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これで仕事の無茶ぶりを確実に回避できる…どんな悪徳上司でも、ぐうの音も出ない天才的な"お断りテク"

プレジデントオンライン / 2024年8月31日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/78image

断りにくい用事を回避するには、どうすればいいか。おくりバント社長でプロ営業師の高山洋平さんは、パワハラ上司の無茶振りに対して“家族”というパワーワードを皮切りに“受験”や“天候の悪化”で畳みかけ、強度を強めて回避する。これは夜の接客業に従事する方々がアフターを断るのと同じ手法だという――。

※本稿は、高山洋平『ビジネス書を捨てよ、街へ出よう』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■上司の無茶ぶりを回避する“パワーワード”

僕とweb営業部の西久保さんは、会議室に移動した。

おくりバント社長の高山洋平さん
著者提供
おくりバント社長の高山洋平さん - 著者提供

「まず、この『上司の理不尽な要求のかわし方は、夜の接客術に学べ』って……」
「ああ。以前、ある企業PRのチームで、長時間労働が常態化していてね。諸悪の根源は、大量の業務を定時直前にねじ込んでくる上司だった。メンバーは次々と餌食になり疲弊していき……」
「そんなチームで働きたくないですね」
「そうだろう? そして、とうとう高山君も標的になってしまった。しかし……」

西久保さんは、当時の高山と上司のやりとりを話してくれた。

悪徳上司A「おう、高山君。悪いが明日の朝イチまでに、5000人分の顧客データをエクセルにまとめといてくれ」
高山「仕事を与えていただき、ありがとうございます! ぜひやりたいです!」
悪徳上司A「頼もしいな、高山君!」
高山「その前に1本だけ電話をかけてもいいでしょうか?」
悪徳上司A「何だ? 面倒なクレーム対応じゃないだろうね?」
高山「実は今日、小学生の甥っ子が中学受験に備えて田舎から出てきてまして。うちに泊めてあげることになってるんです」
悪徳上司A「そうなのか。じゃあ、仕事で遅くなるから家の中で待っているように言ってあげなさい」(さすが悪徳上司。この程度では帰してくれない)
高山「いや、あいつ鍵持ってないんで、ドアの前で待たせておきますね」
悪徳上司A「えっ……」
高山「この分だと、5時間くらいかかりそうですが……。まあ大丈夫でしょう! 受験は明日ですけど、何の問題もありません! あ、ちなみに今晩、雨降るらしいですよ」
悪徳上司A「……もういいから、早く帰りなさい」

なるほど。断りにくい用事を回避するために“家族”というパワーワードはかなり効きそうだ。さらに“受験”や“天候の悪化”で畳みかけ、強度を強めるとは……。

■心の強さを持ち接客業の“アフター”を断るように

西久保さんが解説を加える。

「実は、これは夜の接客業に従事する方々がアフターを断る手法なんだ。しつこい客や面倒な客の誘いを軽やかに断りつつ、さらには“家族を大切にする人”というプラスのイメージまで植えつけることができるというわけだね」
「でも、中学受験だなんて、高山さんのご家族って教育熱心なんですね」
「フッ。もちろん、高山君にそんな甥っ子はいない」
「えっ……」
「そこで嘘をためらう必要はないんだ。最初から残業を当て込んで、担当外の仕事を押しつける上司が悪いんだからね。少なくとも、高山君はそう考えていると思うよ」

ピンチを鮮やかに乗り切るには、機転を利かせるスキルが必要ということだろうか。理不尽な要求を堂々と跳ねつけるには“心の強さ”もなくてはならないのかも。

一朝一夕(いっちょういっせき)には身につけられないだろうが、交渉事には欠かせない技術だろう。

とは言え、このやり方は難易度が高すぎる……。

■必殺! “自主謹慎”で定時に帰る

「でも、この方法って、さすがに何度も使えないですよね」
「まあね。高山君はその後も『甥っ子』を『両親』や『妹』に変えて、やりくりしていたけど。実際は、とっておきの場合だけ使うのがいいだろうね」
「乱発したら、とんでもない大家族に……。でも、他に対策があるんですか?」
「フフ……。次のページをめくってみたまえ」
「『残業には“謹慎”が効く!』とありますが……」
「ちょっと上級編になるけどね。以前、どうしても定時に帰りたい高山君がね……」

西久保さんは、新しいエピソードを語り始めた。

高山「課長、ちょっとお話よろしいでしょうか?」
悪徳上司B「何だ?」
高山「実は、先ほど重大なミスを犯してしまいまして」
悪徳上司B「おいおい、勘弁してくれよ。どんなミスか知らんが、俺は責任持たんぞ」
高山「はい。実は主要取引先の久保様宛てのメールを打った際にですね、“久保様”ではなく“久保君”と書いて送信してしまいました!」
悪徳上司B「何だ、そんなことか。で、ちゃんと謝罪はしたのか?」
高山「もちろん、謝罪の方はさせていただきました」
悪徳上司B「なら、問題ないだろ」
高山「ただ、自戒の念を込めて今日の定時以降は謹慎させていただこうと思います」

ビジネスマンの謝罪
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

悪徳上司B「謹慎……」
高山「ハイ。自主的に謹慎いたします。では、定時になりましたので、これから謹慎に入らせていただきます」
悪徳上司B「あ? ああ……」
高山「尚、仕事に対する自信を取り戻すまでは、自宅で謹慎を続けます」

■上司の評価を放棄する代わりに、自由な時間を手に入れる

「さっきよりも強引度が上がったような……」
「わざとミスをして、自主的に謹慎する。自作自演の巧妙なテクニックさ」
「これ、怒られません?」
「この上司の場合は、高山君の迫力とアホらしさに気圧(けお)されて、ぐうの音も出なかったようだよ」
「相手にもよるということですね」
「そう。手持ちのカードが相手に有効かどうか、見極める力も必要なのさ」
「日頃の観察力がものを言うと……」
「うん。それに、営業はサボりが本分! 余計なことにつき合っている時間はないよ」

その通りだ。無能な上司の都合につき合っていたら、コンビニや個室ビデオ巡りなどできないだろう。

オフィスビルを出るビジネスマンのイメージ
写真=iStock.com/shironosov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shironosov

高山はその後も、のらりくらりと時間外労働を回避したという。

最終的には終業時刻が近づくと気配を消して、上司が仕事を振る際の“選択肢”から自身を排除することに成功したらしい。

上司の評価を放棄する代わりに、自由な時間を手に入れたのだ。

西久保さんは昔を懐かしむように目を細めた。

「あの頃……。定時が近づくと、僕の目には高山君が透けて見えたよ」
「いや、さすがにそれは言いすぎでしょ」

■“断ったようにみせない”狡猾な手口

さらに、高山はやりたくない仕事も巧みに回避してきたようだ。

高山洋平『ビジネス書を捨てよ、街へ出よう』(総合法令出版)
高山洋平『ビジネス書を捨てよ、街へ出よう』(総合法令出版)

「それがこの『苦手分野は“無能”と“気遣い”をアピール』ですか?」
「そうそう。高山君が事務能力ゼロなのは知ってるよね?」
「はい。壊滅的です」
「そう。だから、周りの人間は、基本的に高山君にそういう業務を回さないようにしていた。ただ、それを知ってか知らずか、悪徳上司がデータ整理とかを高山君に押しつけることがあってね……」

そんなとき、高山はこんなふうにキッパリ言うそうだ。

悪徳上司C「高山! 100人分のアンケート結果、まとめてくんない?」
高山「もちろん、やりたいです!」
悪徳上司C「さすが高山だ! 今日中によろしく頼む!」
高山「ただ、本当に私でいいんでしょうか?」
悪徳上司C「どういうことだ?」
高山「部長、私はエクセルの“エ”の字も理解できていないのです!」
悪徳上司C「お前、社会人が何言って……」
高山「つまり、この業務は私が化粧品売場で美容部員をやるようなもの! 明らかにミスマッチです!」
悪徳上司C「いや、一応仕事なんだから……」
高山「私としても、このようなことを申し上げるのは本当に心苦しいのです。本当は部長のお役に立ちたいっ……」
悪徳上司C「なら……」
高山「ただ、私がやると、それをチェックする部長に多大なるご迷惑をかけてしまいます。少なくとも三度手間、最悪は五度手間を取らせてしまうでしょう。結果、会社にも大打撃となるやもしれません。そうなると、部長のお立場が……」
悪徳上司C「わ、わかった。もういいよ……」

西久保さんが一連の出来事を解説する。

「一旦はやる気を見せつつも、その後は自分の至らなさを示し、最終的に上司や会社を気遣うそぶりを見せる。そうすることで“断ったようにみせない”。なんとも狡猾な手口なのさ」
「それは、ちょっと拡大解釈しすぎですよ! こんなの、ただ面倒くさいやつなだけじゃないですか」

確かに、同じ営業部として、巧みな話術には感心する。でも……。

■自分の得意・不得意を把握すれば、自分を殺す必要はない

「そもそも、やりたくない仕事をやらないって、社会人としてどうなんでしょうか?」
「君の言いたいことはわかるよ。特に、新人のうちはいろんな仕事を通して、得手不得手を学んでいくということもある。さまざまな部署を経験することで、多角的なものの見方をできるようにもなるだろう」
「そうですね」
「ただね、何でも人並みにこなせる、器用な人間ばかりじゃない。世の中にはいろんな人がいるんだ」
「高山さんも同じことを……」
「だろう? 別のことで頑張って、会社として結果オーライならそれでいいじゃないか。社会の常識に合わせて自分を殺す必要はないんだ」

苦手な仕事を避ける代わりに、高山は誰よりも営業活動に精を出し、売り上げという結果を残してきた。そうして、得意なことや好きなことだけをやる“特権”を勝ち取り、自分の能力を効率よく伸ばし続けることができたということなのだろう。

高山のやり方はかなり力技だが、自分の得意・不得意を把握して行動を起こしていくのは大事なことかもしれない。

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高山 洋平(たかやま・ようへい)
おくりバント社長
1978年4月吉日生まれ。東京都出身。大学卒業後、不動産投資会社で圧倒的な営業成績を収め続けた。その後、IT業界大手のアドウェイズに入社。独自の営業理論を武器に、中国支社の営業統括本部長まで上り詰める。2014年2月には「自分でもクリエイティブを作りたい」という想いから、同社の子会社として、おくりバントを創業。社長を務めるかたわらプロデューサーとして実務にも携わり、豪快すぎる営業手法で数々のピンチを切り抜けつつ結果を出してきた。PC操作や事務作業は苦手だが、営業力には定評があり、企業や大学で営業をテーマとしたセミナーの講師も務めている。ちなみに、業界では年間360日飲み歩く“プロ飲み師”としても知られている。

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(おくりバント社長 高山 洋平)

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