「自分の強み探し」をしてはいけない…人望厚く健康で幸福感が常に高い"ハイパフォーマー"が自問する内容
プレジデントオンライン / 2024年9月5日 15時15分
※本稿は、ブレンドン・バーチャード『世界3万人のハイパフォーマー分析でわかった 成功し続ける人の6つの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■ハイパフォーマンスに到達できる人は、多くの領域で有能
本書における「(高い)パフォーマンス」とは、長期にわたり、一貫して、標準的基準を超えた成功を収めることを意味する。
ハイパフォーマーは、その活動分野における成功がどのように定義されるにせよ、ともかく、より長く、より優れた成果を出し続ける人や、チーム、企業、文化などを指す。しかしパフォーマンスの高さは、たゆみない向上のみを意味するわけではない。
多くの人は、向上はしていても、大成功というほどではなく、前進のペースがその他大勢と同じでゆっくりなのだ。また進歩はしていても、真の意味で大きな影響を及ぼす人は少ない。ハイパフォーマーは常識を打ち破り、常に期待値や成果を上回る。
またパフォーマンスの高さは、単に専門知識を深めることとも違う。新しいスキルや言語を習得したり、チェスの名人や世界的ピアニスト、CEOになったりするだけではハイパフォーマーとは言えない。
成功し続ける人は、いかなる分野であれ、単一のタスクやスキルに長けていることに加えて、専門的な知識やスキルを補完する周辺能力も習得している。成功を長続きさせ、他者をリードするための複数のスキルセットを持つ。人生の複数の領域で卓越できる習慣を実践しているのだ。
スーパーボウルで優勝したクォーターバックは、ボールの投げ方だけを知っているわけではなく、メンタルの強さや、栄養学、自己規律、筋力や柔軟性のトレーニング、契約交渉、セルフブランディングなど、さまざまなことをマスターする必要があったはずだ。
どのようなキャリアでも、ハイパフォーマンスの領域に到達できる人は、その仕事に付随する多くの領域において有能でなければならない。
■自分自身を追い込んでしまったら絶対ダメ
「長期にわたり、一貫して」という言い方は重複表現のように聞こえるかもしれない。だが実は「長期にわたり」と「一貫して」は、似て非なる意味を持つ。
ハイパフォーマーなら、10年間努力を重ねてきた末に、最後の最後で成功するといった、ラストスパートで成功のフィニッシュラインを突破するようなサプライズウィナーにはならない。彼らは繰り返し期待を上回る仕事をする。彼らの努力には、同僚には真似できない一貫性があるのだ。
この「長期にわたり、一貫して、標準的基準を超えた成功を収める」には、自分の心身の幸せを守り、良好な人間関係を維持し、他者に貢献しながらレベルアップできるようになる習慣が必要だ。自分自身を追い込んでしまっては、基準を上回る成果は出せない。
「強みに集中せよ」とか「1万時間の法則」といった、よく知られた教えでは対応しきれないのはここだ。すばらしい強みを持っているが、成功を追い求めるあまり健康を害し、パフォーマンスを維持できない人はたくさんいる。
また、練習に異常なほど打ち込んだり、時間をかけたりするあまり、自分の持続的成長を支えてくれるはずの人間関係を棒に振ってしまう人も多い。
上達を助けてくれていたコーチを遠ざけてしまう、恋人や配偶者との関係が壊れる、感情的にも疲弊して続けられなくなる、投資家を怒らせ、成長し続けるための資金が入ってこなくなる、といった事態に陥るのだ。
あなたには、成功するだけでなく、ポジティブな感情と人間関係に満ちた健全な人生を送ってもらいたい。
■人生のあらゆる領域で優位に立ち、豊かにする習慣
高いパフォーマンスを出すことは、私が定義しているとおり、またデータでも裏づけられているとおり、なんとしてでも競争に勝とうとするものではない。人生のあらゆる領域で優位に立ち、それらを豊かにする習慣を身につけることを最重要課題とする。
本書の提唱する習慣は、個人だけでなくチームや組織にも有効だ。
今、経営幹部の多くが、エンゲージメントやパフォーマンスの低い企業文化と闘っている。彼らは大胆なビジョンを持って、社員を駆り立てたいと躍起になっている一方で、社員が燃え尽きていることに気づいてもいる。本書から、自社を健全化し、パフォーマンスを発揮できる可能性を知ることができるはずだ。
自社の卓越性を強化したいリーダーに伝えたい。これを実践すれば、あなたの組織はきっと前回よりも健全に、迅速に、自信を持って、一段階上の成功に到達できる。
より良い生き方やリーダーシップは存在し、その方法は解明されている。本書で紹介する習慣は、的確で、実行可能で、再現性、拡張性があり、持続可能である。
■ハイパフォーマーについてわかったこと
さて、長期にわたり、一貫して、標準的基準を超えた成功を収める人びとについて、私たちが発見したこととは何か? それは次のようなことだ。
同輩よりも高い成果をあげているが、感じているストレスは彼らより低い
成功を重ねるにつれ、より多くの負荷と不安が生じ、それらに笑って耐えなければならないという俗説は、神話にすぎない。あなたは、生き残るために戦ったり、尻を叩かれてやり抜いたり、燃え尽きたりする多くの人びとの苦労とは程遠い、並外れた人生を送ることができる。
ハイパフォーマーとて、絶対にストレスを感じないわけではなく、しっかり感じている。ただ、彼らは対処が上手い。レジリエンス(※1)が高く、疲れや注意散漫、重圧などに見舞われてもパフォーマンスがさほど低下しないのだ。
挑戦が大好きで、逆境にめげず、目標を達成する自信を持っている
人生におけるわずかな苦労も避けたがる人があまりにも多い。自分には対処しきれないのではないか、批判されたり拒絶されたりするのではないかと恐れている。だがハイパフォーマーは違う。
自分を疑うことが絶対ないわけではないが、新しいことを試すのを楽しみにし、自分自身の問題解決能力を信じている。困難に尻込みしない姿勢は、人生における進歩に役立つだけでなく、周囲の人びとをも感化する。
■自分のエゴよりも周囲への貢献を優先している
同輩よりも健康的である
彼らはより健康的な食事をし、運動もよくしている。ハイパフォーマンス指標のスコアが上位5パーセントのハイパフォーマーが週に3回以上運動をしている割合は、残りの95パーセントに比べて、40パーセント高い。
誰もが健康を望むが、成功を目指すなら健康などにかまっていられないのではと思う人も多いだろう。だが、それは間違いだ。私たちの調査では、ハイパフォーマーたちは、精神的にも、感情的にも、肉体的にも、仲間より活力があると繰り返し示されている。
幸福感が高い
多くのことを成し遂げても満足できない人がいるが、これはハイパフォーマーには当てはまらない。私たちが発見した成功し続けるための習慣はどれも、たとえ単一で実践したとしても、人生の幸福度を高めてくれる。
だが本書の6つの習慣をまとめて実践すれば、卓越した能力が身につくだけでなく、より幸せにもなれる。それがデータで証明されているのだ。ハイパフォーマーに特徴的な心の状態――エンゲージメント、喜び、自信といったポジティブな感情は、あなたも持つことができる。
人望が厚い
ハイパフォーマーは、自分が能力で追い越した仲間からも真に尊敬されている。なぜかというと、自分のエゴよりも周囲への貢献を優先しているからだ。彼らは、相手に尊敬・重視・感謝されていると感じさせ、その人自身をハイパフォーマーに育てるように接しながら人を動かす技を心得ているのだ。
■パーパスをもって仕事に取り組んでいるか
より高い学業成績や、より高いポジションでの成功を収める
ハイパフォーマンスはGPA(※2)と統計的に相関している。大学スポーツ選手200人を対象に私たちが行った調査では、パフォーマンスの潜在能力を測定する評価ツールであるハイパフォーマンス指標のスコアが高いほど、GPAも高いことが判明した。
また、ハイパフォーマーは、企業のCEOや経営幹部になる確率も高い。成功し続ける習慣が、リーダーシップの発揮や組織内での昇進に役立つからだ。
従来的な報酬に関係なく情熱的に仕事をする
パフォーマンスの高さは、報酬とは相関しない。つまり、給与の額いかんでハイレベルな成果が出る確率や能力が変わることはない。ハイパフォーマーたちが懸命に働くのは、お金のためではなく、必要性と呼ばれるもののためである。
勲章的なものや賞賛やボーナスのためでもなく、やりがいのためだけにがんばっている。そのため、彼らはアンケート調査でも、必ずと言っていいほど、収入レベルに関係なく、やりがいを感じていると答えている。
そして「仕事が割に合わない」「働きぶりが評価されない」と感じることはめったにない。それは、彼ら自身が、パーパスをもって仕事に取り組んでいるからである。パーパスがあると、より高いエンゲージメントと自信と満足感を実感できるのだ。
■「ここで必要とされている仕事は何か」と考えられるか
(正当に)アサーティブである
ハイパフォーマーが新しいことに臆せず飛び込んだり、はっきり意見を言ったりするのは、「勝つ」ためとか競うためではない。彼らのアサーティブネス(※3)は、新しい考えを共有したり、複雑な会話に入っていったり、本音や夢を語ったり、自分のために立ち上がったりする勇気を持つという習慣のひとつに起因する。
彼らはまた、他者のために主張したり、他者の考えを積極的に支持したりすることも普通の人より多いと、調査結果が示している。率直でインクルーシブ(※4)なリーダーにいつでもなれるのだ。
自分の強みを超えた視点で貢献をする
自分の生まれつきの「強み」に焦点を当てるべきだという神話がある。だが、自分探しの時代はもうとっくに終わった。成長・貢献ができ、リーダーシップをとれる人間になるためには、生まれつきの資質を超えて、自己を開発していく必要がある。
ハイパフォーマーはそれを心得ており、「自分の強みを探す」ことよりも「状況に応じた貢献」、すなわち、変えなければならないところを探り、それを変えられる人間に成長することを意識している。
「自分は何者か? 自分は何が得意なのか?」と問うよりも「ここで必要とされている仕事は何か? それを実現するには自分がどのように成長し、どのように他者を導けばいいのか?」と問う。
実際アンケートでも、ハイパフォーマーたちが、自分の強みを伸ばす努力を他の人以上にしているとは示されなかった。ハイパフォーマーの優位性は、個々の強みに起因するものではない。
■周囲の人間に大きな影響と価値を与える
桁外れに生産的で、質の高いアウトプットを大量に生み出せる
彼らは、いかなる分野でも、重要で質の高いアウトプットを他の人より多く生み出す。ハイパフォーマーは単にたくさんのことをこなすのではなく、その関心分野で重要性の高いことを多く成し遂げるのだ。
彼らは、常に重要なことのみを重要視することが重要だと意識している。そのフォーカスと、意味のあるアウトプットだけを生み出そうとする努力が、彼らの卓越性を高めている。
適応力のあるサーバントリーダー(※5)である
私の研究が、流行りの世界のトップエキスパート研究と一線を画しているのは、孤高のエキスパートや並外れた人物を追い求めてはいない点だ。
ハイパフォーマーは、周囲の人間に大きな影響と価値を与える。多くの場合、困難な状況に適応し、部下も成功や貢献ができるよう導くことができるリーダーである。彼らは、そんなリーダーとして、複数のプロジェクトを渡り歩いても、繰り返し成功する。
たとえどんな状況、どんなチーム、どんな会社、どんな業界に放り込まれても、やってのける。それは、他者にもポジティブな影響を与えて引き上げる能力があってこそだ。単なる天才や一匹狼には無理だろう。ハイパフォーマーは、スキルを育てるだけでなく、人をも育てる。
■「無敵の必殺仕事人」では決してない
こうして特徴を列挙すると、ハイパフォーマーはまるで無敵の必殺仕事人のように聞こえるかもしれない。だが、それはまったく違う。これらは、ハイパフォーマーの一般的特徴を概略的に述べただけで、当然、個人差や多様性が入る余地はいくらでもある。
10人が10人とも上記に当てはまるわけではない。それでも、本書で紹介する習慣を実践していれば、ここに挙げた利点を自分のものにし、並外れた人生を送れる可能性がだんだん高まってくる。
上記の特徴が、まだ一つも自分に当てはまらなくても、心配は無用だ。ハイパフォーマーとてその資質を持って生まれたわけではない。私が100万人以上にトレーニングを行ってきた経験から言えるのは、ハイパフォーマーに超人は存在しないということだ。
そのパフォーマンスは、生まれつきの長所ではなく、ある行動を続けた結果。それらを習慣として身につければ、ほぼどのような活動分野でもハイパフォーマンスに到達できる。その結果は、測定可能かつ証明可能なのだ。
※1 レジリエンス……困難から立ち直る力。
※2 GPA……Grade Point Averageの略。高校・大学の各履修科目の5段階評価を数値に換算した評定平均値。
※3 アサーティブネス……高姿勢や攻撃的にならずに言うべきことをはっきり言う態度。
※4 インクルーシブ……多様性を認め合うこと。
※5 サーバントリーダー……部下を支配するのではなく、明確な指示を与えたうえで、部下が仕事をしやすいよう環境を整え支えるリーダー。
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組織コミュニケーションの修士号を取得後、アクセンチュアでチェンジマネジメント・コンサルタントとして勤務。2006年、書籍の執筆、セミナーの主催、個人へのコーチング、オンライン講座の制作などのキャリアをスタートし、現在に至る。19歳のときに交通事故に遭ったのをきっかけに、自ら「人生のゴールデンチケット」と呼ぶ、2度目のチャンスを手にする。それ以来、人々が自分に課された責任に気づき、世界と意見を共有できるようにするために生涯をかけて尽力。人びとが並外れた人生を創造し、楽しむサポートをすることを使命として活動している。
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(ハイパフォーマンスコーチ、講演家 ブレンドン・バーチャード)
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