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1959年生まれの年金平均額は12万円、2004年生まれは22万円…専業主婦と働く妻で夫婦の年金生活に天と地の差

プレジデントオンライン / 2024年9月20日 10時15分

厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」ウェブサイトより

老後生活を困窮化させないためにはどうしたらいいのか。FPの山崎俊輔さんは「今の高齢者に比べ、現役世代の所得代替率は相対的に低下しますが、だからといって老後破綻するわけではありません。むしろ女性の正社員率の高まりで、夫婦2馬力で国民年金+厚生年金をもらえれば暮らし向きはよくなる」という――。

5年に一度、国が実施する「年金財政検証」。年金制度の未来予測を行い、健全性の維持を確認したり、法律改正に役立つ試算を追加で行ったりします。

7月に公表された最新の検証結果をざっくりおさらいすると、年金の運用は好調に推移し、女性と高齢者の働く人たちは想定以上の大幅増(保険料負担者の増)となり、年金財政にポジティブに作用しています。少子化の進展が気になるものの、寿命の延びも落ち着いていて、これらが年金財政的を大きくマイナスにすることはありませんでした。

この年金財政検証で毎回、鍵となる言葉があります。それは後で詳述する「所得代替率」です。今回、この数字の低下が抑えられました。前回の検証では61.7%から51.9~50.8%への低下(ケースI~III)でしたが、今回は61.2%から56.9%への低下にとどまった。つまり低下幅が縮小したことになります。

相当悪い経済見通し(過去30年と同等の経済変化しか未来にも起きない)を織り込んだ場合であっても、前回が46.5~44.5%まで下がるとしたところを今回は50.4%までの低下に抑えており、低下がかなり食い止められています。

■所得代替率は、制度の話として有意義だが…

さて、この「所得代替率」とは何か。少しわかりづらい概念ですが、公的年金の給付水準を表すものさしで、シンプルにいえば「現役世代と年金世代とで給与と年金の比率がどれくらい変わるか」。年金を65歳でもらい始めたときの額が、そのときの現役世代男性の平均手取り収入の何%にあたるかを示す指標です。

検証時は、「現役世代」については男性の平均手取り賃金額を、また「年金世代」については男性が会社員+女性が専業主婦というケースのモデル年金額を抽出して、両者を比較しています。

この場合の女性は、「一度も仕事せずに40年専業主婦」という設定になっており、共働きの増えた現代ではマッチしていません。女性も働いている分を加味したらもらえる年金はどうなるか、また未婚者の場合、ひとりぶんの年金だとどうなるかも気になるところですが、そこが現状フォローされていないのは違和感を覚えるところです。

■所得代替率が高い高齢者世代でも老後破産する人がいる理由

現在の高齢者は、この所得代替率が高く、「世代的に得をしている世代」とされています。ところが、年金生活者で破産したり貧困状態に陥ったりした人などが報道されることもあります。矛盾した現象に、現役世代は「自分も老後はこうなるのか」と不安を覚えます。

今、65歳以上の人口は3600万人を超えていますが、彼らの中に生活保護の受給者が飛びぬけて多いわけではありません。調べると、生活保護の対象となっている高齢者世帯は91万世帯。高齢者のいる世帯数は約2580万なので、大多数は年金破産していません。

では、老後に困窮する人はどんな人が多いのか。(1)年金未納をしていてもらう年金額が少なすぎる、(2)国民年金しかもらえない働き方だったので満額の年金でも生活が苦しい、(3)リタイア後もお金を使い過ぎてしまい貯金ゼロとなってしまった(家事がまったくできず、すべて外食とか)、といった事情が多いようにみえます。

メディアはこうした“レアケース”をクローズアップして年金制度の不安を煽ることがありますが、大事なのは所得代替率の低下とか漠然とした年金不安論とかではなく、「自分(個人)の年金はどうか」を考えるステージに移行するべきでしょう。

【図表1】生活保護の被保護者調査(令和6年4月分概数)
厚生労働省プレスリリースより

【参考】
総務省統計局「統計トピックスNo.132 1.高齢者の人口」(2022年9月18日)
厚生労働省プレスリリース(2024年7月3日)

■若い人も個人ベースでは「所得代替率の高い人たち」が誕生

今回の年金財政検証結果で、多くの専門家が注目したデータがあります。それは、将来の男女および世代ごとの年金水準の予想(分布推計という資料)です。

今の時代、ほとんどの人が会社員として働きます。男女どちらもそうですし、とりわけ女性は離職せず働き続ける人、続けようとする人が増えています。女性が働き続けると、老後は「専業主婦:国民年金のみ」から「会社員:国民年金と厚生年金」と、もらえる年金の額が変化します。現役時に天引きされた分、老後の収入がぐっと増えるわけです。

資料によれば、現在65歳(1959年生まれ)の女性は、その4割強が厚生年金の期間が10年未満です。つまり、結婚退職や子育て退職後は主に専業主婦として過ごしていると思われます。一方、現在20歳(2004年生まれ)の予想では、全体の3分の2が厚生年金に30年以上加入するグループに入る可能性があります。

加入する制度としては、前者は「国民年金のみ、あるいは厚生年金が少し上乗せ」で、後者は「国民年金と厚生年金がしっかり上乗せ」という違いになるはずです。

この影響を年金額で見ると、そのインパクトが明らかになります。1959年生まれの女性の年金額のボリュームゾーンが月7万~10万円のところ(平均12.1万円)、2004年生まれの予想では、月20万円以上の年金をもらう人たちがほぼ3分の2になります(平均22.5万円)。

12万円から22万円へ。平均額が80%以上増えるなんてウソのような違いですが、女性も働く時代は女性も年金を多くもらえる。月々厚生年金保険料を払うことはしんどいですが、老後はその分豊かな年金生活ができる女性が増えるということです。

これなら、おひとりさまでもなんとかやりくりできそうですし(大卒初任給の手取りくらいはもらえるイメージ)、夫婦でそれぞれが厚生年金をもらえる家庭なら、老後も2馬力の生活となり暮らし向きは楽になるでしょう。

■個人にとって重要なのは「自分の年金を多くもらう方法」を知ること

確かに現在の高齢者の所得代替率は高く、それに比べれば、それより下の世代のそれは低く、損をしている、「世代間不公平で若い人は年金が減らされる」というイメージを抱く人は多いでしょう。しかし、前出の2馬力生活がスタンダードになった場合、こうした不安や不満を覆すほどのインパクトを秘めています。

もちろん、年金額には個人差があります。会社員であった期間(長く保険料を払う→年金額が増える)、会社員であった時期の年収(年収が多い→保険料が多く引かれる→年金増える)が人それぞれで、それによって年金額も変わります。

自分の年金額の見込みを知りたい場合は、「ねんきん定期便」+「公的年金シミュレーター」が有効です。

「ねんきん定期便」では今現在までに払った保険料や納付期間に応じた年金額を示されています。しばしば30歳の人が自分の年金見込み額を見て「少ない!」と落胆するようなケースが多いのですが、定期便に書かれた額は65歳のときにもらえる額ではなく「20~30歳のあいだに払った分の年金見込額」。つまり「30~65歳までの保険料に見合う年金額」は含まれていません。

では、「ねんきん定期便」に示された過去の実績データを活用し、このまま働き続けたらどうなるか、あるいはこのあと会社を辞めたらどうなるか、年金額の未来図を知りたい場合はどうするか。今度は「公的年金シミュレーター」を使います。

ねんきん定期便には公的年金シミュレーターと連携するQRコードがついています。これを使うと初期入力が終わった段階までスキップされ、自分の65歳までの加入状況をいくつか選択するだけで、自分の年金額見込みが概算できる仕組みとなっています。

「世代間不公平の象徴」「少子化でどうせ破綻する」のような10年遅れのイメージで年金を考えているのはいかにももったいないことです。所得代替率で考えている限り、いつまでも古い思考に引きずられてしまいます。それよりも「若い世代ほど、実は年金を多くもらえる可能性がある」という点に目を向けてみてはどうでしょうか。

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山崎 俊輔(やまさき・しゅんすけ)
ファイナンシャルプランナー
フィナンシャル・ウィズダム代表。連載12本を数える人気コラムニスト。『マネーハック大全』など著書多数。

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(ファイナンシャルプランナー 山崎 俊輔)

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