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柳井 正「本気を出すとはどういうことか」【1】

プレジデントオンライン / 2013年2月4日 12時0分

ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正氏

英語の社内公用語化、店長・管理職全員が海外勤務へ。日本一先進的な経営者が、読者の身近な「悩み」に答えてくれた――。
Q ボク、英語がしゃべれません。もう会社はクビでしょうか?(35歳・男・メーカー)

相談されたあなたの勤めている会社がどれだけ英会話のスキルを必要としているかはわかりませんので、英語ができないからクビになるかどうかは判断できませんが、これだけは言えます。

もはや日本はビジネスに適した場所ではなくなっているのです。これは極論かもしれませんが、国内市場は、確実に縮小し、少なくともビジネスチャンスは減っていく。そのような現実の中で果たして、日本語だけで勝負しようという人が活躍できるフィールドがあるのかどうか、ということです――。

特に若い人は、英語でビジネスのコミュニケーションができない人は生き残っていけなくなるでしょう。

ですから、英語は必要最低限のビジネススキルとなってくるでしょう。クビになる、ならない以前に、英語ができないとどこも雇ってくれないという日は、そう遠くないのかもしれません。

しかし、それ以上に気になるのは、英語が話せないために、国際化された市場で、外国人と一緒に仕事をするとき、日本人が萎縮してしまうことです。

僕は経営の原理原則的なことに関しては、日本でも、アメリカでも中国でもどこでも一緒だと思っています。人間同士がお互いの利益を目指して競い合ったり、一緒に仕事をすることに関して、国籍による大きな違いがあるはずはありません。

日本人同士だと、言わなくても通じてしまうけど、いつもそんな環境に甘んじているから、いつまでたってもコミュニケーション能力が身につかないのです。日本人のビジネスパーソンに一番欠けている能力は、英語力というよりコミュニケーション能力だ、と思うのです。

外国人相手だと、何か言わなきゃ通じません。それどころか言っても通じない相手には、同じことを何回言っても通じない(笑)。でもね、それでもコミュニケーションしないと先には進まないんです。特に異文化の人と一緒に仕事をするうえでのコミュニケーションは大変重要なのに、日本人はこの“コミュニケーションする”という基本的な態度に欠けている。まずそれが問題です。

我々の会社の例だと、日本人が出向いて、外国で現地の人と店舗運営をする――。すると日本人だけが残業しているというケースが結構あるんですね。僕は、こういうのは最悪だと思うんですよ。現地の人と仕事をしていくんだったら、一緒に残業をやろうと伝えなければならない。きちんと経営者的な判断から残業の必要性を説明して、働くみんなに指示することができないとダメなんです。

ですから、まず英語がビジネスに必要かどうかを議論する前に、コミュニケーション能力を磨くことが重要です。効率が上がっていけば、今の日本のオフィスのように残業しなくてもよくなります。

「自分のことを全部理解してもらおう」、そして「相手のことを全部理解しよう」と思わない限り、コミュニケーションなどできません。そういう態度が日本人には欠けているという現実を踏まえておく必要があるのです。

相談者の方にお伝えしたいことは、英語が話せるようになることも重要ですが、自分の考えをまず、相手に理解してもらえるようなコミュニケーション能力を向上させることでしょう。英語ができれば、それにこしたことはありませんが、文法などは二の次でいいから、相手とコミュニケーションできることが大事だということを忘れないでほしいですね。

我々の会社でも社内の公用語を英語にすることが決定されていますが、これはじつは「みんなで勉強しよう!」というメッセージでもあるのです。即英語化というわけではなく、2012年の3月からスタートなので、これから勉強しても十分できるはずです(※雑誌掲載当時)。相談者の方も、しゃべれないことを悩む前に、少しでも英語で会話できるように、今、勉強を始めればいいのです。

Q 失敗すると評価が下がるので、チャレンジしたくないのですが?(32歳・男・金融)

まず、最初に伝えておきたいのは、失敗というのは「貴重な経験」だということです。

経営者という立場から言えば、致命的な失敗はダメだけど、少々の失敗は許されるという包容力のある企業風土をつくるべきだと思うんです。しかし、これが微妙なところで「包容力がある」というのと「甘い」というのはまったく別物でね。甘い企業風土で、失敗したからといって、ニコニコしていたら、どうしようもありません。

それに、ほとんどの人は失敗したときに自分のせいじゃなくて他人のせいにしてしまうものなんです。だから、せっかくの成長のチャンスを棒に振ってしまう。

そして、結局、また同じ失敗を繰り返す。それでは、失敗から学ぶことはできません。

ゴルフを例に取りましょうか。アマチュアの人は、自分のナイスショットしか覚えていないものなんです。ドライバーが凄くよく飛んだとか、ワンオンしたとか。失敗しても「風のせいだ」とか、「キャディが悪い」と、自分のミスに向き合いません。

ところがプロの人は、けっして失敗を忘れません。二度と同じシーンで失敗しないように必死で練習するんです。普通のビジネスパーソンにとってはゴルフは趣味ですから、コースの上ではいくら言い訳してもかまいませんが(笑)。でもね、自分のビジネス、自分の仕事となったら、言い訳はナシです。

だから、相談者の方も、失敗を大げさに考えすぎて足踏みするより、チャレンジして一歩前に踏み出す勇気を持ってほしいですね。

むしろ、日本の経営者やビジネスパーソンは目標達成のプロセスや個人の努力を評価しすぎる傾向が強いから、多少の失敗は評価を下げる要因にはならないかもしれません。

まぁ、そのせいで、日本人には「何が何でも結果を出す」というガッツや執念が足りないのも問題なのですが。

チャレンジにはリスクがあります。でも僕は、いい仕事をしようと思ったら、リスクは取らねばならないというのは真理だと考えています。僕も社員には「失敗しても命までは取られないから」と常々言っています(笑)。

失敗を恐れて何もしない人より、結果を求めて仕事を練りに練り上げ、それでも失敗をしてしまった人のほうが、次に成功する確率ははるかに高いのではないでしょうか。

※すべて雑誌掲載当時

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ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正
1949年、山口県宇部市生まれ。早稲田大学卒業後、ジャスコに入社。その後、実家の小郡商事に入社。84年広島市にユニクロ1号店開店。91年社名をファーストリテイリングに変更。2002年代表取締役会長就任。05年より現職となる。

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(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長 柳井 正 構成=プレジデント編集部 撮影=大沢尚芳、小原孝博)

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