「カフェイン過多は体に悪い」は大間違い…香りを嗅ぐだけで血管が若返る「コーヒー」の驚きの効果【2024上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2024年9月7日 9時15分
※本稿は、保坂隆、西崎知之『おだやかに80歳に向かうボケない食生活』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■「カフェインが多くて体によくない」コーヒーは過去の話
近年、“評価”が高まっているのがコーヒーです。
少し前までは「カフェインが多くて体によくない」とか「一日3杯以上は体に悪影響を及ぼす」などといわれて、ヘルシーなイメージはありませんでしたが、最近は一変。体にいいものだというデータが次々と発表されて、一躍ヘルシーな飲み物として脚光を浴びました。
そのため、今まで肩身の狭い思いをしてきたコーヒー好きは、上機嫌でコーヒーを周囲にすすめ、アメリカではその消費量も増えているといいます。
公表されたデータのなかには、「コーヒーを飲むとがんにかかりにくい」とか「肝機能を高める」「脂肪燃焼効果がある」など、現代人にうれしい内容も多く、今や「コーヒーは体に悪い」というのは過去の話になったようです。
日本でも、東京大学と国立がん研究センターが「コーヒーを飲む習慣のある人は心臓病や脳卒中などによる死亡リスクが低下する」という調査結果を発表して話題を呼びましたが、さらに「コーヒーを一日3~4杯飲むと、心臓病死の危険性が4割減る」という報告もあって、評価が一気に高まりました。
■コーヒーの香りを嗅ぐだけでも血管が若返る
また、コーヒーには優れた「血液サラサラ効果」があることもわかり、脳血管疾患や心筋梗塞を心配するシニアには朗報となりました。しかも、香りを嗅ぐだけでも血管の若返りに役立つというのですから、驚きです。
香りは、鼻から脳に入るとリラックス回路を活性化しますが、コーヒーの香り成分に多く含まれるピラジン酸には血小板が固まるのを抑制する作用があるため、脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクが抑えられるというわけです。
目覚めのコーヒー、食後のコーヒー、音楽を聴いたりテレビを見てすごす時間などの一杯のコーヒーで、しなやかで丈夫な血管が守られ、さまざまな病気が防げるのなら、こんなに楽で、ありがたい健康法はありません。
ぜひ、ゆっくりとコーヒーの味と香りを楽しんでみてください。
■活性酸素=悪玉説と呼ばれるようになったわけ
ここで、活性酸素についてもふれておきましょう。
活性酸素は体の細胞や組織をサビさせて、老化、免疫低下、機能低下を招きます。もちろん、美容の大敵でもあります。
健康に気を使う人が増え、また、健康に関する情報も伝わりやすい今日、活性酸素=悪玉説はいまや多くの人の知るところになったと思いますが、じつはこの活性酸素、もともとは「いいやつ」なのをご存じでしょうか。
体に細菌や異物などが侵入してきたときは、これらと勇敢に戦い、撃退し排除してくれる正義の味方でした。
ところが、環境が汚染され、オゾンホールから紫外線が大量に降り注いだり、添加物の摂取などで、活性酸素が大量増員されるようになりました。おまけにストレスの多い生活を続ける現代人は、過剰に活性酸素を作り出すようになったのです。
そしてとうとう、増えすぎた活性酸素は健康な細胞まで攻撃してダメージを与えるようになってしまいました。とくに、悪玉コレステロールと結びついて起こす動脈硬化は、心臓病や重大な病気の原因になります。
■毎食後に緑茶を飲んで脳をいつまでも若々しく
脳も当然のように、この活性酸素の脅威にさらされています。この悪者をやっつけて、細胞や組織、脳を守ってくれるのが、お茶に含まれる「茶カテキン」です。
お茶にも、日本茶、中国茶、紅茶などいろいろな種類がありますが、もともと同じツバキ科の常緑樹の葉や芽が原料です。もとの成分にそれほど差はないのですが、つくる過程の乾燥や発酵のやり方で、その成分や風味が変わってきます。
茶カテキンとは、お茶に含まれるタンニンの一種で、お茶の渋みのもとになるものです。渋みという言葉から思い起こすのは、やはりなんといっても、あの独特な渋みを持つ緑茶でしょう。
緑茶は蒸してから乾燥させるだけで、発酵の過程がありません。そのため、緑茶には発酵によるビタミンCの酸化もなく、タンニンも多く残っています。お茶のなかでも、緑茶がいちばん多くの茶カテキンを持っているのです。
実際、乾燥した緑茶には約12~15%の茶カテキンが含まれているといわれています。
脳をいつも元気で若々しく保つためには、毎食後、またひと息つくときなどにも、どんどん緑茶を飲むようにしてはいかがでしょうか。
■息抜きにはチョコレートがおすすめ
脳は意外に大食漢で、その栄養源はグリコーゲン、つまり糖分です。
そのことを知っていれば、極度の集中と思考で脳を酷使する将棋の対局で、棋士がケーキやお饅頭といった甘いものをパクパク食べている理由も理解できるでしょう。
では、私たちが息抜きタイムに食べる、脳に効くおやつは何がいいのでしょうか。
甘いものにもいろいろありますが、そのなかでもおすすめはチョコレートです。
なぜかというと……。
チョコレートには、糖分のほかに脂肪も含まれています。脂肪というと、ダイエットの大敵と敬遠されがちですが、この脂肪が疲れた脳にはいい仕事をしてくれるのです。
脂肪は、消化吸収に時間がかかるように働きます。そのため、チョコレートの糖分による血糖値はゆっくりと上がり、長い時間保たれます。
血糖値のゆっくりした上昇は体にもいいことはいうまでもありませんし、長時間の血糖値の維持は、それだけ長い間、脳を活性化させてくれるということを意味します。
ほかにもチョコレートには、脳をリラックスさせる成分が含まれているので、一石二鳥のおやつだといえます。
■よく噛むことは脳を活性化させること
もうひとつのおすすめはガムです。
ガムを噛むと、あごの筋肉が収縮し、それに伴って体全体の血流が活発になります。当然、脳へもさかんに新鮮な血液が送られ、活性化するのです。
この噛むという行為こそが人類の脳を急速に進化させた要因だという説があるほどです。
もともと人間の体は、リズムのある運動で成り立っています。脈拍も呼吸もそうです。歩いたり、走ったりするのもリズムを伴った運動です。噛むという行為も、一定のリズムを伴った運動です。
このような本能的な運動は、脳の本能的な深いところに作用すると考えられます。実際、リズム運動をおこなうと、セロトニンという脳を活性化する脳内物質が多く分泌されることがわかっています。
また、よく噛むことで、パロチンという脳の老化を防ぐ物質も分泌されます。つまり、よく噛むと脳は活性化され、おまけに老化もスローペースという一挙両得の効果が得られるのです。
ガムだけでなく、食事もよく噛むようにすれば、脳はボケることなく、生き生きと若さを保ってくれるでしょう。
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精神科医
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際病院診療教育アドバイザー。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、2017年より現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術』『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』(大和書房)、『精神科医が教えるちょこっとずぼら老後のすすめ』(海竜社)など多数。
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医師、医学博士
1954年生まれ。神戸大学医学部卒業。神戸大、米国カリフォルニア大学アーバイン校と一貫して生体内情報伝達機構を専門に研究している。特に脂質シグナルと関連づけた新規の認知症治療薬、糖尿病治療薬、がん治療薬の開発に従事している。現在、上海中医薬大学附属日本校、ベトナム国家大学ハノイ校の客員教授を務め、後進の研究指導に当たるとともに新しい研究分野にも挑戦している。著書に『認知症はもう怖くない』『私は「認知症」を死語にしたい』『脳の非凡なる現象』(以上、三五館)、『ボケるボケないは「この習慣」で決まる』(廣済堂出版)がある。共著に『あと20年! おだやかに元気に80歳に向かう方法』(明日香出版社)がある。
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(精神科医 保坂 隆、医師、医学博士 西崎 知之)
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