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「とんでもない人が総理になる」と自民党内が大混乱…従来の総裁選ではありえない「決選投票に残る弱い3人」の名前

プレジデントオンライン / 2024年9月9日 8時15分

自民党本部に設置された党総裁選の横断幕=2024年9月2日午後、東京・永田町 - 写真=時事通信フォト

■前代未聞の「派閥なき総裁選」が始まる

9月12日に告示され、27日に投開票される自民党総裁選。

過去に例を見ない大乱立となり、選挙戦が始まる前から混戦状態となっている。

その中で、実は各候補者の戦い方もこれまでの自民党総裁選とはまったく違う形に変化している。

一体それはどういうものなのか。

総裁選に向けた動きを分析しながら、総理総裁が誰になるのか、その行方を展望していく。

「今回の自民党総裁選はほぼ人気投票だ。政局のコントロールが効かず、とんでもない人が総理大臣になる可能性がある」

総裁選に向けて慌ただしい動きを見せる永田町で自民党関係者はそう語った。

政局のコントロールが効かない理由は大きく2つある。

1つは自民党裏金問題を受けて、派閥の多くが解散したこと。

もう1つは、その影響もあって候補者が乱立する状況になっていることだ。

■「勝ち馬に乗る」従来の戦略が成り立たない

岸田文雄首相が立候補を模索している段階までは、後見人である麻生太郎副総裁が多数派工作のために茂木敏充幹事長や森山裕総務会長に働きかけるなど、旧来の派閥的な動きが残っていたが、退陣表明後は堰(せき)を切ったように推薦人集めが本格化。

本命候補がいない中で、「勝ち馬に乗る」という戦略が成り立たず、候補者が乱立する状況を生み出した。

従来ならば、誰を応援したか氏名が公開されてしまう推薦人になるのは、選挙戦に敗れた場合に冷や飯を食わされる恐れがあるため敬遠されることも多く、立候補に必要な20人の推薦人を集めるのは至難の業とも言われていた。

しかし、今回は自民党が裏金問題で未曽有の危機的状況に陥る中、党改革のためにさまざまな候補者が舌戦を繰り広げることを歓迎する節も出てきており、それによって推薦人集めのハードルが下がったことも、多くの人が手を挙げることを容易にしたと見られる。

「決着」と書かれたさわやかなブルーを背景に総裁選への立候補を表明する小泉進次郎氏
筆者撮影
「決着」と書かれたさわやかなブルーを背景に総裁選への立候補を表明する小泉進次郎氏 - 筆者撮影

■議員票だけでは大差をつけることがむずかしい

さて、そうした中ですでに小林鷹之氏、石破茂氏、河野太郎氏、林芳正氏、茂木敏充氏、小泉進次郎氏が記者会見で立候補を表明しており、9日には高市早苗氏、10日に加藤勝信氏、11日に上川陽子氏が相次いで出馬会見をする見通しだ。

これまで総裁選に立候補した最多人数が5人だったことを考えると、今回の9人はそれを大きく上回ることになるわけだが、そうした場合に選挙戦に大きく影響を与えるのが、国会議員票の固定票が非常に多くなるということだ。

今回の議員票は367票(1人1票)だが、候補者9人となると推薦人だけで180人を数え、出馬する候補者自身も含めると189票が固定票に。それだけで議員票の過半数を超えることとなる。

さらに、その票が9人の候補者に分散するわけなので、もちろん多少の差はつけども、なかなか大差はつかないと予想されている。

そうなると、候補者の行方を左右するのは党員票だ。

国会議事堂
写真=iStock.com/w-stock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/w-stock

■党内政局よりも党員に人気のある候補者が強い

これは自民党員110万人弱などによる投票結果をドント方式で割り振って、議員票と同じ367票に圧縮したものとなるが、その結果がダイレクトに第1回投票における1位、2位を決める可能性が高い。

これが、冒頭に今回の総裁選について、政局のコントロールが効かず、ほぼ人気投票となると評したゆえんだ。

なお、これは今までの自民党総裁選と比べてイレギュラーとなる。

例えば、2021年に行われた自民党総裁選では、党員票を河野氏が169票獲得して1位になったのに対し、岸田氏は110票にとどまったが、議員票では岸田氏が146票を得て、河野氏の86票を突き放して1位に。

さらに、決選投票は党員票ではなく都道府県連票47票となるため、河野氏が39票を得て圧倒したものの、岸田氏が議員票で大差をつけ、総理総裁となった。

【図表1】2021年自民党総裁選結果

このように、総裁選では議員票が1人1票と非常に大きな影響力を持つため、党員からの人気を獲得するよりも、党内政局を制した者が総裁選を制すると言われていた。

それが今回は真逆で、党内政局よりも党員からの人気のほうが重要となる、非常に珍しい事態となっているわけだ。

そうなると、自民党の各議員が気にしているのが報道各社による世論調査となる。

■決選投票に残る「3人」はこれだ

それぞれの世論調査では「次の自民党総裁にふさわしい人」を聞き、自民党支持層に限った結果も公表しているが、そのほとんどで1位~3位を小泉氏、石破氏、高市氏が独占している。

【図表2】各社世論調査結果「次の自民党総裁にふさわしい人」(敬称略)

この情勢のまま投開票日を迎えた場合、決選投票にはこの3人のうち、いずれか2人が残る可能性が高くなる。

奇しくもこの3人は、党内基盤が弱く、本来ならば決選投票に残る可能性が低い人物だ。

小泉氏はバックに菅義偉前首相がいるが、無派閥であり、主な基盤は有志の若手中堅だ。

石破氏は安倍晋三政権の途中から非主流派を歩み続け、公然と政権批判をするなどして「自民党内野党」とも揶揄されてきた。その中で石破派として運営していた水月会が、2021年にグループに格落ちしてしまったことも記憶に新しい。

そして、高市氏はもともと清和会に所属していたが、翌年に総裁選を控えた2011年に、当時の会長だった町村信孝氏を応援するのではなく、安倍氏を支援するために派閥を離脱。

一方で、派閥に残りながら安倍氏を応援した議員も多くいたため、和を乱したと受け止められて、清和会の一部とは今も溝があるような状況だ。

前回の総裁選は安倍氏の支援があり立候補を果たすことができたが、その安倍氏が凶弾に倒れた今回、推薦人を20人集められるかも心配されていた。

■「性格が悪い」と評判の茂木氏は「増税ゼロ」を訴え

その3人が優勢となるかもしれないこと自体、今回の総裁選の異質さを物語っているが、ほかの候補も決してあきらめたわけではない。

茂木敏充幹事長は4日の出馬表明記者会見で、国民負担が増える防衛増税や子育て支援金について「それぞれ1兆円を停止する」として「増税ゼロ」を掲げ、岸田政権の取り組みを全否定するような政策を掲げた。

さらに、裏金事件をめぐって問題となった、使途を明らかにしない党から議員に渡される政策活動費を廃止するという、自民党を根幹から揺るがすような発信もおこなった。

自民党関係者は「茂木氏は自民党内でも『性格が悪い』と揶揄され、世論調査における『次の総裁』としての支持率は低迷しているが、それだからこそ一発逆転を狙って、ハレーションを起こしてでもここまで踏み込んだ発信をしたのだろう。党員票が重要となる今回ならではの戦略だと言える」と分析した。

一方で、石破氏は富裕層への金融所得課税の強化を訴えたほか、小泉氏は選択的夫婦別姓について賛成を表明した。

それぞれの候補が国民の関心を引くために、注目度の高い政策についての舌戦が、これからも繰り広げられる可能性が高い。

■本命は「小泉進次郎氏」だが…

さて、そのような自民党総裁選だが、永田町では小泉進次郎氏を本命視する向きが強い。

第1回投票はこれまで分析した通り、党員票がモノを言うわけだが、決選投票では党員票が都道府県連票47票に代わる一方で議員票はそのままであるため、一気に議員間での支持が重要となる。

決選投票まで進んだ場合、石破氏は非主流派を歩み続けたことが仇となる可能性が高く、高市氏は党内に敵も多い。

それに比べて小泉氏は熱心な味方は多くないものの、敵が少なく、何より彼の刷新感を党の看板にすることで衆院選を乗り切ろうと考える国会議員が多いことから、そのまま総理総裁に上り詰めるのではないかと言われているわけだ。

■「選挙に勝つための総裁選び」でいいのか

小泉氏は閣僚経験が環境大臣しかなく、経験不足が指摘されているが、自民党関係者は「彼の後ろには菅氏がいる。菅氏がしっかりと小泉氏をコントロールすれば政権運営も乗り切ることができるだろう」と話す。

しかし、そのような単純な人気目当てで総理総裁が決まる事には不安も大きい。

菅氏がサポートするといっても、外交などでは小泉氏のみで対応しなければならない場面も多いだろう。

はたして誰が次の自民党総裁、そして日本のトップである総理大臣になるべきなのか。

単に次期衆院選を乗り切るということだけでなく、真に日本の国益を考えて、自民党員、党所属の国会議員は判断しなければならない。

そして国民も衆院選では、自民が看板の架け替えだけでなく、本当にこれからの日本を任せられる政党と言えるのか、総裁選の行方に注目しながら見極める必要があるだろう。

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宮原 健太(みやはら・けんた)
ジャーナリスト
1992年生まれ。2015年に東京大学を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡で事件記者をした後、政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしてニュースに関する配信もしている。取材過程に参加してもらうオンラインサロンのような新しい報道を実践している。

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(ジャーナリスト 宮原 健太)

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