

物語はホセ・アルカディオ・ブエンディアといとこのウルスラの結婚から始まる。一族には血縁の近い者同士が結婚して「豚のしっぽ」のある子どもが生まれたという過去があり、恐れたウルスラの母親は娘に帆布のズボンをつけさせる。それを揶揄した者があり、ホセ・アルカディオ・ブエンディアは相手を殺してしまう。村にいられなくなったふたりは数人の仲間とともに旅に出て、2年間の放浪の末たどり着いた場所を「マコンド」と名づけ、開拓を始める。マコンドに人が増え始めると、さまざまな文明の利器を携えたロマがやってくる。その中のひとり、老齢のメルキアデスはのちに本書の鍵となる予言書を残すことになる。

夫婦には3人の子どもが生まれる。長男のホセ・アルカディオは巨根の持ち主で性豪。次男のアウレリャノ(のちの大佐)は金細工の才を見せ、このふたりに長女アマランタと養女レベーカを加えたのが一族の第2世代である。

やがてホセ・アルカディオはロマの娘と村から出奔。探しに出かけた母ウルスラは、文明世界へとつながる道を発見して5カ月後に帰宅する。村は急速に発展し、ホセ・アルカディオ・ブエンディアはリーダーとしての才能を発揮。家族が増えてウルスラは家を増築する。居室を与えられメルキアデスは羊皮紙に謎めいた文字を書き続けていたが、あるとき川で死体で発見される。ホセ・アルカディオ・ブエンディアはかつて自分が殺した相手の幽霊を見て発狂し、栗の木に縛られる。

選挙を通じてこの国の欺瞞に気づいたアウレリャノは「大佐」を名乗り、自由党の戦士として活動。ついには全土を指揮する革命軍総司令官になる。ちなみに、実際にガルシア=マルケスの生地コロンビアでは自由党と保守党に国が二分され、過酷な内戦が3年以上続き、千日戦争と呼ばれている。

しかし自由党は敗北。逮捕された大佐は処刑のためマコンドに連れて来られるが、兄のホセ・アルカディオにより救出される。マコンドの創始者ホセ・アルカディオ・ブエンディアが死に、小さな黄色い花が雨のように降る。

■マコンドに鉄道を敷設。西欧資本の搾取が進む

大佐とホセ・アルカディオは、娼婦ピラル・テルネラとの間にそれぞれアウレリャノ・ホセ、アルカディオという息子をつくる。加えて大佐が遠征した先々で産ませた17人の息子が第3世代。アルカディオの双子の息子ホセ・アルカディオ・セグンド、アウレリャノ・セグンド、長女のレメディオスが第4世代。アウレリャノ・セグンドの子であるホセ・アルカディオ、レナータ・レメディオス、アマランタ・ウルスラの3人が第5世代となる。

大佐の17人の息子のひとり、アウレリャノ・トリステはマコンドに鉄道を敷設することを計画。村に映画、蓄音機、電話といった近代技術がやってくる。やがてアメリカ人の資本家がバナナ・プランテーションを創業。以降、西欧資本による搾取が進んでいく。

アウレリャノ・ブエンディア大佐が死に、葬儀のため帰郷したレナータ・レメディオスはバナナ工場で働く青年マウリシオ・バビロニアと恋をするが、彼は銃で撃たれて死んでしまう。ふたりの子アウレリャノ・バビロニアが屋敷でひそかに育てられる。彼がただ一人の第6世代となる。

バナナ・プランテーションの労働者は劣悪な労働環境に怒ってデモを起こすが、軍隊が出動、3000人が虐殺される。ただひとり生き延びたホセ・アルカディオ・セグンドはメルキアデスの仕事場にこもり羊皮紙の解読を進める。プランテーションのオーナーは雨が降っているあいだの業務停止を宣言、雨は4年間降り続け、マコンドは衰退していく。雨がやむと10年間の日照りが始まる。

100歳を超えたウルスラがついに死去。屋敷内に隠されて育ったアウレリャノ・バビロニアは羊皮紙の研究を始める。メルキアデスの幽霊が現れ、羊皮紙の文章がインドの古典語サンスクリットで書かれていることが判明する。

ヨーロッパで暮らしていたアマランタ・ウルスラがベルギー人の夫と共に帰郷。「この不運の町を旧に復する」ため努力する。やがて夫はベルギーに帰り、彼女とアウレリャノ・バビロニアの関係が始まる。ふたりは激しく愛しあい、男の子が生まれる。だが、赤ん坊には先祖がおそれた「豚のしっぽ」が生えていた。アマランタ・ウルスラは死に、絶望のまま街をさまよったアウレリャノ・バビロニアが家に戻ると、死んだ赤ん坊を蟻が運んでいくところだった。このときメルキアデスの羊皮紙の題字の意味が判明した。「この一族の最初の者は樹につながれ、最後の者は蟻のむさぼるところとなる」。書かれていたのはブエンディア一族の運命だった……。

全編に漂う無常観とそれに抗うパワフルで個性的な登場人物たち、家族の愛情とあけすけな性描写、ユーモアに包まれた痛烈な皮肉など、ガルシア=マルケスが本書につめ込んだマジックを、ぜひ直接味わってみてほしい。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月30日号)の一部を再編集したものです。

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ガブリエル・ガルシア=マルケス 作家
1927〜2014。コロンビア、アラカタカ生まれ。ボゴダ大学法学部を中退し、新聞記者となって欧州各地を転々とした後、1955年に処女作『落葉』を発表。67年『百年の孤独』によって一躍世界が注目する作家となった。『族長の秋』『予告された殺人の記録』『コレラの時代の愛』『迷宮の将軍』など次々と歴史的傑作を刊行し、82年にはノーベル文学賞を受賞した。

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(作家 ガブリエル・ガルシア=マルケス 文=九段太郎 撮影=市来朋久)

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