パート帰りにスーパーで卵かけご飯専用醤油を買うとドーパミンが出る…40歳妻が画策した恐るべき復讐劇全貌
プレジデントオンライン / 2024年9月29日 10時15分
■値引きシールつきの「ちょっといいもの買い」が日課
「家計は毎月赤字。だから節約しよう、家計簿もがんばろうと思うのに、どうしても続けられない。自分の何がダメなのでしょうか?」
こう言って、客観的なアドバイスを求めてこられたのは、パートで働く古川マイさん(仮名・40歳)。夫(42歳・会社員)と一人息子(高校2年生)の3人で茨城県の賃貸アパートに住んでいます。
早速家計の状況をヒアリングしようとしましたが、本人も把握できていない部分が多く、分かったのはざっくりとした収支だけ。手取りの世帯月収は45万円で毎月5万円以上の赤字が出ており、その補填にボーナス用の預貯金口座(380万円)から毎月5万~6万円引き出していました。
大まかにはわかるけれど細かく支出を把握できない理由は何なのか。家計簿を続けられない原因は? と問うと、「とにかく毎日買い物に行っちゃって、レシートがどんどん増えていく。その山を見ただけで、心が折れてしまって……」との答え。
聞けば、マイさんは平日のパート帰りに、スーパーに寄るのが日課でした。買い物の回数が増えると、無駄遣いの機会も増えるのは自然なことなので、「赤字を脱出したいなら、買い物は1日おきにするなど少しずつ減らしてみては?」と提案すると――。
「でも、スーパーに寄るのは仕事帰りの楽しみなんです。というのも、夕方に行くと、ちょっといいものが割引になってるんです。無添加のソーセージ、ブランド店の漬け魚、こだわり産地の国産納豆など。たまに、卵かけごはん専用のお醤油とか、高級だしのもとといった珍しい調味料などが10%引きになっていると、すごく得した気分で買い物カゴに入れちゃいます。その瞬間、ドーパミンが出ているかもってくらい気分が高揚するんです」(マイさん)
目を輝かせ、買い物時の話をしてくれたマイさん。要は、賞味期限間近の値引き品をチェックするのが日々の楽しみということですが、限られた期限内に100%消費できているのでしょうか。
答えはNO。
「夫は仕事が多忙で、月によっては半分以上出張で不在が続くこともあります。出張がない日も深夜帰宅が多く、朝しか食べません。昨日、卵かけごはん専用のしょう油を出したら『賞味期限が切れているじゃないか』と拒否されました。息子も、寝坊して朝食抜きで学校に行くことが多い。そうこうしているうちに、賞味期限ギリギリの調味料などは、ほとんど使わないうちに捨てることになってしまう」(マイさん)
見切り品=賞味期限間近、つまり浪費予備軍。それを痛感しつつも、割引シールを見ると、つい手が伸びてしまうのだというマイさん。
■「成長しなくちゃ」と資格取得に月6万円
さらに話を聞いていくと、夫は子どもが幼い頃から多忙で、マイさんはずっとワンオペ育児。限界までストレスを溜め込んでいたことが分かりました。
「気づけば子どもは高校生になり、友達との時間や部活で過ごす時間が増えていく。周りの女友達も、子どもも、目標もあってイキイキしている。それに比べて、自分は毎日単調なパート仕事だけ。なんか置いていかれている気がして、むなしいんですよね」(マイさん)
そこでマイさんは、「自分も成長しなければ」と、習い事にのめりこむように。後で分かった事ですが、自身の習い事にかける費用は月にならすと6万円程度でした。
「自宅で学べる通信課程のウェブデザインの講座、マイクロソフトの技能検定、ヨガ講師などなど。でも、実になったかというと……どうでしょう」(マイさん)
お金が貯まったら何かを始め、分割払いのローンは貯まる一方。それを返済し切れないうちにまた次に手を出してしまう。その行動の裏には、ある計画もありました。
「実は息子が独立したら、離婚しようかなと秘かに計画しているんです。だから、収入につながりそうなウェブデザイン講座とかをがんばっていたんですけど……。今思えば、夫の給料を自己投資として使うことは、ちょっとした復讐心もあったのかも。食費も、一人で子育てをがんばっている自分への“ご褒美費”になっていたのかもしれません」(マイさん)
状況を話しているうちに、マイさんは自分の行動を客観視できてきたのか、どこに、なぜ浪費しているのか、赤字の原因が見えてきたようです。
では、何の費用がどれくらいに膨れ上がっていて、どれだけ削ればいいのか。判断材料のためにも、家計簿をつけてもらうことに。「自分はどうしたら記録が継続できるか」を本人に考えてもらいながら、方向性を以下のように定めました。大きな目標は、「レシートを溜めない」ことです。
■【家計簿を習慣づける3カ条】
① レシートを溜めない
リビングに、「シャーペン・レシート入れ・家計簿」の3点セットを常備し、帰宅したらすぐに財布からレシートを出し、レシート入れに入れる。そこにレシートが溜まってくると記録も溜まってることが目に見えて分かるし、リビングに3点セットを置くことで隙間時間に家計簿記入作業に取りかかりやすい。
② 支出はざっくり分かればOK
完璧を目指して一生懸命家計簿をつけようとするとかえって負担になり、続かなくなる。ざっくり分かればいいくらいの軽い気持ちでつけるようにする。
③ 家計記録は一週間単位で報告
本来は1カ月つけたらその写真を送ってもらうようにしているが、続かない人の場合、まずは一週間ごとに出すことを目標にし、ペースをつかんでもらう。
かくして、1カ月分の家計簿ができました。費目の中でも目立って膨らんでいたのは、月14万円の食費。マイさんの習い事費(「妻費」と分類)は6万円。9万8000円の教育費は、息子さんの私立高校の学費と習い事費です。学費はいいとして、食費と妻費がこれほど膨らんでしまったのは、上述の理由の通り。
食費については、まず買い物回数を減らすこと。少なくとも一週間に1回は買い物に行かない「支出0円デー」を作るようにしてもらいました。かつ、「自分へのご褒美」にちょっといいものを買うのはいいけれど、メリハリをつけてもらうことに。
習い事費については、その自己投資はどれだけ実になっているか振り返ってみることをアドバイス。ほとんど実になっていないことを反省したマイさんは、習い事費を6万円から1万8000円に大幅カット。食費は、月14万円から12万円まで削減できました。
■リビングに置いた家計簿で、夫婦の会話が増加
こうして減らしていく中で、マイさんの身に思わぬ変化が起きました。
リビングに家計簿セットを置いておくことで、夫が「何? 家計簿つけてるの?」と気付き、家計管理をネタに、夫婦の会話が増えていったのです。
最初は「どうせまた3日坊主じゃない?」といった冷ややかな反応だった夫が、マイさんがコツコツと続けているのを見て、「うちってどれぐらいかかってるの?」「今月はどう?」「いくらか残った?」など、家計に関心を持つように。マイさんも、「今月は、こういう入り用があってね」などと赤字の理由を話すことで、それまで溜め込んでた不安感が和らいでくのが実感できました。
「これまで、夫が不在だったから、自分一人で決めないといけないことが多かった。それがけっこう孤独でプレッシャーでした。でも、家計の悩みを少しずつ夫に話せるようになって、それがきっかけでいろんな話ができるようになっていき、すさんでいた気持ちがだんだん晴れていったんです。最近では、衝動買いも減ってきました。私に必要だったのは、資格取得の習い事やご褒美より、夫婦の会話だったのかもしれません」(マイさん)
家計と向き合う中で、自分の気持ちにも向き合うことができたマイさん。夫と家計の問題を共有できたことは、大きな進展だったようです。ただし今後、節約して残ったお金が「離婚を視野に入れた自己投資」から、「老後資金」へと順調に変わるかどうか、ワンオペの恨みが解消されるのか、それはもう少し様子を見てみないとわかりません。
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家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。
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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)
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