仕事は「締め切りギリで完璧」と「早いが最低限」どちらが評価されるか…100冊の時間術本が導いた最終結論
プレジデントオンライン / 2024年9月25日 8時15分
※本稿は、藤吉豊・小川真理子『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)の一部を再編集したものです。
■完成度とスピードはどちらが重要か
時間術の名著100冊に書かれてあった共通のノウハウを洗い出したところ、「完璧を目指すより、まず『終わらせる』」ことの重要性を書いた本が多くありました。完璧を目指す(=完璧主義)とは、「最初から100点の結果を求める」「時間がかかっても、納得できるまで質を高める」ことです。時間術の著者の多くは、「完璧を求めるのはやめよう」「完成度よりもスピードを重視しよう」「いいものをつくること以上に、締め切りを守ることが大事」と主張しています。
ライフネット生命の創業者で、立命館アジア太平洋大学の元学長・出口治明さんは、
●丁寧に時間をかけて、締め切りの日にレポートを提出したAさん
●必要最低限の資料しか添付されていないけれど、仕上がり次第すぐにレポートを提出したBさん
の2人の部下がいたとき、「仕上がり次第すぐにレポートを提出したBさん」を評価するそうです。理由は、「できあがりが早い分、修正の時間を十分に取ることができる」「『完璧』は作った本人の視点での『完璧』」にすぎないからです。
「これまでの日本の会社では、ともすれば、時間をかけてもミスのない完璧なものを作ることが重要だと考えられてきました。しかし、それは時間も経営資源も無限だという誤解から生じたムダのひとつです」(出口治明『僕が大切にしてきた仕事の超基本50』/朝日新聞出版)
■完璧主義のデメリット
完璧主義は、どうしてよくないのでしょうか。著者たちの考えを以下にまとめます。
完璧主義のデメリット
●スピードよりも質を重視するため、締め切りギリギリになる(締め切りが守れなくなる)。
●考え込んでしまい、取りかかるのが遅くなる。
●100点を目指している人にとって90点は失敗なので、自信喪失につながりやすい。
●ひとつの仕事にこだわるため、こなせる仕事量が増えない。
●仕事が終わったあとに「もっとよい結果になったはずだ」と後悔しやすい。
●一度始めたことを「やめる」という決断ができない。
●「自分でやったほうが質は高くなる」と考え、人に任せることができない。
●自分の失敗やミスを許容できないため、ストレスや不安を抱えやすい。
●相手にも100点を求める。自分のやり方が正しいと考えているため、他人のやり方を否定しやすい。
■仕事が遅いのは「間違えたくないから」
出版点数1100冊以上のベストセラー作家・中谷彰宏さんは、「間違えたくないから」という考え方が仕事を遅くしていると述べています。
「遅くなる人の理由は、『間違えたくないから』です。(略)一流の人は『間違えたら直せばいい。でも、遅くなったものは取り返せない。遅くなって間違えたら直しようがない』と考えるのです。 『間違えた』というのはまったく悪くありません。遅れるほうが罪は重いです」(『一流の時間の使い方』/リベラル社)
完全主義をやめるために大切なのは、100点を取ることではなく、「決められた時間や条件の中で、合格点を取ること」です。
「カンペキ主義になってしまうと最初の一歩がなかなか踏み出せなくなります。カンペキは追求し出すとキリがありませんし、特にメールなど相手があるものは、正解などないに等しいので、できる範囲でベターな選択をするべきでしょう」(佐々木正悟『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』/KADOKAWA)
「作家である私は、一冊の本に時間をかけようと思えば、いくらだってかけられる。(略)しかし、いつまで経っても出版されない本より、不完全でも出版された本のほうが、世間にとっては価値があるのだ」(ケビン・クルーズ『1440分の使い方』/パンローリング)
■目指すべきは80点
完璧主義者にならないためには、100点を目指さないこと。「80点でOK」と、合格ラインを低めに設定します。
仕事や計画に完璧はありません。自分では理想通りの結果が出せたと思っていても、それが相手の理想と一致するとは限りません。
だとすれば、「時間ギリギリまで粘って自分の100点を目指す」ことよりも、「80点でいいので、できるだけ早く終わらせる(前倒しして提出する)」ことが大切です。
社会派ブロガーのちきりんさんは、「学習曲線」という概念を用いながら、「頑張れば頑張るほど結果はよくなる」という考え方は合理性を欠いていると指摘します。
「この曲線が示しているのは、ゼロから8割のデキまでは2割くらいの時間で到達できるけれど、残りの2割を仕上げて完璧を目指すには、今までの4倍(8割分)もの時間がさらに必要になるということです」(『自分の時間を取り戻そう』/ダイヤモンド社)
ちきりんさんが「学習曲線のイメージ」として紹介しているのは、図表1のようなグラフです。
「70点で合格の資格試験」を受けるのであれば、100点を狙う必要はありません。試験を受ける目的は「合格」することであって、100点を取ることではないからです。
100点で合格しても70点で合格しても、同じ合格です。100点を取ったからといって、70点で合格した人よりも評価が高くなることはありません。100点にこだわって、膨大な時間を勉強に費やす必要はないわけです。
■まずは形にしてトライアンドエラーを繰り返す
時間術の著者の多くが「80点でよし」とするのは、80点でもいいので早く仕上げて、
「足りないものがあれば、あとで上乗せする」
「実際に運用しながら改善を繰り返す」
「早めにミスを発見して、修正をする」
ほうが、結果的に完成度は高くなるからです。
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長・伊藤羊一さんは、自動車開発を例に、「大事なのは、まず形にしてみて、そこからトライアンドエラーを繰り返していくことなのです。(略)まずは形にして、走行テストを繰り返す。すると、多くの検証データが集まってくる。そのデータをもとに改善策を議論し、実行する」(『0秒で動け』/SBクリエイティブ)と述べ、修正を加えながら完成度を高めていく手法を評価しています。
スタートを切るときも、スピード重視です。準備に時間をかけすぎない。「100点の計画を立ててから実行に移そう」「事前準備を完璧に済ませてから行動しよう」と考えていると、スピード感が損なわれます。
準備が完璧でなくても、見切り発車ですぐに実行に移す。そして、実行しながら修正をしていきます。
公認会計士の金川顕教さんは、『すごい効率化』(KADOKAWA)で「50%くらいの段階で見切り発車していい」と述べています。実際にやっていく中で身につくことが多いからです。
「やるとなったら、だいたいまだ6、7割も概要をつかんでいないうちに走り出します。感覚的には、半分わかっていて、半分まだわかっていない、50%くらいの段階で見切り発車していいと思います」
■相手が満足するクオリティ
出口治明さんが、「『完璧』は作った本人の視点での『完璧』」にすぎないと指摘するように、自分にとっての100点が、相手にとっても100点だとは限りません。
重要なのは、自分にとっての100点を目指すことではなく、相手が満足するクオリティを求めることであり、相手の期待に応えることです。求められている以上の質にするために、時間を費やす必要はありません。
過剰品質の例
●社内会議の資料の体裁に時間をかける。
●ビジネスメールの返信を丁寧に書きすぎる。
●電話なら数分で終わる用件を、文書で伝えようとして時間がかかる。
●プレゼン資料の写真の配置をミリ単位でこだわる。
「顧客によっては一刻も早くほしい場合もあるし、顧客の利益に直結しない丁寧さを必ずしも評価してくれないことも多い。(略)
だから、やみくもに丁寧にするのではなく、バランスを考え、顧客にとって本当に意味のあるところを集中的に丁寧にすればよいと考えてはどうだろうか」(赤羽雄二『速さは全てを解決する』/ダイヤモンド社)
■相手に確認すべき5つのこと
相手が求めていないことに時間を使わないためには、相手の満足ライン(相手が求めている合格ライン)を把握する必要があります。そのためには、
●この仕事の目的は何か
●一番大切な要素、抜いてはいけない要素は何なのか
●外してはいけないポイントはどこか
●どこまでのレベルを求めているか
●締め切りはいつまでか
を相手に確認することがポイントです。
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ライター、文道 代表
有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。編集プロダクションにて、企業PR誌や一般誌、書籍の編集・ライティングに従事。編集プロダクション退社後、出版社にて自動車専門誌2誌の編集長を歴任。2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。著書に『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(いずれも日経BP)、『文章力が、最強の武器である。』(SBクリエイティブ)がある。
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ライター、文道 取締役
有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。日本女子大学文学部(現人間社会学部)教育学科卒業。編集プロダクションにて、雑誌や企業PR誌、書籍の編集・ライティングに従事。その後、フリーランスとして、企業のウェブサイトのコンテンツ制作にも関わる。著書に『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(いずれも日経BP)がある。
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(ライター、文道 代表 藤吉 豊、ライター、文道 取締役 小川 真理子)
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