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「90分周期で寝る」ことはむしろ不眠へつながる…快眠を手に入れるために今すぐ捨てたい"睡眠神話"

プレジデントオンライン / 2024年10月5日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maurusone

睡眠の質を高めるには、何をすればいいか。日本睡眠学会理事で医師の櫻井武さんは「眠いのになかなか眠れない人のなかには、寝室の環境をないがしろにしている人も少なくない。睡眠の質を高めるには、寝室の快適な温度と湿度が不可欠だ。またある調査では、寝室に多くの木材などを使っている人は、寝室で安らぎや落ち着きを感じる割合が高いこともわかっている」という――。

※本稿は、櫻井武『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■「90分周期」という睡眠神話

睡眠にはさまざまな誤解や、睡眠神話があります。

その1つが、「睡眠のサイクルは90分周期」というものです。目覚まし時計をセットするときに「90分単位」、「1時間半を1サイクル」で考える人がいます。また「3時間寝れば大丈夫」と思い込んでいる人もいます。

「神話なの? 私も実践しているのに……」と思った方もいるかもしれません。日中のパフォーマンスが低下しない、昼間に眠気が襲わないのであれば「90分周期」という睡眠神話を信じ続けても良いでしょう。

たとえ非科学的ではあったとしても、自分にとって快適な睡眠が得られているのならば、さほど気にする必要はありません。

しかし、ふだんぐっすり眠れていないのに、この「90分周期」にこだわりすぎてしまうと、かえって不眠に陥ってしまう可能性があります。

■90分にこだわるより長く睡眠をとったほうが有利

睡眠の周期はノンレム睡眠とレム睡眠の組み合わせが1つのサイクルです。睡眠中は、このノンレム睡眠とレム睡眠の周期が繰り返されます。

最初に訪れるのがノンレム睡眠で、N1、N2、N3の順で進み、その後、睡眠の深度は浅くなり、しばらくするとレム睡眠に移行します。その後、同じサイクルでノンレム睡眠、レム睡眠……と交互に繰り返していきます。

ノンレム睡眠の深さは時間とともに浅くなり、レム睡眠の時間はだんだん長くなります。深いノンレム睡眠(N3)の人を起こそうと思ってもなかなか簡単ではありません。

一方、レム睡眠の直後にみられる浅いノンレム睡眠の状態にある人を起こせば、スッキリ起きてくれます。ここまでは正しい知識です。

「90分周期」の睡眠神話は、1つの周期を90分として考え、3時間、4時間半、6時間……と「90分の倍数」で起きるとスッキリ目覚める――というものです。

睡眠の周期の長さは、個人差があるうえ、同じ人でも日によって違います。たとえば、同じ人でも1つの周期が60分の日もあれば、120分の日もあり、かなり幅があるのです。「90分周期」はあくまで平均値です。

睡眠が不足しがちな現代人にとっては、「90分」という時間にこだわるよりも、できるだけ長く睡眠をとったほうが有利です。また、周期を意識して快適な睡眠をとるためには、少なくとも最初に訪れるノンレム睡眠をしっかりとることが重要です。

眠れていないときこそ、睡眠神話には惑わされないようにしましょう。

■睡眠の質は温度と湿度で決まる

眠いのに、なかなか眠れない――。そんな悩みを抱える人のなかには、寝室の環境をないがしろにしている人も少なくありません。

実は、睡眠の質には温度と湿度が影響しています。睡眠中は、パソコンでいうと電源が入って動いているが、ネットにはつながっていない「オフライン」の状態です。自分ではどうすることもできない状態ですから、それを取り巻く環境づくりはとても重要です。

ベッドで眠る女性
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

環境づくりのなかでも、睡眠の質を高めるには、寝室の快適な温度と湿度が不可欠です。暑すぎたり、寒すぎたり、湿度が高すぎたりすると、快適な睡眠が妨げられます。

とりわけ夏は、暑さに加えて湿度が高いため、睡眠中に目が覚める、寝つけない、汗をかくなどの寝苦しさを感じることも多いはずです。また冬は、寒さにより寝つきが悪くなったり、乾燥していることから体がかゆくなったりして眠りの邪魔をします。

「エアコンをつけっぱなしで寝ると体に悪い」と思っている人がいますが、それは都市伝説の1つです。とくに寝苦しい夏にはエアコンは欠かせません。

タイマーを使ってエアコンを切っている人もいますが、ぐっすり眠るという観点からするとあまりおすすめしません。室温は自分が心地よいと感じる温度に設定したり、風が体に直接当たらないようにしたりして、一晩中、エアコンをつけっぱなしにしたほうが良いでしょう。

■寝室に安らぎと落ち着きを与える「木材」の力

電気代が気になるかもしれませんが、最近のエアコンはかなり省エネですし、睡眠の質が下がることで仕事のパフォーマンスが低下したり、病気になるリスクと比べたら安いものです。

寝室の湿度についても、気を配ることが大切です。

【図表1】寝室の木材・木質と不眠症の関連性
出所=『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』

図表1は、睡眠や住環境に関するアンケートの調査結果です。

櫻井武『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』(日本実業出版社)
櫻井武『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』(日本実業出版社)

2020年に、森林研究・整備機構森林総合研究所、筑波大学などの研究チームが、男女671人(平均年齢43.3歳)に実施した調査結果では、寝室に木材・木質材料が「多い」と回答した人は、「少ない」と答えた人に比べて、不眠症の疑いがある人が少ないことが明らかになりました。

また寝室に多くの木材などを使っている人は、寝室で安らぎや落ち着きを感じる割合が高いことも示されました。

たしかに木材をふんだんに使用した空間は心身を落ち着かせてくれます。さらに木材には湿度を調節する働きがあることも忘れてはいけません。

快適に感じる温度や湿度は人それぞれです。心地良く眠ることを最優先して、環境に適した温度や湿度にも注目してみてください。

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櫻井 武(さくらい・たけし)
医師、日本睡眠学会理事
医学博士。筑波大学医学医療系および国際統合睡眠医科学研究機構教授。筑波大学大学院医学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、筑波大学基礎医学系講師、テキサス大学ハワード・ヒューズ医学研究所研究員、筑波大学大学院准教授、金沢大学医薬保健研究域教授を経て、現職。1998年、覚醒を制御する神経ペプチド「オレキシン」を発見。平成12年度つくば奨励賞、第14回安藤百福賞大賞、第65回中日文化賞、平成25年度文部科学大臣表彰科学技術賞、第2回塩野賞受賞。著書、テレビ出演など多数。

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(医師、日本睡眠学会理事 櫻井 武 イラストレーション=坂本奈緒)

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