「ゴミ屋敷になる家」は風呂場でわかる…老後のひとり暮らしが破綻する人に共通する「ゴミ屋敷化のサイン」
プレジデントオンライン / 2024年8月28日 7時15分
■きれいだったマンションが、みるみるゴミ屋敷化
80代の女性、木原さん(仮名)は、過去に一度の離婚歴があり、それからずっとひとり暮らしをされています。
木原さんは一般企業を定年まで勤めあげました。普段は割引されている食品を買うなど節約が趣味のような倹約家で、老後は資産運用もして数千万円もの預貯金があります。
名古屋市内や近郊の新築分譲マンションを住み替えたりしながらひとり暮らしを謳歌していて、非常にしっかりとした、自立した方という印象を受けます。
ところが、年齢を重ねるにつれて様子が変わってきます。
足腰が弱くなり、判断能力にも衰えが見え始めました。すると次第にちょっと重い荷物やゴミを持つことが難しくなり、やがてゴミを捨てること自体が面倒になってきます。一方で自炊をする機会はどんどん減り、コンビニやスーパーで買った弁当や総菜のゴミが逆に増えていくばかり。
こうして、きれいだったマンションの部屋が、みるみるうちにゴミで埋め尽くされていきました。
■「なんでも自分でできる」という思い込み
実は地域の民生委員や役所の方が定期的に見守りに来ていたのですが、木原さんは「心配などしてほしくない!」と玄関口で揉めてしまうこともあったようです。長年ひとり暮らしをしてきたために、「なんでも自分でできる」と頑張ってしまったことが、かえってよくなかったのでしょう。
とはいえ、実際に部屋が着々とゴミ屋敷化していっていることは、木原さんご自身が見ても明らかでした。自分は大丈夫だと思いたい気持ちと現実とのギャップを突きつけられ、精神的にもかなり落ち込む悪循環に陥ってしまいます。
このタイミングで私が相談を受け、施設への入居をサポートしました。現在は施設で快適に過ごされています。
私が入ることで結果的に解決はしましたが、ひとりで元気に暮らしていても年齢からくる衰えはなかなか自覚できない(認められない)し、体力、気力の減退は確実に住環境を劣化させていきます。そして精神的にも悪影響を及ぼすようになるので、そうなる前に周囲のフォローが必要です。
■定期購読雑誌、段ボール箱には要注意
私のような不用品回収業者が、ゴミやモノで溢れた家に高い確率で見かける“あるもの”があります。
それは、未開封状態の毎号付録のある定期購読雑誌です。本当によく見かけるのですが、こういう人は、単に飽き性というだけでなく、片付けられないのに買ってしまう傾向が強いように思います。
ゴミ屋敷・モノ屋敷でこれに負けず劣らず多いのが、Amazonのダンボール箱。それから高齢の方だとテレビ通販のダンボール箱が溜まっているのを頻繁に見かけます。
何かを買っただけで満足してしまう経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。でもゴミ屋敷までいってしまう人はその数が尋常でないのはもちろん、とにかくダンボールを捨てないのです。
ダンボールの捨て方は自治体によっていろいろですが、通常のゴミに比べると少し捨てるのが面倒です。箱を開ける→箱をたたむ→集積所に持っていく、というステップのどこかで止まってしまいます。
私が片付けに行くと、折りたたまれたダンボールがいくつも重ねてある家がありますが、それはまだマシなほうです。ひどい状態の場合は、上蓋だけ開けた箱や、未開封のままの箱が大小問わず部屋にガンガン積み上げられています。
ダンボール箱のテープを剝がしてたたむことさえ、面倒なわけですね。
■未開封のままゴミになる…
たいていは部屋の角のほうから積まれていって、明らかに邪魔になります。でも、1つずつ増えていく分にはあまり変化がないため、また次に欲しいものを見つけたら、ついポチッと買ってしまう。
すぐ使うもので、すぐ届くのであれば少なくとも開封はするでしょうが、注文してからしばらくして届くような商品だと、その頃には意外と興味が薄れていて開封すらしないこともありますよね。そんなことの連続で、いつのまにか手に負えないほど溜まってしまうのではないでしょうか。
雑誌も、最初は魅力的な付録に惹かれて定期購読をするわけですが、1回でも開封しないことがあると、ズルズルと未開封のものが増えていきます。
ダンボール箱のよくないところは、そこからゴミ屋敷化が加速する危険があるところです。箱の上に箱を重ねる。開けた箱の中にちょっとした小物や書類を投げ込む。ダンボールをそのままゴミ箱がわりにしてしまう。
こうして徐々に片付けのメリハリを失ってしまい、ダンボール箱が部屋に馴染んでしまうのです。
■きれい好きなのにゴミ屋敷化する人の共通点
ゴミ屋敷のゴミというと、弁当や惣菜の空き箱、ベットボトルなどが散らかっている様子が目に浮かぶかもしれません。でも実際にゴミ屋敷の片づけに行くと、ピカピカに洗われたコンビニの弁当箱がいくつもキッチンに積んであることがよくあります。
不思議ですよね。ゴミを溜めてしまう人は面倒くさがりのイメージがあるかもしれませんが、食べ終わったコンビニ弁当の箱は、ちゃんと洗ってあるのです。
このような部屋は、ほぼ高齢のひとり暮らしの方が住んでいます。
私は医師ではないので断定的なことはいえませんが、軽い認知症の症状のように思えます。「食べ終わったら洗う」ところまでは習慣で行えるものの、次に「洗っておいたゴミをゴミの日に捨てる」ところまでは完結しないのでしょう。
もちろん認知症が進行してしまった方の部屋がゴミ屋敷化しているケースは多々あります。これは皆さんも想像がつくはずです。
ただ、そこまで症状が出ていなくて普段は割としっかりされている方でも、「洗ったのに捨てない」ような違和感が出てきたら要注意かもしれません。
どんどんモノを捨てるとか片付けることの判断ができなくなり、いつの間にかゴミ屋敷化している危険があります。
■醤油、チューブのわさびが複数本ずつある
また、同じものがいくつも置いてあるのも、ゴミ屋敷によくある特徴です。
例えばキッチンを見ると、醤油が2つも3つもある。冷蔵庫にチューブのわさびや生姜が数本ある。洗剤やシャンプーもなぜかいくつも持っている。
私も買い置きをすることは当然ありますが、備えのレベルを超えて「どうしてこんなに?」と思うくらい、同じものがたくさんあるのです。
“うっかり”で同じものを買ってしまった経験は、誰にでもあるはずです。
とはいえ、実際にゴミ屋敷化している部屋にこうした傾向が強いということは、住人の生活の乱れの一端だと思えます。
使い切ってから買い換えるとか、常に1つ余分にストックしておくとか、買い置きはここにしまっておくといった、ルールがあまり感じられません。無計画に増えてしまった様子が見てとれる状態なのです。
■風呂場を見ればわかる「ゴミ屋敷化の初期症状」
風呂、トイレ、キッチンといった“水回り”はゴミ屋敷化の要チェックポイントです。
まず風呂、トイレは掃除されていません。ゴミ屋敷なのだから当然のように思うかもしれませんが、ゴミ屋敷化の初期症状は風呂、トイレに現れるので、注意が必要です。
特にひとり暮らしでありがちなことですが、自分が使うぶんには問題ないので、マメな掃除をしなくなります。
シャワーしか使わないから浴槽は多少汚れていてもいい。
トイレは直接座る便座はきれいにするけど、中はちょっと汚れても構わない。
こんな具合に「まあ、いいか」の範囲がちょっとずつできてきます。
風呂でよく見るのは、黒カビの生えたシャンプーボトルやボディーソープのボトルです。
放っておくと湯垢がついて黒カビが生えてくるのですが、本人はポンプを押せれば問題ないわけなので、ボトルがずっと同じ場所に置きっぱなしになってカビてしまうのでしょう。
トイレはゴミが溜まり始めます。過去に驚いたのは、トイレットペーパーの芯が、天井に届くくらい高く積み重ねられたトイレです。ピラミッドを組むように丁寧に積まれていました。
もしかすると、用を足している間に手持ち無沙汰なので、なんとなくそこに転がっていたトイレットペーパーの芯を積み始めたのが最初なのかもしれません。
■「まあ、いいか」が家全体に広がっていく…
これは極端な例ですが、「トイレで出たゴミをまとめて捨てることが苦手」な人が、ゴミ屋敷の住人には少なくありません。
トイレに雑誌を持ち込んだまま何冊も放置しているケースも多々ありました。理由は不明ですが、衣類がなぜかトイレに放って置かれていることもありました。
風呂やトイレは普段の生活空間とはちょっと区切りがあって、汚れても「まあ、いいか」になりがちです。自分以外に使う人がいないと、なおさらです。
でも、その「まあ、いいか」がやがて部屋にまで侵食していくと、ゴミ屋敷化してしまいます。
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株式会社GoodService代表
愛知県を中心に遺品整理、生前整理などの事業を行う中で、ひとり暮らしシニアのさまざまな問題に直面。親族や友人に頼れない、頼りたくない「おひとりさま」という生き方を尊重し、なおかつ不安やトラブルなく生きていくためのサポート事業を新たに立ち上げる。東海テレビ「スイッチ!」、名古屋テレビ「UP!」など、メディアへの出演・取材協力も多数。著書に『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』(アスコム)などがある。
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(株式会社GoodService代表 山村 秀炯)
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