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「米・小麦にも多くのたんぱく質が含まれている」管理栄養士が勧めるヨボヨボにならない食事メニュー

プレジデントオンライン / 2024年9月30日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

中高年になると、生活習慣病の予防や治療のために肉や魚の摂取量を減らし、野菜中心の食生活に変える人も少なくない。しかし、管理栄養士の成田崇信さんは「むしろ40代後半からの中高年は、たんぱく質が不足しがち。筋肉量が減って歩行が困難にならないよう、たんぱく質をしっかり摂って筋肉量の維持をすることが重要だ」という――。

■中高年は筋肉量に気をつけたい

中高年への食事のアドバイスといえば、生活習慣病の予防や治療のためのものがメイン。そのため、「LDLコレステロールを下げるために加工肉は控えましょう」とか「がん予防のために赤身肉の食べ過ぎは要注意」などと言われがちです。すると、肉類はよくないもののように思えてしまいますね。

特に糖尿病や高血圧などの持病がある人に多いのですが、栄養相談で「健康のために肉類を食べないようにして、野菜や果物をたくさん食べるようにしています」という高齢の方に出会うこともあります。また、体重の増加や肥満、メタボリック症候群などが気になって、どちらかというと肉を食べることに罪悪感を持つ人も多いのではないでしょうか。

確かに野菜や果物が不足しないようにしたり、病気や肥満などの理由があれば過度のエネルギー(カロリー)や脂質を摂取しないようにすることは大切です。しかし、肉類を食べないというのは極端すぎます。

じつは中高年こそ、体の筋肉を維持するために、肉などからたんぱく質をしっかり摂ったほうがいいのです。ですから、栄養相談で肉を食べないと話される方には、たんぱく質の大切さについてお話しすることにしています。

■サルコペニア予防に「たんぱく質」

そもそも中高年になると、誰しも加齢によって自然と骨格筋の量は減少していくものです。しかし、ある程度以上、筋肉量が低下すると身体機能が低下する「サルコペニア」と呼ばれる状態になってしまいます。サルコペニアが進行すると、立ち上がりや歩行に支障をきたすようになり、より運動量が減少し、さらなる筋力低下を招きかねません。

実際の診療において、サルコペニアは「骨格筋量」、「握力」、歩行速度などの「身体機能」が一定以上低下しているかどうかを評価して診断されます。サルコペニアの特徴は、体を支えたり、歩行によく使われる「抗重力筋」と呼ばれる筋群の低下が進みやすいこと。そのため、立ち上がりや歩行に支障をきたし、進行すると日常の生活にも支障をきたし、介護が必要な状態になることもあります。

サルコペニアといえば筋肉量の低下、筋肉といえばたんぱく質……つまりサルコペニアの改善に最も重要な栄養素はたんぱく質です。ところが、この高齢者の健康に欠かせない栄養素であるたんぱく質が、高齢者では特に不足しやすいのです。これはなぜでしょうか。

■たんぱく質が不足しやすい理由

私たちの体を構成するたんぱく質は日々、分解と合成を繰り返していますが、食事からたんぱく質が常に供給されることで、体内のたんぱく質量が維持されています。ある程度以上の強度が高い運動をしながら、十分なたんぱく質を摂ると体内のたんぱく質はプラスに。反対に体を動かすことがなかったり、たんぱく質の摂取量が低下したりすると、主に筋肉が分解されて体内のたんぱく質はマイナスに傾きます。

30歳を過ぎると、特別に意識していない限り筋肉量は緩やかに低下していきますが、高齢期になるとガクッと筋肉量が減少する人がいます。これは高齢になるほど筋肉合成のためのスイッチが入りにくくなり、食事から摂取するたんぱく質量が多くないと合成のスイッチが入らなくなるためです。

成年期であれば、体内のたんぱく質量を維持するために必要な1日のたんぱく質量は、体重1kgあたり約0.8gと考えられています。つまり、日本人の平均的な体型の30歳男性(体重70kg)では1日約56gという計算になります。一方、高齢者では体重あたり約1.0~1.2gが必要とされるため、平均的な体型の70歳以上(体重62.4kg)の高齢男性では少なくとも1日約62.4gも必要な計算になり、十分な量のたんぱく質を確保することの難しさがわかると思います。

さらに年齢を重ねるとエネルギー消費量が少なくなり、必要な食事量も減るため、少ない食事で若い頃よりもたくさんのたんぱく質を摂らなければならず、これが高齢者のたんぱく質不足の大きな原因です。

たんぱく質豊富な食べ物
写真=iStock.com/fcafotodigital
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fcafotodigital

■たんぱく質をしっかり摂るには?

たんぱく質が多い食べ物といえば、肉や魚、卵といった動物性の食品を思い浮かべる人が多いと思います。実際にその通りなのですが、意外とご飯や小麦といった穀類にも多く含まれており、大事な供給源です。たんぱく質が不足しないための秘訣は、毎食しっかりとたんぱく質源になる、肉や魚、卵などの主菜とごはんなどの主食を用意し、1日の中で豆類や乳製品を取り入れることです。飲み物の牛乳、胃もたれの少ない豆腐は、量を摂りやすいので、重量あたりのたんぱく質が少なくても高齢者にとって有用な食品といえるでしょう。

【食品100gあたりのたんぱく質量】

食品名/100gあたりたんぱく質量

豚ロース肉 19.3g
豚バラ肉 14.4g
豚ヒレ肉 22.2g
シロ鮭 22.3g
カレイ 19.6g
卵 12.2g 1個約7g
絹ごし豆腐 5.3g(1人前150gで8g)
牛乳 3.3g(200mlで約7g)
ヨーグルト 3.6g

高齢になると料理の負担や買い物の困難により、毎食バランスのよい食事を用意することが困難になります。これもたんぱく質不足や低栄養の大きな要因です。加熱するだけで食べられる冷凍パックの煮物やレトルトの丼物、保存の効く卵や魚の缶詰などを常備するのもおすすめです。

歯が悪くて噛めない、胃もたれがするなどの理由で、肉や魚を食べる頻度が少ない場合には、卵や乳製品で補えるよう意識しましょう。和食に牛乳を加えた「乳和食」のレシピを調べると、参考になるかもしれません。

■高齢者でも運動で筋肉量は増えるのか

さて、高齢者でも一度落ちてしまった筋肉を取り戻すことは可能なのでしょうか。もちろん、不可能ではありません。年齢による生理的な筋力低下は避けられませんが、適切な筋力トレーニングと栄養療法の組み合わせで改善は十分に期待できます。

ただし、一度減少してしまった筋肉を取り戻すのは維持することよりも難しいため、筋肉量の減少が進む40代後半くらいから食事や運動に対する意識改革を進めたほうがいいでしょう。

栄養と運動は車の両輪であり、健康的な生活を送るため、どちらも欠かすことができないもの。高齢になって運動したり体を動かしたりする機会が少なくなると、食事は十分でも筋肉量が減少してしまいます。そうして筋肉量の減少が続くと、咀嚼や嚥下に必要な筋力までもが低下し、さらに栄養摂取にも支障をきたします。

栄養摂取が不十分な状態で運動をしても、筋肉のもとになる栄養が足りず、運動の効果がでないばかりか、却って筋肉の分解を進行させてしまう可能性さえあります。つまり、悪循環に陥ってしまうのです。

屋内でヨガのポーズ
写真=iStock.com/koumaru
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koumaru

■運動の前に食事を整えることが大切

こうしたことを避けるには、運動する前にしっかりと食事を整えることが重要です。

筋量アップが期待できるレベルの運動では、当然エネルギー消費量も上がりますので、摂取エネルギーが不足すると、筋肉がアミノ酸に分解され、血糖維持のために使われてしまいます。そのため、たんぱく質だけでなく十分なエネルギー確保も必要です。

そして、たんぱく質も量だけでなく、骨格筋の原料になる必須アミノ酸が不足してはいけません。中でもロイシンなどの分岐鎖アミノ酸(以下BCAA)は骨格筋の材料になりやすいことがわかっていて、筋力を取り戻すリハビリ期にはBCAAを充足させることが重要です。BCAAは動物性食品では筋肉部分に多く含まれますので、食欲の低下している高齢者では量を食べるためにも、脂身の少ない赤身肉を選ぶのがよいでしょう。

また、食事だけで十分に摂ることが難しい場合も多いので、BCAAを配合した栄養補助食品などを活用するのも選択肢の一つです。プロテインパウダーやプロテイン飲料にはBCAAを配合したものが多いのですが、一つの栄養素だけに注目すると栄養バランスを崩す恐れもありますから、一度にあまり食べられなくなってきた人にはバランスタイプの総合栄養食の活用がおすすめです。

〈参考文献・資料〉
文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報告「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報告「日本食品標準成分表2020年版(八訂)アミノ酸成分表編」
Szu-Yun Wu, Nai-Hua Yeh, et al. Adequate protein intake in older adults in the context of frailty: cross-sectional results of the Nutrition and Health Survey in Taiwan 2014-2017. Am J Clin Nutr. 2021 Aug 2;114(2):649-660.

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成田 崇信(なりた・たかのぶ)
管理栄養士、健康科学修士
管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。主にインターネット上で「食と健康」に関する啓蒙活動を行っている。猫派。著書に『新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK』(内外出版社)、共著書に、『薬局栄養指導Q&A』(金芳堂)、『謎解き超科学』(彩図社)、監修書に『子どもと野菜をなかよしにする図鑑 すごいぞ! やさいーズ』(オレンジページ)がある。

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(管理栄養士、健康科学修士 成田 崇信)

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