中学受験のため「早く塾に入る」は大間違い…最難関中学に受かる子が低学年のうちに身に付けている2つの力
プレジデントオンライン / 2024年9月6日 15時15分
※本稿は、中曽根陽子『中学受験 親子で勝ちとる最高の合格』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■「早く塾に入ったほうが有利」は大きな間違い
地域によっては、「低学年から塾に入(い)れないと塾に入(はい)れない。受験に間に合わない」という都市伝説が、あたかも真実のように語られています。
受験軸にもよりますが、私は個人的には焦って塾に入れなくていいと思います。
というのも、早くから塾に通うとマンネリ化して、高学年になってから「塾疲れ」という状態になってしまいかねないからです。
実際、早くから塾に行かせていたあるお子さんは、学年が上がるにつれて、途中から入ってくる生徒に成績で抜かれて自信をなくし、結局、受験もうまくいきませんでした。
低学年のうちは人数も少ないので、上位にいきやすいですが、母数が増えれば当然相対的評価は厳しくなります。それを当然のこととして受け止められるといいのですが、親のほうが「こんなに長く塾に行っているのに成績が落ちた」と焦ることが多く、これが余計に悪循環を招いているのです。
低学年のうちに大事なことは「しっかりとした土台」をつくることです。
勉強という面では、学校の勉強がわかれば低学年のうちは十分。特に大事なのは「勉強嫌いにさせない」ことです。いったん、勉強嫌いとか、苦手意識がついてしまうと、そこからリカバリーするのは簡単ではありません。
子どもが低学年のうちは「今しかできない遊び」や「体験の機会」をたくさん与えたほうがいいと私は考えます。
実際、外遊びが空間認知能力を育み、それが算数の立体図形の問題を解く力に関係するという話もありますし、子どもの頃に、家族でスポーツをしたり、自然の中で遊んだりした人ほど、失敗しても再び挑戦する「へこたれない力」が高いということもわかっています。
■旅で培った力が社会の成績に直結する理由
旅で培った力が、想像以上に中学受験の勉強に生かされたというのは、旅行ジャーナリストの村田和子さん。息子の悠さんは、現在京都大学大学院でAIの研究をしています。
悠さんは、お母さんと一緒に全国を旅し、9歳で47都道府県を踏破したそうです。そんな悠さんが中学受験の勉強を始めたのは、小学5年生の3学期。ほぼ塾には通わなかったものの、国立大附属中に加え、神奈川県の最難関校の一つ栄光学園に合格したのです。
旅の経験は、特に社会科で生かされたといいます。社会は暗記科目で、膨大な知識を頭に入れなくてはならないのですが、すでに旅を通して頭に入っていたので、あとはそれを整理していくだけ。
また、たくさんの史跡を訪れていたこともあり、歴史上の出来事はリアルな情景を思い浮かべながら頭に入れることができました。旅した場所のことが授業で出てくるので、うれしくなって勉強したくなる。そんな好循環が生まれたのです。
いざ受験となったら、最後は「体力とへこたれない力」が大事です。それは短期的には培えないものなので、小さいときからの経験の積み重ねが必要です。
脳科学的にも、早寝早起き朝ごはんで、規則正しい生活をすることのほうが、皆さんが思う以上に子どもの脳によい影響があることもわかっています。焦って低学年から受験塾に入れる必要はありません。
ただ、お母さんたちとお話ししていると、「学童がわりに塾に行かせたい」と考える方も増えているようです。
もし低学年から塾に入れるなら、受験のためではなく、お子さんの好きなこと・得意なことを伸ばせるような環境を与えるという方向で考えてはどうでしょう。最近では、探究系の塾もたくさんできています。
■塾で「一つ下のクラスに移りたい」という子供の訴えへの回答
長い中学受験の道程は、当然山あり谷あり。いろんなことが起こります。
うまくいっているときはいいですが、成績が伸び悩む、やる気が出ず勉強しない、塾に行くのを嫌がるなど、困ったことが必ず起きます。
そんなときに、頼りにしたいのは塾の先生ですよね。でも残念ながら、思うようなサポートを受けられないこともあります。
難関校狙いの大手塾に通っていたお子さんを持つNさんのお話です。
子どもが6年生の夏を迎えたときのこと。当時在籍していた最上位の志望校別クラスから一つ下のクラスに移りたいと、お子さんが訴えるので、塾に相談したそうです。
子どもがクラスを移りたいと言った理由は「算数で思うような成績が取れず、周りの子との差が広がって、つらくなってきたから」。
本人いわく「塾の先生からは、頑張れば大丈夫だから諦めるなと引き止められたけれど、みんなライバルという環境の中でプレッシャーを感じながら通い続けるのは限界だった」そうです。
Nさんは子どもとの話し合いを踏まえて相談しましたが、塾の先生からは「まだ可能性があるのだからクラスは変えないほうがいい。もう少し様子を見ましょう」という一般的な回答しかもらえませんでした。結局、子どもの様子から家庭で判断して、一つ下のクラスに移ったのです。
あとで娘さんは、「あのとき、もし、パパやママから『もったいないから続けなさい』といわれていたら壊れていたかもしれない」と正直に語ったそうです。最終的に、「第一志望校」に合格でき、クラスを変えたことにも満足しているとのことでした。
■親が「塾にお金を払っている」は絶対ダメ
クラスを変える判断はかなり難しく、「まだ可能性がある」と塾側から言われれば、親は「もう少し頑張らせたほうがよいのではないか」と悩みます。
先ほどのNさんも「私は上の子で一度中学受験を経験していたので、今回の判断ができたけれど、初めてだったら決断できなかったかもしれない。もう少し子どもの様子を把握して相談に乗ってほしかった」といっていました。
特に大手塾の場合は、保護者対応が手薄になりがちなところがありますが、遠慮していてはいけません。気になることがあったら相談をしましょう。
私も、子どもが中学受験をしたときは、面談の他に何回となく相談に行きました。
長女は大手塾だったので、通常の窓口は教室長の先生でした。6年生の11月に成績が下がったときに相談に行くと、「それならこの問題集を追加しましょう」と言われたことがあります。
親から見てもこれ以上の課題を追加するのは無理だと思ったので、実際に娘のクラスを担当している先生にアポを取って相談し、逆に必要な問題を抜き出してもらい、それだけを行うことにしました。このときは結果的に成績を持ち直すことができました。
次女のときは小規模塾だったので、学習に関しては担当の先生と直接やりとりができましたが、メンタル的な相談は、子どもが懐いていた別の先生にしていました。
受け身でいては、こういう対応はしてもらえません。塾とうまく付き合うためには、積極的に塾に相談し、関わっていく姿勢が重要です。塾と親は一つのチームなのですから。
中学受験の場合には特に、子どもと塾の先生の関係は特別なものがあります。親の言うことは聞かないのに、子どもは先生が大好きで、その先生が言うことなら聞くという場合もあります。ですから一人でも、何かのときに相談できる先生がいると心強いですよ。
塾の先生に味方になってもらうには、日頃から信頼関係を結んでおくことが大切です。
お金を払っているんだからこれだけやってもらって当然という態度で接する、反対に相手はプロだからと遠慮して何も言えないというのでは、いいチームにはなれません。塾の役割は勉強を教えることだけではないのです。
■塾の先生との信頼関係をつくる親の声かけ
大切なのは、課題を共有し、一緒に考える相談相手という意識を持つこと。たとえ不満があったとしても、子どもがお世話になっている先生ですから、クレームを言うのではなく、あくまでも相談です。
これは塾だけでなく、学校でも同じですが、子どもを預けている人との信頼関係ってすごく大事です。先生も人間なので、えこひいきするつもりはなくても、距離が近い人のことは気になりますよね。
当たり前のことですが、信頼関係をつくるためには、相手の立場を考慮してコミュニケーションを取ることです。先生が手隙の時間に電話をかける、要点はまとめて話すなど、ちょっとした気遣いができるかどうかで、相手の対応も変わります。
また、送迎の際にちょっとでも顔を出して挨拶したり、いつもありがとうございますと感謝の言葉を伝えたりしましょう。
塾の先生とよいチームになることで、中学受験は最高のチャレンジになるはずです。
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教育ジャーナリスト
マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを活かして取材・編集を行う、編集企画会社を発足、代表に。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。その後、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。ポジティブ心理学コンサルタントも取得し、最近は子育て教育探究ナビゲーターとして、親に寄り添った発信をしている。最新刊『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの探究力の育て方』(青春出版社)他著書多数。
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(教育ジャーナリスト 中曽根 陽子)
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