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なぜ「人間関係=面倒臭い」と考えてしまうのか…大人になっても友達ができる人に共通する「愛着スタイル」とは

プレジデントオンライン / 2024年9月1日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

友達をつくるのが得意な人と、苦手な人は何が違うのか。心理学者で友情の研究を行うマリサ・G・フランコさんは「人は自分と養育者との初期の関係を土台として、愛着スタイルを発達させる。この愛着スタイルによって、友達ができやすい人とそうでない人が決まる」という――。

※本稿は、マリサ・G・フランコ『FRIENDSHIP 友情のためにすることは体にも心にもいい』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■クールな「一匹狼」の正体

「私は誰も必要としていない。自分さえいればいい」

個人主義のアメリカ社会は、「プロテスタントの労働倫理」によって定義されています。自力で何でもやり遂げるよう駆り立てられ、人生で出会う障害物をひとりで耐え抜く能力が評価され、悲劇にも動じない強さが称賛されるのです。

「泣きなよ。感情を抱くのは健全なことだから」ではなく、「泣くのはやめなさい」と言われるのです。

私たちが抱く「冷静なイメージ」とは、不自然な無関心さが特徴です。単に何にも関心を持たないがために冷静な人が、尊いと言われるのです。

「冷静である」という言葉は、皮膚コンダクタンス〔皮膚の電気伝導度〕から来ていると考える科学者もいます(※1)。物事に動じない人は、プレッシャーをかけられてもあまり汗をかかず、その皮膚は文字どおり冷たく、「面の皮が厚い」のです。

神経が図太く物事を感じない人がヒーローとされ、私たちは余計に、そうふるまう人はどこかおかしい、とはなかなか思わなくなります。

これは、回避型の愛着スタイルの人たちです。

※1 Susan Cain, Quiet: The Power of Introverts in a World That Can’t Stop Talking (New York: Penguin Books, 2013).

■友達のできやすさを左右する「愛着スタイル」

愛着理論によると、人の友達づきあいは「安定型」「不安型」「回避型」の3つのスタイルに分けられます。これは自分と養育者との初期の関係を土台として育まれる愛着スタイルにもとづいています。

そして「回避型」の人は、友情を終わらせる傾向にあることがわかっています。

【図表1】友達ができない人・できる人の「愛着スタイル」の違い
自分が当てはまるものに○をつけてみよう。もっとも多く○をついたところが、あなたの友情における愛着スタイルだ。(出典=『FRIENDSHIP 友情のためにすることは体にも心にもいい』114ページより)

■回避型の人は人間関係を面倒なものと考える

陸軍士官だった50歳のジャレッドは、母親が15歳のときに生まれた子でした。

ジャレッドが覚えている一番古い記憶は、荷物をまとめて出ていく母親の姿です。自分より母と親しくなるのだろうと、母親がつきあっていた男性たちに嫉妬したのを覚えています。

祖父母に育てられたジャレッドは、自立を厳しく教え込まれました。人に頼ってはいけない。頼られてもいけない。人の家で出された紅茶をいただくのは大罪だ、と祖母に言われました。

ジャレッドはほとんどの回避型の人と同じように「人に近づきすぎたり頼ったりすると落胆することになる」と家族から学んだため、そういったことは一切しませんでした。

親友がひとりいましたが、それ以外はほとんどの人と距離を保っていました。

「友達は、人生を豊かにする存在ではなく頭痛の種である」という感覚を、常に家族から感じていました。あるとき、近所の人が大型ハンマーを借りに来たと祖父が文句を言っていたことがありました。祖父はもう10年もその工具に触れていないにもかかわらずです。

不機嫌な90歳の男
写真=iStock.com/RapidEye
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RapidEye

■人間関係よりも仕事を優先する

回避型の人はジャレッドと同様に、人間関係を喜びや満足感をもたらしてくれるものではなく、プレッシャーや責任と受け取り、人を遠ざけます。

人がつながろうとすると、何か魂胆があるから近づくのだろうと決めてかかり、心を閉ざします。自分のことを多く語らないため、友達からはたいてい「謎めいた人」とか「正体不明」などと言われます。人を寄せつけないようにするため、回避型の人は仕事に没頭し、さらにアメリカの理想像に近づきます。

研究によると、回避型はほかの愛着スタイルと比べて、人間関係よりも仕事の方が自分の幸せに影響すると主張しがちです(※2)

ある心理学者のカップルセラピーに通っていた回避型の相談者は、交際相手についてこんなふうに言いました。

「彼女の場合、怒ると仕事が手につかなくなります。僕の場合は、怒ったら仕事せずにはいられません」

かつて回避型で、現在は恋愛コーチをしている長髪の中年男性フィリップ・ルイスは、同じ友達なら、ビジネスパートナーでもある友達の方がいいと思っていました。純粋なつながり以上の何かを提供してくれるため、その方が価値があると思ったのです。

とはいえ、回避型の人が人との距離を保つために使う方法は、仕事だけではありません。友達との間に、厳格な境界線をつくります。

違うグループの友達を一緒にすることや、たとえば職場の友達を自宅での食事会に誘うような、つきあいの場を変えることには関心がありません。

ギラス博士はある記事の中で、こんなふうに書いています。

「回避型の人は、それぞれの友達にたったひとつ、あるいはほんのわずかな役割しか与えないことで、それぞれの友達への自分の依存度を下げている(※3)。これにより、信用や依存への不安を緩和できるかもしれないからだ」

※2 Hazan and Shaver, “Love and Work.”
※3 Gillath, Karantzas, and Selcuk, “A Net of Friends.”

■目の前にいないと忘れてしまう

回避型の人が人を寄せつけないのはある意味、「対象の永続性」という心理学的なコンセプトに関係しているはずです。

対象の永続性がないと、自分の目の前になくて見たり触れたりできないものは、もはや存在していないことになります。

たとえば幼児がおもちゃのガラガラに夢中になっているときに、あなたが目の前でそれをテーブルナプキンの下に隠した場合、その子はキョロキョロして、おもちゃがどこに行ったのだろうかと混乱します。ガラガラという対象の永続性が見えないからです。

幼児は生後7カ月頃にこの成長段階を脱します。しかし、心理学的に言うと、回避型の人はこの段階をきちんと脱していないことになります。

友達が引っ越したり転職したりして視界からいなくなると、回避型の人にとってその友達は、頭から抜け落ちてしまうのです。

■突然音信普通になるワケ

ルイスは言います。

「友達が姿を消したら、会いたいとは思いませんでした。電話をしたり手紙を書いたりもしませんでした。相手は怒っていたけど、必要性を感じなかったんです」

回避型の人はまた、たとえ相手がしばらくつきあった友達であれ、友情を終わらせて相手から離れることもします。感情を不快に感じるため、争いごとにうまく対処できません。

研究からも、回避型の人は友情を終わらせる傾向にあることがわかっています(※4)

また、別れは強烈な感情を生む可能性があるため、研究によると回避型の人は、突然音信不通になるような、間接的な手段を使って相手との関係を終わらせたがります(※5)

公園内でスマートフォンを使った手のクローズアップ
写真=iStock.com/Wavebreakmedia
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wavebreakmedia

ジャレッドは大学生のとき、ルームメイトのリロイが、ほかの人が経験したことを自分の経験談として話していることに気づき、リロイは信用ならない、と思いました。

「それで、彼から電話が来ても無視するようになりました」とジャレッドは振り返ります。

軍にいたときの別の友達についても、一緒のグループチャットで無視して関係を切ったこともあります。

※4 Gillath, Karantzas, and Selcuk, “A Net of Friends.”
※5 Tara J. Collins and Omri Gillath, “Attachment, Breakup Strategies, and Associated Outcomes: The Effects of Security Enhancement on the Selection of Breakup Strategies,” Journal of Research in Personality 46, no. 2 (2012): 210-22, https://doi.org/10.1016/j.jrp.2012.01.008. 0265407512443612.

■冷静に見えて実はパニックを起こしている

回避型の人は強く見えるかもしれません。自立能力が非常に高く、ほかの人など必要ないように思えます。

マリサ・G・フランコ『FRIENDSHIP 友情のためにすることは体にも心にもいい』(日経BP)
マリサ・G・フランコ『FRIENDSHIP 友情のためにすることは体にも心にもいい』(日経BP)

でも思い出してください。

人間は、社会的な生き物です。人は生まれながらに人を必要とするようにできており、誰のことも必要ないと主張するときは、何かが間違っているのです。

回避型の人は、争いごとが起きても冷静沈着に見えますが、体の内側はパニックになっており、神経系が興奮して血圧が急上昇していることが研究でわかっています(※6)。彼らが抑え込んでいる痛みは消えることはありません。内側では、ひどく傷ついているのです。

もっと正しい言い方をするなら、回避型の人は、私たちと同じように人を必要としているものの、依存してしまうのが怖いと思っています。

距離をおくようなふるまいは、人と親しくなると、あとで拒絶されて落胆させられるという恐れから、逆の行動を過度に取った結果なのです。

コロラド州デンバー在住の起業家で、かつて回避型だったチャーリーは、友情とは権力だと以前は思っていた、と語ります。一番気にしない人が勝ちなのです(回避型は決まってこう言います)。

友達に遊びにおいでと言われると、彼は断っていました。拒否することで、自分には力があり、主導権を握っていると感じられたからです。

彼が大人になったとき、不安な気持ちを隠していた自分に気づきました。

「人から拒絶されるのを、極度に恐れていたんです。恐れから、何も気にしないふりをしたり、誰かと友達になれる機会を軽視したりしていました。そうすれば、もし何かあっても、別にどうでもいいって言えるから」

こうした恐れや他人への不信のせいで、回避型の人は、人に手を借りたり貸したりするのも苦労します。そのため、助けが必要なときに人に頼る代わりに、心を閉ざして引きこもってしまいます。

この愛着スタイルは変わることはないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。

そもそも、ほとんどの人は、単にひとつのタイプ、というわけではありません。回避型の傾向が大きい人も、状況や体調によっては不安定型に、またあるときは安定型になるときがあります。そして、成長とは、完全な安定を手に入れられなくても、なるべく安定できるよう努力することなのです。

※6 Lisa M. Diamond, Angela M. Hicks, and Kimberly Otter- Henderson, “Physiological Evidence for Repressive Coping among Avoidantly Attached Adults,” Journal of Social and Personal Relationships 23, no. 2 (2006): 205-29, https://doi.org/10.1177/0265407506062470 ;
Mario Mikulincer and Phillip R. Shaver, “The Attachment Behavioral System in Adulthood: Activation, Psychodynamics, and Interpersonal Processes,” in Advances in Experimental Social Psychology (Cambridge: Elsevier, 2003), 53-152. https://doi.org/10.1016/s0065-2601(03)01002-5.

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マリサ・G・フランコ 心理学者、フレンドシップ専門家
メリーランド大学でカウンセリング心理学の博士号を取得。現在、同大学で教授として勤務するかたわら、心理学に特化したメディアPsychology Today(サイコロジートゥデイ)に寄稿している。また、心理学者としてNew York Times紙、NPR(アメリカ公共ラジオ放送)などへのメディア出演や、全米の企業や大学、非営利団体での人間関係に関する講演なども行っている。

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(心理学者、フレンドシップ専門家 マリサ・G・フランコ)

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