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伝統を重んじているので世界でも12軒しかない…日本国内で「一生に一度は泊まるべきホテル・旅館」5選

プレジデントオンライン / 2024年9月13日 16時15分

おもてなし部門1位は…… - 提供=越前あわら温泉 つるや

日本のホテルの「おもてなし」は海外客にも高く評価されている。月刊HOTERES編集長の林田研二さんは「これまで25年以上かけて国内外のホテルを利用してきたが、ブランド哲学部門1位を選ぶとしたら『ザ・ペニンシュラ東京』、おもてなし部門1位を選ぶとしたら『越前あわら温泉 つるや』だろう」という。著書『ホテルビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部を紹介する――。

■日本のホテルは1万円以下でも高品質

日本のホテルは、世界でもトップクラスのおもてなしと快適さで知られています。その理由はいくつかありますが、次の6つの点が特徴です。

林田研二『ホテルビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
林田研二『ホテルビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

特に①〜⑤は、日本ではバジェットホテルからラグジュアリーホテルまで、グレードにかかわらず高いレベルで提供されています。一方、外国のホテルは、グレードでサービス水準が大幅に変わります。

① 清潔感

日本のホテルはとても清潔で、隅々まで行き届いた清掃がされています。これは、「日本文化における清潔さへの強い意識」と、「おもてなしの精神」に基づいています。

② サービス

スタッフが親切で丁寧な対応であることも知られています。お客様のニーズを先読みし、細部まで行き届いたサービスを提供します。また、英語や中国語など、複数の言語を話せるスタッフも多くいます。

③ セキュリティ

日本のホテルは非常に安全で、セキュリティ対策がしっかりしています。夜間でも安心して館内を利用することができます。

④ 快適さ

日本のホテルでは、快適な滞在のために必要な設備が整っています。客室には、心地よいベッド、エアコン、Wi‒Fi、テレビなどが備えられています。また、多くのホテルには温泉や大浴場があり、旅の疲れを癒すことができます。

⑤ 食

和食を中心とした美味しい食事を楽しめるのも、日本のホテルの醍醐味です。朝食はビュッフェ形式で、さまざまな種類の料理が用意されています。また、ルームサービスを利用することも可能です。

⑥ ユニークな体験

ホテルによっては、茶道体験や着付け体験など、日本の文化を体験できるユニークなサービスを提供しているところもあります。

これらの理由から、日本のホテルは世界中の旅行客から高い評価を得ています。

■エレベーター内に花瓶を置く必要はないが…

日本の独特の接客文化「おもてなし」。「もてなす」とは、一般的に「相手を気遣って心配りする」という意味です。似たような言葉に英語の「Hospitality(ホスピタリティ)」がありますね。

日本のおもてなしを感じられる例としては、客室に置かれた折り紙や花などの細かなアメニティへのこだわりです。客室清掃が完了した際、テーブルなどに手書きの手紙を添えて置くホテルもあります。ベッドのシーツ交換のような「利用者が過ごしやすい空間づくり」とは若干異なるものの、ゲストに対する心遣いがなければできることではありません。

また、帝国ホテルに代表されるように、エレベーターに花瓶を設置することも「プラスαの気配り」と言えます。

■世界に12軒しかないペニンシュラホテル

私は21歳から25年以上かけて、国内外のホテルを利用しています。

ここでは、日本国内の独立系ホテルを中心に「一生に一度は泊まるべきホテル・旅館」と題して、5つの宿泊施設を厳選してご紹介させていただきます。なお、「独立系」の定義ですが、「日本国内、外資系に限らず国内に2施設以上同じブランドで展開していないもの」で、「開業から10年以上経過した施設」というくくりにしています。

おすすめする理由は、単に食事やサービスなどの評価ではなく、実際に取材や体験を通じた独自の目線からご紹介させていただきます。

【ブランド哲学部門】ザ・ペニンシュラ東京
2007年に皇居外苑と日比谷公園の向かいに開業した1棟建てホテル。客室はスイート47室を含む314室。米国の権威ある「フォーブストラベルガイド」のホテル部門では2016年より9年連続で選ばれている。
住所:東京都千代田区有楽町1-8-1
ザ・ペニンシュラ東京の外観
提供=ザ・ペニンシュラ東京
ザ・ペニンシュラ東京の外観 - 提供=ザ・ペニンシュラ東京

ペニンシュラは何よりも伝統を重んじています。だからこそ世界の主要都市にまだ12軒しか建ててないのです。

ペニンシュラを外資系のチェーンホテルのようにとらえる方もいますが、私の中では限りなく独立系ホテルに近い存在です。

■ことし採用の新卒基本給は初の30万円台

①そうそうプロパティを増やさない(オーナーの目の行き届く範囲内でビジネスを行うために1都市1軒、2024年4月現在12都市)

②最高の立地に建てる(東京のペニンシュラは20年以上探して三菱地所と契約に至った背景があります)

③可能な限り所有を目指す(経営や運営を自社で行うことで、伝統を継承しブランド力を高めることができます)

④ホテルが建つ土地の文化を取り入れる(外観や内観、プロダクトやプログラムにも反映)

という特徴があります。このように確固たる哲学があるのです。

そして、1928年に開業した香港の旗艦ホテル、ザ・ペニンシュラ香港から続く歴史と伝統を継承し、「家族のような温かみを感じるおもてなし=ペニンシュラ・ホスピタリティ」と呼ばれるサービスも、是非一度は経験してみてくださいね。

ペニンシュラ東京入口
提供=ザ・ペニンシュラ東京
約100年の歴史と伝統を感じるサービス - 提供=ザ・ペニンシュラ東京

ザ・ペニンシュラホテルズは、「ペニンシュラ・ホスピタリティ」を体現し続けるため、スタッフの幸せと働きがいを第一に考えた環境づくりとより良い人材の確保に注力しています。

その取り組みの一環として、2024年1月から全体的なベースアップを実施し、4月には新卒基本給を月額30万2100円(時間外手当、通勤手当別途)に引き上げました。新卒基本給の30万円台への引き上げは、ホテル業界初のチャレンジです。

■客から見えないところまで清潔を保っている

【クリーンネス部門】THE KUKUNA
旧・風のテラスKUKUNAが「心地よい開放感」と「癒されるホスピタリティ」をコンセプトに全館グランドリニューアルオープン。全65室。
住所:山梨県南都留郡富士河口湖町浅川70
THE KUKUNA外観
提供=THE KUKUNA
外観 - 提供=THE KUKUNA

ハワイアンリゾート風の建物とインテリアが特徴で、客室内もとても落ち着く雰囲気です。テラス付きで窓からは河口湖と富士山が。雄大な風景に気持ちがスッキリ癒されていきます。

THE KUKUNAからの眺め
提供=THE KUKUNA
富士山と河口湖を望む - 提供=THE KUKUNA

展望館最上階にある9階のグランドスパ「天空の湯」の露天風呂では、富士山と河口湖が目の前に広がる生涯忘れることができない絶景を体験できます。お湯につかった際に、浴槽の水面と河口湖の湖面が同じ高さになるように設計されているからです。これぞまさにオンリーワンの「ウォーターテラス」です。

富士山を眺められるウォーターテラス
提供=THE KUKUNA
富士山を眺められるウォーターテラス - 提供=THE KUKUNA

THE KUKUNAのすごいところは、館内の動線(スタッフの通路)や空調配管や大浴場の温度調節を行う機械室が今まで取材した中で一番整理整頓されており、大変きれいに保たれていることです。お客様から見えないところをいかに日ごろから気にかけていくか、清潔に保っていくか、サービス業では大変大事なポイントです。

以前、社長にバックヤードを案内していただいたことがありますが、どこもぴかぴかで整理整頓されていました。「いつもニコニコ」の秘密はここにあったのです。また、「社長から従業員、従業員から従業員」の感謝の言葉で壁が埋め尽くされ、大変感動したのを覚えています。

■世界遺産の島にある小規模な最高級ホテル

【運営の仕組み部門】sankara hotel&spa屋久島
全29室。樹齢数千年の屋久杉が魅力的な鹿児島県「屋久島」は、幻想的な苔むす森が広がる世界自然遺産の島。
住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町麦生字萩野上553
sankara hotel&spa屋久島の外観
提供=sankara hotel&spa屋久島
外観 - 提供=sankara hotel&spa屋久島

屋久島の森を散策できるコース、2000メートル級のユニークな景観を楽しめる山登り、ヤクザルやウミガメなど希少な野生動物に出会い、多数のアクティビティなど心躍る旅を体験できます。

屋久島には全29室からなるスモールラグジュアリーホテルのsankara hotel&spa屋久島(以下サンカラ)があります。こころあたたまる多くの感動ストーリーを顧客に提供し、絶大な人気を誇っていますが、そこにはユニークな「運営の仕組み」があるのです。

■マニュアルに縛られない、フレンドリーな接客

サンカラリゾートに滞在して感じたのは、「マニュアルを超えたサービス」です。サンカラリゾートの従業員は、ホテル業界の経験を問われることなく、やる気で採用し最低限のルールだけを決めてあとは自分で考えて仕事をしていくという自主性を重んじています。

サンカラではホテルの従業員と宿泊者という関係が、リピーターになるうちに親戚づきあいのようなフレンドリーな関係に変わっていきます。一般的なマニュアル対応ではなく、毎回同じバトラーが対応し、彼らがお客様のために趣向を凝らしてサービスをしているのです。

sankara hotel&spa屋久島からの眺め
提供=sankara hotel&spa屋久島
雄大な初日の出を望む - 提供=sankara hotel&spa屋久島

マニュアルとは「最低限その業務を行う上でおさえなければいけないポイント」のことであり、それを踏まえて従業員が自ら考えて行動しています。よって、「マニュアルに書いていないからできない、やらない」ということはサンカラスタイルではないのです。

サンカラ運営の大きな特徴は「sankara original seven initiatives」と呼ばれる独自の仕組みがあることです。世界に通用するホスピタリティサービスの提供を目指しています。

屋久島の美しい星空
提供=sankara hotel&spa屋久島
屋久島の美しい星空を堪能できる - 提供=sankara hotel&spa屋久島

本システムを取り入れているのは、マニュアルなどを作成することによりサービスのクオリティを均一化させ、できる限り「接遇業務(サンカラの場合はバトラー制)」にエネルギーを集中し、より高いレベルでのサービスを顧客に提供することを実現するためです。

すべての業務を可視化することで全スタッフが他部署への理解を持ち、ITツールを活用した「情報共有」により顧客情報を共有し「感動するサービス」を実現しています。

■名棟梁が手がけた歴史的建物でのおもてなし

【おもてなし部門】越前あわら温泉 つるや
北陸地方4県のうち、これまで唯一新幹線が通っていなかった福井県。2024年3月16日、ついに北陸新幹線が日本海に面する同県南部の港町、敦賀まで乗り入れを開始。あわら温泉のつるやは源泉を複数持つ歴史ある旅館。
住所:福井県あわら市温泉4-601
つるやの外観
提供=越前あわら温泉 つるや
外観 - 提供=越前あわら温泉 つるや

源泉温度も非常に高く価値あるかけ流しです。名棟梁・平田雅哉氏の設計施工による歴史的建物としても有名ですが「おもてなしの心ここに極める」という言葉のとおり、おもてなしは群を抜いています。

■ホテルでは味わえない「本物の日本旅館」の魅力

駐車場の「番頭さん」に始まり玄関で出迎えて下さる仲居さん、おかみさん、そして記帳時の接待、部屋への案内と説明……これこそ「本物の日本旅館」です。本物=「ゆとりを感じさせる上質感」を味わうことができます。これはホテルでは味わえない空気感です。

つるやの内装
提供=越前あわら温泉 つるや
本物の日本旅館を味わえる - 提供=越前あわら温泉 つるや

仲居さんの心のこもった夕食の接待と美味なるお料理。朝食もこのつるや独自の「温泉お粥」と地元の白飯、とても食がすすみます。ゆったりと時が流れる宿の時間はホテルとは全く異なるもので、やっぱり日本旅館は最高です。

「おもてなし」は表に現れない部分がたくさんあるからこそのものですね。経営者の小田社長、小田女将は和倉温泉加賀屋の伝統を引き継いでいます。「日本の湯宿」という言葉がぴったりです。派手な演出や押し付け気味のサービスが苦手な方には自信を持ってお勧めします。

つるやの大浴場
提供=越前あわら温泉 つるや
つるやの大浴場 - 提供=越前あわら温泉 つるや

■生ごみを一切出さない循環型エコ旅館

【エコシステム部門】北海道江差 旅庭 群来(くき)
全7部屋。7部屋のゲストだけに許された”特別な時間”が訪れる。
住所:北海道檜山郡江差町字姥神町1-5
群来の入り口
提供=北海道江差 旅庭 群来
入り口 - 提供=北海道江差 旅庭 群来

江差エリアの海に産卵期を迎えたニシンが、大群で浅瀬に押し寄せて産卵し、海を乳白色に染める現象のことを“群来”と言います。これが宿名の由来です。旅庭の石塀の向こうは日常から離れた異空間。ゲストの約7割は都心からのお客様です。

日本初の循環型エコ旅館といえば真っ先に思い出すのがこの旅館です。当館から出る生ゴミはすべて直営農場「拓美ファーム」で堆肥化し、有機農法の土づくりに活かしています。開業以来、生ゴミ収集、処理を行ったことはありません。施設の温泉を利用し、熱交換設備によって給油、暖房に温泉熱源を有効活用しています。建築は、北海道の有名建築家の中山真琴氏です。

群来の旅館内の様子
提供=北海道江差 旅庭 群来
建築家・中山真琴氏が手掛けている - 提供=北海道江差 旅庭 群来

創業者の棚田会長は65歳を過ぎて、多くの反対にあいながら私財をなげうってこのホテルをつくりました。「拓美ファーム」という開拓者精神にちなんで名づけられた自社農園でたくさんの羊や鶏たちに囲まれ、今日も明日もオリジナルの餌で飼育しています。「魂のこもった宿」の食事、サービスはゲストを圧倒します。

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林田 研二(はやしだ・けんじ)
オータパブリケイションズ執行役員、月刊HOTERES編集長
大学院卒業後、星野リゾートにて旅館再生事業に従事。再生旅館の支配人を経験。リゾート運営会社にて15施設の総括責任者、飲食事業責任者、ベンチャー起業を経て、2017年オータパブリケイションズに入社。地方自治体やDMOでのホテル誘致委員や研修講師、民泊などを含む多様な宿泊施設の運営サポートに従事。

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(オータパブリケイションズ執行役員、月刊HOTERES編集長 林田 研二)

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