たった1万2千円の値下げでiPhone 15を買ってはいけない…iPhone 16をITライターが「買い」と断言する3つの理由
プレジデントオンライン / 2024年9月19日 16時15分
■円高差益還元はなし? それでも満足なiPhone 16のハイスペック
2024年9月10日(火)未明に海外イベントにて発表され、20日(金)より店頭販売が開始される「iPhone 16」シリーズ。気になる価格は据え置きとなっており、その為替レートは図表1の通り。iPhone 16およびiPhone 16 Plusという、いわゆる「無印モデル」が、「Proモデル」と比べてわずかに割安となっているが、これはほとんど誤差と言っていいだろう。昨年9月は1ドル=147円前後でしかも円安傾向があったのに対し、今年の発表時は1ドル=143円、さらに本稿執筆時点で140円前後まで円高が進んでいることを考えると、むしろトータルでは割高になっているようにも感じられる。
なお、既存の「iPhone 15」シリーズは今後も併売され、新モデル登場に合わせて価格を改定。無印のiPhone 15が各モデル1万2000円、画面が少し大きいiPhone 15 Plusが各モデル1万5000円値引きされることになった。携帯電話ショップなどの旧機種値引きキャンペーンなども併せれば、実際にはより価格差が大きくなっているはずだ。
■iPhone 16を買うべき理由その1、CPUが初めてProと同世代に
しかし、それでも新発売のiPhone 16はかなりの買い得モデルで、1~2万円程度の価格差を理由にiPhone 15を選ぶのは「悪手」だと断言できる。
その第一の理由は、ハードウエアスペックがこれまでにないレベルで大きくジャンプアップしているから。これまでの無印モデルは、Proモデルが前年に採用していたSoC(CPUも含めた多機能チップ)の「おさがり」を搭載するのが常であったのだが、「iPhone 16」シリーズでは、無印モデルもProモデルと同じ最新「A18」世代のSoCを搭載(ただしProモデル向けは「A18 Pro」という上位グレード)。これにより、iPhone 15と比べてCPU性能が最大約1.3倍に(4年前のiPhone 12と比べると最大約1.6倍)、グラフィック性能は約1.4倍に(iPhone 12と比べると最大約2倍)と大幅パワーアップしているのだ。
さらに、公式には非公開の内蔵メモリー(RAM)についても、Appleのハードウエアテクノロジー担当シニアヴァイスプレジデントJohny Srouji氏が発売前のインタビューで「無印モデルもProモデル同等の8GBメモリを搭載する」と発言した(無印はiPhone 13以来iPhone 15まで、ずっと6GBだった)。複数アプリを切り換えながら利用する際に重要な内蔵メモリーは、動作速度だけでなく安定性にも大きく寄与。今はまだ6GBでも十分に快適だが、今後、数年使っていく中で各アプリ(特にゲームなど)が求めるメモリサイズがさらに大きくなっていくであろうことを考えれば、8GB搭載は非常にありがたい進化と言えるだろう。
■理由その2、「光学2倍ズーム相当+マクロ撮影」のカメラが使える
もちろん、iPhone 16が買い得な理由はそれだけではない。第二の理由はカメラ機能の大幅進化だ。これまでのiPhoneはProモデルが3眼カメラ、無印モデルが2眼カメラというかたちに機能差を付けており、iPhone 16も2眼カメラのままなのだが、従来同様の広角撮影(26mm相当)、超広角撮影(13mm相当)に加え、広角撮影時に最大2倍の光学ズームイン撮影(52mm相当)、さらにマクロ撮影(近接拡大撮影)と空間写真撮影も可能になった。従来モデルと比べて撮影できる領域が劇的に拡大しており、写真好きならこれだけでもiPhone16を選ぶ理由になりそうだ
なお、聞き慣れない「空間写真」とは、2つのカメラを使ってその場の情景を立体的に記録した3D写真のこと。現時点では再生に約60万円もする『Apple Vision Pro』が必要など、撮っても見る方法が限定されているのだが、子供の成長など、「今を逃すともう撮れない」被写体を空間写真で撮影しておけば、いつかもっと手軽に再生できる環境が出てきたときに、当時の思い出をよりリアルに振り返ることができるだろう。なお、iPhone 16では空間写真のほか、その動画版である「空間ビデオ」の撮影にも無印モデルとして初対応する。
■新機能のカメラコントロールボタンで、デジカメのように半押し
さらに「iPhone 16」シリーズだけのカメラ新機能として、本体右側面に「カメラコントロール」ボタンが新設された。これは、タッチジェスチャーにも対応する物理シャッターボタンとも言うべきもので、半押しでピントを合わせ、さらに押し込むとシャッターを切るというデジカメライクな操作感に加え、左右スライドでズーム操作なども可能に。カメラを起動してない状態で押し込んでカメラを直接起動することもできる。
ちなみにボタンの追加と言えば、昨年のiPhone 15 Proで初搭載された「アクションボタン」がiPhone 16にも搭載された。長押しすることで消音モードやフラッシュライトのオンオフなど、さまざまなアクションをお好みで設定できるなかなか便利なボタンだ。ここしばらく、スマートフォンは部品点数を少しでも減らし、製造コストと故障リスクの低減を目指してきたのだが、賛否両論の大胆すぎるシンプル化でその先鞭をつけてきたアップルが、ここに来て突然の方針転換したことは要注目の動きだ。こうした独自ボタンの追加も、シンプル化が行き着くところまでいって差別化が難しくなってきたスマートフォンの新たなトレンドになるかもしれない。
■理由その3、アップルがオリジナルのAI機能を強化した
そして第三の理由となるのが、2023年からChatGPTなどの登場でぐっと身近になった「AI」対応だ。アップルはこの点でGoogleやマイクロソフトにかなり遅れていたのだが、ここに来て、独自のAI機能「Apple Intelligence」(略してAI?)を開発し、大きく巻き返しを図ってきた。
Apple Intelligenceは、メールを書いたり、写真を加工したり、必要な情報を探したりといった普段使いの機能を賢いAIがサポートしてくれるというもの。これまでのiPhoneにもSiri(シリ)という音声アシスタント機能が備わっていて、簡単な計算やネット検索など、ちょっとした操作に便利だった。Apple Intelligenceはそれよりもはるかにできることが多く、より踏み込んだサポートをしてくれる。もちろんSiriもApple Intelligenceと深く融合しており、音声でより多くの操作が可能になる。
■AIがビジネスメールを校正し、内容の精査と振り分けも
たとえばメール機能ひとつとっても、取引先に送るメールの内容をビジネスメールとして問題ないか校正してくれたり、大量に届いたメールの内容を精査して優先度の高い順に並び替えたり、要約してくれたりする。積極的に利用しない場合でも、待ち受け画面に表示されるメール着信通知が冒頭数行のプレビュー(結局冒頭のあいさつ文しか表示されないことがほとんど)ではなく、内容を要約したものになるのはかなり便利そうだ。ほかにも多くの機能、アプリでAIを活用できるようになっており、「AIに興味はあるけど、使い方がよく分からない。めんどうくさそう」という人に響くのではないだろうか。
生成AIを利用した機能はCMなどでおなじみ「消しゴムマジック」など、Androidスマホがすでに多数実現しているが、「すでにある機能を、使いやすく、実用的なものにする」のはアップルの最も得意とするところ。残念ながら日本語版の提供は来年になる見込みだが(英語版は11月より提供開始予定)、待つ価値は十分にありそうだ。なお、発表イベントでは、Apple Intelligenceが今後さらにパワーアップしていくとも予告。Android勢も含め、今後はこうしたAI機能がスマートフォン進化の主軸となっていくだろう。
■AIに仕事を手伝ってもらいたくなっても、iPhone 15ではできない
ただし、このApple IntelligenceはAI処理の多くをiPhone内で実行することから本体に膨大なマシンパワーが求められる。そのため、対応モデルはiPhone 15 ProおよびiPhone 16 Pro、そしてiPhone 16に限定され、それ以前のモデルでは利用できない。iPhone 16がProモデルにも迫るパフォーマンスを備えているのも、それが理由なのだ。
スマートフォンの買い換えが4〜5年に一度だとすると、今、iPhone 16を選ばず、旧モデルを手にすると、その分、AI導入が遅れることになる。わずかな値引きで、その機会を失っていいのか、よく考えてみてほしい。
ここまでで大きく3つの「今、iPhone16を買うべき理由」を挙げてきたが、ほかにも、最新世代の無線LAN規格「Wi-Fi 7」対応や、ワイヤレス充電機能がより高速に充電できるようになるなど、iPhone 16は、まるで2世代分一気に進化させたようなインパクトのある機能向上を実現している。少なくとも多少低価格でもiPhone 15を選ぶ理由はほとんどないと言っても言い過ぎではないだろう。
■iPhone 17は独自モデムチップ搭載で「人柱」モデルになりそう?
iPhone 16 Proと比べても、その差は思った以上に少ない。カメラの光学5倍ズームや4K120fpsの動画撮影、常時表示対応ディスプレイなど、iPhone 16 Proだけのプレミアムは少なくないが、それらに3万5000円もの価格差を見いだせるかは人によるだろう。今回、Proモデルはその名のとおりさらに「プロフェッショナル向け」にシフトしているため(発表イベントではiPhone 16 Proを用いて映画を撮るようなデモが披露されていた)、一般ユーザーであれば無印モデルで十分に満足できるはずだ。
では、来年登場するであろう「iPhone 17(名称は予想)」はどうだろうか? 価格についてはこのまま順調に円高が進めば、安価になっているかもしれない(なっていてほしい)。ただ、今回、Apple Intelligence対応のためハードウエアスペックを大きく上げた反動はあるはずで、今回ほどの高性能化は望むべくもない。
また、次世代モデルでは通信の要となるモデムチップを実績あるクアルコム製から自社製に切り換えるという噂もある。モデムチップの開発には技術だけでなく膨大なノウハウが必要とされており、経験の浅いアップルはこの点に苦しみ、何度も搭載を断念・延期してきたと言われている。正直、その第一世代がトラブルとは無縁とは到底思えない。もし本当にiPhone 17にそれが搭載されるのであれば、人柱リスクはかなり高そうだ
以上の理由から、今、スマートフォンの買い換えを検討している人には、iPhone 16を強くおすすめする。ただし、このまま円高が進めば、半年後くらいに価格改定はあるかもしれない。なにも発売日に飛びつく必要はなく、2025年のApple Intelligence日本語版リリースを待ちつつ、円高が反映された新価格で買うというやり方もアリ……かも?
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デジタルグッズ&テクノロジーライター
1975年東京都生まれ。AIやVRなどの最新のデジタルテクノロジーや、PC、スマートフォン、デジタルカメラ、AV機器など、幅広くデジタル機器を愛好。一般誌から専門誌、企業オウンドメディアまで幅広く解説記事を執筆する。
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(デジタルグッズ&テクノロジーライター 山下 達也)
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