年齢のわりに老けて見える人は「化粧水」を間違えている…潤うどころか肌をヨボヨボにする「危険成分」の名前
プレジデントオンライン / 2024年9月22日 17時15分
■「美肌のためにスキンケアは大切」は間違い
「メイクアップ化粧品は肌に悪い。だから、できるだけメイクを休む日を作ったり、出先から帰ったらすぐにメイクを落としたりすること。そして、スキンケアを丁寧に行うことが、美肌を作るためにとても大切」
そんなふうに考えている人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、それはある意味「間違い」です。
実は、肌に良いというイメージがあるスキンケアも、肌にダメージを与える犯人である場合が多いのです。
■スキンケアが肌にダメージを与える理由
なぜ、スキンケアが肌にダメージを与えるのでしょう?
原因はさまざまあります。たとえば、肌質に合っていないものを使っている場合、肌には大きなダメージとなります。
もともと乾燥肌なのに、「さっぱりするタイプ」の化粧品や乳液を使っていれば、ますます肌は乾燥してしまいます。反対に、いつも顔がテカテカしている脂性肌タイプの人が、「しっとりするタイプ」の濃厚なナイトクリームを使うと、余計に肌がテカる原因になってしまいます。
また、スキンケアが肌にダメージを与える原因としては、製品に使われている成分の品質が悪いということも挙げられます。
必ずしも、製品の金額は品質に比例しているわけではなく、なかにはリーズナブルな価格なのに品質がとても良い、良心的な製品もあるかもしれません。
しかし残念なことに、本当にまじめに、質の良いスキンケア製品を作っている化粧品会社はそれほど多くありません。ほとんどの化粧品会社が、香りや質感、手触り、使い心地などを考えて、余計な成分を追加しています。
■「合成界面活性剤」に注意
なかでも、最も恐ろしいもののひとつが「合成界面活性剤」。
これは石油などを原料に、人工的に作られた物質のことです。肌のみならず、人間の全身にさまざまな影響を及ぼす化学物質で、食器用洗剤や洗濯洗剤に多く使われていると言えば、だいたいイメージがつくでしょう。
実は、多くの化粧品がこの合成界面活性剤を原料として使用しています。メイク化粧品のみならず、肌に直接たっぷりつけるスキンケア化粧品にも、当然のごとく、合成界面活性剤が使われています。
まさにスキンケアの恐ろしさ。「スキンケアをがんばっているのに、肌トラブルがまったく改善しない」「むしろ、スキンケアをがんばればがんばるほど、肌トラブルが多くなった」という人が多いのは、化粧品に含まれる合成界面活性剤に原因があったのです。
■マヨネーズは界面活性剤のおかげ
合成界面活性剤とは、いったい何でしょうか?
その説明の前に、まずは「界面活性剤」について理解しておきましょう。
界面活性剤とは、文字通り、界面(異なった性質を持つ2つの物質が接する時の境界面)に作用して、界面の性質を変化させる物質の総称です。水になじみやすい「親水性」と、油になじみやすい「親油性」という2つの性質を持ち、本来なら反発するはずの「水と油」をなじませるのに用いられます。
例として、マヨネーズを思い浮かべてください。手作りをしたことがある人はわかると思いますが、マヨネーズの原料は、主に、酢、油、卵黄です。本当なら、油と酢は分離してしまい、なじみません。
でも、卵黄に含まれるレシチンという成分が界面活性剤の役割を果たし、酢と油を混ぜてくれます。
■天然のものと人工的に作られるものがある
界面活性剤には、レシチンのような天然のものと、人工的に作られるものがあります。合成界面活性剤とは後者のタイプで、石油などを原料にして人工的に作られます。
界面活性剤にはいろいろな働きがありますが、そのひとつに「汚れを落とす」という役割があります。
たとえば、石けんは界面活性剤の働きを利用しています。石けんは油脂とアルカリを原料にして作られています。油脂は動物や植物など天然由来のものが多く、アルカリである苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)または苛性カリ(水酸化カリウム)のどちらかと反応させることで、石けんが作られるのです。
頑固な汚れと言えば、衣服に浸み込んだ油や皮脂がありますが、界面活性剤は油にしっかり吸着して衣類から汚れを引き剥がし、汚れを水のなかに溶け込ませます(図表1)。
最後に水でキレイにすすげば、界面活性剤とともに汚れが流れ落ちていきます。
■界面活性剤は数千種類もある
界面活性剤というと、なんとなく肌に悪そうというイメージがあるかもしれません。しかし、実際はそんなことはありません。石けんが私たちの生活になくてはならないものであるように、界面活性剤は衣料品や食品など、至るところで用いられています。
しかし、人工的に作られる「合成界面活性剤」となると、話は別です。
石油などから作られる合成界面活性剤は、人間の健康に大きな害を与えることがあるからです。
合成界面活性剤は、身の回りの至るところで用いられています。
産業界では、「困ったことがあればまず界面活性剤に聞いてみよ」と言われるほどの多機能かつ高機能の物質で、数千種類もあると言われています。
■合成界面活性剤は洗剤として使われている
合成界面活性剤が使われているものとして、真っ先に思い浮かぶのが、おそらく「洗剤」でしょう。
合成界面活性剤による洗剤が開発された背景には、従来の石けんでは洗浄力が弱いという問題がありました。
「もっと洗浄力の強い洗剤は作れないだろうか」
こうして生まれたのが、石油に由来する合成界面活性剤です。現在では、衣服用洗剤、食器用洗剤、シャンプー、ボディソープなどに用いられています。
■肌の「バリア」を壊す
さらに、合成界面活性剤は水と油をよく混ぜ、浸透力を高めるという性質を持っているため、化粧品を作る作業では欠かせない成分とされています。
それではなぜ、合成界面活性剤を肌につけることが怖いかというと、合成界面活性剤は肌のバリアを壊すからです。
バリア機能を壊すことで、肌に良いとされる美容成分などを、肌の内側へ浸透させているからなのです。
考えてみてください。バリアを通り抜けるにはそれを破壊しないと突破することはできないと思いませんか?
この話をするには、まず、皮膚の構造を知る必要があります。
■皮膚は防壁の役割を果たしている
そもそも皮膚(肌)とは何でしょうか?
実は皮膚とは心臓や肺などと同様、臓器のひとつ。成人で総面積が約1.6平方メートルにも及ぶ、人体最大の臓器です。
人体の一番外側を覆っていて、人体を形作るとともに、外敵(ほこり、細菌、ウイルス、アレルギー物質など)から人体を守る働きをしています。
人間の体は、50〜75%が水分でできています。いってみれば水をたっぷりと詰めた水風船のようなもので、針でつつかれたり、石を投げられたり、刺激が加わればたちまち弾けてなかの水が漏れ出てしまいます。
人間の体もこれと同じ。そのため、体内の水分を逃さないようにするには、外敵から身を守るバリア(防壁)が必要です。
外界との防壁の役割を果たしているのが、皮膚(肌)なのです。
■ラップ1枚分の角質層が肌を守っている
皮膚の断面を横から見ると、外側から内側に向かって「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造になっています(図表2)。
表皮はさらに「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4つの層で構成されています。
表皮の役割をひとことで言うと、「バリア機能」です。特に、最も外側の角質層は重要です。
角質層の厚さは約0.02ミリメートルで、およそラップ1枚分くらいしかありません。この薄い膜が人間の全身を覆い、乾燥や摩擦、紫外線、雑菌など、あらゆる刺激から肌を守っているのです。
■人間が備えている「3つのバリア」
ここには人間が自分で生み出す3つの保湿因子が存在します。
その3つとは、水分を保つ働きを持つ「天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor:NMF)」、角質細胞と角質細胞の間を埋める「角質細胞間脂質」、皮膚の表面を覆っている「皮脂膜」です。
これらは3つのバリア因子とも呼ばれ、正常に働くことで、肌は潤いが保たれバリア機能を維持しています。
また、皮膚の表面にはたくさんの常在菌がいて、肌を弱酸性に保ったり、潤い成分を増やしたり、悪玉菌の繁殖を抑える成分を分泌したりして、肌を保護しています。
■バリア機能が低下することで肌荒れが起きる
角質層は、まるでレンガを積み上げたように、角質細胞が積み重なって作られています。
このレンガがきちんと積まれ、3つの保湿因子がしっかり保たれていれば、外界からの刺激や異物は侵入することができません。
しかし、紫外線や乾燥など外部からのダメージを受けると、ターンオーバーが乱れ、角質細胞がきちんと積み重ならず、3つの保湿因子も保つことができなくなり、角質層は隙間だらけのスカスカな状態になってしまいます。
その結果、皮膚のバリア機能が低下して外からの刺激を受けやすくなり、本来なら皮膚に侵入できないアレルギーの原因物質やウイルス、細菌などが入り込んで、アトピー性皮膚炎や湿疹などの炎症や感染症を起こしてしまいます。
これが多くの場合、肌荒れの原因なのです。
■合成界面活性剤が肌のバリアを壊す
合成界面活性剤も、肌のバリア機能に大きなダメージを与えます。
合成界面活性剤を使うと、どんなことが起きるのか、順を追って見てみましょう。
・強力な界面活性作用により、肌表面にある皮脂膜が溶かされ、肌を守る常在菌とともに削ぎ落とされる。
↓
・角質細胞間脂質も溶かされ、水も脂も抜けた(地肌が乾燥しバリアが障害された)状態になる。
↓
・肌の外側ではバリア機能が失われたことにより、肌の水分がどんどん蒸発する。肌の内側ではアレルギー物質などの異物が侵入し、炎症やかゆみが引き起こされる。
どうでしょう。合成界面活性剤の入った化粧品を使うと、毎日このようなことがくり返されるのです。
炎症やかゆみが引き起こされたら、多くの人が皮膚科を受診するでしょう。そこではきっと抗ヒスタミン剤やステロイド外用剤が処方され、症状を抑え込もうとするはずです。
■実は合成界面活性剤も一緒に浸み込ませている
しかし、ただ症状をなんとかしようとしているだけであり、そもそもの原因は見過ごされたままですから、薬をやめれば、また症状がぶりかえしてきます。
合成界面活性剤は乳液や液体ファンデーションでは水分と油分をよく混ぜ合わせるための「つなぎ役」として、また、化粧品の美容成分を肌に浸み込ませるための「浸透剤」として、さらに水分を吸着する作用が強いことから、「保湿する成分」そのものとしても多くの化粧品に用いられているのです。
化粧水で肌に潤いを与えたり、美容液で美容成分を肌に浸み込ませたりしているつもりが、実は合成界面活性剤も一緒に肌へ浸み込ませているのです。
化粧品を使い続ける限り、合成界面活性剤とは縁が切れないことになるのです。
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皮膚科専門医・医学博士、ひふ科形成外科西クリニック院長
1961年、鹿児島県奄美大島生まれ。幼少期からアトピー性皮膚炎に悩まされていたこともあり、皮膚科医になることを決意。鹿児島大学医学部卒業後、皮膚科医の道へ進む。皮膚科医になった後に、自らのアトピー性皮膚炎を完治させる。現在は鹿児島県皮膚科医部会の会長を務める傍ら、合成界面活性剤を使用しないスキンケア用品の監修も担当。スキンケアの真実を一人でも多くの人に伝えるため講演会なども積極的に行っている。著書に『美肌になりたければ、その肌ケアをいますぐやめなさい。』(自由国民社)。
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(皮膚科専門医・医学博士、ひふ科形成外科西クリニック院長 西 正行)
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