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これを知っておくと「進撃」「フリーレン」がもっと楽しくなる…名作マンガの元ネタになっている神話とは

プレジデントオンライン / 2024年9月28日 10時15分

第27回東京国際映画祭/進撃の巨人(2014年10月23日、東京) - 写真=AFP/時事通信フォト

名作として親しまれているゲームや小説、マンガ、アニメ作品には神話や宗教の要素が多く使われている。『神話と宗教の解体神書 ファンタジーの元ネタ超解説』(監修沖田瑞穂、KADOKAWA)を書いたしんりゅうさんは「例えば、『進撃の巨人』や『葬送のフリーレン』には北欧神話の影響がみられる」という――。

■『進撃の巨人』と北欧神話の共通点

北欧神話で終始見られるのが、「神々vs.巨人」の構図です。この対立構造を軸にして北欧神話は始まり、そして終わりを迎えるんです。その始まりはこんなお話。

原初の世界には巨大な深淵ギンヌンガガプだけがありました。やがて、深淵の南側に灼熱の国ムスペルヘイムが、北側に極寒の国ニヴルヘイムが誕生します。するとあるとき、ニヴルヘイムから来た氷が深淵に転がり落ち、そこにムスペルヘイムから火花が飛んできます。氷と火が衝突して雫が滴ると、なんと原初の巨人「ユミル」が生まれました。不思議すぎる!

また、別の雫から牝牛アウズフムラが生まれ、巨人ユミルはこの牝牛の乳を飲んですくすくと育ちます。そんなあるとき、ユミルの脇汗から男女の巨人が生まれ、ユミルの両足から6つの頭を持つ怪物が生まれます。どういう生まれ方⁉ そして彼らは巨人族の祖となります。

一方、牝牛アウズフムラが塩の氷を舐めていると、その氷から原初の神「ブリ」が現れます。ブリの息子がとある女巨人と結婚し、「オーディン」「ヴィリ」「ヴェー」という3柱の神が誕生しました。そしてオーディンの子孫が北欧神話の主要な神々として活躍していくことになります。

■原初の巨人から大地が創造される

それぞれ繁栄していく神々と巨人ですが、互いに馬が合わず、オーディンら3兄弟はある日、巨人の親玉のユミルをなんと殺してしまいます。するとユミルの身体から血が溢れて洪水となり、巨人族は1組の夫婦を除いて滅亡。このとき生き残った夫婦の子孫である「霜の巨人」たちは、後の神話で事あるごとに神々と喧嘩沙汰に。血なまぐさい始まり方のせいで、因縁が後世まで続いてしまうんです。

さて、オーディンはユミルの身体を引き裂いた部位から、天地や海、山、人間の国などを創造します。こうして北欧神話の舞台が整ったというワケ。なかなかの超展開!

【関連知識】
アウズフムラの乳を飲むユミル/デンマーク国立博物館所蔵(写真=Nicolai Abildgaard/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)
アウズフムラの乳を飲むユミル/デンマーク国立博物館所蔵(写真=Nicolai Abildgaard/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

世界の始まりに、牝牛アウズフムラの乳を飲むユミル

氷と火の衝突によって生まれたユミルは、牝牛アウズフムラの乳を飲んで育ちます。牛が舐めている氷から出てきているのが原初の神ブリです。全ての始まりに1匹の牛がいる、という異質感が北欧神話のユニークで面白いところですね。もしかすると、生命を育むのは牛の乳であるというイメージが、古代の人々に強く根付いていたのかも?

■「原初の巨人ユミル」→「始祖ユミル」に

【読み解きのカギ】

『進撃の巨人』と北欧神話

世界的な大ヒットを記録した人気漫画『進撃の巨人』。壁に囲まれて暮らす人類が、壁の外からやってきて人を喰う巨人たちに必死に抵抗しながら、世界の謎に迫っていく……という物語ですが、北欧神話を知っていると、点と点がつながることが多いんです。

例えば、物語の核心に触れる「始祖ユミル」の存在など、北欧神話と関連のある要素が作中のところどころに登場します。「巨人が悪役の物語」が、古代から現代にまで、まさに“2000年の時”を超えて受け継がれていると考えると、非常に興味深いですね!

■妖精のエルフは2種類いる

現代で「ファンタジー」と呼ばれるゲームや漫画の多くに、妖精の「エルフ」や小人の「ドワーフ」といった種族が登場しますよね。近年では、長寿種であるエルフの女性が主人公の漫画『葬送のフリーレン』も大人気。実はこれらの種族の起源は、北欧神話なんです。まさに、現代ファンタジーの原点というワケ! スゴい!

エルフは、北欧神話を語る古ノルド語では「アールヴ」と呼ばれ、非常に長寿、あるいは不死とされる妖精の種族です。そして意外にも、身長が小さく性格が悪いのだそう。現代の「知的な森の番人」のイメージとは異なりますね。

黄金の妖精
写真=iStock.com/Lidiia Moor
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Lidiia Moor

さらにエルフは2種類いるとされ、光の妖精リョースアールヴがアールヴヘイムに住み、闇の妖精デックアールヴがスヴァルトアールヴヘイムに住むとされています。光のリョースアールヴの容姿は太陽よりも美しいのですが、神々の中で最も美しい容姿を持つとされる豊穣神フレイが彼らの国を統べているのだそう。一方の闇のデックアールヴは、様々な作品にも登場する「ダークエルフ」のこと。残念ながらどんな種族なのか説明はほとんどありません……。気になる!

■ユミルの死体から生まれたドワーフ

さて続いて、小人のドワーフですが、古ノルド語では「ドヴェルグ」と呼ばれていました。ドヴェルグはなんと、巨人ユミルの死体から生まれたそう。最初はウジ虫でしたが、神々によって小人の姿と知性を与えられ、大地の下にある小人の国ニザヴェッリルで暮らすように。

そんなドヴェルグは鍛冶技術に優れていて、彼らが作った強すぎる武器や道具が多く登場します。オーディンが持つ、必勝の槍グングニルもその1つ。他にも、雷神トールの戦槌ミョルニルや、狼の怪物フェンリルを拘束した紐グレイプニルなどを製作したドヴェルグは、まさに匠。このイメージは現代作品にも続いていますね。

小人のドヴェルグ

『巫女の予言』という北欧神話の詩が収録された19世紀の書籍には、2人のドヴェルグの挿絵が描かれました。このドヴェルグは背丈が低く髭をたくわえた姿で、現代のドワーフのイメージにかなり近いものになっていますね。

ちなみに現代ファンタジー作品では、エルフがドワーフの容姿を「醜い」と罵る……といった場面がよく見られます。このような「エルフとドワーフは仲が悪い」という定番の設定もまた、『指輪物語』(次頁のコラム参照)が起源と考えられているんです。

■「指輪物語」が作ったイメージ

【読み解きのカギ】

ファンタジーの原点⁉

しんりゅう『神話と宗教の解体神書 ファンタジーの元ネタ超解説』(監修沖田瑞穂、KADOKAWA)Amazon限定版(数量限定)も販売中。
しんりゅう『神話と宗教の解体神書 ファンタジーの元ネタ超解説』(監修沖田瑞穂、KADOKAWA)Amazon限定版(数量限定)も販売中。

イギリスの作家J・R・R・トールキンの超大作ファンタジー小説『指輪物語』。読んだことはなくても、これを原作とした実写映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを観たことのある人はきっと多いはず。

トールキンは北欧神話や各地の伝承を元に、『指輪物語』の壮大で緻密な世界設定を作り上げました。美しい妖精エルフや、鍛冶師のドワーフのイメージは、これによって広まったと言っても過言ではありません。まさに「現代ファンタジーの始まり」となった作品。原作は難解な文章も多く(特に序盤!)、読むのにかなり苦労するかもしれませんが……ぜひ一度、手に取ってみてほしいです!

【読み解きのカギ】

長寿が故の成長物語

3人の仲間と共に魔王を倒したエルフの女性「フリーレン」の“世界を救った後”を描く人気漫画『葬送のフリーレン』。エルフは他の種族よりも圧倒的に長寿であるため、フリーレンは老人となったかつての仲間の死を看取ることになり、仲間との冒険の痕跡を辿るため再び旅を始める……という物語。

人間と異なる価値観を持つフリーレンが、各地で人助けをしながら成長していく姿は、めちゃくちゃ涙腺に響きます。ファンタジー世界の種族の違いが上手く落とし込まれた奥深い物語を、ぜひ堪能してください。

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しんりゅう YouTuber
ファンタジー好きだった父の影響を受けて、ゲーム、漫画、小説など、様々なファンタジー作品に触れて育った一般男性。作品内に登場する用語の「元ネタ」を調べるうちに神話・宗教に興味を持ち、専門書を集めて学び始める。神話好きが高じて、2022年6月にYouTubeチャンネル「しんりゅう / ファンタジー&神話研究所」を開設。「ファンタジー作品の元ネタ紹介」を軸に、神話用語を解説する動画を投稿している。2024年8月現在、チャンネル登録者は18万人。

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(YouTuber しんりゅう)

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