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「忙しくてそんな時間ない」は大ウソ…365日仕事生活の弘兼憲史が落ち込んだ時ほど遊び重視の深い理由

プレジデントオンライン / 2024年10月6日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

大人になると仕事の予定や忙しさを言い訳に、無為な毎日を過ごしてしまいがち。これに異を唱えるのが「365日の仕事生活」の漫画家・弘兼憲史さん。仕事の合間を縫って遊びに精を出す弘兼さんは「真剣に遊ぶと元気になる。忙しい日が続いたり、何となく気分が落ち込んだりしたときこそ、『遊べ! 遊べ!』と自分自身に声掛けをして、思いっきり遊んでみよう」という――。

※本稿は、弘兼憲史著『迷わない生き方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■「忙しい」を言い訳にしない

あなたは、何か「やってみたい」とか、どこかへ「行ってみたい」という衝動に駆られたら、それを実行しますか?

「忙しいからな」「そんな時間はないよな」「やっぱり今は無理だな」とすぐにあきらめてしまいますか?

もしあきらめてしまう傾向があるなら、一度立ち止まって考えてみましょう。

たとえば、仕事がめちゃくちゃ忙しいと感じている時期に、ひどい風邪をひいて2~3日会社を休んだとします。どうなるでしょうか?

とてつもなく仕事を混乱させてしまい、風邪が治ってからは徹夜が続き、休日も返上して出勤となるでしょうか?

まず、そんなことにはならないでしょう。

■無意識のうちに“忙しさ”を求めている人々

もちろん、忙しい思いはするでしょうが、休んだ分のしわ寄せが、休んだ分のそのままの時間で襲いかかってくる、なんてことはありません。

そこが、会社のいいところです。

つまり、あなたの思う「忙しさ」の何割かは、乱暴な言い方をすれば「どうにでもなる」「どうにかできる」ということになります。

「忙しい」というのは、サラリーマンにとって実は「快感」だったりします。忙しそうにしているサラリーマンは、「有能」で「充実」しているように見えるからです。

一方、いかにも暇そうなサラリーマンを見ると、「出世できなそうだな」「不景気なんだろうな」「ああはなりたくないな」などと思い、仕事がない状態なんて「不幸」だ、考えただけでも「恐ろしい」と感じてしまう。

無意識のうちに“忙しさ”を求めている人が少なくないのです。

■やりたいなら、やっちゃえば?

「忙しい」=「時間がない」という先入観を捨てて、「やってみたい」「行ってみたい」と思ったときは、後のことなんか考えずにまずは実行する。そんな衝動に駆られることは、そう何度もあるわけではありません。

少し無理をして休暇を取ってでも、やりたいことはとにかく“やってみる”べきだと思うのです。

「スカイダイビングに挑戦したい」「完成する前にサグラダ・ファミリアを見たい」といった大それたことではなく、“小さな衝動”もありますよね。

たとえば、寝る前に少しだけのつもりで読み始めた本が、面白くて止められない。でも、明日も忙しいからもう寝なければ。でも、先が気になって眠れない……。

そんなに面白いのなら、朝まで読んでもいいじゃないですか。一晩くらい徹夜したって、どうってことはないのです。

■「味気ない毎日」を創り出している真因

長年応援してきたスポーツ選手が引退するとします。引退試合に行きたいな……と思う。でも、その頃は忙しいから、チケットを取っても行かれないかもしれない……。

当たり前ですが、引退試合は一度きりです。それを逃したら、現役時代の雄姿は二度と見られないのです。

忙しい、時間がない――と考える限り、時間に縛られた(ような)日々が続きます。

ずっと後になって、「あのとき、やっておけばよかった」「あれが最後のチャンスだった」と後悔しても後の祭りです。

忙しさの何割かには、どうにかできる時間が含まれているはず。真剣に取り組めば、やりたいことをやるための時間くらい、なんとか捻(ひね)りだせると思うのです。

「忙しさ」を理由に、やりたいことを我慢する。「忙しさ」を、味気ない毎日の言い訳にしてはいけません。

■遊ぶときは真剣に遊ぶ

仕事柄、ぼくには決まった休日がありません。365日仕事といってもいい生活を長年続けています。幸い、漫画家という職業が気に入っているので、それが苦痛だと思うことはありません。

とはいえ、息抜きはします。

遊ぶことで、知らず知らずのうちに溜まったストレスを発散し、エネルギーを充填する。そんな時間は必要です。

決まった休日がないのに、いつ遊んでいるのか。「遊ぶ」ための時間を、強引に捻りだしているのです。

たとえば、「1週間後にゴルフに行く」と決めてしまえば、普段なら7日かかる仕事を頑張って6日で終わらせるようになる……というわけです。

芝の上に4人のゴルファーのシルエット
写真=iStock.com/alexsokolov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alexsokolov

■「段取り」を良くすれば時間は生み出せる

もちろん、手を抜くわけではありません。段取りを見直してさらに効率化し、集中力を増して仕事に取り組みます。

終わらなければ行かれないのですから、とにかく必死に頑張ります。こうしてやりくりして捻出した時間だからこそ、いい加減には遊びたくない。「本気」で遊びたいのです。

一年に一度しかない花見の最中に、「そういえば明日の打ち合わせなんだけど……」などと話しかけてくる人がいます。声には出さないまでも、「会議の資料は足りるだろうか」と心配している人もいます。

でもぼくは、仕事のことが頭をかすめるようでは、遊んでいるとはいえない。遊んでいる意味がないと思うのです。

■クタクタになるまで遊ぶと仕事をしたくなってくる

遊ぶと決めた以上、それがどんな遊びでも、その楽しさをとことん味わい尽くすというつもりで遊びたい。

仕事の一切合切を頭から締め出して“真剣”に遊んでほしい。

手抜きなんかしないで、クタクタになるまで遊ぶ。遊び疲れてグッタリしても、それは神経が消耗するような疲労感ではなく、「よく遊んだなあ」という心地よい疲れのはず。

それがかえって、仕事に向き合うエネルギーを湧き起こしてくれるのです。

■大人に最適な遊びは「ホームパーティ」

現代の大人の遊びとしてぼくが提案したいのは、「ホームパーティ」です。

気兼ねない仲間と酒を酌(く)み交わし、趣向を凝らした料理に舌鼓を打ちながら、和気藹々(わきあいあい)としばしの時を過ごす――。最高の道楽ではありませんか。

メリットはほかにもあります。

・面倒な会場探しや手配。予約が要らない。
・日程・ゲスト・料理・テーマ、何から何まで自分流に演出できる。
・苦にならずに掃除に力が入り、家中ピカピカになる。
・外で飲むより断然安上り。
・自動的に料理の腕が上がる。
・家族みんなで楽しめる。
・子供が騒いでも気にならない。

どうですか? いいことずくめでしょう。

料理の腕に不安があるなら、主に材料を切るだけのバーベキュースタイルや、お好み焼き、たこ焼きパーティはどうでしょう。

日本ならではの、すき焼き、しゃぶしゃぶ、寄せ鍋などの鍋スタイルも強い味方。エアコンを効かせれば、夏の鍋パーティも乙なものです。

■お勧めは「ポットラック」形式

一方で、ホームパーティはどうしても、ホスト側の負担が大きくなりがちなのも事実です。そこでお勧めなのが、「ポットラック」形式。ゲストがそれぞれ料理を持参し合って楽しむ「持ち寄りパーティ」です。

弘兼憲史『迷わない生き方』(プレジデント社)

「ポットラック」とは、「あり合わせの料理、持ち寄りの料理」という意味です。

持ち寄る料理は1人1品が基本ですが、同じメニューが被ってしまうことが多々あります。そこであらかじめ、前菜、メイン、〆のご飯、デザートといった担当を決めておく。あるいは、ビール、ワイン、ジュース、フルーツ担当など、ホストがリクエストするのもいいでしょう。

招かれた側も何を持っていけばいいかと悩まなくてすむので、心置きなくお酒や料理を楽しむことができます。

そして、もう1つ大切なルールは、「片付けは全員でやる」。この形式なら、ホストだけに大きな負担をかけることはありません。

■真剣に遊んで元気になろう

ホームパーティが日本で海外ほど行われない背景には、住宅事情もあるでしょうが、片付けを手伝いたいけれど手を出していいものかと迷う、手伝ってくれたら助かるけれど、ゲストにこちらから頼みづらいといった必要以上の遠慮もあるように思います。

みんなで持ち寄った料理をみんなで楽しみ、みんなで片付けてお開き。これをルールとすれば、ホームパーティはもっと身近なものになり、ストレス発散・エネルギー充填ができる、まさに中年向けの格好の遊びとなるでしょう。

忙しい日が続いたり、何となく気分が落ち込んだりしたときこそ、「遊べ! 遊べ!」と自分自身に声掛けをして、真剣に遊ぶことで元気になりましょう。

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弘兼 憲史(ひろかね・けんし)
漫画家
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)に入社。74年に漫画家デビュー。作品に『人間交差点』『課長 島耕作』『黄昏流星群』など。島耕作シリーズは「モーニング」にて現在『会長 島耕作』として連載中。2007年紫綬褒章を受章。

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(漫画家 弘兼 憲史)

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