男性の孤独死は「60代男性」がもっとも多い…「おひとりさま」の老後を暗転させる"6つの危険因子"
プレジデントオンライン / 2024年9月11日 9時15分
■60代男性の孤独死が突出して多い
高齢者のおひとりさまは、家族と暮らす人に比べて日常生活を送るうえで気をつけなければならないことが多くなります。
なにより、気をつけなければならないのが「孤立化」です。おひとりさまは、自らが積極的に働きかけないと、外部とのつながりがなくなってしまいます。
孤独になると健康状態が悪くなることも報告されています。『高齢社会白書』(令和5年版)によると、社会活動に参加した人は、参加したことがない人に比べて健康状態が良い割合が高いとされています。そして、孤立化は、最終的に「孤独死」につながります。
孤独死した人の死亡年齢の構成比を見ると、男性の30.6%が60代、22.5%が70代、16.9%が50代と、60代が最多です。一方、女性は22.5%が70代、19.9%が60代、16.8%が80代以上となっています(図表1)。
■孤独の健康リスクはタバコよりも大きい
危険① 孤独死
高齢者のおひとりさまにとっての懸念事項には、「孤独死」「孤立化」が挙げられます。孤独死・孤立化を防ぐために、見守りサービスなどのさまざまなサービスもありますが、近所に友人・知人をつくることでも解決できます。
そのためには、積極的に社会参加する姿勢が必要です。高齢者向けの趣味や学びのサークルや市民講座は、多くの自治体や地域で実施されています。そうした行動が苦手な人は地域包括支援センターなどに相談するといいでしょう。相談する相手がいることも、孤独死・孤立化を防ぐことになります。
話す機会をつくることは、気持ちも楽になるでしょうし、認知症予防にもつながります。
■高齢者の単身世帯は月3万円以上の赤字
危険② 貧困
総務省の調査では、65歳以上の単身世帯でかかる1カの生活費は平均14万5430円ですが、収入は平均11万4663円です。つまり、毎月3万円以上も不足しているのです。
生活が苦しくなれば、外出を控えるようになります。そうすると人と接触する機会も減り、孤立化につながる悪循環を引き起こします。
生活費の不足分を補充するためには、健康を維持して、シルバー人材センターやハローワークに登録して、働き続けましょう。仕事をすれば社会との接点も生まれ、孤立化の解消もできるので一石二鳥です。働くことができない状況で生活に困窮したときには、迷わず生活保護の受給を検討しましょう。
危険③ 犯罪
いわゆる「オレオレ詐欺」や架空請求に還付金詐欺。あるいは、不当に高額な商品を買わされたり、必要もない家屋の修理をさせられたりといった高齢者の悪徳商法被害のニュースが絶えません。
このような犯罪は、高齢者の孤独感につけ込むような手口が多いので、特におひとりさまは気をつける必要があります。
被害者の多くには、「だまされない自信があった」「自分には関係がないと思っていた」といった思い込みがあります。自分は例外だと決して思わずに、常に危機意識を持ちましょう。そして、「変だな」と思ったらすぐに警察や消費者センターなどに連絡しましょう。
■認知症になるのは「特別」なことではない
危険④ 認知症
厚生労働省は、2025年には認知症を患う人の数が700万人を超えるとの推計値を発表しています。これは、65歳以上の5人に1人が認知症になるという計算です。さらに、85歳以上では55%以上の人が認知症になるとも言われています。
このように、認知症は誰でも可能性があり、避けるのは難しいものです。ただし、近年、認知症治療に効果が期待できる新薬が認められつつあり、早期発見できれば進行を遅らせることができるようです。
認知症の初期症状に最初に気づくのは本人だと言われています。病院を受診しづらい場合は、お近くの地域包括支援センターに相談しましょう。
■うつは「治る病気」、一人で抱え込まないで
危険⑤ うつ
気分が落ち込んだり、眠れなくなったりするうつ。若い人だけでなく、最近は高齢者もなりやすくなっています。厚生労働省の調査によれば、うつを含む気分障害の約3割を65歳以上の高齢者が占めています。
高齢者の場合、病気やケガなどによって心身の機能が低下したことが、発症のきっかけとなることが多いとされています。
また、孤独感が強い人ほどうつになりやすいとされています。しかし、うつは適切に治療すれば「治る病気」とも言われています。「適度な運動」「社会とのつながり」「バランスのよい食事」を心がけ、ひとりで悩まずに、病院や身近な人に何でも相談するようにしましょう。
■何も対策していないと財産は国のものに
危険⑥ 相続
高齢者のおひとりさまは、自分が亡くなった後のことも生前に対策しておかなければなりません。そのうちのひとつが相続についてです。
おひとりさまということは身内がいないか、いたとしても疎遠になっている場合もあるでしょう。何の対策もしていないと、身寄りがない場合、財産は国のものとなります。身内がいる場合は、疎遠になっている相手に財産が渡ってしまいます。
そうならないために、誰に、どういった財産を渡すのかを生前に決めて、遺言書に記しておくことが大切です。
遺言書を作成して、遺言執行者を指定しておけば、希望通りに財産の相続ができます。
親族に頼れないおひとりさまは、老後、動きにくくなったときや、自分の死後の手続きを誰かに託したいところ。それを叶える3つの契約「①任意後見契約+見守り契約」「②財産管理委任契約」「③死後事務委任契約」をセットで結ぶことで、判断能力が低下していき、死を迎えるまでのすべての時期を元気なうちから網羅できます。
それぞれの契約が「いつ、何を助けてくれるのか」をご紹介します。
■意志疎通ができなくなった時のための備え
契約3点セット① 任意後見契約+見守り契約
認知症や精神疾患などで判断能力が低下すると、お金の管理ができなくなり、病院での治療が必要になったとしても自分で契約を結ぶことが難しくなるなど、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
そんなときに、助けてくれるのが「任意後見契約」です。後見してくれる人と元気なうちにこの契約を結ぶことにより、財産の管理や、介護の手配など、将来的にお願いしたいことを自由に決めることができます。
後見をお願いできるのは、弁護士や社会福祉士などの専門家や、友人など、基本的にどんな人でも問題ありません。任意後見人の仕事を監督する「任意後見監督人」も必ず付くので、後見人が財産を不正に利用することはできません。
■初期費用は5万円程度+月1万~13万円
契約する際は、頼む人と頼まれる人が相談して内容を決め、全国に約300カ所ある公証役場で公正証書を作成して契約します。その後、本人の判断能力が不十分になったら、本人か、後見を頼まれた人、親族が家庭裁判所へ任意後見監督人の申し立てをし、監督人が選ばれれば契約の効力が発生します。
そして、任意後見契約がいつ開始されるのか、そのタイミングを判断してくれるのが「見守り契約」です。将来後見人になる予定の人が定期的に訪問・面談をしてくれることで、判断能力の低下を確認し、任意後見契約にスムーズに移行できます。
カンタン手続きガイド
いつ? 誰が?
・判断能力があるうちに誰でも契約できる
いくら?
【公正証書を作成する手数料】4万円程度
【任意後見監督人選任の申し立て費用】1万円程度
【任意後見人への報酬】0~10万円/月
【任意後見監督人への報酬】1万~3万円/月
どうやって?
①後見人になってほしい人と一緒に契約内容を決定
②近隣の公証役場で契約を締結し、公正証書の作成
③(判断能力が低下したら)家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立て
④任意後見契約の効力発生
※任意後見契約と見守り契約はセットで結ぶことが多い
■自分のタイミングで依頼したい場合は…
契約3点セット② 財産管理委任契約
自分の望むタイミングで財産の管理を委任できる
任意後見契約の効力が発生するのは「判断能力が低下したとき」に限定されており、身体的な事由は認められていません。しかし、足腰に不安がある場合や、長期入院が必要になれば、預貯金の管理や生活に必要な手続きをすることは難しくなります。
そこで、自分が必要だと思ったタイミングで自由に財産管理をお願いできるのが「財産管理委任契約(任意代理契約とも呼ばれます)」です。
この契約は、預貯金の管理や公共料金・税金の支払いなど財産の管理を第三者に委任できるものです。また、病院や福祉サービスなどの利用手続きの代行や、日常生活におけるサポートも依頼でき、親族や友人に頼むこともできます。
■第三者によるチェック体制を整えておく
判断能力がある状態でも任意後見契約と同様のことを頼めるのが大きなメリットですが、不正が行われているかどうかをチェックする機関がないというデメリットがあります。そのため、契約を結ぶ際には、頼む人と頼まれる人以外の第三者がチェックできるような体制を整えておく必要があるでしょう。
最近では、自分で判断できるうちは財産管理委任契約を利用し、判断能力の低下が見られてからは任意後見契約に移行するというサポートの形が多くなっています。自分の心身の状態に合わせて必要な契約を検討しましょう。
カンタン手続きガイド
いつ? 誰が?
・判断能力があるうちに誰でも契約できる
いくら?
【親族や友人に頼む場合】相談して自由に決められる
【専門家に頼む場合】1万~5万円/月
どうやって?
①誰に頼むかを決めて、委任する内容を相談
②頼む人と頼まれる人の合意の下で自由に契約できるが、近隣の公証役場で公正証書にすることが多い
■想像よりも複雑な死後の手続きをお任せする
契約3点セット③ 死後事務委任契約
死後の手続きといえば遺言書を想像するかもしれませんが、遺言書で効力があるのは遺産分割の方法や指定などにとどまります。たとえ葬儀や死後の手続きなどに関する事項を記していても、それには法的な拘束力はありません。
そのため、遺体の引き取りや葬儀に関すること、役所での手続き、医療費の精算、公共サービスや賃貸物件の解約手続き、遺品の整理などは、遺言書だけでは対応できません。
仮に任意後見契約や財産管理委任契約を結んでいたとしても、これらの契約は当人が死亡した時点で効力は失われます。また葬儀会社の仕事は葬儀の執行だけで、納骨や身の回りの整理などはしてくれません。
そこで、相続人がいない高齢者のおひとりさまは「死後事務委任契約」の締結を検討してみるといいでしょう。これは、信頼できる人に、自分が死んだ後の諸々の事務手続きを頼んでおく契約です。
■周りの人や遠い親戚に迷惑をかけずにすむ
人が亡くなると、多くの手続きが発生します。死亡届を提出し、火葬許可証をもらい、実際に荼毘(だび)に付さなければいけません。それに伴い、葬儀や納骨、各所への連絡や精算など、やることは山積みです。
こうしたことを生前から信頼できる人に頼んでおけば、周りの人や遠縁の親族に迷惑をかけずにすみます。そして、死後の事務をお願いしたい人には自分が希望するお墓や葬儀の種類を伝えておくことも重要です。
カンタン手続きガイド
いつ? 誰が?
・判断能力があるうちに誰でも契約できる
いくら?
【専門家に頼む場合】公正証書を作成する手数料や、葬儀・納骨の手続きの報酬を含めて50万円~。葬儀やお墓の費用は別途必要
どうやって?
①誰に頼むかを決めて、委任する内容を相談
②頼む人と頼まれる人の合意のもとで自由に契約できるが、近隣の公証役場で公正証書にすることが多い
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相続実務士
夢相続代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。出版社勤務を経て、1987年に独立。これまで1万4600件以上の相続相談に対処してきた。著書に『いちばんわかりやすい 相続・贈与の本 '19~'20年版』(成美堂出版)、監修に『おひとりさま[老後生活]安心便利帳 2025年版』(扶桑社)など。
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(相続実務士 曽根 恵子)
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