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「マラソンが趣味」なのに心筋梗塞で命の危機…「悪玉アミノ酸」に侵された40代男性が毎日食べていたもの

プレジデントオンライン / 2024年9月7日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sportpoint

健康に過ごすためには、どんな食生活を送ればいいのか。医師の満尾正さんは「タンパク質の過剰な摂取は、体の炎症を引き起こして命取りになる可能性がある。食べ過ぎも、食べなさ過ぎも『パフォーマンス低下』につながるので、気をつけたほうがいい」という――。

※本稿は、満尾正『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術[文庫版]』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。

■栄養状態の検査は「今の自分を知る情報源」

これから栄養の最適化に向けた具体的な方法をお伝えしていきますが、正しく進めていくためには、定期的な現状把握も必要になります。

自身のパフォーマンスを維持するために、私は年に1~2回、栄養状態がわかる検査を受けることを強くおすすめします。

食生活は、すべて血液に表れます。自分は日頃、何が過剰で何が不足しているのかを見える化して、改善すべき点をあぶり出すための良い指標となります。

血液検査ならば会社の健康診断で受けているから大丈夫、という方も多いのですが、一般的な企業健診で行う血液検査は、私たちのような予防医療の専門機関で行うそれと比べて調べる項目が少な過ぎます。

また、一般的な人間ドックも同じく、検査の主眼は病気の有無を調べることにあります。心身の健康を高い状態に維持するためではありません。

一般的な人間ドックの検査項目といえば、血液や肝臓、腎臓、心臓や血圧、腫瘍マーカーや脂質代謝などです。

対して当院で行うアンチエイジングドックは、これらに加えてさらに体組織(筋肉と脂肪の分布)、骨密度、動脈硬化度、血液中のビタミン、脂肪酸、ホルモンの過不足や毛髪分析による有害金属の濃度などを検査しています。

これらは病気探しの検査ではなく、それよりも一歩先を見る、病気になりにくい体を目指すための状態検査です。

では、パフォーマンスアップのための血液検査項目とはどんなものなのか、もう少し詳しく説明していきましょう。

■健康体の40代男性が突然、心筋梗塞で倒れたワケ

ホモシスティン

タンパク質の代謝過程で生まれるアミノ酸の一種。あまり知られていない物質ですが、体の大敵であり「悪玉アミノ酸」とも呼ばれています。血中ホモシスティン濃度が上がると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中を招くこと、また認知症やがんのリスクも高まることがわかっています。

ジムでハードなトレーニングをする人、マラソンやトライアスロンなど負荷の高いスポーツをする人は、プロテインなどのサプリメントで多量のタンパク質をとることを習慣にしていると思います。しかし、タンパク質の過剰摂取は、ホモシスティンの原料であるメチオニンの摂取を増やすことから、ホモシスティン値を上昇させるリスクがあります。

私の知人の40代男性で、フルマラソンに参加するほど健康体だったのにもかかわらず、ある日突然、心筋梗塞で倒れた方がいます。本人は日頃から健康には非常に気を使っていたので、心筋梗塞になった理由がわからないと、私のクリニックへ相談に来ました。血液検査をしたところ、コレステロール値や中性脂肪の値には異常は見られなかったのですが、ホモシスティン値は24nmol/mlと、理想値の3倍もありました。

■タンパク質の過剰な摂取は「命取り」に…

彼は日頃からしっかりとタンパク質を摂取しようと、肉食に偏った食事をしていたそうです。その健康意識が裏目に出て、ホモシスティンの血中濃度が上昇し、動脈硬化を起こして心筋梗塞を合併してしまったわけです。

タンパク質は人体に絶対に必要な重要栄養素です。しかし、過剰な摂取は体の炎症を引き起こして命取りになることもありますので、適量摂取を心掛けてください。食べ過ぎも、食べなさ過ぎも、パフォーマンス低下につながります。

バーベキューで網の上に乗った野菜と肉
写真=iStock.com/AlexRaths
肉食に偏った食事は要注意。タンパク質を過剰摂取すると「命取り」になることも(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/AlexRaths

そして、タンパク質の摂取は基本的に、鶏肉や魚、卵からとることを私は皆さんにおすすめしています。先にもお伝えした通り、豚や牛などの四足動物は腸内細菌叢(そう)を変化させて発がんリスクを高めるため、時々、会食で食べるぐらいが適量と考えるとよいでしょう。

私が在籍していたハーバード大学の医療関係者のパーティでは、四足動物の肉料理が出てくることはありませんでした。肉なら鶏肉、魚であればサーモンがよく提供されていました。栄養に精通した人たちが集まると、自然とそうした料理が並ぶようです。

タンパク質摂取量の目安は、鶏肉や魚でいえば、毎食手のひら1枚分と考えるとわかりやすいでしょう。

■「ホモシスティン」を下げる食材とは

ホモシスティンに話を戻しましょう。

日本人の5人に1人はホモシスティンが上昇しやすい体質を持っているといわれているので、検査において必須項目にすべきだと私は考えています。健康保険が利かない自費診療になりますし、ほとんどの医師がホモシスティンについて知識がないのですが、ぜひ、検査項目へ加えるように、積極的に検査機関に働きかけてほしいと思います。

私は、ホモシスティンの血中濃度は少なくとも10nmol/ml以下を理想と考えています。

ホモシスティン値が高かったとしても、下げることはさほど難しいことではありません。ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸といった栄養素を十分補給することで、ホモシスティンレベルを下げることができます。

ビタミンB6はにんにく、アボカド、鮭、いわしに。また、ビタミンB12はしじみやあさりなどの貝類に豊富です。B6とB12ともに豊富に含むのが、鶏レバーです。葉酸は葉物野菜からとれます。

これらの食品がなかなかとれないという人は、サプリメントでとるのをおすすめします。ビタミンB群がまとめてとれるサプリメントが便利です。

■栄養不足が「パフォーマンス低下」を引き起こす

ビタミンD

日本ではあまり注目されていませんが、欧米では、積極的な摂取が呼びかけられています。

その働きは骨の健康をはじめ、免疫力の増強、脳や神経機能の維持、心臓血管疾患予防、糖尿病予防など、ほぼすべての生理学的な機能に影響を与えています。つまり、ビタミンDの不足があると、あらゆる体調不良、パフォーマンス低下を引き起こします。

ビタミンDの補充をするには、次の3つの方法しかありません。

①日に当たる
②鮭や青魚を食べる
③サプリメントでとる

日本人の平均値は、25(OH)D3濃度で20~25ng/mlですが、至適濃度は40ng/ml以上と考えられています。

GPT(ALT)

GPT(グルタミン酸ピルビン酸転移酵素)は、肝機能を確認するための項目です。GPTは体のあらゆる組織に含まれていますが、肝細胞への分布が圧倒的に多い酵素です。

GPTの血中濃度が高くなるということは、肝細胞が壊れ、血液中に流れ出たことを意味します。逆にGPT値が低い場合は、肝細胞の代謝スピードが落ちているということになります。GPT値は最低でも18U/l、できれば20~25U/lが望ましい数値です。

18U/lを下回る場合、糖質からアミノ酸を作るためのビタミンB6が不足して、肝機能が低下していると考えられます。肝機能が低下すると代謝がダウンするために体が冷え、疲れやすくなるためパフォーマンスの低下を引き起こします。

GPTが18以下の場合には、ビタミンB6を含む食品を積極的にとるようにしましょう。前項でも触れた通り、B6はにんにく、アボカド、鮭、いわし、鶏レバーに豊富に含まれます。

■「男性ホルモン」は女性にとっても大切

亜鉛

亜鉛が関与している代謝酵素は、200種を超えるといわれています。DNAやタンパク質の合成、視力、聴力、性ホルモンの分泌、免疫力のコントロールなど、体の重要な機能に関与しています。

亜鉛が不足すると、貧血や皮膚炎、免疫機能障害を引き起こすほか、重金属汚染の影響を受けやすくなります。

亜鉛、カドミウム、水銀は元素周期表からすると同じ12族です。つまり、元素の性質が極めて似ているということ。食品中の亜鉛が少なくカドミウムや水銀が多くなってしまうと、必須ミネラルの亜鉛ではなく、有害金属のほうが体内へ蓄積されやすくなってしまいます。

また、パフォーマンスを上げたいと望むビジネスパーソンにとっては、男性ホルモン(テストステロン)の維持にも亜鉛が有効だということは、有益な情報かもしれません。

男性ホルモンは男性らしい肉体を作るだけでなく、やる気や競争心、社会性といったメンタル面にも大きく関与しています。男性ホルモンの低下によって、やる気を失うといった弊害も起こります。

満尾正『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術[文庫版]』(アチーブメント出版)
満尾正『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術[文庫版]』(アチーブメント出版)

男性に限らず、女性の体内でも男性ホルモンは一定量分泌されているため、低下することで同様の弊害は起こります。うつ病かなと思ったら、男性ホルモンの分泌が低下していたことが原因だった、ということもあります。

亜鉛が豊富な食材の代表は、牡蠣です。その他にも、たたみいわしや煮干し、チーズ、ココアなどに多く含まれています。

体内の亜鉛を測るときは、肝機能検査項目に含まれている「ALP(アルカリフォスファターゼ)」という酵素の濃度が目安になります。最適値は200IU/lで、150以下になると不足と診断します。

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満尾 正(みつお・ただし)
米国先端医療学会理事、医学博士
1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。キレーション治療の経験は延べ5万件を超える。著書に『ハーバードが教える 最高の長寿食』(朝日新書)、『医者が教える「最高の栄養」 ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)、『世界最新の医療データが示す 最強の食事術』(小学館)など多数。

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(米国先端医療学会理事、医学博士 満尾 正)

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