二流、三流のコンサルほど「教える」という姿勢が強い…会社を潰すコンサル、本物のコンサルを分ける3点
プレジデントオンライン / 2024年10月3日 15時15分
※本稿は、堀紘一、津田久資『本物のコンサルを選ぶ技術』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■会社の課題や改善点は「例外」から発見されることが多い
知識や理論を振り回し、それに当てはめた見方や考え方しかしない
質の悪いコンサルタントの典型的なパターンとして、やたらと公式や理論を振りかざすというのがある。
コンサルタントとして経営戦略理論や組織論など、さまざまな理論に明るいのは当たり前のことだ。大事なことはそれらの理論や公式を踏まえて、クライアントの経営状況を正確に捉え分析し、どこにどんな問題が潜んでいるかを発見することである。
ところが、その理論と公式を振りかざし、無理やりその理屈の中に会社の状況を当てはめて、持論を展開するコンサルタントが少なくない。
そういうコンサルタントは、理論に合わない例外的な事象があったとしても、それを意図的に無視したり、あるいは気づかないでスルーしてしまう。じつは、会社の課題や改善点はその「例外」から発見されることが多いのに、だ。
小売りの世界では通常、店舗の規模が大きいほど利益率が高くなる。ところが調べてみると、店舗が小さいのにやたらと利益を上げているところがあったりする。
本来の理論にはそぐわないレアケースだからといって、このポイントを見逃すのはコンサルタント失格だ。
なんで違っているのか? この「違和感」に反応して店舗に足を運んで店長の話を聞いてみる。すると商品構成を他の店と大きく変えていることがわかったりする。
そこで新たにデータを取り、商品構成と店舗売り上げの関係を分析すると、そこにある種の相関関係があることがわかったりする。
ダメなコンサルタントは最初に理論や理屈があって、そこから外れた考え方をしない。レアケースを例外として排除し、本質的な問題を見逃してしまいがちなのだ。それによって会社をミスリードし、間違った方向へと導いてしまうことになりかねない。
■企業とそこで働く人がいったい何を望み、欲しているのか
コミュニケーション力に問題があり、場の空気を読めない
コンサルタントは学歴的、経歴的に優秀な人が多いが、中には頭でっかちな人物もいたりする。彼らに共通するのが、コミュニケーションをないがしろにして、自分のコンサル理論にこだわることだ。
かつて私の部下に、東大で宇宙物理学の研究をしていた非常に頭のいいコンサルタントがいたが、プレゼンをさせたら途中からどんどん自分の世界に入り込んで、何を言っているか周囲からしたら全然わからない。
ところが本人は、そんな空気も読むことができないから、延々と話を続けてしまい、上司の私としてはその後何とか場を持ち直すのに苦労したことがある。
コミュニケーションがうまくできないということは、相手をよく見ていないということだ。相手が見えなければ、本来のコンサルタントとしての仕事はできなくなる。
コンサルタントがどんなに優秀な人物であろうとも、企業から雇われた存在であることは変わらない。仕事を与えてくれた企業と、その中で働く人たちが、いったい何を望み、欲しているのかを見極めるのが、コンサルタントとしての第一歩である。
それにはまず、日常の会話ができなければならない。個別の面談や聞き取り調査などでも、相手の気持ちをほぐしながら、いかに本音を聞き出すかが勝負になってくる。
その意味で、コンサルタントに求められているのは「コミュニケーション力」だと言える。コミュニケーションが下手で、独りよがりなコンサルタントは、どんなに頭脳が優秀だろうが、よい結果をもたらさないコンサルタントということになる。
■一流コンサルは「教えてもらう」姿勢が強い
上から目線で教えることがコンサルティングだと考えている
ダメなコンサルタントほど、上から目線で「教える」という姿勢が目立つ。
そもそも教えるというのは、自分が持っている知識や情報を相手に伝えるということだ。それはすでにでき上がっている理論や公式であって、そのコンサルタントのオリジナルのものではないことがほとんどである。
私が定義するコンサルティングの仕事の本質とは、「何が問題かを突き止め、その問題解決のための答えを考える」ということだ。経営理論の知識を教えるだけなら、勉強した人なら誰でもできる。専門書や解説書を読めば、知識を身につけることはできるだろう。
しかし、会社の課題や問題点がどこにあるかを見極め、解決の答えを見つけるためには、「自分の頭で考える」という作業が必要不可欠である。
「考える」ということに対して特殊な能力を持った者が、本物のコンサルタントだと考えている。そこに、コンサルタントのオリジナリティやクリエイティビティがあるということだ。
企業の問題点がどこにあるかを考えるためには、クライアント企業の情報をたくさん集めなければならない。だから一流のコンサルタントは「教える」というよりも、むしろ「教えてもらう」という姿勢の方が自然に強くなるものだ。
「教える」という態度は、日本の学校教育のスタイルそのものだ。教科書に書かれていることを、お題目を唱えるように教師が学生に「教える」。ただし、そこには「考える」というクリエイティブな要素は微塵もない。
もちろん、小学校から中学校くらいまでは、基礎教養として知識をしっかり身につけるべきだ。ただし、高校、大学となったら、知識よりも考える方の授業に比重を移していくべきだろう。
ところが日本では最終学府である大学までもが、もっぱら知識を身につける勉強に専念している。これでは高等教育を受けたとしても、日本人は自分の頭で考えることがうまくできない、ということになってしまうのである。
■日本の大学にはない、ハーバード大学の「面会制度」
ちなみに私が学んだハーバード大学は、日本の大学教育とは全く違う。そこでは「考えること」を教えてくれるのだ。先生が課題となるテーマを最初に学生に話す。それについてどう考えるか、学生たちが自由に意見を出すのだ。
生徒の話は9割方つまらない意見が多いのだが、その中の1割ぐらいに、キラリと輝く意見がある。先生が、最後にそのキラリと輝く1割の意見を拾ってきて、ブラッシュアップして本質的な珠玉のような言葉にしてまとめるのだ。
学生の言葉は素朴で稚拙だが、教授がそれを見事に論理化し、一つの真理として提示する。英語でcrystallize(結晶化)というのだけど、日本語の概念にはない言葉かもしれない。
また、ハーバードでは「面会制度」がある。学生が教授に面会を希望すると、2週間以内に最低10分間は面会しなければならない決まりになっている。こんなのはまず日本の大学では見られない。
■「教える」のではなく、一緒に「考える」
あるとき、私はその面会で教授に「この間の授業ですが、私はいったい何が問題だったのかがわかりませんでした。だから答えもわからなかった」と言うと、「キミは最高の学習をしたね」と言う。
「じつは私もあの件に関しては、何が問題なのかわからない。問題が規定されないのに、答えが出てくるわけがない。キミはその真理を学んだんだ」と。ふざけたことを言う教授だと思ったけれど、あれから何十年かして私はすごいことを教わったと実感している。
いずれにしても、「教える」のではなく、一緒に「考える」のが大学の授業のスタイルなのだ。
話は少し脱線したけれど、オリジナリティもクリエイティビティもないコンサルタントほど、自分が勉強したことを金科玉条的に掲げて、上から目線で教えてやるという姿勢に陥りがちだ。
このような“教師型コンサルタント”を完全否定するつもりはない。知識ももちろん必要だから、企業が社員教育的な意味でそのようなコンサルタントを望むのであれば、それもありだろう。
ただし、このようなタイプのコンサルタントの中には、前述した特徴①のように、自分の知識の範囲だけに捉われ、誤った分析から企業をミスリードしてしまう危険性が高い人も少なくない。十分注意しなければならない。
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経営コンサルタント
1945年兵庫県。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、73年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を日本人として初めて取得後、ボストン コンサルティング グループで経営戦略策定を支援。89年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業のコンサルティングを行うドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。05年9月、同社を東証1部に上場させる。著書多数。
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戦略コンサルタント
東京大学法学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営大学院修了(MBA)。博報堂、ボストン コンサルティング グループ、チューリッヒ保険などで、一貫して新商品開発、ブランディングを含むマーケティング戦略の立案・実行にあたる。現在はコンサルティング業務を行いながら大手企業などの研修において、論理思考・戦略思考の講座を多数担当。のべ1万人以上の指導実績を持つ。著書に『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか──論理思考のシンプルな本質』『新マーケティング原論』(ともにダイヤモンド社)など、共著に『ロジカル面接術』(ワック)などがある。
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(経営コンサルタント 堀 紘一、戦略コンサルタント 津田 久資)
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