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「日本株のパニック売り」は今後も起きる…公認会計士が教える「初心者でも見極められる暴落の予兆」とは

プレジデントオンライン / 2024年9月17日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monsitj

日経平均株価は8月に一時4451円下落し、歴史的大暴落を記録した。日本の株式市場は今後どうなるのか。『世界一やさしいファンダメンタル株投資バイブル』(KADOKAWA)を出した公認会計士の日根野健さんが解説する――。

■「あのときの暴落、なんやねん?」

2024年8月2日、日経平均株価は3万5910円まで下がり、翌営業日の8月5日にはさらに急激に下がり、ストップ安が約800銘柄も出るというパニック状態になりました。

このときに「底値で売ってしまった」という方はたくさんいらっしゃると思います。ところが、株価はその後、8月16日には3万8063円まで回復。株式投資の経験が短い方は「あのときの暴落、なんやねん?」と、特に驚かれたのではないでしょうか。

実はこのような暴落は数年に1回ぐらいは起こります。冷静に対処するためには、まず暴落の要因をしっかりと理解する必要があります。

■暴落に潜む3つの要因とは

暴落には3つ要因があります。

1つ目は「割高だった株価の下落」です。株式には、適正価格ともいえる理論的な価格があり、ここでは「1株価値(1株当たりの株主価値)」といいます。

1株価値と比べて、今の株価が安ければ割安といいます。良い企業の株価が割安なときに株式を購入し、その後、ほかの投資家が「割安だ! 買いだ!」と気づいて購入し、株価が上昇して割高になったところで売却するのです。

これが、長期投資において利益を得るための基本的な考え方です。株式を「安く買う」とは「割安な価格で買う」ということを意味しています。

株価の「割安」と「割高」
出所=『世界一やさしいファンダメンタル株投資バイブル』

例えばA社の1株価値を100円、それに対してついている株価が80円だとすると、これは割安です。一方、B社は1株価値100円に対し、株価は120円。これは割高です。

B社のように株価が上がっている場合、割高だと分かっていても、投資家は「買っておくか」と買うことがあります。このようにもともと割高だと感じていた株価が下がったとき、それを買っていた人にとっては「下がるのはもっともだ」と納得感があるわけです。

■「株の価値がなくなるのでは…」と疑心暗鬼に

2つ目の要因は「1株価値の期待値の減少」。価値自体が減少するのでは……? という恐怖に囚われてしまうことです。

先ほど、A社の株の価値は100円でしたが、そもそもなぜ100円なのか。これを算出するにはマルチプル法と呼ばれる考え方があります。

1株価値は利益と倍率の掛け算で計算します。例えば、A社の利益が1年当たり5円で、倍率が20倍だとします。するとA社の株の価値は5×20=100となります。これと株価を比べて割安かどうかを判断しているのです。

しかし株価が下がると、「このまま世界の景気が悪くなったら利益は5円以下、いや1円になるのでは……」と怖くなってくる。さらに倍率についても自信が持てなくなり、「15倍だったかな……」といよいよ疑心暗鬼に陥ってしまいます。

利益が1円で倍率が15倍と仮定すると、1株100円の価値だと思っていたものが15円の価値に思えてしまう。いったん株価が下がり始めると、その企業がどんな事業をしているのか、どんな商品を売っているのか、どんな強みがあるのか、自分で調べることなく買ってしまった株主たちが見通しを変えてしまい、さらにどんどん下がっていく。

このように「1株価値が減少する」という恐怖が連鎖していくことで、パニック寸前の状態になってくるわけです。

■売りが売りを呼ぶ大パニック

3つ目は「売りが売りを呼ぶパニック」。もともと割高だった株価が是正され、さらに1株価値の見通しも下方修正され、その結果何が起こるかというと、これはもうパニックです。

ウォーレン・バフェットが“ミスターマーケット”と擬人化したように、株式市場をひとつの人格として捉えるとイメージしやすくなります。ミスターマーケットは、基本的に楽天家なのですが、時々、ヒステリックに「世界が終わる!」と喚き散らすほど悲観的になります。

8月5日の暴落がまさにそうでしたよね。

なぜこのような乱高下が起きるのか。その要因は人間の心理にあります。

■市場は時折ヒステリーになることを心得ておく

株式投資をしたことのある人なら、誰もが「人気がある株、上昇している株は買いたくなり、人気がない株、下落している株は売りたくなる」という経験をしたことがあると思います。

人よりも儲けたい、儲けを自慢して自尊心を高めたいという欲望もあれば、資産を失う恐怖も当然あるでしょう。資産が減ると自分の人間としての価値まで落ちるかのような錯覚に陥ることさえあります。

8月5日のときのように「みんなが売っているから、わからなくても自分も売ってしまおう」という一人ひとりの心理がパニックを生み出すのです。

逆に言うと、ミスターマーケットが、時折ヒステリーに陥るということについて心の準備をしておけば、ある程度はこちらも振り回されなくなります。

ミスターマーケットが楽天的なときは、「はいはい、ご機嫌よろしくて良かったね」と距離を置き、ミスターマーケットが世界は終わると喚き散らしているようなときには「はいはい、世界が終わるわけないよね」と距離を置くのです。

■暴落しても99%の上場企業は倒産しない

このような暴落はこの先も必ず発生します。だから私たちも発生する前提で、株式投資に臨む必要があります。

過去の事例をみると、ITバブル崩壊の影響などで倒産が多かった2002年には日本国内で29社の上場企業が倒産しました。リーマンショックが起こった2008年に倒産した上場企業は33社でした。これは上場企業のうちの1%にも満たない数です。

コロナショックの2020年にいたってはたったの2社。平時のときより倒産が増えるのは確かなのですが、99%以上の企業は生き残ります。

上場企業は上場するまでに厳しい審査をくぐり抜けていますし、上場企業としての信用力がある、経営管理体制も強固で、経済状況の急変時にも臨機応変に対応するだけの組織力がある、といったことが背景にあると考えられます。

つまり、株価は暴落しても企業が倒産するということは、ほとんどないということです。自分のポートフォリオにしっかりと厳選した企業を組み入れていれば、株式市場が暴落したときに慌てる必要はまったくありません。

東京タワー周辺の航空写真
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■「暴落が近い」と見極められるタイミングは

とはいえ、そうとわかっていてもストンと株価が落ちれば、怖くなるのも無理はありません。

私自身も8月5日に株価が暴落したときは、「もしかしたら、まだ世に出ていない最悪のニュースがあるのでは……」と不安もよぎりましたが、冷静に対処することができました。

株式投資では、株式市場に参加する投資家たちの心理を冷静に受け止め、また自分の心のなかに生まれる欲望や不安を客観視することが求められます。

日根野健『世界一やさしいファンダメンタル株投資バイブル』(KADOKAWA)
日根野健『世界一やさしいファンダメンタル株投資バイブル』(KADOKAWA)

暴落の前には、株式市場の過熱が存在します。ミスターマーケットが過度に陽気に楽観的になって、株式市場が大いに盛り上がったあとに、株式市場は暴落しています。ですから、株式市場が楽観的で株価の推移が堅調であればあるほど、「暴落が近いかもしれない」と慎重に考えるべきです。

ウォーレン・バフェットが経営するバークシャー・ハサウェイは、株式市場が普通のときには普通のパフォーマンス、株式市場が好調のときには相対的に悪いパフォーマンス、株式市場が不調なときには相対的に良いパフォーマンス、であるといわれます。

つまり、市況が良いときは深追いせずに、そこそこのリターンで満足しておく。しかし、大きな暴落が来たときは、しっかりと優良企業に投資する。このようなスタイルが長期投資においては理想的です。

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日根野 健(ひねの・けん)
公認会計士、税理士、アクションラーニング代表取締役
1979年8月23日、大阪生まれ。京都大学教育学部卒業後、監査法人トーマツに入所。上場企業の決算書をチェックし投資家を守る仕事をしていたが、個人投資家の多くが決算書を全く読まずに危険な投資をしていることに気づく。そこで、「決算書に関する正しい知識を身につけた、賢い個人投資家を育てたい」と思い、アクションラーニングを設立。専門的な知識を徹底的にわかりやすくした実践的な投資手法を、オンラインセミナーで個人投資家に伝えている。Youtuber「ひねけん」としても活動中。

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(公認会計士、税理士、アクションラーニング代表取締役 日根野 健)

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