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「お金持ちになりたい」オックスフォード大入試面接で秀才ほど落とされ、本音を語った人が受かった納得の理由

プレジデントオンライン / 2024年9月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/georgeclerk

名門のオックスフォード大学ではどのような入試を実施し、どんな生徒を入学させているのか。東洋学部教授で入試面接官のチョ・ジウンさんは「いかにも受験対策のコーチングを受けたような自己紹介書を提出し、面接官の質問に何度もリハーサルしたような答えを“立て板に水”のように話す学生を面接官の10人に9人は好まない」という――。

※本稿は、チョ・ジウン『オックスフォード式勉強感覚の育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、北野博己訳)の一部を再編集したものです。

■独走する1位が淘汰される未来

優秀な一人より、感性と共感でチームで問題解決できる人

私が他の人よりかなたを見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に立っていたからです(If I have seen further, it is by standing on the shoulders of giants)。

アイザック・ニュートンが1675年の手紙に書いたこの一節は、どんなに偉大な成果であっても、それは個人だけの業績とは言えないという事実を意味します。

ニュートンの場合、先輩科学者らの研究の積み重ねがありました。

理論物理学者のスティーブン・ホーキングも、2017年に博士論文を一般に公開した際、この一節を引用して次のように語っています。

「どの世代も、その前の世代の肩の上に立っています。私がケンブリッジで博士課程の学生だったとき、アイザック・ニュートン、ジェームズ・クラーク・マクスウェル、アルバート・アインシュタインの研究からインスピレーションを受けたように」

ノーベル博物館では、ノーベル賞受賞者の核心的な力量を「創造力」と定義しています。

さらに、その創造性が発揮されるためには、他の人とコミュニケーションをとり、協業する能力が必要であると強調します。

協業なくして革新はなく、いかに優れたアイデアを持った賢い人物でも、人と疎通できなければ成功しがたいということです。

今の教育界の話題の中心は、以前のような効率性ではなく、感性と共感です。今や世界の問題は、一人の優れた個人が解決するには複雑になりすぎて、チーム単位でアプローチしなくては成果が出せなくなっています。

感性と共感を介したコミュニケーションと協力、調和の価値はこれまでになく高まっています。これは上下関係に縛られることなく、互いの役割を尊重し、水平的な関係を結ぶことができる能力とも言えます。

私は委員として、教授任用審査委員会にしばしば参加します。応募者は概して優秀で、似たようなスペックを持っています。論文数も同じくらいです。

この場合、履歴書に書かれた客観的な条件より、結局はその人が一緒に働くのに適した人かどうかを重視します。

人の言葉に耳を傾けてコミュニケーションがとれ、融通性を備えていることが肝心で、責任感と思いやりがあれば完璧です。研究はチームプレーだからです。

連携すれば規模が拡大し、規模は経済性を創出します。今後到来する第四次産業革命の時代には、これまで不可侵だった現実と仮想の境界が破られ、連携規模の拡大が実現します。

とはいえ結局、連携の中で主体として活動するのは個人です。もし今、協業する習慣と能力を育てられなければ、おそらく子どもはすべてがつながった未来環境の中で、一人で困難に立ち向かうことになるでしょう。

■なぜ、ただの秀才は落とされるのか

さまざまな受賞歴より一つの関心事を掘り下げる思考の深さ

毎年、オックスフォード大学入試の選考面接で、優秀な学生たちに会います。この14年間、12月の第1週に面接を行い、7年間は東洋学部全体の入学所長も務めました。自己紹介書も数えきれないほど読んでいます。

私立学校の学生たちは、いかにもコーチングを受けたようなきちんとした文章を提出し、面接官の質問を聞くや否や、何度もリハーサルしたような答えを「立て板に水」のように話したりします。

しかし、面接官の10人に9人は、このような学生を好みません。

この世の中に読んでいない本などない、と言わんばかりの学生もいます。中には、私が書いた本を読んだかのように言う学生もいました。

けれどもいくつか質問してみると、実際には数ページめくっただけだとすぐにわかってしまいます。

数々の受賞歴を持つ、いわゆるハイスペックな志願者にもたくさん会いました。しかし、オックスフォードの教授らは、派手なスペックには興味がありません。100冊の本より1冊の本、多様な経験や受賞履歴より一つの関心事を掘り下げる考えの深さに興味を示します。

特定の領域への燃えるような情熱を示す、少数の人材を探すのです。

オックスフォード大学のトムタワー
写真=iStock.com/zodebala
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/zodebala

ある年、入試面接でトミーという学生に会いました。なぜオックスフォードで学びたいのか尋ねると、トミーは「お金持ちになりたいから」と答えました。こんな返事をする学生はほぼいません。

でも、トミーはとても堂々と自分の話をしました。家族の中で大学に行った者はいないけれど、勉強して父の営む整備工場をもっとうまく経営し、金持ちになりたいのです、と。

自分の望みを正直に、胸を張って表明しました。面接官たちはそんなトミーに、イートン・カレッジなどの名門校で仕込んだ答弁をした学生よりも高い点数を与えました。

トミーはオックスフォードを優れた成績で卒業し、今はビジネス経営を成功させています。面接のときのように、たくましく堂々と、幸せになっています。

彼は、いわゆる変わり者の学生でした。オックスフォードは、自分自身を率直に表現できる、度胸のある人を待っています。未来の大学、未来の社会が求める人材は、そういう人々だからです。

オックスフォード大学は、これまで成し遂げたことよりも、将来の可能性を重く考えます。よい環境でよい教育を受けた秀才より、厳しい環境の中で格別な恩恵は受けずとも、うまく育てれば大木になりうる、隠れた原石のような人材を発掘しようとするのです。

オックスフォードに志願するためには、普通「Aレベル」と呼ばれるイギリスの学力試験で3教科Aを取らなければならないとされていますが、ときには点数が少し足りない志願者も来ます。

オックスフォードはこのような学生たちを合格させるケースも珍しくなく、家庭の事情が苦しい学生たちには全額奨学金を提供します。

そうして奨学金を受けて勉強した学生たちは、成功したのちに学校に寄付し、過去の自分と似た境遇の後輩たちを奨学金で応援します。

■資格やテストの点数が本人の能力を正しく示しているわけではない

韓国の学生は、多くの資格を取ることに夢中です。それで自分の能力を証明できるかのように、試験や大会などで客観的な数値と成果を出すことに尽力します。

チェ・ジウン『オックスフォード式勉強感覚の育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、北野博己訳)
チェ・ジウン『オックスフォード式勉強感覚の育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、北野博己訳)

こうした資格文化は、幼少期から始まります。ピアノはチェルニーの何番、テコンドーは黒帯、英語の点数は何点、などの基準が制定され、少なくともこれだけはやっておかなければというプレッシャーがかけられます。

プレッシャーは、創造力の伸びる余地を奪っていきます。

各種の資格やテストの点数が、本人の実際の能力を正しく示しているとは言えません。資格を取るための知識は、興味の対象への情熱や、豊かな経験の蓄積によって自分のものにした知識には勝てないのです。

子どもが心から打ち込める対象を見つけ、それに向かう窓口を広げてあげてください。ある瞬間から、子どもは魔法のように、誰にも真似できない本当の「力量」を備えることになるでしょう。

(チョ・ジウン)

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