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南海トラフ地震で家が燃えても「火災保険」は適用されない…元国税局職員「これだけは加入すべき2つの保険」

プレジデントオンライン / 2024年9月1日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyuSeungil

種類がたくさんある保険は、どうやって選べばいいのか。元東京国税局職員の小林義崇さんは「手厚い公的医療保険がある会社員は、民間の医療保険に入る必要はそれほどない。ただし、お伝えする2つの保険にだけは加入したほうがいい」という――。

※本稿は、小林義崇『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

■高額療養費、傷病手当金、障害基礎年金…

「日本人は保険好き」といわれます。たとえば、代表的な医療保険つきの生命保険。日本の世帯のうち約7割が加入しています。

この割合はアメリカの加入率と同程度なのですが、アメリカの場合、公的医療保険が十分でないため、民間医療保険に入らざるを得ない事情があります。

でも日本には優れた公的医療保険があり、民間医療保険はそれほど必要ないといえます。

医療費が100万円超えなど高額になっても、自己負担額には上限があることをご存じでしょうか?

公的医療保険の保障内容は働き方などによって差がありますが、とくに会社員の場合は次のような手厚い保障が用意されています。

【会社員に対する保障】
・病院代がたくさんかかった→「高額療養費」で医療費の負担が減り、「医療費控除」で税金が減る
・病気の入院で仕事を長く休んだ→「傷病手当金」で給料の3分の2程度をもらえる
・後遺症が残って障害を負った→「障害基礎年金」と「障害厚生年金」をもらえる

■100万円の医療費も、自己負担は10万円以内

このように公的医療保険が私たちを守ってくれていることを知ると、将来への不安が少し和らぎませんか。また、民間の医療保険に必要以上に頼ることがなくなるので、月々の保険料の節約にもつながります。

たとえば年収500万円の人が1カ月で100万円の医療費がかかった場合、高額療養費を使えば自己負担は8万7430円。差額の約91万円は公的医療保険がカバーしてくれ、自己負担は10万円もかかりません。

日本に住むほぼ全員が何らかの公的医療保険に加入しています。そして、この公的医療保険のおかげで、病気やケガで病院に行ったとき、治療費が(知らず知らず)安くなる恩恵を私たちは受けています。

公的医療保険には複数の種類があり、大きく「健康保険」と「国民健康保険」の2タイプに分かれます。

会社員が加入するのが健康保険。大手企業は「健康保険組合」、中小企業は「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の健康保険から医療費などの補助を受けられます。

一方、自営業者や学生、無職などの人の場合は、役所を通じて「国民健康保険」に加入します。

■個人事業主の人は民間保険にも入ると安心

健康保険と国民健康保険を比べると、保障がより手厚いのは健康保険です。

とくに健康保険が強みとするのは、会社員本人だけでなく、その扶養家族まで医療費をカバーしてくれる点です。しかも、扶養家族が増えても保険料には影響しません。

本人の分の保険料を払うだけで、家族が何人でも健康保険の保障を受けることができます。

一方、国民健康保険の場合、扶養という考え方がありません。家族全員の所得に応じて1人ずつ国民健康保険料が算定され、合算した額を世帯主が負担します。つまり、家族が多いほど保険料は増えることに。

このように保険料面で違いがあるほか、給付にも差があります。たとえば「出産手当金」や、収入を保障する「傷病手当金」(『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版)227ページ参照)は、健康保険からは給付されますが、国民健康保険では支給されません。

フリーランスなど国民健康保険に加入している人は、会社員ほどの保障を受けられず、有給休暇もありません。病気やケガで仕事ができなくなると大きな金銭的リスクを負うことになるため、「民間の医療保険」や、収入減少に備えて「所得保障保険」などに加入したほうがいいでしょう。

■国税局職員が説く「入っておくべき2つの保険」

私自身、公務員時代は民間の医療保険に入っていなかったのですが、独立して収入が不安定になったので入ることにしました。医療保険は「入院1日あたり○円」という形が一般的ですが、私は「1日でも入院すればまとめて25日分の保険金を受け取れる」という契約にしています。

最近は病院が患者を早く退院させる傾向にあります。退院しても自宅療養中に仕事ができなければ収入が減ってしまいますが、まとまった保険金を受け取れる契約にしておけばその点は安心です。

また、会社員であれ、フリーランスであれ、公的医療保険ではカバーできないリスクがあります。このようなものは民間の保険に入る必要性が高いです。とくに「自動車保険」と「地震保険」は入っておくことをおすすめします。

車を購入すると必ず自賠責保険に加入しますが、保険金の支払いには限度があります。たとえば死亡事故を起こした場合は、「被害者1名につき3千万円」までの補償にとどまります。また、建物などに損害を与える物損事故を起こした場合、自賠責保険では一切補償されません。

そのため、「自賠責保険では足りない部分」を民間の自動車保険で補い、いざというときに備える必要があります。

■南海トラフ地震は火災保険では補償されない

家を買う人は、住宅ローンを組むために火災保険への加入が必須となる場合がほとんどですが、地震保険については任意です(※)

保険料を節約するために地震保険に入らないのも1つの選択肢ですが、日本は地震が多い国。南海トラフ地震が今後30年以内に発生する確率は7~8割といわれています。地震によって火災が起きた場合、火災保険では補償されないので、地震保険に加入したほうが望ましいです。

※地震保険は単独で加入できず、火災保険とセットで加入します。地震保険は最長5年間の保険契約が可能で、保険期間が長いほど保険料が割引されます。

ただし、こうした保険に入るときも、保険料を下げることは意識しましょう。店舗のないネット保険なら、保険料が低く抑えられています。

病院を利用する際、基本的には公的医療保険によって療養費の補助を受けられ、自己負担は3割に収まります。

とはいえ、入院が長期化したり、手術を受けたりするときは、自己負担3割といえども大きな金額になる可能性も。病院でかかる金額は自分では読めません。大きな病気やケガをしたときは、やはり心配になりますよね。

でも、日本の公的医療保険には「高額療養費」というしくみがあり、月々の自己負担が一定額までで収まるようになっています。

病院のベッド
写真=iStock.com/peterscode
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/peterscode

■自分に適用される「高額療養費」をチェックしておこう

高額療養費は月単位で計算され、毎月1日から月末までの医療費が一定額を超える分を健康保険が負担します。つまり、自分が払うべきお金は1カ月ごとに上限が決まっていて、それ以上はかからないのです。

高額療養費の自己負担の上限は、収入と比例します。収入が多い人ほど自己負担額は高く、収入が少ない人ほど自己負担額は低くなるしくみです。

協会けんぽの健康保険に加入する会社員の場合、「標準報酬月額」によって5つの段階が設けられています。標準報酬月額は勤務先からの通知などで確認できますが、原則として毎年4月から6月の報酬の平均値。税金や社会保険料を引く前の「およその月収」とイメージしておくといいでしょう。

たとえば報酬月額40万円の人が、1カ月で100万円の医療費がかかったとします。

すると、図表1の「区分ウ」に該当し、高額療養費による自己負担限度額は次のように計算されます。

8万100円+(100万円~26万7千円)×1%=8万7430円

たとえ100万円かかる医療を受けたとしても、自己負担は9万円程度で収まり、残りはすべて健康保険が負担してくれるというわけです。

【図表1】高額療養費 自分の医療費の上限・早見表
出所=『僕らを守るお金の教室』

■家族が同じタイミングで病院にかかっても安心

さらに、高額療養費には「多数回該当」というしくみがあり、療養を受けた月以前の1年間に、3回以上の高額療養費の支給を受けた場合には、4回目からの自己負担限度額がさらに下がります。

先ほどの区分ウのケースなら、3回目までは毎月8万7430円が自己負担の上限ですが、4回目からは上限が4万4400円に下がります。

また、たとえば会社員の夫と、その扶養に入っている妻のように、同じ公的医療保険に加入しているのであれば、世帯単位で払った医療費を合算して高額療養費の計算をすることができます。そのため、家族が同じタイミングで病院にかかっているときも安心です。

会社員のお父さんの医療費が10万円かかった月に、扶養に入っている妻や子どもの医療費が20万円かかったなら、合計した30万円をベースに高額療養費を計算し、お父さんの自己負担限度額までに支払いを抑えてくれるのです。

高額療養費の手続きは難しくありません。医療機関でいったん3割負担の支払いを済ませた後、「高額療養費支給申請書」を提出すれば後日給付を受けられます。会社員は勤務先を通じて、フリーランスなど国民健康保険の加入者は市区町村の役所の窓口で申請します。

■美容整形や歯の矯正は「10割負担」になる場合も

ここで1つ覚えておいてほしいのですが、「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払い時点で支払う金額を高額療養費の自己負担限度額までに抑えられます。

入院しはじめた段階で多額の医療費がかかる可能性が見込まれるなら、ぜひ限度額適用認定証を取得しておきましょう。限度額適用認定証には最長1年の有効期限が設けられているので、常に持っておくのは現実的ではありませんが、入院などの事態が起きたときは速やかに手続きしておくことをおすすめします。

小林義崇『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版)
小林義崇『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版)

なお、高額療養費や限度額適用認定証の手続きは、会社員は勤務先を通じて健康保険へ、国民健康保険の加入者は役所の窓口で申請します。

気をつけなくてはならないのは、高額療養費の申請は「診療を受けた翌月から2年以内」という期限がある点です。期限を過ぎるとお金を取り戻せません。

また、美容整形や美容のための歯の矯正など、健康保険が適用されない医療サービスは、高額療養費を使えないだけでなく、自己負担が3割でなく10割に。大きな治療を受けるときは、事前に病院に「(公的医療保険を使える)保険診療かどうか」を必ず確認しましょう。

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小林 義崇(こばやし・よしたか)
フリーライター
国税局の国税専門官、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所に勤務。2017年、金融関係のフリーライターに転身。著書に『すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版)、『あんな経費まで! 領収書のズルい落とし方がわかる本』(宝島社)などがある。

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(フリーライター 小林 義崇)

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