政府は夕張市の「限界医療」から何も学んでいない…増え続ける「コロナワクチン健康被害」に医師が訴えたいこと
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 10時15分
■NHK「あさイチ」がコロナワクチン被害を報じた意味
8月28日、NHKの朝の情報番組「あさイチ」が、コロナワクチン被害者の「声」を約1時間30分にもわたって放送したことは、画期的な出来事でした。
なぜならこれまでテレビや新聞などの大手マスコミは、コロナワクチンの副反応被害についてほとんど報じてこなかったからです。
コロナ禍が起きた2020年以来、日本政府はマスコミを総動員してコロナワクチンの接種を呼びかけてきましたが、その一方で多くの方がコロナワクチンの副反応に苦しんでいることは黙殺してきました。
単に報じないどころか、「ワクチンの副作用を訴える人は陰謀論者、“反ワク(ワクチン)”だ」とレッテルを貼り、批判していたのです。
ワクチン副反応問題に言及するだけで、SNS上で罵詈雑言を浴びせられたり、投稿や動画が削除されることも日常茶飯事でした。
■約800名が亡くなる「史上最悪の薬害」
コロナワクチンは本当にコロナの抑止に有効だったのか、本当に安全なワクチンだったのかについては、医学的にもさまざまな見解があります。
ただ、ワクチンの接種開始以降、日本国内で多くの方が「コロナワクチンの接種後に亡くなって」おり、その中の多数のケースにおいて「ワクチンとの関連性」が認定されていることは、紛れもない事実です。
その数は現時点で799名(2024年9月6日厚労省資料)に上っています。
過去、これほど多くの方が一つのワクチンの副反応で亡くなったことはありません。この結果を見れば、「コロナワクチンは史上最悪の薬害」と言っても過言ではないと私は思います。
■「過去すべてのワクチンの合計」の5倍以上も亡くなっている
ちなみに現行の救済制度が開始された1977年2月から2021年12月までに認定された「全ワクチンの被害者数(コロナワクチンを除く)」は3522件、うち死亡は151件です。
つまり、「過去すべてのワクチン関連死の合計」より、「コロナワクチンの関連死」のほうが圧倒的に多く、約5倍以上にも上っているのです。
■いまだに接種が推奨されている
ポリオワクチンや日本脳炎ワクチンといった過去のワクチンでは、数名の死亡・重篤例が出た時点で、因果関係が明らかでなくとも、いったん接種をやめていました。
(参考:厚生労働省/日本脳炎ワクチン接種後に報告されたADEMへの対応について)
ですが、コロナワクチンについてはいまだに接種が推奨されており、この10月から自費による定期接種が再開される予定です。
いまワクチン被害者たちは次々に国を相手取り集団訴訟に踏み切っています。
2024年4月にはワクチン接種後に死亡した男女の遺族ら13人が、総額約9150万円の賠償を求める集団訴訟を起こしました。
8月19日には第一回口頭弁論が行われ、原告は「国がワクチン接種を強く呼び掛ける一方、副反応や後遺症についてほとんど発表していなかったため、接種について判断するための十分な情報が与えられなかった」と主張しています。
一方、政府は「薬害」を認めておらず、ワクチン接種についても続けるとしています。
■「ワクチンに懐疑的な人は陰謀論者」とレッテルを貼ってきた
こうした中、NHKが報道姿勢を転換し、ワクチン被害を報じたことは、大きな変化を予感させるものでした。
というのも、コロナワクチンの被害に関してNHKは最も否定的なメディアの一つだったからです。
NHKは過去に「おはよう日本」の中で「ワクチン“誤情報”や“デマ” 私はこうして抜け出した」という特集を放送したほか、「フェイク・バスターズ」という番組では「親が陰謀論を信じ込んでしまった…… 苦しむ子どもたち」という特集も放送していました。
さらに、NHKの「ニュースウオッチ9」という番組は、2023年5月、実際には「コロナワクチン被害者」だったにもかかわらず、「コロナ感染による被害」だと偽って放送しました。
この番組は後日BPOにおいて「放送倫理違反」を指摘されています。
つまりNHKはこれまで、時には事実をねじ曲げてまでも「ワクチンに懐疑的な人はすべて“陰謀論者”」というレッテル貼りを行ってきたのです。
そのNHKが、コロナワクチンの被害について報じたのは、NHK内部でもさまざまな意見があり、報道姿勢をめぐって議論が行われている証拠だと思います。
■新薬には必ずリスクがある
ワクチンを含むすべての医薬品には、メリットがある一方で、リスクも必ず存在します。いわゆる「副反応」です。
日本で過去に起こった代表的な薬害」として、「サリドマイド」や「スモン」「薬害エイズ」などがありますが、これらに共通するのはいずれも「新薬」だったという点です。
新薬には画期的な効果が期待される一方、臨床データが少なく、一定のリスクがつきもの。そのため医療界には「新薬はなるべく使うな」という教えがあります。
コロナワクチンは「mRNAワクチン」という新しいワクチンであり、当然一定のリスクがあることは明らかです。
そのため政府やメディアは、新しいワクチンのリスクについてきちんと調べ、その情報を提供するべきでした。
ですが、国もメディアも医療業界も、リスクについては報じませんでした。
政治家や専門家の中には「リスクは一切ない」と断言していた人もいたのです。
その結果、約800人もの方が亡くなったということを私たちは反省しなければなりません。
国全体が「ワクチン接種推奨」に偏りすぎたことが、「未曾有の大薬害」を生んだ可能性があるのです。
■医療崩壊したのに死亡率は低下しなかった「夕張の奇跡」
私はかつて、財政破綻した夕張市で「財政破綻による地域の医療崩壊」を目の当たりにしました。
自治体の財政破綻により、市内に一つしかなかった病院である「夕張市立総合病院」が閉院となりました。
具体的には、市が破綻して財政再建団体になったことで、171床を持つ市立総合病院が、19床の有床診療所と老健(介護老人保健施設)に縮小されました。
夕張市が提供できる医療は「町のお医者さん」的なイメージの医療だけになったのです。
その結果、患者数や死亡率が急増するのは時間の問題だと思われていました。
■最新医療は必要不可欠なものではない
ですが、夕張市で起きたのはまったく逆の出来事でした。
医療が崩壊したことで、結果的に「不必要な医療」「無駄な医療」が減りました。
また、訪問医療の利用が増えたこともあって、むしろ医療崩壊したのに死亡率は増加せず、患者さんのQOLも向上するという結果になったのです。(詳しくは以前の記事をご覧ください)
私はこの体験から、「最新医療が必ずしも人々の健康にとって必要不可欠ではない(そこにこだわりすぎてしまうとかえって本来最も大切な「その人の人生・生活の質」が低下してしまうことが多い)」ということを学びました。
私はこうした観点から、今回のコロナワクチンの接種推奨については当初から懐疑的な目で見ていました。
■武見厚労大臣の記者会見に感じた「微妙な変化」
ちなみに、「変化」を感じるのはNHKの報道姿勢だけではありません。政府の姿勢やメッセージにも微妙な変化を感じています。
武見厚労大臣はかつて「ワクチンの健康被害について特段の懸念は認められない」と繰り返し発言していました。
ですが、最近の記者会見での発言は、そうした姿勢が少しずつ軟化していると思わせるものでした。
8月27日の記者会見において、「コロナワクチンの被害が薬害にあたるか」と質問した記者に、武見厚労大臣は一度は「薬害」という言葉を使って答えました。
ただ、後日厚生労働省のHPに掲載された文字起こしからは「薬害」の文言が削除されていました。
その後8月30日の記者会見において、「薬害」の文言が削除されたことについて問われた武見大臣は「新型コロナワクチンによる健康被害が薬害に該当するかについてのお答えは、まだこの時点では差し控えておきたいと思います」と回答しています。
もちろん薬害を認めたわけではありませんが、一方で薬害ではないと断言することも避けているわけです。この言い回しにわずかながら姿勢の変化を感じるのは私だけでしょうか。
■10月から接種が再開される
10月からは主に高齢者を対象にコロナワクチンの定期接種が再開されますが、今回から「レプリコン(自己増殖)型」という新しいワクチンの導入が決まっています。
レプリコン型ワクチンについての詳細は省きますが、先に触れたように、新薬には必ずリスクがあり、この新型ワクチンも例外ではありません。
しかしながら、リスクについて相変わらず十分な説明がなされていないのが現状ではないでしょうか。
■「事実上の接種強制」になってはならない
新しいワクチンに一定のリスクがあることは当然です。
最大の問題は、そのリスクを説明しないことです。
「ワクチンの接種は任意」としながら、危険性については報じず、批判には「反ワク」「陰謀論者」とレッテルを貼る、という対応が続くなら、医学知識を持たない庶民は判断基準がわからず、事実上接種を強制されることになってしまいます。
約800人もの被害者を出した責任はメディアにもあります。
過去の薬害問題から学び、同じ過ちを繰り返さないためにも、ワクチン報道のあり方をもう一度真剣に考えるべき時が来ていると思います。
リスクは過小評価、メリットだけ過大評価する報道はやめ、国民が意思決定するために必要な情報を包み隠さず明らかにすることを強く望みます。
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医師/南日本ヘルスリサーチラボ代表
1971年、横浜生まれ。南日本ヘルスリサーチラボ代表。日本内科学会認定内科医、プライマリーケア指導医。一橋大学経済学部卒業後、宮崎医科大学医学部入学。宮崎県内で研修を終了し、2009年より北海道夕張市立診療所に勤務。同診療所所長を経て、鹿児島県で研究・執筆・診療を中心に活動。専門は在宅医療・地域医療・医療政策など。2020年、鹿児島県南九州市に、ひらやまのクリニックを開業。医療と介護の新たな連携スタイルを構築している。著書に『破綻からの奇蹟~いま夕張市民から学ぶこと~』(南日本ヘルスリサーチラボ)、『医療経済の嘘』(ポプラ新書)、『日本の医療の不都合な真実─コロナ禍で見えた「世界最高レベルの医療」の裏側』(幻冬舎新書)、『うらやましい孤独死─自分はどう死ぬ? 家族をどう看取る?』(フォレスト出版)などがある。
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(医師/南日本ヘルスリサーチラボ代表 森田 洋之)
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