60代以降は酒・ラーメンを我慢しなくていい…そんな医師・和田秀樹が「これだけは絶対やめて」と語る意外な習慣
プレジデントオンライン / 2024年9月28日 8時15分
※本稿は、中尾ミエ、和田秀樹『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』(宝島社)の一部を再編集したものです。
■積極的に外食を活用したほうが良い
【中尾】中国や台湾みたいに屋台で食事をするのもにぎやかでいいですよね。
【和田】ええ、中国や台湾は外食率がとても高いんです。現実問題、外食が当たり前の国のほうが女性も働きやすい。意外と知られていないことですけれども。
【中尾】こうやって働く人たちが集まれるところが近くにあるといいですね。
【和田】日本人の悪いところで、お家のご飯のほうが外食より健康にいいと考えている。食事はね、年を取れば取るほどたくさんの種類の食べ物を摂ったほうがいいなと私は考えています。栄養素が足りないと何かしらの障害が出ることがありますから。
たとえば、亜鉛が欠乏すると味覚障害を起こすことはよく知られていますね。若い人だと亜鉛が足りなくても障害を起こすまでにはいかないのですが、年を取ってからは亜鉛が足りなくなるとかなりの確率で味覚障害になります。だから亜鉛を多く含んでいるカキとかニンニクを食べないといけない。けれども、お家ご飯だとなかなかそういう食材を使わなかったりするから不足しがちなんです。そういうときは外食がいい。
これはよくいろんなところで話しているのですが、ラーメンも健康にいいんです。みんな身体に悪いと思い込んでいるだけでそうではありません。昔と違って、今のラーメンのスープは無化調(化学調味料を使わない)が主流で、10〜15種類くらいの食材を入れて煮込んであるわけですよね。それでトッピングに野菜とメンマ、チャーシューがついて、野菜もタンパク質も摂れるし、当然、麺で炭水化物も摂れる。それだけでけっこうなバランス食になっていると思いますよ。
■年を取れば取るほど、肉を食べるべき
【和田】1日30種類のものを食べましょうと私たち医師は推奨していますけれども、幕の内弁当を食べるだけで15種類は摂れるんですよね。ですから、お家ご飯が健康にいいように一見みえるけれども、粗食だとどうしても種類が摂れないんです。昔は貧しいから品数の少ないものを食べていた。けれども年を取るとなぜか、そういう貧しい食に戻ってしまう人が多い。
【中尾】いろんな要因がありますよね。経済的なこともあるでしょうし、面倒臭いということもあるでしょう。
【和田】韓国や台湾に行くと、小皿で20皿くらいいろんな料理が出てきますよね。普段から高齢者を診察している医者からすると、あれはとてもいいですよ。大勢で食べに行ければ、コストを安く抑えることだってできるし、そのぶん、品数を増やせますしね。
【和田】高齢者の健康についてお話しすると、やはり60代以降は筋肉を落としてはダメですね。年を取ってから筋肉が落ちると足腰が弱り、歩けなくなる原因になります。前にお話ししたように、男性の場合は男性ホルモンが減ってくると筋肉が落ちてしまうから、筋肉を維持することが大事です。
男性も女性も肉体維持のためには、年を取れば取るほど、肉を食べるといいと思います。良質のタンパク質を摂取すること。そのとき問題になるのが、脂肪ですね。アメリカ人は脂肪の摂りすぎが問題で、心筋梗塞が多いのですが、逆に日本人は脂肪を摂らなさすぎる。いわゆる健康的なピチピチとした肌や胸、お尻というのは、全部脂肪ですから。脂肪を摂りすぎるのもいけないけれども、目の敵にしすぎてもいけない。
■60代以降の「食事制限ダイエット」は絶対NG
【中尾】昔の常識は今日の非常識になってきていますね。食べ物に関しても、私たちの年代はとくにそうだけれども、いろいろ勘違いしている部分が多い。今の脂肪の話にしてもそうです。第一、食用の油にしても、今は昔と違って、品質もいいですものね。
【和田】ええ、良質なものが増えました。あとは身体に良い油というものも確実にあります。DHAなどが含まれる魚の油とか、オリーブオイルなんかがそうですね。いずれにしろ、油・脂肪が足りなくなると、一気に老け込んでしまいますから。極端な話、週に2、3回トンカツを食べても身体に悪いわけではないと思いますよ。
【中尾】私もサラダにオリーブオイルをかけたりはしますけれども、体型の維持もあって、少し油ものは控えるようにしています。でもそれよりも身体を動かしていれば問題ないですよね。
【和田】とくに60代以降やってはいけないのは、食べ物を減らして痩せようとすることですね。これは確実に栄養不足になります。食べ物をきちんと摂って運動して痩せようとするほうがはるかに身体にいいと思います。ですから私自身は、60代以降は小太り程度がちょうど健康的でいいのかなと思います。とにかく食べ物はきちんと摂ること。年を取ってから元気を保ついちばん重要なポイントですね。
■遅くとも60代から運動習慣をつけるべき
【中尾】身体を動かせるようにしておくというのは、年を取ってから急に始めたら、やっぱり負担が大きいと思いますね。だから、それを習慣づけるためにはもっと早くから始めたほうがいい。それこそ60代から習慣づけないとダメですよ。
【和田】それはよいと思います。運動にもいろいろあって、ランニングやウォーキングまでいかなくても、散歩で十分効果があると思います。散歩はいろんな景色を見ながらできますから、脳にも刺激があっていいですね。あと、せっかく運動するならば、楽しく身体を動かすといい。ダンスが好きなら、思いきって習ってみるとか、するといいと思う。年を取ってからは怪我の心配もありますから、比較的楽な運動をやるといいでしょう。
水中ウォーキングもいいと思いますし、階段の下りを意識するのもいい。足の筋肉でも、上り階段に使う筋肉よりも下り階段に使う筋肉のほうが先に衰えやすい。だから、年を取ると階段の下りが怖くなる。そこで下りは手すりを使ってもいいからゆっくり、階段を降りてみる。あとはゆっくりした運動なんかもいいですね。太極拳なんかもとてもいいと思います。
【中尾】こと肉体維持の運動は、特別新しいことをやれということでもないと思いますね。散歩にしろ、階段の上り下りにしろ、億劫がらずに継続することが大事ですね。
■年を重ねると自然と酒量は落ちついてくる
【中尾】お酒は飲めるけどもうほとんど飲まなくなりましたね。年を取ると自然と身体が要求しなくなってきました。
【和田】昔から酒豪といわれる人が、年を取るとそうでもなくなる、みたいな話はよく聞きますね。私もだいぶ弱くなりました。以前は外食の際には、ワインも1人で1本くらい飲んでいましたが、今では2人で1本くらいですね。健康的に言えば、2人で1本くらいがいちばんいいとされています。
【中尾】それくらいでしたら今でも飲みますけれども、私たちが若い頃は変に、飲めるということが自慢みたいになっていましたから。一気飲みなんかも流行(はや)っていました。でもだんだんと次の日に影響するようになってきて、飲むと絶対後悔するので、そこまで飲まなくなりました。
【和田】飲みたいという気持ちは変わっていないのですが、飲んでいるうちにだんだんと眠くなってきたり、だるくなってきますね。
【中尾】若いうちは二日酔いも楽しめるんですけれども、年を取ると後悔することのほうが多いですね。また自分の適量もわかってきますから、それくらいが楽しく飲める。そこで自制心が働けばいい。
■「一人のみ」はできるだけ避けたほうがいい
【和田】私は最近、お酒の飲み方について、一人飲みはやめましょうと言っています。一人飲みをしていると、どんどん量が増えてきますし、うつっぽくなったり、アルコール依存症になりやすい。できるだけ、一人飲みは避けて、誰か飲む相手がいるといい。夫婦ならご主人と晩酌でもいい。もうひとつはお酒を飲む目的を酔うことにしない。楽しむために飲むことを心がけましょう、ということですね。
だから友人や仲間とコミュニケーションを深めるために飲む。愚痴をこぼしたりでもいいけれども、とにかく誰かと楽しむことを目的にしてお酒と付き合うほうがいい。一人飲みの典型ですけれども、酔い潰れて我を忘れたり、いやな世の中からの逃避目的で飲んだりしていると、量も増えるし、メンタルヘルス的にもよろしくない。
【中尾】精神的にもそうですけれども、肉体的にもそうですよ。そういうめちゃくちゃな飲み方をする人は、早死にする人が多いですよね。昔の大御所の方々はみんな酒豪でしたから、亡くなるのも早かったような気がします。
【和田】そうですね。そうやってお酒で自分の身体をいじめることが格好いい、みたいな変な風潮がありましたから。
【中尾】最近は若い人でもあえてお酒を飲まないという人もいるでしょう。
【和田】飲まなければ飲まないで、やはりコミュニケーションが取りづらくなりますね。こちらは飲んでいても、向こうが飲んでいないとしゃべりづらい。多少アルコールが入れば、馬鹿になりますから、一種の潤滑剤になる。
【中尾】楽しくお酒を飲んで、大はしゃぎした次の日は、そんなに残らないものですよね。ちゃんと発散していますから。
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歌手、俳優
1946年生まれ。62年のデビュー曲「可愛いベイビー」が大ヒット。以降、コンサート、TVドラマ、バラエティ、舞台、映画など幅広いジャンルで活躍する。著書に『76歳。今日も良日 年をとるほど楽しくなる70代の心得帖』(アスコム)。
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精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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(歌手、俳優 中尾 ミエ、精神科医 和田 秀樹)
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