東大、ハーバード最優秀でもこれがないと使いものにならない…相手のレベル感を一発で測る"会話の種類"
プレジデントオンライン / 2024年10月11日 15時15分
※本稿は、堀紘一、津田久資『本物のコンサルを選ぶ技術』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■相手のコミュニケーション能力を一発で見極める方法
雑談ができて日常会話ができる
コンサルタントにはコミュニケーション能力が必要だ。どんなに頭脳優秀で、知識が豊富で理解力があっても、会話がスムーズにできなければコンサルタント失格だ。
コミュニケーションがうまくできなければ、情報収集もうまくできない。相手の気持ちを理解できないから、コンサルティングもつい独りよがりのものになりがちだ。
コミュニケーション能力を測るには、雑談をしてみれば一発でわかる。
日常の会話が自然体でできるかどうか? 相手の話に上手に相槌を打ち、適切な返しができるかどうか? こんなことはコンサルタントである前に、イチ社会人として当たり前に磨かれていなければならない能力だ。
専門分野に特化した知識や情報はあっても、いわゆる専門バカではコンサルタントは通用しない。
コンサルティングとは学問ではないからだ。会社という組織は営利を目的としていて、ビジネスとは実社会での生々しい現実だ。一般常識や社会常識があり、世の中のこともよく知っていて、ある種のバランス感覚がなければコンサルタントは務まらないのだ。
ところが、バカと天才は紙一重という言葉があるように、知能指数が140も150もあるような人間には、ちょっと変わった人物が多いことも確かだ。
東大やハーバードを最優秀で卒業したような人物の中には、そんな「変人」も確実にいる。それがそのままコンサルタントになった場合は少々面倒だ。
残念ながらそういう人物は、社会性が欠けていることが多く、コンサルタント会社の中でも浮いていたし、顧客からも指名されるということがほとんどなかった。
本人も、どうせ自分の言っていることなどわかってもらえなくてもいいという感じだった。
コンサルタントは優秀な頭脳を求められるが、かといって頭脳が傑出している人間は得てして社会常識に欠ける。コンサルとはつねにこのジレンマを抱えている職種なのだ。
■相手の話のポイントを要約したり、言い換えられるか
聞き上手でインタビューができる
コンサルタントの仕事は、とにかくクライアントの話をよく聞くことから始まる。
クライアントが今回の依頼で何を望んでいるのか、その意図と目的を理解しなければならない。
コンサルタントというと、社長や役員の前で滔々とプレゼンするイメージがあるから、ついつい「話す力」の方に目が行きがちだ。しかし、それ以上に大切なのが「相手の話を聞く力」なのだ。
腕のあるコンサルタントは、例外なく聞き上手である。コンサルは、相手の話を引き出す名インタビュアーでなければならない。相手が話しやすいように相槌を打ち、相手が強調したいと思って話しているときには、とくに強く反応してやる。
その上で、たとえば「先ほどのお話は、つまりはこういうことでしょうか?」などと、相手の話のポイントを要約したり、言い換えたりして確認する。
相手はしっかり自分の話を聞いてくれているな、よく理解してくれているなと感じて、安心したり嬉しくなるわけだ。すると、どんどんまた話をしてくれる。
■インタビューでとくに重要な“たった1つ”のスキル
インタビューする上で、とくに重要になるのは「質問力」だ。よい質問は、相手の話したいという欲求を刺激する。
経験の浅い駆け出しのコンサルタントが、「どうしてもクライアントからふさわしい情報が取れない」と嘆いていることがある。本人の質問力がないゆえだが、基本的な勉強不足であったり、結論仮説がないなど、相手ではなく自分の問題であることが多い。
そもそも的確に質問をするためには、まず相手からどんな情報を得たいかが明確になっていなければならない。その上で、相手のことや自分が質問したいことに関して、十分な知識や情報がなければならない。
もっと言うならば、「結論仮説」があれば、質問力はさらに高いものになる。
おそらくこの会社には、こんな課題や問題があるに違いないと仮定する。その結論仮説を検証するために、自ずと適切な質問が生まれてくるというわけだ。
コンサルタントの実力を見分けるには、相手の話を聞き、インタビューして情報を取れているか――つまり、「聞き上手」であるかどうかをチェックしてみるといい。
「話し上手」は口が巧ければある程度成立するが、聞き上手、質問上手はそうはいかない。誤魔化しようがないから、コンサルタントの実力がすぐにわかるだろう。
■理解し合い、本音を言い合える関係を築く方法
食事やお酒などのつき合いが上手にできる
私はボストン コンサルティング グループ(BCG)にいた頃から、クライアントはもちろん、さまざまな人たちと食事を一緒にしたり、お酒を飲んだりしてきた。
食事やお酒をともにすることで、お互いを理解し合い、本音を言い合える関係を築いてきた。
コンサルにとって、こうしたつき合いは仕事をする上でとても重要だと考えている。
一般に、アメリカのコンサルタントは、クライアントとディナーを食べる習慣がない。朝か昼に一緒に食事しながら仕事の話をするが、夜の食事やお酒は一緒にしないのが普通だった。ディナーは帰宅して、家族と一緒にとる人が多いからだ。
対して日本は、夜に一緒にお酒を飲んで話をすることが多いと思う。日本人である私も“夜派”であり、当時のBCGでは私ともう一人、ウィーンの事務所にやり手の女性のコンサルタントがいたが、この2人が“両横綱”とされていた。
両横綱はBCGでの一種のコモンジョークになっていて、それだけ目立っていたということだろう。
■ご飯の誘いを断るコンサルタントに欠けている視点
朝・昼のアメリカ型がいいのか、夜の日本型がいいのかは一概に言えない。それは文化の違いそのものだから。
いずれにしてもオフィスを離れて、食事をしながらリラックスしてコミュニケーションを取るということはとても大切なことだ。
だからコンサルタントを雇ったら、ランチでもディナーでも、あるいは軽く居酒屋で一杯でもいいから誘ってみることだ。
なんだかんだ理由をつけて、誘いを断るコンサルタントはコンサルティングの本質を理解していないかもしれない。「知識」を当てはめれば答えを導くことができると考えている、まがい物のコンサルの可能性が高い。
どんな食べ方をするかとか、店での立ち振る舞いや店員に対する態度から、その人柄や素の姿を知ることができる。
お酒を飲んでも乱れることなく、相手を気遣いながら、楽しく会話することができるコンサルタントなら、まずは合格だろう。
社会性という点において、先ほどお話ししたような「変人」ではないことは確かだ。肩の力を抜いて一緒に食事をして、いろいろ会話をすることで、見えてくるものがあるはずだ。
■相手が社長室や応接室に引っ込んでいたら要注意
フットワークが軽く、現場にもよく足を運ぶ
実力のあるコンサルタントは、例外なくフットワークが軽い。興味や関心があるものがあると、すぐに足を運び、自分の目で確認しないと気が済まないのだ。それだけ好奇心が強いとも言えるかもしれない。
コンサルティングの現場においても、このフットワークの軽さはとても大切だ。
本書では先に、「会社の課題解決の答えは、会社の中に転がっている」という話をした。そして答えを持っているのは、会社の上層部ではなく、現場の社員や周辺の業者の人たちが多いということもお話しした。
だから私は、時間があると現場に足を運んで雑談したり、出入り業者の人にも、仕事の邪魔にならない範囲で声をかけて話を聞いたりした。
そういうところから会社の問題点や改善点など、コンサルティングのヒントをもらったものだ。
だからコンサルタントが、いつまでもお客様のように社長室や応接室などに引っ込んでいてはダメなのだ。
コンサルタントがいつもどこにいて、どんな仕事をしているかをチェックしてみるといいだろう。
よく現場に行き、関連会社や出入り業者のところまで遠征に行っているような、フットワークの軽いコンサルタントは信用していい。
コンサルティング会社と社長室を行ったり来たりしているだけのコンサルタントは、まず成果を期待できないと考えていいと思う。
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経営コンサルタント
1945年兵庫県。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、73年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を日本人として初めて取得後、ボストン コンサルティング グループで経営戦略策定を支援。89年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業のコンサルティングを行うドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。05年9月、同社を東証1部に上場させる。著書多数。
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戦略コンサルタント
東京大学法学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営大学院修了(MBA)。博報堂、ボストン コンサルティング グループ、チューリッヒ保険などで、一貫して新商品開発、ブランディングを含むマーケティング戦略の立案・実行にあたる。現在はコンサルティング業務を行いながら大手企業などの研修において、論理思考・戦略思考の講座を多数担当。のべ1万人以上の指導実績を持つ。著書に『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか──論理思考のシンプルな本質』『新マーケティング原論』(ともにダイヤモンド社)など、共著に『ロジカル面接術』(ワック)などがある。
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(経営コンサルタント 堀 紘一、戦略コンサルタント 津田 久資)
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