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自民党に麻生太郎氏の居場所はなくなった…「石破政権」を生み出した"脱麻生・脱安倍"という強烈な地殻変動

プレジデントオンライン / 2024年9月30日 16時15分

金沢文庫駅西口で街頭演説をする麻生太郎氏(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

自民党総裁選で石破茂氏が新総裁に選ばれた。これからの日本の政治はどうなるのか。ジャーナリストの鮫島浩さんは「キングメーカーとして君臨してきた麻生氏は高市氏を推し、ついに負け組に転落した。石破新体制は『脱麻生』『脱安倍』によって生まれたが、また新しい権力闘争が始まったに過ぎない」という――。

■高市氏に乗った大博打は完敗に終わった

自民党総裁選の影の主役は、キングメーカーとして君臨してきた麻生太郎氏だった。

投票日前夜、麻生派が擁立した河野太郎氏ではなく、石破茂氏、小泉進次郎氏と三つ巴の大激戦になっていた高市早苗氏に第一回投票から入れるよう派閥の子分たちに指令を出し、高市氏を首位に押し上げた。

ところが、直後に行われた「高市氏vs.石破氏」の決選投票では「高市包囲網」が瞬時に形成されて石破氏に大逆転を喫し、麻生氏は一転して負け組に陥落したのである。

勝者として壇上にあがる石破氏を拍手で迎えた党執行部のなかで、麻生氏は拍手を送らず、ものすごい形相で固まっていた。最終局面で高市氏に乗った大博打は完敗に終わった。キングメーカーから滑り落ちた瞬間だった。

今回の総裁選は、岸田政権の生みの親である麻生氏と、非主流派のドンである菅義偉氏の元首相同士のキングメーカー対決だった。新しく誕生した石破政権に、麻生氏の居場所はない。麻生氏が陣取ってきた副総裁の椅子に入れ替わって座ったのは、菅氏だった。敗者に容赦はしない。総裁選は仁義なき権力闘争なのだ。

■新総裁を決める主導権を握っていたが…

麻生氏はいったいどこで道を踏み外したのか。

菅氏は小泉氏を支持し、石破氏とも良好な関係を維持していた。麻生氏は河野氏支持を表明しつつ、裏では上川陽子氏、小林鷹之氏らの推薦人に麻生派の子分たちを振り分け、決選投票で主導権を握る戦略で対抗した。ところが麻生陣営の候補はすべて振るわず、菅氏に近い小泉氏と石破氏、そして安倍晋三元首相の後継者として安倍支持層に絶大な人気のある高市氏の3人に総裁レースは絞られた。

石破氏と高市氏は党員票でトップを競っていたが、ともに国会議員への支持に広がりを欠いていた。小泉氏は国会議員票でリードし、決選投票にさえ進めば勝利が有力視されていたが、党員票が予想に反して大きく伸び悩み、3位脱落の見方が強まっていた。国会議員に不人気同士の「石破氏vs.高市氏」の決選投票にもつれ込めば、予測不能の大激戦になるのは間違いなかった。

混沌とした三つ巴の戦いを決するのは、麻生氏の動向と目された。決選投票で誰に乗るのか。さらには、決選投票に進む見込みのない河野氏ら麻生陣営の候補を見捨て、第一回投票から上位3人の誰かに乗って総裁レースの形勢を一気に方向づける可能性も指摘されていた。麻生氏が新総裁を決める主導権を握っていたのだ。

■「石破政権だけは絶対阻止」が最優先事項

麻生氏は石破氏が大嫌いだった。かつて麻生内閣に農水相として入閣していた石破氏が真っ先に麻生おろしに動いたことを根に持っていた。

石破氏が自民党を離党して新進党に加わり、自民党に復党した「出戻り組」であることも、家柄や格式を重んじる麻生氏は気に食わなかった。石破政権だけは絶対に阻止することが、麻生氏の最優先事項だった。

あいさつする石破氏 自民党新総裁に石破氏
写真=共同通信社
自民党総裁選後に開かれた両院議員総会であいさつする石破茂新総裁=2024年9月27日午後3時30分、東京・永田町の党本部 - 写真=共同通信社

残るは小泉氏か、高市氏か。麻生氏は高市氏とは疎遠だった。しかも高市氏には乗りにくい事情があった。

ひとつは米国の意向である。米国は高市政権誕生を最も警戒していた。特に高市氏が首相になっても靖国参拝を続けると明言したことに神経を尖らせていた。米国はロシアや中国に対抗するため、日米韓の連携をアジア外交の基軸にしている。

高市氏が首相として靖国参拝を強行すれば、韓国世論を刺激して日米韓の連携が揺らぎかねない。高市政権だけは避けてほしいという米国の意向は自民党の実力者たちに伝わっていた。麻生氏は対米重視派として知られ、米国の意向に反して動くのは抵抗があるとみられていた。

石破氏のあいさつに拍手を送る麻生氏
自民党の公式YouTube動画。石破氏の登壇時には拍手をしなかった麻生氏。あいさつ後には拍手を送っていた

■高市氏に最後まで躊躇した

ふたつめは財務省の意向である。高市氏はアベノミクスの継承を掲げ、金融緩和への反対を鮮明にしたうえ、一切の増税を否定して積極財政を掲げている。高市政権だけは回避したいというのが財務省の本音だった。安倍・菅政権の副総理兼財務相として二度の消費税増税を後押しし、財務省の用心棒として振る舞ってきた麻生氏は、もちろん財務省の立場を理解していた。

最後は麻生氏の家柄主義である。麻生氏は明治国家をつくった大久保利通を高祖父に、戦後日本の礎を築いた吉田茂を祖父に持ち、さらには実妹が三笠宮家に嫁いだ華麗なる一族である。家柄や格式を重んじ、安倍氏ら政治名門一族には心を許す一方、菅氏や二階俊博氏ら叩き上げ政治家に警戒感を解くことはなかった。

高市氏は叩き上げの政治家だ。しかも新進党から自民党に移ってきた「外様」である。石破氏のように自民党を飛び出した「裏切り者」ではないにせよ、麻生氏の眼鏡にかなう総裁候補ではなかった。だからこそ前回総裁選では安倍氏が担ぐ高市氏には乗らず、世襲政治家の岸田文雄氏を担いだ。今回も家柄主義でいえば、首相を父に持ち世襲4代目である小泉氏のほうが遥かにケミストリー(相性)が合うに違いなかった。

■最後の土壇場で一番重視したのが「派閥」

しかし、小泉氏にも乗れない事情があった。キングメーカーを争う菅氏に加えて地元・福岡の政敵である武田良太氏(元総務相)が支援に回っていたのだ。

このままでは小泉氏は第一回投票で3位に沈み、決選投票は「石破氏vs.高市氏」の大接戦になる。石破氏が大嫌いな麻生氏は、高市氏に乗るしかない。石破政権も高市政権も回避するには、第一回投票から小泉氏に乗り、決選投票へ押し上げるしかなかった。

そのためには菅氏と土壇場で折り合い、ダブルキングメーカーとして小泉政権を支える「談合」を成立させる必要がある。高市氏か、小泉氏か。どちらも麻生氏にとっては苦渋の選択だった。

麻生氏が土壇場で最も重視したのは「派閥」だった。岸田首相が自民党の裏金事件を受けて派閥解消を表明した後、すべての派閥が解散を表明するなか、麻生派だけは存続を宣言し、世論からも党内からも激しく批判を浴びた。

麻生氏はそれでも派閥にこだわった。1999年に老舗派閥・宏池会(現岸田派)を河野洋平氏(河野太郎氏の父)とともに飛び出して旗揚げした小グループの大勇会が麻生派の源流である。大勇会は当初、総裁選出馬に必要な推薦人20人にも満たなかった。

党内では弱小集団と見下され、新聞は「派閥」と表記せず「河野グループ」と呼んだ。それを第二派閥まで押し上げたのが麻生氏だった。派閥解消をあっけなく口にする風潮に怒り心頭だったのは想像に難くない。

■残る選択肢は高市氏だけ

総裁選に派閥は必要不可欠だ、俺がどれほど苦労して派閥を拡大してきたのかわかっているのか? 派閥の結束なしに総裁選に勝てるのか? なのに今の自民党の面々は派閥を否定している、いったい何を考えているのだ? 権力闘争はそんな甘いものじゃねえぞ……。

麻生氏の胸の内はそんなところだろう。今こそ派閥の重要性を思い知らせる時である。有象無象が乱立する総裁レースの土壇場で麻生派が一致結束して行動して勝敗を決定づけ、派閥の力を見せつけなければならない。そのためには最終局面で勝者に乗り、勝ち組に回らなければならない。

麻生氏が第一回投票から石破氏に乗れば勝利は確実だった。けれどもそれだけはできなかった。どうしても石破氏は許せない。ならば小泉氏か。小泉氏は想定外の大苦戦で、菅氏も追い詰められている。菅氏と折り合える可能性はあった。

麻生氏が第一回投票から小泉氏に乗れば、決選投票は「石破氏vs.小泉氏」となり、小泉氏が勝利して、麻生氏と菅氏のダブルキングメーカー体制が出現しただろう。だが菅氏は「脱派閥」の急先鋒だ。菅氏と手を握れば「派閥の復権」は果たせない。

残る選択肢は高市氏しかなかった。高市氏は安倍氏が他界した後、安倍派5人衆からも疎まれて党内で孤立し、推薦人20人の確保にも苦労して、当初は泡沫扱いされていた。人権侵犯で批判を浴びている杉田水脈氏や裏金議員13人の力を借りて辛うじて出馬にこぎつけたのである。

岸田政権で経済安保担当大臣になった高市氏
第2次岸田政権の内閣改造で経済安保担当大臣になった高市氏(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)

■派閥議員に「第一回投票から高市氏へ」と指令

ところが総裁レースが始まると、安倍支持層から熱烈な支持を受けて党員票で躍進し、石破氏とトップを争う勢いだった。国会議員では孤立し、党員には大人気――。ここに麻生派が乗れば国会議員票が大幅に上積みされて高市氏勝利に弾みがつき、麻生派の力を鮮明に見せつけることができる。高市政権は麻生氏の傀儡になるしかない。

問題は、高市氏で本当に勝てるのかどうかだった。

麻生氏は慎重に票読みしたことだろう。麻生派が第一回投票から河野氏を見捨てて高市氏に乗れば、高市氏はいきなりトップに躍り出て、小泉氏は3位に脱落し、決選投票は「高市氏vs.石破氏」の激戦になる。どちらも国会議員には不人気で、究極の選択になる。高市氏の勢いをみて「勝ち馬に乗れ」という空気が広がるに違いない――。

麻生氏の読みは的中するかに見えた。麻生氏が投票前夜、麻生派内に「第一回投票から高市氏へ」と指令を出し、それがマスコミに報道されると、高市氏優勢の見方が一気に広がった。麻生派ばかりではなく、最後まで投票先を迷っていた議員たちも高市氏になだれ込んだのである。麻生氏の老獪な立ち回りは奏功しつつあったのだ。

第一回投票は、麻生氏の読み通りだった。高市氏の国会議員票は30票台と予測されていたが、倍増して72票に達した。トップの小泉氏には3票届かなかったものの、3位の石破氏を26票も上回ったのである。党本部の総裁選会場はどよめいた。

しかも高市氏は党員票でも石破氏を1票抜いてトップに立った。総合では①高市氏181票、②石破氏154票、③小泉氏136票となり、高市氏が予想を遥かに超える結果で堂々と首位通過したのである。高市政権誕生は目前に迫っていた。

■石破政権が消去法で誕生した

ところが直後に行われた決戦投票は、麻生氏の期待とかけ離れた結果となった。国会議員票は石破氏になだれ込み、①石破氏189票、②高市氏173票で大逆転されたのだ。

自民党ホームページより
自民党ホームページより

麻生氏の完敗だった。石破氏が積極的に選ばれたのではない。自民党議員の多くが「高市政権阻止」に動いたのである。土壇場で「高市包囲網」が瞬時に出来上がった。その結果、石破政権が消去法で誕生したのだった。

自民党議員の多くが高市政権を嫌ったのはなぜか。

最大の理由は、目前に迫る解散総選挙である。高市氏は確かに党員人気は高かった。しかし、一般の世論調査では石破氏に大きく負け越し、党員人気との落差は明らかだった。世論の大勢は、高市氏のあまりに右寄りな政策を警戒し、安倍支持層の熱狂的な支持を冷めて見ていたのである。

いざ総選挙になると無党派層の動向が重要になる。とくに1議席を争う小選挙区では大きく右傾化することは禁じ手だ。右寄りの高市氏に警戒して中間層が立憲民主党へ流れてしまうことを、自民党議員の多くは恐れた。まして立憲民主党の新代表に中道で安定感を売りにする野田佳彦元首相が就任したばかりだった。総選挙が「高市氏vs.野田氏」の選択になれば、自民党は惨敗しかねない。

■多くの議員に意識された「高市リスク」

しかも高市氏の推薦人20人のうち13人は裏金議員だった。総選挙で裏金問題が蒸し返されるに違いない。高市氏は裏金問題に切り込むことができず、防戦一方になる。ますます自民惨敗が現実味を増してくる。

暗雲の国会議事堂
写真=iStock.com/kanzilyou
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kanzilyou

当落線上の衆院議員たちにとって「党の顔」は何より重要だ。高市政権よりも石破政権のほうが内閣支持率は上がるだろう。立憲民主党の野田氏との対決構図を考えても、実績や安定感のある石破氏のほうが野田氏との対立軸はぼやけ、足元をすくわれにくい。

総選挙で落選すれば元も子もない。目前に迫る総選挙に向けて「高市リスク」はあまりにも高すぎる。

強固な選挙地盤を持つ麻生氏は、当落線上の衆院議員たちの心理を読みきれなかったのかもしれない。麻生派が土壇場で高市氏に乗れば「勝ち馬に乗れ」という空気が一気に広がって高市氏が地滑り的に勝利すると読んだ。確かに平時ならその政局観は正しいかもしれない。

しかし、今は総選挙が目前に迫る非常時だった。やはり「高市リスク」への警戒感が何よりも勝ったのだ。

■高市包囲網は、実は麻生包囲網でもあった

もうひとつは、麻生氏自身への反発である。自民党をあげて派閥解消を進めるなか、麻生派だけは「治外法権」として派閥存続を公然と宣言していた。麻生派が最終局面で高市氏に組織的に乗って勝利する展開を許せば、高市政権で麻生派ばかりが君臨し、対抗勢力は太刀打ちできない。麻生氏はこれまで以上にキングメーカーとして立ち回るであろう。

麻生氏に抑え込まれてきた岸田首相も、麻生氏に干し上げられてきた菅氏や二階氏も、麻生氏に忠誠を誓ってきたのに総裁選で見捨てられた茂木敏充氏も、そして裏金事件で解散に追い込まれた最大派閥・安倍派の面々も、最高権力者である麻生氏の支配力が高市政権誕生でさらに増長することに恐怖を感じたのではないか。

高市包囲網は、実は麻生包囲網でもあったのだ。

小泉氏を担いだ菅氏と、高市氏に土壇場で乗った麻生氏のキングメーカー対決は共倒れに終わった。漁夫の利を得たのは、党内基盤が脆弱な石破氏である。石破氏は菅氏に跪いて勝利したわけではない。あくまでも「アンチ高市・アンチ麻生」の票がなだれ込んで勝ったのだ。だから「菅傀儡」になることはない。人事でもフリーハンドを得た。自分を押し上げたみんなを納得させるために絶対にやらねばならないことはただ一つ、麻生氏を徹底的に外すことである。

■「麻生外し」の布陣…「石破―菅―岸田の大連合」が完成した

石破氏は麻生氏に代わって副総裁に菅氏を据えた。幹事長には菅氏と岸田氏の双方に気脈を通じているベテランの森山裕氏、選対委員長には菅氏が担いだ小泉氏を起用。官房長官には岸田派の林芳正氏、政調会長には岸田派の小野寺五典氏を登用し、岸田氏に配慮を示した。

財務相には菅氏に近い加藤勝信氏、そして外相には麻生派を離脱して石破陣営の選対本部長を務めた岩屋毅氏を抜擢した(麻生氏に総裁候補に押し上げられ、麻生派から推薦人を借りて総裁選に出馬した上川陽子氏を外相から外しての起用だ!)。麻生氏は最高顧問としたが、これは名誉職にすぎず、実質的な棚上げである。

まさに「麻生外し」の布陣である。麻生氏を仮想敵とした「石破―菅―岸田の大連合」が成立したといってよい。

石破氏はこの布陣で10月解散総選挙に突き進むだろう。焦点は麻生氏を政界引退に追い込むかどうかだ。そうなれば麻生派は解散に追い込まれ、「派閥解消」がついに完成する。それは石破氏が総選挙で「自民党は変わった」とアピールする格好の材料となろう。

安倍氏・麻生氏が維持していた主導権は、総裁選で大きく転換した
これまで安倍氏、麻生氏が中心となって主導権を握ってきた。今回の総裁選でそれが一変した(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)

石破氏の難題は、安倍支持層を後ろ盾とする高市氏の処遇だ。要職につければ政権内部からかき乱される。無役で干し上げれば安倍支持層が離反し、石破政権へのネガティブキャンペーンを仕掛けてくる。いずれにしても悩ましい。

■総裁選という権力闘争の現実

石破氏が高市氏に提示したのは、総務会長ポストだった。党4役とはいえ、存在感は薄い役職だ。高市氏は幹事長を期待していた。石破氏はかつて総裁選の決選投票で安倍氏に逆転された後、幹事長に起用された。今回の決戦投票で逆転負けした自分も幹事長に起用されて当然であるとの思いがあったのだろう。

高市氏は総務会長人事をただちに固辞し、入閣する意思もない意向を伝え、反旗を翻したのである。この反応は、石破氏は織り込み済みだったろう。決選投票での大逆転の勝因が「麻生・高市包囲網」だった以上、麻生氏とともに高市氏も外さなければ、みんなが納得しない。それが総裁選という権力闘争の現実である。

高市氏が固辞した総務会長には、麻生派重鎮で麻生氏の義弟である鈴木俊一氏を充てた。総務会長ポストはそもそも挙党体制を演出するために用意しておいたということだ。

石破氏は総裁選で安倍派や麻生派の支援を受けた小林鷹之氏にも重要閣僚ではなく、党広報本部長を打診した。前回の総裁選で、勝者の岸田氏が敗者の河野氏に当てがった閑職である。小林氏はただちにこれを辞退した。高市氏と同様、石破氏には小林氏を重用する気はさらさらなかったのであろう。

■「脱安倍」体制を目指す石破氏の思いが凝縮している

それ以上に注目すべきは、石破氏の推薦人となった村上誠一郎氏を総務相に抜擢したことだ。村上氏はかつて安倍氏を「国賊」と呼んで一年間の党役職停止処分を受けた筋金入りのアンチ安倍派である。「脱安倍」体制を目指す石破氏の思いがこの人事に凝縮されているといってよい。

誕生の経緯で政権の性格は決まる。石破政権を支配するのは「脱麻生」であり、高市外しによる「脱安倍」だ。自民党の権力構造は大きく変わる。次に主導権を握るのは、菅氏か、岸田氏か、それとも石破氏か。

ここから新たな権力闘争が始まる。

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鮫島 浩(さめじま・ひろし)
ジャーナリスト
1994年京都大学を卒業し朝日新聞に入社。政治記者として菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝らを担当。政治部や特別報道部でデスクを歴任。数多くの調査報道を指揮し、福島原発の「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。2021年5月に49歳で新聞社を退社し、ウェブメディア『SAMEJIMA TIMES』創刊。2022年5月、福島原発事故「吉田調書報道」取り消し事件で巨大新聞社中枢が崩壊する過程を克明に描いた『朝日新聞政治部』(講談社)を上梓。YouTubeで政治解説も配信している。

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(ジャーナリスト 鮫島 浩)

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