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これだけで睡眠の質が一気に高まる…不眠に悩む人が夕方以降に避けたほうがいい"飲み物と食材の種類"

プレジデントオンライン / 2024年10月7日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bevan Goldswain

睡眠の質を高めるために、摂取を避けるべきものは何か。日本睡眠学会理事で医師の櫻井武さんは「カフェインの覚醒作用は4時間といわれ、摂取すると眠りを促すアデノシンが脳のなかで働く過程を阻害する。日ごろ、眠れなくて困っている人は、夕方以降はコーヒーやお茶を控えるに越したことはない。また夕食後にデザートを食べるときは、チョコレートやチョコレート菓子を避けたほうが、カフェインの影響を受けにくい」という――。

※本稿は、櫻井武『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■どうしてカフェインをとると眠れなくなるのか?

「カフェインをとると、眠れなくなる」ことは有名な話です。カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶、チョコレートにも含まれていて、なかでも玉露には、コーヒーよりも多いカフェインが含まれています。では、なぜカフェインが眠りを妨げるのでしょうか?

そこには、「アデノシン」という物質の特性が深く関わっています。アデノシンは、脳のなかで眠りを促す睡眠物質の1つです。あらゆる細胞にとってのエネルギー源で生命活動の燃料といわれる「ATP」が分解されると出てくる物質です。

脳は、全身の組織や臓器のなかでも、もっともエネルギーを消費します。とりわけ起きている間は絶えず使われているため、ATPを大量に消費して、その分解物であるアデノシンが蓄積されていきます。このアデノシンを、脳の「側坐核(そくざかく)」にある、アデノシンの受容体をもつ神経細胞が受け取ると、眠気が誘導されます。

わかりやすくいうと、アデノシンが「鍵」ならば、それに合った「鍵穴」をもつ神経細胞があり、鍵穴(神経細胞)に鍵(アデノシン)が差し込まれることで眠気が起こるのです。

■夕食後はチョコレート菓子を避ける

このアデノシンとカフェインは、化学構造がよく似ています。平たくいうと、カフェインはアデノシンの「鍵」の形と近いのです。カフェインを摂取すると血中から脳に届けられて、アデノシンが差し込まれるはずの「鍵穴」を、カフェインがブロックしてしまいます。

つまり、アデノシンが溜まってきても、神経細胞の受容体と結合できずに、結果的に眠りの誘導が妨げられるのです。

このようにアデノシンが脳のなかで働く過程を阻害する、カフェインの覚醒作用は4時間ほどといわれています。

また覚醒作用も個人差がありますが、コーヒーを飲んでもふつうに睡眠できる人は良いでしょうが、日ごろ、眠れなくて困っている人は、夕方以降はコーヒーやお茶を控えるに越したことはありません。

また夕食後にデザートを食べるときは、チョコレートやチョコレート菓子を避けたほうが、カフェインの影響を受けにくいでしょう。

イラスト
出所=『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』

■人間と共存する「腸内細菌」の主な働き

毎日の食生活を気にかけることで、睡眠の質は大きく改善する可能性が高まります。これには「腸内細菌」が関わっています。

私たちの腸には、1000種類以上、40兆個以上の腸内細菌がいます。これら腸内細菌は、人間の都合で、いわゆる善玉菌、悪玉菌、日和見菌(ひよりみきん)という名前で分けられており、さまざまな細菌がバランスをとりながら、腸内環境を形づくっています。

腸内環境のバランスは、3〜5歳で決まり、その後、食生活や生活習慣、喫煙やアルコール、抗生物質の過剰な摂取などによって人によって大きく異なってきます。

人間と共存して健康や長寿に深く関わっていることが知られる腸内細菌の主な働きは「守る」と「つくる」です。

守るとは、腸にいる免疫細胞を活性化させてウイルスや菌などから体を守る役目。つくるとは、私たちが食べた炭水化物などをエサにして、ビタミンや短鎖脂肪酸など体に良い物質へとつくり変える役目です。

神経伝達物質の一種で気分や意欲をコントロールしている「セロトニン」の一部も腸内細菌からつくられています。

■乳酸菌飲料と睡眠の相関関係

2020年、筑波大学と慶應義塾大学の研究チームが、抗生物質を与えて腸内細菌を除去したマウスと通常のマウスの睡眠の質を比較する実験を行ないました。

その結果、腸内細菌を除去したマウスは、睡眠時のノンレム睡眠が減りました。さらに、活動がさかんな時間帯なのに起きている時間が減少したり、ノンレム睡眠に入ることが多くなったりしたことが明らかになりました。

本来なら起きている時間帯に、脳や体の活動を抑制するノンレム睡眠が多く現れるのは明らかに異常です。睡眠と起きている状態のリズムが崩れて、昼夜のメリハリが弱くなっていたことがわかりました。

また、腸内細菌を除去したマウスを調べたところ、通常のマウスよりもセロトニンなど114種類の物質が減少していたことも判明したのです。これらの物質をつくり出す腸内細菌がいなくなったことが睡眠に影響を与えたことは間違いないでしょう。

昨今、乳酸菌飲料と睡眠の関係が注目されています。ヤクルトと徳島大学が行なった共同研究では、94人の大学生を対象に「乳酸菌飲料を飲んだグループ」と、「乳酸菌飲料を飲まなかったグループ」に分けて、11週間にわたり睡眠の影響を調べました。

その結果、乳酸菌飲料を飲まなかったグループは、もっとも深いノンレム睡眠(N3)の時間が短くなり、乳酸菌飲料を飲んだグループは、N3の時間が短くならなかったことが示されました。この研究報告から、乳酸菌が腸内環境のバランスを改善したことで睡眠の質が高くなったことが考えられます。

乳酸菌飲料とフルーツ
写真=iStock.com/Stanislav Sorokin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Stanislav Sorokin

■バランスのよい食事に、腸内細菌が喜ぶ乳酸菌をプラスする

乳酸菌が、腸内環境に良いことはよく知られていますよね。では、どうして腸内環境に良いのでしょうか?

このように質問すると、「食べ物や飲み物から摂取した乳酸菌が腸に住みついて、腸内環境のバランスを整えている」と答える人がいますが、実はそうではありません。

摂取した乳酸菌は腸を素通りするだけです。住みつくことはありません。腸を通過するときに、何かしらの腸内細菌に働きかけを行なっているようです。

櫻井武『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』(日本実業出版社)
櫻井武『すぐに実践したくなる すごく使える睡眠学テクニック』(日本実業出版社)

つまり、腸内細菌にとって乳酸菌は、ときどき現れるサポーターのようなもの。そのため、日々、乳酸菌を摂取して、絶え間なく腸内細菌を応援してもらうことが重要です。

毎日、しっかり寝ているのに、日中の倦怠感があるなど、睡眠の質が低下している人は、栄養バランスのとれた食事に、乳酸菌など腸内細菌が喜ぶ栄養素を少しプラスするような習慣をはじめてみたらどうでしょうか。

また、体内時計も「食事の刺激」によっても整えることが可能です。いつも同じ時刻に食事を摂ることで、その時間帯になるとお腹が空く「食餌同期性リズム」を利用しましょう。「食事の刺激」はマスタークロックの同調とは別のルートで、全身の細胞のサブクロックのリズムを刻みはじめます。

■体内時計をコントロールするうえで朝食は重要

食事のなかでも、とりわけ朝食は有効です。光を浴びて体内時計のマスタークロックをリセットしたうえで、朝食をとり、あらゆる細胞のサブクロックを調整することで脳と体が、最適なリズムを刻みます。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(令和元年)によると、20〜29歳の朝食の欠食率(菓子や果物、サプリメントの摂取を含む)は23%で、30〜39歳で24.6%と、驚くべきことに4人に1人ほどは朝食を食べていません。

体内時計をコントロールするうえで朝食はカギを握っています。夜眠れないと悩んでいる人は、朝の食事をとる習慣をつけることをおすすめします。

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櫻井 武(さくらい・たけし)
医師、日本睡眠学会理事
医学博士。筑波大学医学医療系および国際統合睡眠医科学研究機構教授。筑波大学大学院医学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、筑波大学基礎医学系講師、テキサス大学ハワード・ヒューズ医学研究所研究員、筑波大学大学院准教授、金沢大学医薬保健研究域教授を経て、現職。1998年、覚醒を制御する神経ペプチド「オレキシン」を発見。平成12年度つくば奨励賞、第14回安藤百福賞大賞、第65回中日文化賞、平成25年度文部科学大臣表彰科学技術賞、第2回塩野賞受賞。著書、テレビ出演など多数。

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(医師、日本睡眠学会理事 櫻井 武 イラストレーション=坂本奈緒)

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