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「静かにしなさい‼」と叱るより効果的…「わが家の暴れん坊」を上手になだめる"デキる親"の「最高の返し」

プレジデントオンライン / 2024年9月13日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

親が子供を叱るときには、どのように接すれば良いのか。『子どもを否定しない習慣』(フォレスト出版)を書いた林健太郎さんは「感情を爆発させて叱ることは絶対にダメだ。一度怒りをこらえて、子供の話を『聞く』ことから始めたほうがいい」という――。(第3回)

■「感情的に怒る」のは絶対NG

子どもとのコミュニケーションにおいて、「叱る」ことは決して悪いことではありません。しかし、「やってはいけない叱り方」があります。大前提として一番いけないのは、感情的になって感情をぶつけるように叱ること。

本書の第1章でも触れた通り、自分のネガティブな感情を爆発させて、子どもに向けて、それを発散するために叱ることはNGです。

ビジネスの世界でも、「叱る」「注意する」はOKでも、「感情的に怒る」はNGとされています。欧米では、感情をコントロールできない人は人として未成熟で、管理職になるのは不適切と認識されます。

感情を害したときには、誰でも冷静な判断ができなくなります。

とはいえ、感情コントロールを完全に行うことは難しいのも事実です。だからこそアンガーマネジメントなどの考え方がありますし、感情のコントロールの本があったりしますね。覚えておいてほしいのがこの言葉。

子どもに対して自分の感情にまかせて言葉を振りかざさない。

たとえば、あなたの仕事や対人関係で大問題が発生し、リビングでそのことについて悩んでいるようなとき。突然、そのすぐ横で、幼い兄弟が喧嘩を始めたとしたら……。

兄弟喧嘩なんて、普段なら、そんなにきつく叱るほどのものではありません。しかし、自分が別件でイライラしていると、つい「くだらないことで喧嘩してないで、静かにしなさい!」と怒鳴ってしまう……。

これは明らかに、自分のネガティブな感情を子どもにぶつけています。言われた子どもたちは、その剣幕に驚いて、泣き出してしまうかもしれませんね。

■“怒りそう”になったらどうしたら良いのか

正確にいえば、これは「叱る」ではなく、単に「怒って」いるだけ。いわば怒りモードです。こうした「ただの怒りモード」による否定は、本書の第1章でお伝えしたように、子どもとの関係性にヒビを入れ、萎縮させてしまうことになります。

それが蓄積されると、親の顔色をうかがったり、親の機嫌を取ろうとしたりして、本来持っている心が開かなくなってしまう可能性すらあります。ここは意識的に、自分の感情の爆発を抑えてください。

ときどき、騒いでいる子どもより、はるかに大声で怒っている親御さん、いますよね。子どもに対して「意図的な『叱る』はOK、感情的に『怒る』はNG」なのです。

意図的な「叱る」はいいけれど、感情的に「怒る」のはアウト。理屈ではわかっていても、実行するのはなかなか難しいでしょう。

私の著書で繰り返し書いているのが、感情がネガティブな方向に振れる出来事に遭遇したときは、「瞬時に反応しない」ということです。

たとえば、子どもが壁に油性ペンで落書きをしているのを発見したときなど、一瞬で感情が爆発して声を出してしまいそうになりますよね。そんなときでも、3秒くらい感情をフリーズさせてひと呼吸おくのです。

そうやってひと呼吸おくことで、なんとか瞬時に怒りが爆発するのを防ぐことができます。

■怒りをこらえたら子供の話を「聞く」

では、それができたら次は何をするのがよいか。

次は、「子どもの話をフラットに聞く」ということを習慣にしましょう。これはビジネスリーダーでいえば、「まず、部下の話を聞く」という傾聴という技術にあたります。

営業の世界でも、昔の営業担当者はお客様よりも先に商品の性能などについて説明しました。しかし今は、まず、「お客様の話を聞く(傾聴する)ことで、ニーズを知ることが先」というのが常識になっています。

面白いのは、売れる営業マネジャーが、お客様に対しては傾聴ができるのに、なぜか部下に対しては話を聞かず、自分が先にしゃべってしまう方が多いことです。

どうも、自分のほうが仕事を知っているという自覚からなのか、部下を育てたいという思いが強いのか、「聞くこと」がおろそかになるようなのです。

本章の最初で、コミュニケーションは「伝える」「聞く」「話し合う」の3つに大別できるとお伝えしました。理想のコミュニケーションは、次のような順番となります。

「聞く」→「話し合う」→「伝える」
あるいは
「聞く」→「伝える」→「話し合う」

どちらにしても、最初は「聞く」がスタートです。怒りを爆発させるのを、グッとこらえたら、まずは「聞く」から始める。それを意識するよう、がんばってみてください。

母と娘
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

■“うまく叱る”には準備が必要なワケ

スポーツでもなんでもそうですが、準備なしに行動を起こすと失敗する確率が高いもの。ですから、瞬時に怒りを爆発させたいわけではなく、冷静に「叱る」場合であっても、うまく叱るためには準備をしたいところです。

会社の上司と部下の関係なら、就業時間が終われば、とりあえず「また明日」とリセットすることができます。

しかし、親子はそうはいきません。意図しない叱り方をしてしまったとしても、同じ屋根の下での時間が続きます。

そう考えると、「叱る」ときは、叱ることによって、「最終的にどういう会話にたどりつきたいか」「どんな関係性になっていきたいか」「子どものどんな行動にむすびつけたいか」などを想像してみることが大切です。

一度これらを考えてから会話をすると、伝え方や聞き方が大きく変わってきます。

そもそも、叱るときに、いきなりこちらが言いたいことをぶつけても、子ども側は、それを聞く準備ができていません。子どもに、聞く準備をさせて、伝えたいことを伝えるには、次の5ステップの手順を踏むとスムーズにいきます。

■子供をうまく叱るための5ステップ

▼ステップ1 許可を取る
「ちょっと今話したいことあるんだけど、いいかな?」
「ちょっと遊ぶのをやめて、座って聞いてくれる」

いきなり叱るのではなく、子どもの許可を取りましょう。その際、できれば笑顔で、子どもに不安を与えないように。子どもの機嫌がいいときや落ち着いて話しやすいタイミングで切り出すのもひとつのアイデア。

そして、ここで忘れがちなのが、子どもがあなたの「許可取り」に対して「うんわかった」などの「了承」の言葉を発するのを待って、お互いの合意形成をすること。

こういった会話の冒頭の部分をおろそかにすると、あとの会話で齟齬(そご)や誤解が生じやすいので、面倒くさいとは思いますが、ぜひ丁寧に進めてみてください。

▼ステップ2 テーマを伝え、安全な場づくりをする

許可が取れたら、何について話すのかを具体的に伝えると安心します。たとえば、

「今日は○○のことについて話したいんだよね」
「この前こんなことがあったよね。そのことなんだけど」

といった具合です。

▼ステップ3 感情を伝える
「実はちょっと怒っているんだよね」
「少し心配しているんだけど」

子どもが一番気にするのは親の機嫌です。親自身の気持ちを伝えましょう。「今はもう怒っていないけど」などと「今」の感情も併せて伝えれば、さらに安心感が増します。

▼ステップ4 意思を伝え、合意を取る

まずはあなたの意思を伝えます。

「そのことについて今日は話したいんだけど」
「一緒に解決したいんだけど」など。

そして、「いいかな?」「一緒に話せるかな?」とあらためて合意をとります。

▼ステップ5 相手から先に話させる
「じゃ、話そう。そのときのこと、思い出せる?」
「何が起きていたか、どんなことを考えていたか、教えてくれると嬉しいな」

そして、親はなるべく口を挟まず、子どもが話すのを待ちましょう。状況や事実関係だけでなく、どんな気持ちだったのか、どういう理由があったのかなど。

■“大人向けの会話手法”は子供にも使える

いかがですか? 実はこの5ステップは、私が普段やっているコーチングでビジネスリーダーの方たちに、「部下にフィードバックを伝えるときの手順」としてお伝えしているものです。

慣れてしまえば簡単な手順なのですが、できていない方が多いものです。あなたは今、「えっ? 大人向けの会話の手法が、子どもとの会話に生かせるの?」と疑問に思ったかもしれません。

大丈夫。私自身が子どもとの会話にこの5ステップを取り入れてみて、効果を発揮することを実証済みです。

使ってみれば、「叱る」というハードルの高い会話が、とてもスムーズに進むようになりますので、ぜひ、使ってみてください。

なお、この5ステップは、叱りたいことがあったとき、直後に使ってもいいですし、時間が経ってから使ってもOKです。

■「だめ」「しなさい」に代わる有効なテクニックとは

危険回避とまではいかなくても、言葉で子どもの行動を封じるときがありますよね。

たとえば、子どもが家でモノを投げようとしたときに、「投げちゃだめ!」と注意したり、食事中に好き嫌いから食べないものがあったときには、「ちゃんと食べなさい!」と命令口調で言ったりするような状況です。

そんなときに有効なテクニックが、「一度、承認を挟む」ことです。

たとえば、家の中で何かモノを投げようとしたとき「それ、投げちゃだめ!」と言うのではなく、「あっ、それ、投げるんだネ」と言ってみる。「ちゃんと食べなさい!」と責めるのではなく、「それ、食べないんだネ」と優しく言ってみるのです。

そう言われた子どもは、「今、自分は投げようとしている」「今、自分は食べないという選択をしている」と、自分の行動を認識します。

子どもは反射的に行動をし、「今、自分が何をしているか」を的確に認識できない瞬間があるので、「今何をしようとしているのか」を認識させるだけで、自分の行動を再考させることができます。

■子供の行動を「承認」したほうがいい理由

親に見てもらいたくておかしなことをやり出す子どもに対しても、「親がその行動を認識してあげること」は、それだけで子どもを満足させる効果があります。たとえば、子どもが寒い日に薄着で出かけようとしたとき。

「コートを着て行きなさい!」
「着て行かない!」
「夜は寒くなるから着ていきなさい!」
「寒くないから大丈夫!」
「いいから着ていきなさい!」
「絶対イヤだ!」

などという会話になることありませんか。それをこんな言い方に変えるのです。

「今日はその格好で出かけるんだネ。コートは着ていかない感じ?」
「うん。これで行きたい」
「そうか、それで行きたいんだネ(承認)。どうして?」
「だって学校に行くとコートが邪魔だから」
「夜は寒くなりそうだけど、塾の帰りはその格好で大丈夫そう?」
「寒くなるの?」
「夜は冷えて風が冷たいって天気予報で言っていたよ」
「じゃあ、コートを着て行って、途中で暑くなったら脱ぐことにする」

このようにいつもうまくいくとは限りませんが、頭ごなしに命令するより、一度承認して会話を進めると、子どもが冷静になって自分で判断するきっかけになります。

娘がコートを着るのを手伝う母
写真=iStock.com/JackF
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JackF

承認の言葉を使うときのコツは、きつい言い回しにならないように注意すること。「それ、食べないんだね」の最後の「ね」を心の中でカタカナにして、「それ食べないんだネ」と語りかけるつもりで、優しく言うように心がけてみてください。

少し専門的な話にはなりますが、こういった否定しない会話のつくり方を子どもが学ぶことで、親の働きかけに対して「いる」「いらない」といった選択を受動的にするようなコミュニケーションの方法を脱却することができます。

そして、親と子が対等な立場からコミュニケーションするような新しいコミュニケーション手法を子どもが体得する貴重な機会を提供することができます。

■子供の対人関係にも良い影響がある

これは、最近のリーダーシップ論の中で推奨されている「共創型」のリーダーシップの考え方と同じです。

上司が部下を率いるというスタイルではなく、上司も部下も対等な立場から忌憚(きたん)なく意見を伝え合い、チーム全体のメリットとなる行動をそれぞれが決めて行う、というやり方のことを指しています。

そして、そこにはお互いを承認し合うという文化があるのです。親が率先して、こういった承認をともなった会話を実践することで、子どもは承認を自分の会話の中にも取り入れ始めます。

子どもがこういった承認をともなった会話を覚えると、友だちの言葉を積極的に承認するようなコミュニケーションが生まれ、会話のやり取りがスムーズになるといったメリットがあります。

林健太郎『子どもを否定しない習慣』(フォレスト出版)
林健太郎『子どもを否定しない習慣』(フォレスト出版)

その結果、学校で友だちから、「○○ちゃんと話していると、すごく楽しい」とポジティブなフィードバックを受けやすくなりますし、ある意味「人気者」になれるのではないかと思うのです。

そして、その会話の技術を活用することで成人してからも、友人に恵まれ、伴侶と緊密な関係をつくることができ、上司やお客様に可愛がられ、同僚や後輩から慕われる人になれるのだと思います。

つまり、「一度承認する」という会話のパターンを学ぶことは、子どもにとって一生の財産になるということ。相手を承認することには、関係性を大きく育てる力があると覚えておいてください。

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林 健太郎(はやし・けんたろう)
否定しない専門家/コーチ
合同会社ナンバーツー エグゼクティブ・コーチ。リーダー育成家。一般社団法人 国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。1973年、東京都生まれ。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、エグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを契機に、プロコーチを目指して海外修行に出る。帰国後、2010年にコーチとして独立。これまでに大手企業などで2万人以上のリーダーに指導してきた。否定しないコミュニケーション術をまとめた『否定しない習慣』(フォレスト出版)が14万部を超えるベストセラーになる。このほか『できる上司は会話が9割』『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』『できるリーダーになれる人は、どっち?』(いずれも三笠書房)、『いまを抜け出す「すごい問いかけ」』(青春出版社)など著書多数。

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(否定しない専門家/コーチ 林 健太郎)

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