「塾の宿題をやった」とウソをついた…親がすかさず口にしたい子供のやる気を引き出す"声かけフレーズ"
プレジデントオンライン / 2024年9月7日 15時15分
※本稿は、中曽根陽子『中学受験 親子で勝ちとる最高の合格』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■共働き家庭が中学受験を成功させる3つのポイント
子どもの受験サポートを担ってきました。しかし、今では約72%(1177万世帯)の家庭が共働き世帯です。当然、中学受験を考える家庭でも、共働きの割合は増えています。
共働き世帯の中には「中学受験は、親のサポートがかなり必要」という話を聞いて、「共働きのわが家で、中学受験をさせることはできるのだろうか?」という不安を持ち、中学受験をきっかけに仕事を辞めるという人までいます。小1の壁ならぬ、中学受験の壁です。
しかし、本当に親が仕事を辞めてまでサポートしないと、中学受験はできないのでしょうか。ここでもう一度確認してほしいのが、わが家の受験軸です。どんな受験にするかで親のサポート内容は変わっていくからです。
受験において何を優先するのかによって、ご自身の仕事との向き合い方を変える必要が出てくる場合もあると思います。でもそれも、全ては家族全員がよりよくなっていくためです。単純に子どものために自分を犠牲にしても、誰も幸せになれません。
これは、今回のテーマにかかわらず持っていてほしい視点ですが、今の状況でできることをして、最高の結果を得られるように、プランニングをしていきましょう。
さて、ここからは共働き家庭が押さえておきたいポイントを紹介します。
1 塾を活用するなら、できるだけ通いやすく、柔軟で手厚いサポートがある塾を選ぶ
送迎できない場合が多いと思うので、子どもが一人で通える塾、入退出のチェックがある塾が安心です。また、宿題チェックや自習室でのサポートなど、学習サポート体制が手厚い塾を選ぶのがおすすめです。オンライン併用の塾も共働きの家庭向きです。
■見送りできずともLINEで日々の何気ないやりとり
2 こまめなコミュニケーションをとる
親の仕事としてスケジュール管理・タスク管理がありますが、共働き家庭の場合、これをコミュニケーションの機会にしましょう。ある家庭では、塾に行くときに親が見送れないので、作り置きのおかずを用意して、子どもが自分で詰めていくのですが、出る前に写真に撮ってLINEで送らせていました。
そのときの「いってらっしゃい」「いってきまーす」という何気ないやりとりがとても大事だったといいます。スラックを使ってタスク管理をしていたというお父さんもいますが、大切なのは、励ましの一言です。
仕事の業務管理とは違います。思い通りにコントロールするのではなく、頑張っている子どもとの交流の機会と捉え、温かいメッセージを心がけましょう。
3 お金と時間の使い所を考える
時短のために、家に業務用のコピー機を買い、いつでも大量にコピーが取れる環境にした家庭もあります。過酷な受験生活をできるだけ健全に乗り切るために、お金を活用したのですね。
また、「学校説明会は時間が取られるけれど、行きたい学校を見るのはモチベーションを上げる一番の方法なので、仕事が忙しくても参加した」など、あえて時間をかける選択をする人もいます。
「サポートと仕事との両立の仕方は、家庭や子どもによっても全く違うので、どこまでやるか探りながら、家族で納得できるかたちを探すのがいいと思う」と言うのは、フルタイム勤務をしながら子どもをサポートし、麻布に進学させたFさん。大切なのはやはり、どんな受験にしていくのか、わが家の軸を決めて取り組むことです。
■「子どものやる気」を引き出す親の関わり方
やる気のない子どもがどうしたら自主的に勉強に取り組むか……。これは多くの親が知りたいことでしょう。最後に、子どものやる気を引き出す「親の関わり方」を紹介させてください。
子どもが勉強にやる気を持てないとき。まず親が考えたいのが、やる気が出ない理由です。やる気が出ない理由には、次のようなことが考えられます。
2 本当はやりたくないと思っている
3 課題とスキルのレベルがあっていない
4 自分で決めていないから意味を感じられない
思い当たることはあるでしょうか? 問題を解決するには、ファクト(事実)ベースで考えることが大切です。
1 エネルギーが消耗しているのが理由なら、身体を労ってあげましょう。
睡眠は取れているか、休息は取れているか。食欲はあるか。お子さんの様子をよく観察し、無理をしているようなら、生活を見直すのです。特に新しい環境に入った5月の連休明けや、夏の疲れが出やすい秋は体調を崩しがち。
調子が悪いときには、思い切って塾をお休みするのもありですね。「ここで塾を休んだら余計遅れてしまう」と心配されるかもしれませんが、脳は余白をとったほうが活性化します。
2 本当はやりたくないと思っている場合はどうでしょう。
やらなくちゃいけないとわかっていても、「本当はやりたくない」と思っていたら、身体が反応してやる気は起きません。そんなときに、いくら叱咤激励しても、決していい結果にはなりません。それどころか、言われれば言われるほど、やる気はなくなります。
子どもの様子がおかしいときには、その行動の奥にある気持ちを考えてみることが大切です。自分に置き換えてみたら、少しはわかるかもしれませんね。
■最もやる気が出るのは、勉強が好きだから、楽しいから
3 課題とスキルのレベルがあっていない。これは、案外見過ごしがちなやる気が起きない理由の一つです。
与えられた課題が難しすぎても、反対にやさしすぎても、やる気は起きません。一番よいのは、ちょっと頑張ったらできそうと思えるレベルの課題に取り組んでいるときです。
サッカーのコーチで、やる気の研究をしている方は、「今できることの10%上を目標にするといい」といっていました。ちょっと頑張ればできそうと思えて、実際にすぐに達成できる目標のほうが、やる気もキープできるそうです。
勉強も同じです。今お子さんがこなしている課題が、難しすぎるかやさしすぎる、いずれかに当てはまるようだったら、課題の見直しを塾に相談してみましょう。
4 自分で決めていないから意味を感じられないは、結構本質的な話です。
お父さんやお母さんからいわれて仕方なくとか、やらないと叱られるからやっている。そんなお子さんは多いのではないでしょうか? これを心理学では、外発的動機といいます。
自分の外側に理由があるので、途中でちょっと大変なことが起きると、途端に自信をなくしたり、おもしろくなくなってやめてしまったりします。
子どもがこの状況に陥ってしまった場合は、受験軸を見直したり、受験そのものを検討し直す必要もあるかもしれませんね。
反対に最もやる気が出るのは、勉強が好きだから、楽しいから。やりたいと思っているから。自分も必要だと思っているから。これを内発的動機といいます。ここまでくれば、一人で勉強を続けられます。でも、これを引き出すのが難しいのもよくわかります。
■子どもが塾の宿題をやったとウソをついたときの声かけ
子どもの「やりたい」という気持ちを引き出す親の関わり方として、私がおすすめするのが、次のコミュニケーションです。これは、内発的・外発的動機づけ理論の提唱者でもある、心理学者のエドワード・L・デシが考案したものです。
2 合理的な理由を説明(なぜそれが大切かを話す)
3 圧力を最小限にする関わり(一部でも選択できるようにする)
まず大切なのは、やる気にならない子どもの気持ちを認めてあげることです。そして、お子さんの気持ちを理解しようと意識して、話を聞いてみてください。
たとえば、子どもが塾の宿題をやったとウソをついていたとします。この場合、まずは「宿題やっていないのに、やったって言っちゃったんだね」と事実をそのまま受け止めてください。そのうえで、「そうしちゃったのはなぜかな?」と聞いてみてはどうでしょうか。
子どもも本当は宿題をやらなくちゃいけないなと思っている。お母さんに怒られるかなと思っている。そんなときに寄り添う言葉をかけられたら、それだけで、受け入れてもらったと感じてうれしくなるでしょう。
焦らず子どもの言葉を繰り返していくと、子どもの心のコップが満たされます。そうしたら、やる気にならない本当の理由や気持ちを話してくれるかもしれません。まずしっかりとお子さんの状況を把握することです。
状況を把握したうえで、説教ではなく、対話をしましょう。
勉強の進め方や受験への向かい方も、親と子どもで違います。親のやり方を押しつけず、最後は子ども自身が決められるようにできるといいですね。いつどのように勉強するのか、子ども自身が考えられるように、選択肢を提案してみます。
受験勉強の期間中、起きることに対してジャッジをせず、何度でもニュートラルに向き合いましょう。
そんな日々の積み重ねが、最終的にウェルビーイングな受験につながる王道なのです。
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教育ジャーナリスト
マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを活かして取材・編集を行う、編集企画会社を発足、代表に。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。その後、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。ポジティブ心理学コンサルタントも取得し、最近は子育て教育探究ナビゲーターとして、親に寄り添った発信をしている。最新刊『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの探究力の育て方』(青春出版社)他著書多数。
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(教育ジャーナリスト 中曽根 陽子)
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