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スーパーから食料品が消える前にやってほしい…大地震が起きても「食べ物に困らない家」の"備蓄の新常識"

プレジデントオンライン / 2024年9月28日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArtMarie

災害の備えには何が必要か。備え・防災アドバイザーの高荷智也さんは「家の耐震補強や家具の転倒防止など、まずは『即死しない』ための対策が必要だ。それがクリアできたら、生き残るための食料備蓄に取り組んでほしい。カロリーベースの食料需給率が37%の日本で大災害が起きたら、食糧不足に陥るのは明らかだ」という――。

※本稿は、高荷智也『今日から始める本気の食料備蓄 家族と自分が生き延びるための防災備蓄メソッド』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

■食料備蓄は絶対に必要

社会インフラが高度に発達した現代の日本では、いつでもどこでも安くて美味しい食べ物を入手することができます。平時であれば、わざわざ自宅に食料を備蓄せずとも、24時間営業のコンビニなりファミレスなり、好きなところへ行けば欲しいだけの食べ物を得ることができるのです。

しかし、大地震、水害、噴火、感染症パンデミックなど、何かしらの災害が発生すると状況は変わります。自宅に危険が迫っていれば、食べ物を持って避難場所へ逃げることになりますし、停電や断水が生じれば普段通りの食事のしたくはできなくなります。さらに短期的にでもトラックなどの走れない状況になると、とたんにお店から食料品の姿が消えてしまいます。

平時とは異なる状況が1日で終わるのか、それとも1カ月以上継続するのかは、実際に災害が発生してみなければ分かりません。しかし、自然災害大国日本において、あるいは食料の多くを海外からの輸入に頼る日本において、ちょっとしたきっかけで食料が不足する状況は、「生じるかどうか」ではなく、「いつ生じるのか」と考えるべき対象です。

食料備蓄は必要か。期間の長さを問われなければ「絶対に必要です」と言い切ることができます。まずは防災リュックに1日分の行動食を。そして自宅へ3日分の非常食を。余裕があれば7日分の食料品の確保を。さらに、よりひどい状況に備えていきたいとお考えであれば、ぜひ本書(『今日から始める本気の食料備蓄』)を参考に、1カ月分、2カ月分、それ以上……、長期備蓄に取り組んでください。この本は、備蓄をがんばるあなたの味方です。

■まずは「即死しない」ための対策

家庭の防災において最優先で行うべき項目は「命を守る」対策です。非常食や飲料水の備蓄は重要ですが、大地震で建物がつぶれたり、洪水に巻きこまれて命を落としたりしてしまえば、備蓄品を食べる人はもういなくなります。

まず災害で即死しないための対策を行い、続いて命が助かった後の準備を行います。食料備蓄は、「普通の災害」から命を守ることを考えた際、「重要だが最優先ではない」準備であると言えるのです。備蓄の前に、大地震に備えた建物対策や、津波・洪水・噴火などの影響から避難するための準備を、確実に済ませることが優先です。

自宅で非常用バッグを準備する女性
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

■「最低3日分・できれば7日分」と言われる理由

ところで、非常食や飲料水を備蓄する際の目安として、「最低3日分・できれば7日分」という期間が示されます。この2つの期間には、ある重要な意味が込められているのです。

大地震や大規模水害などが発生した際、警察・消防・自衛隊など「公助」の力は、まず人命救助に振り向けられます。

災害発生から3日が経過すると、要救助者の生存率が大きく低下するため、発災72時間は救助が最優先されるのです。

生存者に対する生活支援が本格化するのは、発災から4日目以降となります。災害発生から3日間については、外部からの支援なしで生活をする必要があるため、「最低3日分の備蓄品」を準備しましょうと言われているのです。

一方、近い将来の発生が想定されている「首都直下地震」や「南海トラフ地震」など、多人数または広範囲に影響をもたらす災害が発生した場合は、発災から4日が経過しても、十分な生活支援を始めることができない可能性があります。

そのため、目安として発災から最大1週間、外部からの支援なしで生活をすることになる可能性があり、「できれば7日分」を目安に備蓄をすることが求められています。

この、「最低3日・できれば7日」分の防災備蓄品があれば、災害の影響で「餓死」する恐れは低いといえます。また、準備が不十分であっても、餓死しそうな方がそのまま放置されるということは、日本においては考えづらいでしょう。

しかし、これは「普通の災害」における想定です。私たちが経験したことのないような大災害、あるいは過去に経験したが、すでに忘れられてしまった危機。想定外の状況に直面した場合は、「餓死」という死因が現実化する可能性もあります。それはどのような状況なのでしょうか。

■何かあれば食料品の奪い合いが起こる

イメージしてみてください。

お昼ご飯を買うためにコンビニへ、あるいは夕飯の材料を買おうとスーパーへお出かけ。しかし店舗へ近づくにつれて人が増え始め、お店の入り口を見ると大行列、何事かと思いつつも行列に並び、30分かけてようやく入店。

やっと店内に入るも、食料品の棚という棚はすでに空っぽで、かろうじて購入できたのは、普段なら買わないメーカーの乾物と調味料が数点、それにお菓子の袋が少々。

翌日も朝から最寄りのお店へ向かうものの、降りたままのシャッターには「本日入荷の見込みはありません」の張り紙が。その翌日も、そのまた翌日も状況は変わらず。そして自宅に残された食料は、マヨネーズのボトルを1本残すのみ……。

お店に行っても食べ物が買えなくなったとして、あなたは「何日間生き延びる」ことができますか。日頃から防災備蓄に励んでいる家庭でなければ、長くても数日から1週間程度で干上がってしまうのではないでしょうか。

現代日本においても、経済的な理由によりその日の食事に困る世帯が増加していることは事実であり、これはこれで解決が必要な社会問題です。

一方で「今日の食事に困る」世帯は全体としては少数であり、日常レベルで「餓死」する恐れは低いといえます。しかし、この当たり前の状況が永遠に続く保証はどこにもないのです。

しばしば話題にあがる日本の「食料自給率」ですが、実は平時に参照すべき「生産額ベース」の国産率は71%もあり、意外にも多くの食料を国内で生産しています。ところが海外からの輸入が途絶えた場合に参照すべき「カロリーベース」の自給率はわずか37%と、非常時には、日々の食事を半分にしても全く足りなくなります。

食料危機がいつ生じるかは分かりません、しかしその日が訪れた際には、確実に食料品の奪い合いが生じるということを、認識しておくべきなのです。

食料品店の空の棚
写真=iStock.com/WoodysPhotos
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/WoodysPhotos

■「日常備蓄」がおすすめ

長期備蓄を当たり前にするには、「日常備蓄」による対応がおすすめです。日常備蓄とは文字通り、「日常で使うものを多めに備蓄し、普段から消費しつつ、なくなる前に補充する」方法です。備蓄品の調達・管理・入れ替えが自然になる優れた備蓄手法であり、各種のメリットも存在します。

まずは「慣れ」です。非常時だからといって、見たこともない国の言葉で書かれたラベル付きの、謎の非常食を美味しく食べることは難しいと思われます。しかし、日常備蓄により普段から食べているものを非常時にも食べられれば、安心して生活をすることができます。これは「普通の防災」においても重要です。

次に「お得」です。日常備蓄は、いつか食べたり使ったりするものを先に買っておく方法をとりますので、防災用に特別なお金を使うことがありません。長期保存できる非常食は性能が良い分やや割高ですので、大量に準備したい食料品については、お財布に優しいものを選ぶことがポイントです。

そして「楽」です。非常時にしか使わない食べ物や道具を大量に準備すると、定期的な期限チェックと入れ替えの手間が発生します。量が増えればなおさら大変です。日常備蓄であれば、日頃からどんどん消費して補充していきますので、期限チェックを個別に行う必要がなくなるのです。

■日常備蓄の基本は「ローリングストック」

日常備蓄の基本は「ローリングストック」です。従来の食料備蓄においては、賞味期限の長い非常食を大量に備蓄しておき、期限が来たら入れ替えをしつつ、非常時に備えるという方法がとられていました。しかしこの方法では賞味期限を迎えるたびに全量を入れ替える必要があり、手間もお金もかかります。

髙荷智也『今日から始める本気の食料備蓄 家族と自分が生き延びるための防災備蓄メソッド』(徳間書店)
高荷智也『今日から始める本気の食料備蓄 家族と自分が生き延びるための防災備蓄メソッド』(徳間書店)

そこで、非常食を普段から積極的に食べて消費と補充をすることで、入れ替えの負担を軽減する方法がとられるようになりました。これが「ローリングストック」です。当初、ローリングストックの対象は「非常食」でしたが、昨今では「普段から食べているもの」によるローリングストックも行われるようになりました。実際には、「日常備蓄」と「ローリングストック」は同じような意味で使われています。

利点の多いローリングストックですが、弱点もあります。それは「分量が増えると面倒くさくなる」ことです。

ローリングストックでは、平時から積極的に備蓄品を消費することで、定期的な期限チェックを不要にしています。「先入れ・先出し」の考え方の元、備蓄している在庫の中で、期限が近いものから順番に消費するため、常に新しい備蓄品を手元に残すことができるためです。

【図表1】ローリングストックの考え方
図表=『今日から始める本気の食料備蓄』書中より

■ローリングストックの弱点

備蓄品が少なければ、「消費のたびに期限チェックをして古いものを選ぶ」という作業は簡単ですが、備蓄品の数量全体が増えたり、ローリングストックする品目が増加したりすると、この都度チェックが大変になります。

例えば下記の【写真1】は、2008年頃のわが家の備蓄庫です。

ストックの棚
筆者提供
【写真1】上段の粉スープ・下段の乾麺などは賞味期限が見やすく入替しやすいが、中段のレトルト・缶詰は種類が多く、ここからピックアップするのは難しい。 - 筆者提供

ローリングストックで管理をしていましたが、備蓄の量と品数が増えるにしたがって、「ええと、粉スープで一番古いのは……」「レトルトカレーで最初に買ったのは……」と、期限チェックが煩雑になったり、思ったよりも消費速度が遅く、「ローリング」する前に賞味期限を迎えてしまったり、ということがよく生じるようになってしまったのです。

■改良版「コンテナストック」

「この箱が空になったら、1箱買ってくる」などの方法であれば、ローリングストックも行いやすいのですが、缶詰などサイズが小さく、かつ多品目をそろえるような備蓄品については、「保管箱の中から、今欲しい種類の缶詰の中で、一番古いものを探す」ことが難しくなってしまいます。

すると、次第に備蓄品を探して使うことが面倒になり、消費速度が落ち、期限内に入れ替えるという大前提が崩れてしまうのです。私自身がそうでした。そこで現在では、ローリングストックに加えてもうひとつ、新しい手法「コンテナストック」との併用をオススメしています。

ローリングストックの弱点である、「備蓄品が増えすぎると対応が難しくなる」という点を解消するために考えたのが、「コンテナストック」という日常備蓄の方法です。

2008年頃、家族3人分の、わが家の初期のコンテナストックの中身
筆者提供
2008年頃、家族3人分の、わが家の初期のコンテナストックの中身。当初はローリングストックをしていたが、品数が増えて管理しきれなくなり、この形式を考えて実行した。家族の人数や成長に合わせて箱の中身は少しずつ変わっている。 - 筆者提供

コンテナストックでは、備蓄したい食べ物を「物品単位」ではなく、適当な「箱単位」で管理します。例えば左ページで解説している「1年の箱」には、賞味期限が1年程度ある食べ物を自由に詰め込みます。この箱を10箱作り、毎月1箱開封し、翌月の開封日までに全て消費し、新たに補充して、また10カ月後に開封するのです。中に入れるものは、「非常時にも使う」ものですが、大前提として「平時に消費できるもの」を入れます。ローリングストックだと「あるだけ使いきってしまう嗜好品」なども、コンテナストックによる管理が向いています。

【図表2】コンテナストックのやり方
図表=『今日から始める本気の食料備蓄』書中より

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高荷 智也(たかに・ともや)
備え・防災アドバイザー
BCP策定アドバイザー、合同会社ソナエルワークス代表。「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに、個人に対しては“自分と家族が死なないための防災対策”のノウハウを、企業に対しては“経営改善にもつながる緊急時に役立つBCP”の作成手順を、自身が運営する防災Webサイト、各種メディアやセミナーを通じて解説するフリーのアドバイザー。著書に『今日から始める本気の食料備蓄 家族と自分が生き延びるための防災備蓄メソッド』(徳間書店)、『今日から始める家庭の防災計画 災害で死なない環境を作るための事前対策メソッド』(徳間書店)がある。

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(備え・防災アドバイザー 高荷 智也)

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