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「三菱商事、伊藤忠、ゴールドマン・サックス」がずらり…偏差値55なのに就職実績"最強"の「地方マイナー大学」の秘密

プレジデントオンライン / 2024年9月22日 10時15分

三菱商事株式会社の看板。=2022年11月30日、東京都 - 写真提供=日刊工業新聞/共同通信イメージズ

一流企業にコスパ良く入るにはどうすればいいのか。学歴研究家の伊藤滉一郎さんは「就職に強いのは、東大や早慶のような首都圏の有名大学だけではない。三菱商事やゴールドマン・サックスなど最難関企業への入社も狙える『高コスパ』の地方大学がある」という――。

■平均年収2000万円超の最強企業「三菱商事」

今回は民間就活の雄・総合商社の中でもひときわ存在感を放つ、三菱商事とその採用学歴について論じていきたい。

総合商社とは、海外との輸出入貿易を行う商社のうち、特に幅広い商品・サービスを扱う企業のことを指す。これに対し、特定の分野に特化して業務を行う商社を専門商社という。

三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、住友商事、丸紅の5社を総称して「五大商社」と呼ぶことが多い。これに双日と豊田通商を加え、「七大商社」と呼ぶこともある。SNSで「商社マン」と持て囃されているのは主に上記の会社に属する者たちであり、専門商社に勤める人をこうは呼ばない。

総合商社は東大をはじめとする旧帝大や早慶など、最難関の就職を狙う優秀な大学生たちから、外資のコンサルティング会社などと並んで憧れの的となっている。その理由のひとつとして、べらぼうに高い年収がある。

五大商社の2024年3月期の平均年間給与は、それぞれ三菱商事2090万円、三井物産1899万円、伊藤忠商事1753万円、住友商事1758万円、丸紅1654万円となっている。新入社員や女性の一般職も含めての「平均」がここまで高いのは驚異的である。

総合商社ではモノを作っているわけではないため、工場や在庫にかかるコストや管理費用がかからず、運転資金を膨大な人件費に充てられるのだ。

■「ガリ勉して医者になるより三菱商事のほうが良い?」

さらに、ここ数年における総合商社の業績は絶好調である。

投資家界のレジェンドであるウォーレン・バフェット氏が日本の総合商社に目をつけた2020年以降、商社の株価は高騰することとなった。ウクライナ危機などの地政学リスクによって資源価格が高騰したことも手伝って、三菱商事、三井物産は初めて純利益1兆円を叩き出した。この圧倒的な業績がボーナスとして社員に還元されているのである。

総合商社の中でもひときわ存在感を放つのが三菱商事である。総合商社の中でトップに君臨し、「国内最強の民間企業」とも言われている。実際、総合商社に複数内定した場合、ほぼ全員が三菱商事に行くという。

2000万円を超える平均年収に加え、年間のボーナスが1000万円を超えたという逸話もある。とんでもない話だ。

最近X上では、「ガリ勉して医者になるより三菱商事のほうが良いのではないか?」といった話題が定期的に勃発するほどである。「医者になるのと商社マンになるのとではどちらが難しいか?」など途方もない議題を永遠と議論している救えない界隈もある。

当然だが、総合商社、ましてや三菱商事に入社できるのは一握りの学生であり、100倍を超えるとも言われる大変厳しい選抜を突破する必要がある。五大商社の採用人数はいずれも例年100人程度であり、すべて足し合わせても毎年の新卒採用が数百人の選ばれし精鋭なのだ。

それでは三菱商事にはどのような性質の学生が入社しているのだろうか。

■大企業に入社するための最低ラインは「MARCH」

まずは三菱商事の採用大学ランキング(「大学通信」調べ)を見ていきたい。

【図表】三菱商事「採用大学」ランキング2023
図表=「大学通信」のデータを基にプレジデントオンライン編集部作成

早慶が異様に多いのはさておき、きれいに学歴順に並んでいることがお分かりだろう。

最低クラスに地方旧帝大やMARCHが来るのだから驚きである。これには「学歴フィルター」の存在を感じずにはいられない。

学歴フィルターとは、採用活動において、企業側が採用のターゲットとする大学を絞り、応募学生をふるいにかけるための選考基準である。総合商社に限らず、多くの国内の大企業では、こちらの暗黙の足切り基準が設けられている。

「旧帝早慶以上」「MARCH以上」「日東駒専以上」など、会社によってその基準はまちまちだが、その暗黙の基準は確かに存在している。某日系大企業で人事部長をやっていた筆者の父親も、「学歴フィルターを設けないと効率的に採用活動ができない」と話していた。

三菱商事に限らず、誰もが知る大企業であれば「MARCH以上」の学生を採用するという暗黙のルールを設けていることが多い。たしかに、学生を個人単位で見れば、MARCH未満の大学であっても優秀な人はいるのだろうが、早慶MARCHの中から採用者を探すのと、無名大学の中から原石を見つけ出すのとでは、その割合がまったく違うことは自明だろう。

■「民間就職の実績」では、東大と慶應はあまり変わらない

何万人もの応募者の中から内定者を発掘する人事部にとっては、こうしたフィルターを重宝するのは当たり前の話である。「学歴フィルターは廃止しろ」「学生個々人の資質を見るべき」などと声高に叫んでいる人には残念なお知らせだが、新卒一括大量採用の流れが変わらない限り、フィルターを完全に撤廃することは難しいだろう。

つまり、三菱商事のような一流の大企業への就職を見据えた場合、学歴フィルターを突破できるような大学に入っておく必要が最低限あるということだ。

前述の三菱商事の採用大学ランキングを見ると、早慶出身者の多さが目立つ。その背景には、就活に対する「意識の高さ」がある。中でも、国内で最も民間就活に熱心な大学はどこかと言われたら、私は慶應義塾大学と答える。それに次いで早稲田大学だろう。東大や京大は試験にはめっぽう強いが、学生の民間就活への意識はそこまで高くない(ただし、司法予備試験などへの合格率はやはり高い)。

そのため、民間就職の実績では東大と慶應はあまり変わらないという事態が生じている(入試難易度は雲泥の差なのに!)。

慶應文系は、国内最強の「就職予備校」だといっても過言ではない。最難関企業のひとつである三菱商事への入社を目指すなら、慶應は「王道」だと言えるだろう。

そんなコスパ最強の慶應文系に滑り込むための「最短ルート」をお伝えしていきたい。

■実質1科目で入れて、三菱商事に就職可能な「神コスパ」学部

結論から言うと、一般的な高校に通う「普通の高校生」が慶應を目指すなら、早々に科目を絞って文学部やSFC(総合政策学部・環境情報学部)に滑り込むのが最も現実的だろう。偏差値30からSFCに入学したビリギャルはまさにこのケースである。

大手企業には学歴フィルターこそあれど、「学部フィルター」を設けている会社は少ないので、とにかく入りやすい学部に滑り込んでおくことをお勧めしたい(その証拠に近年では慶應SFCから三菱商事やゴールドマン・サックス、早稲田スポ科からマッキンゼー就職者が出ている)。

専願で慶應を目指す場合、入試負担は極めて軽いと言って良い。

本キャンパスの学部である法、経済、商、文は「英語+社会+小論文(経済と商は数学受験も可)」の実質2科目で入れるし、SFC(総合政策学部、環境情報学部)に関して言えば、「英語or数学+小論文」という事実上の1科目入試を展開している。

慶應義塾大学SFC(総合政策学部・環境情報学部)
慶應義塾大学SFC(総合政策学部・環境情報学部)(写真=yuichi hayakawa/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons)

そのため早いうちから科目を絞り、志望学部の出題傾向に合わせた対策をすることで、合格に手が届く可能性は高まるだろう。

ただ、科目が少ないとはいえ、2~3科目を偏差値70程度(河合塾基準)にまで上げておく必要がある。特に英語は積み上げが必要な科目であり、付け焼き刃の対策でなんとかできる代物ではない。そのため、高校2年までは学習時間の半分以上を英語に充ててしまっても良いだろう。私立文系入試は英語で決まるのである。

■地方進学校に蔓延する「国公立至上主義」は無視して良い

地方の進学校に通う生徒は、なかなかこうした勉強はしづらいかもしれない。

地方の公立進学校では今でも強烈な「国公立至上主義」が蔓延しており、東京の私大よりも地元の国公立進学を促す風潮があるためだ。

しかし、どうしても慶應に行きたい諸君はそんな空気は無視してしまって良いだろう。東大京大レベルの受験生が片手間で対策するならともかく、地元の国立大学が現実的な学力レベルでは、先生に言われるがまま全科目勉強していたらほぼ間違いなく慶應には受からないからだ。

実際、前述のランキングを見ればお分かりだろうが、地方の大学から総合商社に行く人は非常に少ない。野心のある受験生諸君は教師からの圧をはねのけ、指定校推薦でも私立専願でも、手段は問わないので早慶文系に入ってしまおう。

ただ、慶應に入学したからもう安泰というわけではない。三菱商事を視野に入れる人がここで安心して手を緩めるのは禁物である。

まず、一念発起して一般入試で早慶に入ってきた学生は、首都圏の超名門校や内部(附属校)から上がってきた学生と比較するとかなりのハンデを背負っているということを自覚すべきである。実際、商社や大手広告代理店に内定する学生は、内部生や体育会出身者の割合が非常に高い。

実家の太さも人脈も持たない一般的な早慶文系の学生は、体育会に入る、留学をする、早い時期からインターンをするなどして早期から武器を身につけ、就活に臨むことをお勧めする。

■「マイナー大学」から三菱商事、GSに続々内定のワケ

慶應文系がコスパ良いとは言ったものの、東京の私大は金銭的に厳しい……という声もあるだろう。そこで、三菱商事への入社も狙えるおすすめの地方大学を紹介する。

私が特に推したいのは、滋賀県に所在する滋賀大学だ。

「5S」というマイナーな大学群(※)の一角を占めているのだが、学歴界隈で話題に上ることは少ないのが実情だ。

※:埼玉大学・信州大学・新潟大学・静岡大学・滋賀大学

入学難易度は河合塾の偏差値で55と、一般的な地方大学のレベル感である。旧帝大からは1、2ランク下がり、埼玉大学や静岡大学と同レベル帯の難易度と言って良いだろう。

それにもかかわらず、就職実績を見てみるとやたら華やかなのだ。

総合商社や外資の超有名企業の採用大学一覧の中に、東大、京大、一橋、早慶といった名だたる大学と並んで、滋賀大学がぽつんと顔を出している。

経済学部の過去5年の就職実績を見ていくと、ゴールドマン・サックス、三菱商事、伊藤忠商事、住友商事など、「地方マイナー大」とは思えないとんでもない顔ぶれが並ぶ。

同大学には前身の彦根高等商業学校の時代から「近江商人」の学校というプライドがあるので、大学の就職課が民間就活に大変熱心なのだそうだ。戦前から続く経済学部の同窓会組織「陵水会」のOB・OGによる支援も手厚いという。

滋賀大学経済学部講堂
滋賀大学経済学部講堂(写真=yuichi hayakawa/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons)

■戦略的に努力を続ければ、「国内最強の民間企業」への道は開ける

また、同大学のゼミ活動も企業から高く評価されている。中でも経済学部の宮西賢次准教授のゼミは「名門」と言われており、三菱商事をはじめ有名企業に多くの学生を送り込んでいる。

ゼミでは財務諸表分析やファイナンスなどを学び、欧米ビジネス式の実践的なトレーニングが行われる。ゼミ生たちに求められる勉強量は膨大だ。夏休みには「8時間耐久ゼミ」が週に1回開かれ、企業財務に関する白熱した議論が交わされる。大学を休学して留学を経験するゼミ生も多い。これにより、学生たちは徹底的に鍛えられ、見違えるほど成長するとのこと。学部HPや大学広報誌を見ても、宮西ゼミ出身者たちが超大手企業への内定を続々と報告している。

さらに、あまり知られていないのだが、なんと滋賀大学は文系3科目の「私文」型入試で入学することができる。入学難易度は関関同立クラスだが、文系3科目で「国立大学」のブランドが手に入るのに加え、超大企業への道も開けるのだから、やはり相当コスパが高い。

他にも、神戸大学や小樽商科大学は「旧高商」と呼ばれる戦前の高等商業学校を母体とする大学であり、民間就職に強い傾向がある。首都圏の私大が経済的理由で難しい地方の学生は、ぜひ目を向けてみてほしい。

このように、一般的な高校生であっても戦略的に受験校を選んで学歴フィルターを突破し、大学入学後もゼミ、留学、体育会などを通じて不断の努力を積むことができれば、「国内最強の民間企業」である三菱商事への道が開けるだろう。

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伊藤 滉一郎(いとう・こういちろう)
受験・学歴研究家、じゅそうけん代表
1996年愛知県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、メガバンクに就職。2022年じゅそうけん合同会社を立ち上げ、X(旧Twitter)、InstagramなどのSNSコンサルティングサービスを展開する。高学歴1000人以上への受験に関するインタビューや独自のリサーチで得た情報を、XやYouTube、Webメディアなどで発信している。著書に『中学受験 子どもの人生を本気で考えた受験校選び戦略』(KADOKAWA)、『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)がある。

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(受験・学歴研究家、じゅそうけん代表 伊藤 滉一郎)

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