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新しいトイレットペーパーをセットするのは自分ばかり…夫婦が互いに「自分が損だ」と思う件の"新事実"

プレジデントオンライン / 2024年9月11日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/rai

夫婦関係をよりよくするにはどんな心がけが必要か。心理学者の内藤誼人さんは「夫も妻も家事は『自分のほうがたくさんやらされている』と思っています。自分ばかりがソンな役回りをしていると感じやすいものなのです」という――。

※本稿は、内藤誼人『世界最先端の研究が教える新事実 対人心理学BEST100』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■結婚指輪は安くしたほうがいい

読者のみなさんはご存じないかもしれませんが、かつて「ダイヤモンドは永遠の輝き」というキャッチコピーがありました。少し前までほとんどの人が、結婚をするときにダイヤモンド付きの婚約指輪を選んでいました。「ダイヤモンドの輝きのように、結婚生活も永遠に続きますように」という願いを込めていたわけです。

ダイヤモンドはとても高価です。私が若い頃には「婚約指輪の値段は月収3カ月分」などとも言われていました。月に30万円を稼ぐ人なら、だいたい90万円くらいの指輪を選んでいたのではないかと思います。けれどもダイヤモンドにお金をかけるのはあまりよくない、というデータがあります。

米国ジョージア州にあるエモリー大学のアンドリュー・フランシス=タンは、3000人以上の既婚者にアンケートを配布して、結婚式にかけた費用と結婚生活についての調査をしました。同性婚や13歳未満、60歳以上で結婚した人を除いて分析したところ、結婚指輪や結婚式にお金を「かけなかった」人ほど、結婚生活は長く続いていることがわかったのです。

最近ではあまりお金をかけない少人数の結婚式や家族だけの結婚式というスタイルも流行っているそうです。心理学的には、お金をかけない結婚式は正解といえるでしょう。

この結果から、「ダイヤモンドは永遠の輝き」というキャッチコピーは、まったくのウソであるということがわかります。お金をかければ結婚生活もうまくいくのかというと、まるでそんなことはなかったのです。

では、なぜ結婚指輪や結婚式にお金をかけるのがよくないのでしょうか。その理由は、結婚に対して理想と期待ばかりが大きく膨らんでしまうから。「結婚したら、きっと素晴らしい生活が待っている!」という期待ばかりが膨れ上がってしまうのです。

ところが実際の結婚生活は、テレビドラマや映画とは違います。素晴らしいことばかりではありません。失望することもたくさんあります。むしろ、結婚前の期待が大きければ大きいほど、失望も大きくなります。「こんなはずじゃなかった……」となってしまうのです。

その点、結婚指輪や結婚式にあまりお金をかけない人は、現実的だといえます。期待も小さいので失望することもなく、普段通りに結婚生活を送ることができるのです。

読者のみなさんが男性で、結婚を考えている女性から「指輪は絶対にダイヤ付きだからね!」と求められたとしましょう。そのようなときは、結婚指輪にお金をかけると、離婚の確率が高まってしまうことを教えてあげてください。

■熟年夫婦ほどお互いのことがわからない

夫婦が長く連れ添っていれば、それだけお互いのことを知っているかのように思ってしまうものです。けれどもそれは単なる思い込みにすぎません。たとえ30年連れ添ったとしてもやっぱり相手のことはよくわかっていない、と思っていたほうがいいでしょう。

バーゼル大学(スイス最古の大学です)のベンジャミン・シーベーンは、連れ添って平均2年1カ月しか経たない38組の若い夫婦と、連れ添って平均40年11カ月という20組の熟年夫婦に集まってもらって、食べ物の好み、映画の好み、家具の趣味など、118項目について調べました。自分がどれだけ好きかを答えるだけではなく、パートナーが同じものをどれくらい好きだと思うかにも答えてもらったのです。シーベーンはそれをお互いにやってもらうことで、パートナーの好き嫌いについての推測がどれくらい当たっているのかを調べてみました。

すると、若い夫婦での正解率は42.2%でした。半分以上は外れてしまいましたが、それでもまずまずの正解率だといえるでしょう。では、熟年夫婦ではどうだったのでしょう。さすがに40年以上も連れ添った夫婦なのだから、相手がどんなものを好きなのかくらいは朝飯前に当てることができたのでしょうか。

いえいえ、そういうことにはなりませんでした。熟年夫婦での正解率は、若い夫婦の正解率を下回る36.5%だったのです。ただ単に長く連れ添っているからといって、相手の好みまで完全にわかるのかというと、そんなことはありません。

妻は妻で、「うちの夫はすき焼きが大好物」と思っていても、夫は夫で、「すき焼きは嫌いではないが、そんなに好きでもない」と感じている。そんなズレはよくあることなのです。

すき焼き
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

面白いことに、シーベーンは、それぞれの好き嫌いの推測をしてもらうときに、「確信度」についても調べました。「自分の予想がどれくらい当たっていると思うか?」を尋ねたわけですが、熟年夫婦ほど「私の予想は当たっているはず」と答えることがわかりました。

「私は妻のことなら何でもわかる」
「私は夫のことなら自分のこと以上によく知っている」

そう思う熟年の夫婦がいるとしたら、単なる思い込みかもしれません。もちろん、それでも何十年も連れ添っていられるわけですし、本人たちが幸せだと感じられるのなら何も問題はないのですが。

■あなたは家事をどれくらいしていますか?

私たちは、自分がやっていることはよく覚えています。何しろ、自分自身がやっていることなのですから。逆に他人がやっていることは、あまりよく覚えていません。

内藤誼人『世界最先端の研究が教える新事実 対人心理学BEST100』(総合法令出版)
内藤誼人『世界最先端の研究が教える新事実 対人心理学BEST100』(総合法令出版)

夫婦に対して、「あなたは家事全体のうち、何%くらいを自分がやっていると思いますか?」と質問すると、夫も妻も「自分がたくさんやっている」と答えるので、その数値の合計は100%を超えてしまうことが知られています。

私たちは、自分がたくさんやらされていると感じやすいのです。カナダにあるウォータールー大学のマイケル・ロスは、何十組かの夫婦に、20の活動リストを見せました。リストには、「朝食を作る」「皿を洗う」「家の掃除をする」「買い物をする」「子どもの面倒を見る」などと書かれていました。それぞれのリスト項目に対し、どれくらい自分がやっていると思うか、またパートナーはどれくらいやってくれていると思うかを推測させたのです。

その結果、20のうち16の活動で、「自分のほうがたくさんやっている」と答えていることがわかりました。80%の活動で、自分がやっていることを多く見積もっているということです。

この理由について、ロスは「自分がやっていることはすぐに頭に思い浮かぶからであろう」と解釈しています。自分がやった事例についてはすぐに頭に思い浮かぶので、それだけたくさん自分がやっているのだと考えやすいのです。そして相手がやった事例はそんなに頭に思い浮かばないので、「自分ばかりがやっている」と感じてしまうのです。

私が自宅のトイレを使おうとすると、なぜかトイレットペーパーがなくなっていることが多いのです。そのため、私ばかりが、芯を外して新しいトイレットペーパーをセットしているような気がしていました。

「気がしていた」というのは、妻も私とまったく同じようなことを思っていたからです。私が何気なく、「トイレットペーパーの交換は、なんだか俺ばかりがやっているような気がするな」と口にしたところ、「えっ、絶対に私のほうが多いと思うけど」という返事が返ってきたのです。

使い切ったトイレットペーパーがセットされたホルダー
写真=iStock.com/Daria Nipot
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Daria Nipot

ようするに、お互いに「自分のほうがたくさんやらされている」と感じていたのです。私たちは、自分ばかりがソンな役回りをしていると感じやすいものですが、それはまったくの誤解に過ぎません。現実には、他の人もみなさんと同じようなことをしてくれているわけで、

自分では気がつかないだけです。自分ばかりが一方的にソンをしている、ということは通常ありません。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

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(心理学者 内藤 誼人)

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