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小麦を食べる快楽は麻薬に匹敵…「3食ラーメン」の人気絵本作家が山手線に約3mの材木を担いで乗ったワケ

プレジデントオンライン / 2024年9月21日 10時15分

出所=『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』(主婦の友社)

50代の絵本作家・塚本やすしさんはこれまで20年間糖尿病とつきあってきた。原因は、暴飲暴食。ラーメンと酒が大好きだ。医師の白澤卓二は「小麦もアルコールも依存性があり、“小麦中毒”は自分の意志の力ではやめづらい」という――。

※本稿は、塚本やすし『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』(主婦の友社、監修:白澤卓二)の一部を再編集したものです。

■ラーメンがとにかく好きで3食ラーメンでもOK

子どもの頃からラーメンが好きだ。正直、3食ラーメンでもまったく問題ない。むしろ幸せだ。暴飲暴食している時期は、1日に2回ラーメン屋に行くこともあった。連続してラーメン屋をハシゴすることもあったくらいだ。

ダイエットをしていて、太ったりやせたりしていた頃も、ダイエット中も頭の中は大好きなラーメンのことばかりである。奥さんのことを考える時間より、ラーメンのことを考えている時間のほうが断然、多い。

結果、体重はどんどん増えていき、ブクブクと太る。自分がぶざまな体形になっているのは知っていたが、鏡やショーウインドウに映る自分の姿は見ないようにしていた。見るときはおなかを引っ込めたり、ほほをすぼめたり、眉間にしわをよせて歌舞伎役者のような顔をしてごまかしたりしていた。

外出先でトイレに行くと、鏡が目に入るのだが、自分の姿を見たくなく薄目になって手を洗っていた。

【Dr 白澤’sアドバイス】
ラーメンの小麦には依存性がある……小麦中毒は意志の力ではやめられない

塚本さんのイラスト日記を読んで、最初に感じたのが「典型的な小麦中毒だな」ということです。驚かれるかもしれませんが、近年の小麦は麻薬と同じような中毒をもたらすことが、最近になって明らかになったのです。

中毒をもたらすのは小麦に含まれている「グルテン」というタンパク質です。

グルテンは胃で小麦ポリペプチドという物質(エクソルフィンとも呼ばれる)に分解されるのですが、この物質は血液脳関門(脳に有害な物質が入らないよう、脳と脳以外を流れる血液を隔へだてるフィルターのようなもの)を突破し、脳のモルヒネ受容体(アヘンやモルヒネ、ヘロインなどを摂取したときに快感を感じるセンサー)と結びつき、快感を感じさせるのです。

エクソルフィンによる快感は非常に強く、麻薬に匹敵します。その結果、何が起こるかというと、「食べているときが幸せ」「食べていないと落ち着かない」「どうしても食べたい」と、食べ続けてしまう中毒に陥ります。これは、麻薬中毒者が麻薬をやめられない行動原理と同じです。

私は、なにげなく口に入れている食べ物のなかに、依存性をもたらすものがあることを知り、それらを「マイルドドラッグ」と呼んで注意喚起しています。最初にマイルドドラッグに注目したときは、砂糖や塩、油、スナック菓子などに注目していましたが、今では小麦以上のマイルドドラッグはないと思っています。

もう一つ気になったのが、ストレスと食欲との関係です。ストレスを感じているとき、脳はそれを打ち消すために強い幸福感を求めます。

ヒトが幸せを感じるのは、欲が満たされるときです。私たちはさまざまな欲を抱きますが、そのなかでも原始的で強烈なものが食欲・性欲・睡眠欲の三大欲です。これらは動物が生きるための本能として持っている欲求になります。

とてもシンプルで強い欲なので、それらが満たされたときには強烈な快感を味わいます。三大欲のなかで、最も手っとり早くできるのが「食べること」です。

セックスは一人ではできませんし、睡眠もそういつでも眠ることはできません。食べることは脳にとって一番手軽な幸せのスイッチといえます。食欲をコントロールしているのは脳です。「食べたい」と思う心は、脳が幸福感を求めてそう思わせている、そう考えると、食べたいという欲求を抑えられるのではないでしょうか。

■お酒も大好きで、毎日、浴びるように飲んでいた

ラーメンだけではない。お酒も大好きだ。コロナ禍の前は、毎日のように飲んでいた。これは仕事を始めた頃からずっとそうだ。

お酒も大好き
出所=『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』(主婦の友社)

毎夜、六本木や新宿の酒場で飲んで、仕事の憂さを晴らす。昼ごはんを食べながら、ビールを飲んだこともしばしばある。もちろん仕事中である。

酔ってイタズラもやった。若い頃には、新橋駅の噴水に飛び込んだことがある。そういえば、山手線の電車に、同僚と2人で3mほどの材木を担いで乗ったこともあったな。今ならすぐさまSNSで叩かれるだろう。

絵本作家として生活ができるようになっても、お酒を飲む量は減らない。忙しくなったのでむしろ増えた。そして、ありがたいことに取引先からの接待なんかもある。打ち合わせをしながら飲むこともあるので、ほとんど毎日飲んでいた。

子どもの頃から通っている浅草の「神谷バー」は、ミックスサンド、チョコレートパフェが食べられるのだがアルコールも有名だ。大ジョッキのビールと名物であるデンキブランを5杯飲むと倒れる。これで失敗したこともよくあった。

【Dr 白澤’sアドバイス】
お酒にも依存性あり過度な飲酒はとても危険

アルコールにも依存性があります。その弊害が認知されたのは、マイルドドラッグよりもずっと前のことで、アルコール依存症という病気として認められています。診断基準を満たした場合は、病院で依存症から抜け出すための治療を受けられます。

アルコール依存症に陥ると、お酒を飲んでいないと手が震(ふる)えたり、イライラしたり、暴れたりといった禁断症状が現れます。こうなると、自分の意志でアルコールを断つことは難しくなります。専門の施設でリハビリ治療を受けても、アルコール依存症から離脱するのはかなり時間がかかるといわれています。

アルコールは、長期間、多量に摂っているとがんのリスクが高まり、肝機能が低下して深刻な健康被害を招きます。人間関係を悪化させることもあります。それでもやめられない、わかっていてもやめられない、というのが依存症です。

「酒は飲んでも呑のまれるな」という言葉がありますが、まさしくそうですね。

■飲みすぎると事件が起こる

飲む量が増えると、お酒でのミスも増えた。特に、飲んだ帰りの電車では苦労をした。飲んだときに電車で乗り越したり、終点まで行ってしまったりすることは、誰でも一度は経験があるだろう。ただ、私の場合は何度もあるのだ。いったん座ったら終わりで、眠り込んで終点までいってしまうことが多々ある。

ビルの谷間でこうなる
出所=『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』(主婦の友社)

あるときは、渋谷から浅草まで電車に乗ったはずが、起きたら最終列車が渋谷駅に着いたところだった。渋谷からなら、タクシーで帰宅することもよくあるのだが、その日はグデングデンに酔っていて、今にも寝転びたい衝動に駆られてフラフラと駅を出た。

すると、目の前のビルのすき間に段ボールが敷かれているではないか。私はそこにバタッと横になり、朝までそこで寝てしまったのである。誰が段ボールを敷いたのかはわからない。毛布も置かれていた。ちょうどマンガ雑誌も転がっていたので枕にして寝た。

またあるときは「浅草駅」にたどり着くはずが、気がついたら「高尾駅」だった。折り返す電車はない。駅の周辺で24時間営業のファミレスなどがないかと探すが、一軒もない。

塚本やすし『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』(主婦の友社、監修:白澤卓二)
塚本やすし『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』(主婦の友社、監修:白澤卓二)

タクシーで帰宅するにも、高尾からだとさすがに料金が高い。しかたなく、トボトボ歩いていると3分間写真のボックスがあった。私はその中に入りイスの高さを調整し、カーテンを閉めて熟睡した。朝起きて記念に写真を撮って帰った。

迷子になることもあった。近眼なのでメガネをかけているのだが、飲んでいると酔ってはずすことがある。たいがいはカバンの中やポケットの中に入れるのだが、酔った私には探す能力がもはやない。

裸眼のまま店を出ると、目の前はホワイトアウト状態で1m先が見えない。そのせいで、なかなか駅にたどり着けないのである。そんなときは、公園のベンチで寝てしまうこともあった。たぶん、そんな酔っ払いが多かったのだろう。今の東京の公園のベンチは、寝られないように工夫がしてあることを知っている。

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塚本 やすし(つかもと・やすし)
絵本作家
東京都出身。『しんでくれた』(谷川俊太郎・詩/佼成出版社)で第25回けんぶち絵本の里大賞のびばからす賞、『やきざかなののろい』(ポプラ社)で第6回リブロ絵本大賞・第9回ようちえん絵本大賞。『戦争と平和を見つめる絵本 わたしの「やめて」』(自由と平和のための京大有志の会・文/朝日新聞出版)で第7回ようちえん絵本大賞など数多くの賞を受賞。日本全国の図書館やイベント会場、書店などで読み聞かせやライブペインティングを行っている。主な著書に『おにのパンや』『とんかつのぼうけん』『このすしなあに』『とうめいにんげんのしょくじ』(以上ポプラ社)など多数。

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白澤 卓二(しらさわ・たくじ)
白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長
医学博士。お茶の水健康長寿クリニック院長。白澤抗加齢医学研究所所長。テレビや雑誌、書籍などのわかりやすい健康解説が人気。『Dr.白澤の アルツハイマー革命 ボケた脳がよみがえる』(主婦の友社)、『脳の毒を出す食事』(ダイヤモンド社)、『「いつものパン」があなたを殺す』(訳・三笠書房)、『「お菓子中毒」を抜け出す方法』(祥伝社)など、著書・監修書多数。

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(絵本作家 塚本 やすし、白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長 白澤 卓二)

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