「本当のお金持ち」は日本のホテルに満足できない…海外の名門ホテルでは当たり前の"すごいサービス"
プレジデントオンライン / 2024年9月11日 16時15分
■欧米の常識は「サービスとは有料」
「海外と日本のホテルの違い」について、一言で表すのは非常に難しいことです。ここではサービスの視点から、その違いを見ていきましょう。
サービスとひとくちに言っても、人によって求めるものは違います。特に日本と欧米では文化が異なるため、サービスに求められるものやサービスそのものの捉え方も異なります。
欧米では、「サービスとは有料のものである」という考え方が一般的です。宿泊客は対価を支払っているのだからサービスを積極的に利用すべきだと考えるのです。フロントやコンシェルジュなどのホテリエも、ホテルがサービス料を請求するのだからそれに見合ったサービスを提供するべきだと考えています。
■日本の最高級ホテルは面白みがない
さらに、欧米にはチップ文化があります。サービス料を支払ってホテルに滞在し、多種多様なサービスを受ける中で、期待値を超えたサービスを受けた場合、「その対価を本人に直接支払う」という意味で、チップを支払うのが海外のホテル文化です。国によってはホテリエの給料がそれほど高く設定されていないことも一因かもしれません。
今回は、国内外も含め年間100泊以上するホテルジャーナリストの松澤壱子氏に海外と日本のホテルの違いをきいてみました。
「何よりもまず接客スタイルが違うと思います。やはり日本のラグジュアリーホテルのサービスはスクエアで面白みがない。海外のラグジュアリーホテルはゲストとの距離が絶妙で、天才的なホテリエがたくさんいて、そのサービスに骨抜きになり通い詰めるリピーターが多いのです」
■名門ホテルは「デート場所」も教えてくれる
「ラグジュアリーになればなるほど、そして名門と言われるホテルほど、その接客に感動します。特にロンドンは貴族たちが郊外に所有していたカントリーハウス、ロンドン市内のタウンハウスで仕えていた執事たちが支えてきたサービス文化というものが確立されている気がします。
例えば、『ザ・リッツ・ロンドン』に滞在したとき、世界一人気と言われるアフタヌーンティーの予約が取れなくて……とスタッフに言うと、『大丈夫、まかせてください!テーブルをひとつ持ってきます』と即座に席を作ってくれて、『え? 大丈夫かな?』と心配したほどです。彼らにとって最も悲しいこと、それはゲストを落胆させることなのです。
ザ・リッツ・ロンドンのヘッドコンシェルジュ、マイケル・デ・コサルは世界のホテル界で知られるベテランコンシェルジュですが、『一緒に写真を撮って』と頼むと、こっちにおいでと彼の仕事場のカウンター内に入れてくれたりするのです。フレンドリーだけれど、こよなく温かなリッツ式サービスで楽しませてくれる。
ちなみに彼は、『デートにぴったりの場所を教えて!』などというリクエストはお茶の子さいさい。どんなゲストのリクエストにも応える名人です」
■バスタブに約80キロ離れた場所の海水
「彼のエピソードの中で今までで一番びっくりしたのは、『客室のバスタブをブライトンの海水でいっぱいにしてほしい』というリクエストに応えたというもの。ブライトンはロンドンから約80キロ、列車で2時間ぐらいの距離。もちろんその要求に見事に応えたそうです。
そういうホテリエとゲストの人生を分かち合うような物語をたくさん持っているのが、海外のラグジュアリーホテルという気がします。
ちなみに、もうすぐ日本にもオープンする、ヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド『ウォルドーフ・アストリア』。その旗印ともいえる『ウォルドーフ・アストリアNY』に泊まったときのことです。
立地もマンハッタン・ミッドタウンのパーク・アヴェニュー沿いという絶好のロケーション。世界中のお金持ちがこの界隈に集結し、夢を叶えてきた場所です。映画や小説でも登場するラグジュアリーホテルの老舗ですが、こちらのレジデンスで過ごした1週間は忘れられない思い出です」
■本物のサービスを受けると、もう忘れられない
「24時間バトラーがつき、しかもその人たちがかつてジョン・F・ケネディーに仕えていたり、自身がスリランカの王族の息子だったりと、物腰からコーヒーを注ぐときの姿勢、話し方などすべてにおいて、マナーの『教科書』のような方々でした。
国内ではなかなかそのような人に出会えませんが、帝国ホテル、パレスには人生で忘れ得ない思い出を作ってくれる人間力に溢れたホテリエがいます。そんな方々がどんどん少なくなっていて、ほんとうに寂しい限りです。
また一番の問題は、『別にホテルにそこまでのサービスは求めない』というゲストも多いことです。彼らは本物のサービスを受けて感動したことがないから必要ないと思うのでしょう……」
いやはやホテルフリークの言葉には非常に説得力がありますね。
■日本人は「客室内」の充実を求めている
2019年にエクスペディアが実施したアンケートからは、非常に興味深いことがわかります。
世界最大級の総合旅行サイト・エクスペディアの日本版、エクスペディア・ジャパンが、「1年以内に飛行機に乗り、ホテルに宿泊した、世界23カ国の男女1万8237名」を対象に、ホテルに関する国際比較調査を実施しました。
「ホテルで重視するもの」についてきいたところ、日本人では「Wi‒Fi」「室内冷蔵庫」「無料アメニティ」がトップ3にランクインし、客室内の設備を重視する傾向にありました。
一方で、重視する割合が低かったものは「ベビーシッターサービス」「ジム」「プール」という回答になったそうです。「プール」は、世界23カ国の平均では64%の人が重視すると回答しており、日本人とは3倍近い差がつく結果となりました。
全体を通して、海外の人は「ホテル内の設備」を重視し、日本人はあまり重視しない傾向にあるようです。
■海外ではホテル内で家族と遊ぶことを重視
また「ホテル予約時に重視するもの」については、日本では「価格」「立地」「無料Wi‒Fi」がトップ3という結果になりました。これらの項目のうち、いずれかはすべての国でトップ3内にランクインしています。
一方で、世界では65%の人が重視すると回答した「屋外スペース・グラウンド」が日本では32%であったり、世界では66%の人が重視する「家族連れに優しい」という項目が日本では38%であったりしています。日本人はホテル内で家族と遊ぶことについて、あまり期待していないようです。
■「安全と快適プラスα」の対価
ホテルを利用する人にとって重要なことの1つは、安全で快適に宿泊することです。
ホテルはそのために、設備やサービスを整えて宿泊客を迎え入れています。フロントサービス、レストランサービス、コンシェルジュサービスなどもその中に含まれます。
サービス料というのは、ホテルにあるそれぞれの部門から提供されたサービス全体に対する代金だと考えて問題ありません。通常、サービス料は売り上げの10~15%程度で設定されています。意地悪な言い方をすれば、サービス料も売り上げの一部にすぎないことを考えると、定価を安く見せる方法とも言えます。
その一方でチップというのは、宿泊客によって特定のサービス、特定の人に支払われる対価です。サービス料が誰に払うというものではないのに対して、チップは特定の相手に渡すものです。また、サービス料というと消費税のように捉えがちですが、あくまで商品(サービス)の一部となるため課税対象になります。
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オータパブリケイションズ執行役員、月刊HOTERES編集長
大学院卒業後、星野リゾートにて旅館再生事業に従事。再生旅館の支配人を経験。リゾート運営会社にて15施設の総括責任者、飲食事業責任者、ベンチャー起業を経て、2017年オータパブリケイションズに入社。地方自治体やDMOでのホテル誘致委員や研修講師、民泊などを含む多様な宿泊施設の運営サポートに従事。
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(オータパブリケイションズ執行役員、月刊HOTERES編集長 林田 研二)
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