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だから「介護施設」に入るのはリスクが高い…88歳医師「高齢者が絶対にやめてはいけない日常的な活動の種類」

プレジデントオンライン / 2024年9月28日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

高齢者がいつまでも若々しくいるためには、何をすればいいか。浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「人は、『人にやってもらうこと』に慣れすぎて、自分で身の回りのことができなくなると、急速に衰えてしまう。実際、施設に入ったとたんに認知症になってしまう高齢者は案外多くいる。だから高齢者の幸福指数の高いスウェーデンでは、高齢者をあまり介護施設に入れず、その代わりに、デイケアなどの福祉体制を充実させている」という――。

※本稿は、高田明和『20歳若返る習慣』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■掃除は、心はもちろん脳や体をも清らかにする

先の記事で、瞑想と同じような効果をもたらす、「作務」を紹介しました。

禅宗の「作務」の修行でよく知られているのは、お寺の境内や室内の掃除でしょう。

禅宗では、とくに掃除を重んじます。一に掃除、二に看経(声を出さないで経文を読むこと)、三に坐禅、とされているくらいです。修行でもっとも大事なのは、坐禅ではなく、掃除だとしているのです。掃除の大切さを示すエピソードがあります。

仏陀の弟子である、チューラ・パンタカ(周利槃特)は、お経も満足に覚えられない、物覚えの悪い男性でした。

ブッダはパンタカに一本の箒を与え、「塵を払いなさい、垢を除きなさい」とおっしゃったのです。要するに、「掃除をしなさい」ということですね。

物覚えは悪いけれど、ひたすら真面目だったパンタカは、雨の日も風の日も、ただただ寺の内外を掃除して歩きました。その様子を見て馬鹿にして笑う弟子たちもいました。

ある日ブッダは、「パンタカよ、掃除は大変ではないか?」と尋ねます。すると彼は、こう答えます。

「いえ、お師匠様、掃除は心の塵を払おうと思ってやっているので、少しも大変ではありません」

そして彼の心はきれいになり、馬鹿にした弟子たちよりもずっと早く、悟りを開くことができたということです。

私も机回りや仏壇、トイレなどを毎日のように掃除しています。掃除しているうちに気分転換ができ、やりはじめる前は面倒だったとしても、終わったあとは確かに心がクリアになることを感じます。

それはまさしく、うつなどの原因となるストレスを取り去る効果であり、瞑想と同等だとすれば認知症の予防にもなるのです。騙されたと思って、パンタカのような素直な気持ちで、掃除を実践してみてください。

■「善い行い」で心は確実に満たされ、明るい気持ちに

日常生活のなかで「若々しくある」ための習慣として、私がとくにおすすめするのは、「善いことをする」というものです。ひと言でいえば、「善行を積みましょう」、ということです。

小学生ではあるまいし、いい大人に向かって「いったい何を言いだすんだ」と思う方もいるかもしれません。でも、「善いことをする」ことで心は確実に満たされ、明るい気持ちになります。

善行は本当に、些細なことで構わないのです。

たとえば、私は自分が書いた本ができると周りの人にできるだけ配ってあげます。「迷惑になるかな」と思いきや、意外に喜んでくれる方が多いのです。それだけで「書いてよかった」という気持ちになります。

それで先日は、本のお礼にと、高級ブランドのハンカチを3枚いただきました。なんだか「海老で鯛を釣った」気分ですが、「善いこと」をすれば、ちゃんとめぐりめぐってどこからか「善いこと」が返ってくるものです。

白いテーブルに白いボックス
写真=iStock.com/ouh_desire
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ouh_desire

私は、この幸せをさらに連鎖させるべく、3枚のうち2枚のハンカチを、今度は、孫にプレゼントしました。1枚は私がありがたく使わせていただいています。

この「善いことをすれば、善いことがある」と言ったのはブッダです。彼の教えは、人間は皆、運の通帳を持っていて、善いことをすれば通帳に「善業」が記載され、それが貯まると幸運が訪れるというものです。反対に悪業を積めば、不運が訪れます。これは仏教だけに限らず、欧米社会においても、よくいわれていること。

■自分が積み上げてきた業に、報いる責任がある

ポール・ニューマン主演の映画『傷だらけの栄光』で、主人公のボクサーはタイトルマッチに八百長を頼まれたが、それを断わり、ニューヨークの実家に戻ってしまいます。そのとき、昔よく行った近所のバーへ行くと、オーナーからこう言われました、

「お前は、このバーで昔からいろいろなものを飲み食いした。しかし飲んだり食べたりすれば、金を払わなくてはならないのだ。それが嫌なら、飲んだり食べたりしないことだ」

つまり、人は自分が積み上げてきた業に、報いる責任がある。彼の成功に期待し、思いをかけてきた者たちに対して、責任を果たしなさい……ということだったのです。

ちなみに映画のモデルは、実在したロッキー・グラジアノというボクサーであり、彼は40年代にミドル級のチャンピオンになっています。

私は、いくつかの医療関係団体、孤児を支援する団体、芸術家協会などへ、ささやかですが寄付を続けています。といっても、本当は妻がやっていたことを引き継いだだけなのです。

額は些少であっても、それで「善いことをしたな」と思えるなら、自分の心にとってはプラスに働きますね。

■90歳の母が息子と同居したとたんに……

年をとると、体を動かすのが億劫になり、経済的な余裕があれば、家事や買い物など、これまで自分でやってきたことを、ほかの人にやってもらいたいと思う人もいるでしょう。

私はかつて箱根に別荘を持っていたのですが、そこは自分では使わずに義母に住んでもらっていました。妻は毎週、食材などを買い込んで、浜松から車でその別荘まで届けていました。

さらには管理センターにもセブン‐イレブンがあり、妻がいないときでも電話1本で何でももってきてもらえたのです。

義母は自分で家事をしていましたが、時間があるときは刺繍が好きだったので、いろいろな生地で座布団や前掛け、カーテンなどをつくっていました。できあがったものは、ほとんど人にあげていました。また彼女は、ガーデニングなどもやっていました。

そんな一人暮らしが、およそ30年間、90歳まで続いていたのですが、彼女は幸せそうで、満たされた日々を過ごしていたと思います。

90歳にもなると、さすがに火の扱いが心配になってきたので、親族で話し合って、横須賀の息子の家に住まわせることにしました。

それまで自分でしていた家事は、すべて義理の娘さんがやってくれ、何もすることがなくなり、テレビを観るだけの生活になってしまいました。

すると、ほどなくして彼女はデイサービスに行くようになり、認知症となりました。そして92歳で亡くなってしまったのです。老衰でした。

人は、自分で身の回りのことができなくなると、こんなにも急速に衰えてしまうのだなと痛感しました。

■「自分でやるしかない」のは幸せなこと

私の義母と同じように、施設に入ったとたんに認知症になってしまう高齢者は案外多くいます。

だから「介護施設に入ってはいけない」などと言うつもりはありませんが、至れり尽くせりの施設ではなく、むしろ入居者に自分でいろんなことをさせている施設のほうが、健康な高齢者が多くいるように私は思います。

90代の母親を遠距離介護している女優の柴田理恵さんによれば、一時は要介護4で認知症の症状も出はじめていたお母さんが、一人暮らしを始めて、一つずつわかるところから思い出していくようにしたら、要介護2の状態まで回復したそうです。

ちなみに「要介護4」とは、日常生活の動作が、誰かの助けを得ないとほぼできない状態です。ベッドから起きるときは家族や介護士の人に起こしてもらわないといけないし、移動するときは、誰かに車椅子に乗せてもらうことが必要です。

「要介護2」とは、「日常生活に不便があり、誰かの見守りや介護が必要とされるくらい」と定義されます。

高田明和『20歳若返る習慣』(三笠書房)
高田明和『20歳若返る習慣』(三笠書房)

買い物などもできるけれど、細かいお釣りを扱うのは難しい面や、転ぶ可能性があるから、誰かに見てはもらいたいのですが、立つことも、一人でトイレに行くことも可能なまでに回復したのです。まさに「自分でできること」を、やろうと思えば可能なレベルです。

この話からも「人にやってもらうこと」に慣れすぎてしまえば、かえって人を老化させることもあることがわかります。

だからスウェーデンでは、高齢者をあまり介護施設に入れず、その代わりに、デイケアなどの福祉体制を充実させているのです。この国の高齢者の幸福指数が高いことは、よく知られています。

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高田 明和(たかだ・あきかず)
浜松医科大学名誉教授 医学博士
1935年、静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。米国ロズウェルパーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を経て、同大学名誉教授。専門は生理学、血液学、脳科学。また、禅の分野にも造詣が深い。主な著書に『HSPと家族関係 「一人にして!」と叫ぶ心、「一人にしないで!」と叫ぶ心』(廣済堂出版)、『魂をゆさぶる禅の名言』(双葉社)、『自己肯定感をとりもどす!』『敏感すぎて苦しい・HSPがたちまち解決』(ともに三笠書房≪知的生きかた文庫≫)など多数ある。

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(浜松医科大学名誉教授 医学博士 高田 明和)

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