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「大学生のSNS」から「高齢者のSNS」へ…企業にもオトナにも見放されつつあるFacebookの"唯一の生き残り策"

プレジデントオンライン / 2024年9月19日 9時15分

2021年10月28日、社名を「メタ」に変更すると発表した、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEO - 写真=©Pavlo Gonchar/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

Facebookから企業が離れつつある。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「若者のFacebook離れだけでなく、大人世代のFacebook離れも進んでおり、自社サービスと連携しても集客が見込めなくなっている」という――。

■有名サービスが次々と連携を解除

Facebookアカウントを利用して会員登録やログインできる「Facebook連携」を解除するサービスが相次いでいる。

2022年には「Hulu」、23年には「パズドラ」「マネーフォワードクラウド」、24年には終了の勢いがさらに加速して、「食べログ」「プレミアムバンダイ」「インスタベース」「ポケットマルシェ」などが連携終了を発表した。

サービス側がSNS連携する理由は、ユーザーに利することで結果的にサービス拡大につなげたいという考えからだ。SNSアカウントでログインできることでユーザーの利便性が上がり、結果的にそのSNSユーザー間での利用拡大に繋がることを期待して、多くのユーザーを抱えるSNSでのログイン連携を用意する。

利用者が多く、サービス側での連携機能開発コスト以上に集客に繋がるのであれば、連携を解除する理由がない。つまり、相次ぐ終了の背景には、Facebookで集客が見込めなくなったことがあると考えられる。連携機能の利用者が減り、開発コストと集客の釣り合いが取れなくなったということだろう。

■「Facebook、うちの親がやってます」

「Facebook、知ってますよ。うちの親がやってます。周りはだれも使ってないけど、名前は分かります」

大学生はSNSが大好きだ。大学の講義中にSNSの話をすると、大抵だれかが使っていて話に食いついてくる。SnapchatもDiscordもZenly(※)もBeRealも、必ずヘビーに使っている学生がいて、自分の体験を話してくれた。ところがFacebookはだれも反応しない。

※2023年2月にサービス終了

それでもあえて聞くと、上記のような反応が返ってきた。名前は知っている、親が使っているから。でも自分は使ったこともないし、興味もない。そんなことが続き、私も大分前から、学生に話す際にはFacebookは除くようになっている。

■友達も、好きなタレントも使ってない

筆者は毎年大学の受講生対象にアンケートをとっている。1、2年生を中心とした男女比ほぼ半々の学生200~300人が対象だ。今年も調査したところ、Instagram(94.9%)、YouTube(97.4%)、X(80.5%)、TikTok(65.4%)、BeReal(55.1%)、Discord(19.1%)、Threads(12.5%)と多くのSNSを利用している。

ところがFacebookの利用者は全272人中わずか5人、何と1.8%に過ぎなかった。Facebookは、大学生にまったく使われていないのだ。

【図表1】大学生のSNS利用率
筆者アンケートを基に編集部作成

気になって、なぜ使わないのか大学生たちに聞いてみた。まとめると、ズバリ「使う理由がないから」だ。

大学生たちがSNSを使う理由は、「友達が使っているから」「面白そうだから」「流行っているから」などがほとんどだ。友達の近況が見たい、友達と同じものが使いたい、好きなタレントの投稿が見たい、流行っているものが使ってみたいという理由で使う。

InstagramやXは友達とつながり、好きなタレントの投稿を見るため、TikTokやBeRealは流行していて面白そうだから、みんなが使っているから。Discordはゲームのプレイ中に使うから、友達とのやり取りに便利だから。しかしFacebookは、このどれにも当てはまらない。

■「なんでわざわざ実名で投稿するの?」

そもそも大学生世代はほとんどだれも使っていない。大学生に人気の芸能人やタレントも、Facebookをメインで使っている人はまずいない。見かけるのはInstagram、YouTube、X、TikTokだ。

YouTuber、インスタグラマー、ティックトッカーのインフルエンサーはいても、Facebookのインフルエンサーはいない。Facebookでしか見られない面白い有益な情報があるわけでもない。両親が使っているイメージしかないFacebookを、あえてわざわざ使う理由がないのだ。

もう一つ、若者世代が実名登録を嫌がっていることも大きいかもしれない。大学生たちは炎上や個人情報流出を怖がり、匿名アカウントにしたり、写真を投稿する場合は鍵をかけた「鍵垢」にしたりしている。ところが、Facebookは実名登録で顔写真も登録して利用するものだ。そのようなSNSに対して、拒否感もあると考えられる。

もともとFacebookは2004年、当時ハーバード大学の学生だったザッカーバーグが作り、大学生の間で流行したものだ。「大学生のSNS」として広がり、全世界で30億人超が利用する最大のSNSとなった。

しかし日本では登場から20年経ち、もはや大学生はFacebookを見ていない。

■新興のBeReal、Threadsにも抜かされた

若者のFacebook利用率が右肩下がりであることは、マクロミルの新成人500人を対象とした調査(2023年12月)でも明らかだ。

SNSの利用について聞いたところ、FacebookはInstagramやX、Twitter(現X)はもちろん、新たに追加されたBeReal(16.8%)とThreads(9.6%)に抜かされる結果となってしまった。

【図表2】新成人のSNS利用率
マクロミル調べ

これは、米国でも同様だ。ピュー・リサーチ・センターは、2014年から13~17歳の若者を対象に、SNSの利用動向を調査している。2023年の調査によると、YouTube(93%)が利用率トップであり、TikTok(63%)、Snapchat(60%)、Instagram(59%)も相変わらず人気が高い。

一方で、10代の中でFacebookとXの利用は減少傾向にある。Facebookは2014年の71%から33%にまで減少。XもFacebookほどではないが、過去10年で縮小傾向にあるのだ。

■ユーザーが高齢化し「食べ物の話ばかり」

若者世代のFacebook離れは以前から言われていたが、大人世代も徐々にFacebook離れを起こしている。投稿しなくなった友人は少なくないし、別のSNSに場を変えた人も多い。

最近、Facebook投稿を見かけなくなった50代の友人は「友人たちの投稿も減ったし、新しい出会いも、情報との出会いもなくなったからかな」と話す。「以前は業界の最新の情報が得られたのに、今も投稿している人は食べ物の話ばかりで、見るべき投稿がなくなった。そもそも忙しいし、そんな投稿を見ている時間はない」

“大学生のSNS”から20年経ち、ザッカーバーグ自身も40歳の立派な中年となり、ユーザーもそのまま年をとってしまった。ユーザーの高齢化が進んでおり、若者を取り込めていないのだ。

Facebookが日本で流行したのは2010年だ。そのころ始めた人は、同じつながりのまま10年以上利用していることになる。当時大学生だった人ももう30代半ば。友人とのリアルなつながりが少しずつ減っていくように、Facebookの利用も自然に減っていくのはやむなしではないだろうか。

■大人世代のFacebook離れを防ぐことが急務

「若者のFacebook離れ」を感じていたメタ社は、その時々で若者に人気のあるSNS、つまりInstagramやWhatsAppの買収によって若者とのつながりを保ってきた。

WhatsApp、Instagram、Facebookなど、SNSアプリのアイコンが表示されたスマホの画面
写真=iStock.com/stockcam
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stockcam

2021年に社名もFacebookからメタと変えた同社だが、Facebookを居心地の良い場にする努力も薄れてきてはいないか。

筆者の周囲では、著名人なりすまし投資詐欺、コンプレックス広告や情報ビジネスのような不快な広告が増えたことへの不満が多く見られる。投稿がなぜか勝手に削除されたり、頻繁に使いづらいインターフェイスにアップデートされたりするのも評判が良くない。

Facebookでしか連絡ができない人がいるからこそ使い続けているが、代替となるSNSが出てきたら分からない。事実、一部の人はInstagramなど、別のSNSに移ってしまっている。

今後、大人世代まで完全にほかのSNSへ移ってしまった場合、同社はどんな手を打つのか。一利用者として、それが遅すぎないことを願っている。

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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。

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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)

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