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コメはザルに入れて研いではいけない…「3回と4回では味がまったく変わる」コメの正しい研ぎ方

プレジデントオンライン / 2024年10月11日 18時15分

高火力だとお米が美味しくなる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Koshiro Kiyota

お米のおいしい食べ方はあるのか。米・食味鑑定士の芦垣裕さんの書籍『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、「本当に正しいお米の炊き方」の解説をお届けする――。

■高火力だとお米が美味しくなる

お米はそのまま食べることはほとんどなく、何かしらの調理を加えたり、おかずを添えたりして食べています。その中でも「炊く」という調理方法が代表的です。

では、お米を炊いて食べる調理方法は、いつから日本に根づいたのでしょうか。

考古学によれば、稲作が始まった当初はお米を煮て調理をするのが一般的で、後に蒸す方法に変わり、さらに中世になって釜で炊く方法になったと言われています。

一口に「炊く」といっても、その炊き方は様々ですが、基本は美味しいお水を適量に入れてお米に十分に染み込ませ、焦がさない程度になるべく高火力(98度以上)で加熱することです。

高火力だとお米が美味しくなる理由は、高温にすることでお米のでんぷん質が変化し、独特の粘りとうま味を持つようになるからです。

また、高温によって中の水が対流すると、お米の1粒1粒にムラなく熱を伝えることができます。

■「マイコン式、IH式、圧力IH式」の違い

皆さんは、お米を普段どのように炊いているでしょうか。

電気炊飯器、土鍋、調理鍋、フライパンなど、炊くための器具は様々です。その中でも、現在最も多くの人が使っているのは電気炊飯器だと思います。

電気炊飯器には色々な種類があり、主な種類にはマイコン式、IH式、圧力IH式が挙げられます。

価格はマイコン式が1番安く1万円以下、IH式は1万円~3万円くらい、圧力IH式は3万円以上するのが一般的です。

■加熱方式が違う

ちなみに、IHとは「Induction Heating」の略で、直訳で「誘導加熱」という意味です。

これら3種類の炊飯器は、加熱方式が違います。

マイコン式は鍋の底からだけの熱で炊く方式、IH式は磁場を使った電磁誘導加熱により釡全体からの熱で炊く方式、圧力IH式はIH式に加えて水蒸気を閉じ込めることによる圧力で高熱を出す方式となっています。

■かまどで炊くご飯と比較しても遜色のない味わい

この中でマイコン式が1番古く、1955年に発売されました。火力が弱く、それまで主流だったガス釜で炊くご飯よりも味が劣りました。

この後、1988年にIH式炊飯器が発売され、炊飯器で炊くご飯の食味がとても良くなりました。

それから4年後の1992年には、圧力IH式炊飯器が発売されます。

これによって、ご飯の味はかまどで炊くご飯と比較しても遜色のない味わいになりました。

かまどで炊くご飯と比較しても遜色のない味わい
写真=iStock.com/liebre
かまどで炊くご飯と比較しても遜色のない味わい(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/liebre

内釡も進化を遂げて、お米が加熱されやすいものが登場してきました。

具体的には、熱の伝わりやすい銅やダイヤモンドなどを貼り付けたもの、遠赤外線効果がある炭やセラミック素材を使ったものなどです。

その後も電気炊飯器の進化は続きます。超音波を起こしてお米にしっかり水を吸収させる機能が付いた「超音波炊き」、蒸気を外に出さずに釜の内側に熱を溜める「蒸気レス」など、新しい技術が圧力IH式に組み込まれることで、さらに美味しく炊けるようになってきています。

■「新潟産コシヒカリ」以外はベストの炊き方にならないことがある

さらに、最近では多機能な電気炊飯器が話題になっています。

実は、今の主流になっている圧力IH式炊飯器のほとんどは、流通量が全国的に多い「新潟県産コシヒカリ」を美味しく炊き上げるように作られています。

そのため、他の産地や品種のお米の場合は、ベストな炊き方になっているとは言えず、本来の味が出ないことも多くあります。

そこで、様々なモードを選べるようにしたり、センサーを付けたりするなどして、様々なお米に合った炊き方ができるような炊飯器も登場してきています。

また、無洗米とお水を炊飯器内にセットしておくことで、自動で計量して炊飯してくれる炊飯器も誕生しています。

「新潟産コシヒカリ」以外はベストの炊き方にならない
写真=iStock.com/Artit_Wongpradu
「新潟産コシヒカリ」以外はベストの炊き方にならない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Artit_Wongpradu

■最低でもIH式を買うべき

これから美味しくご飯が炊ける電気炊飯器を買うなら、最低でもIH式炊飯器をおすすめします。

また、予算が許すようであれば、最新式の圧力IH式炊飯器の方が良いことは、ここまでのご説明でご理解いただけたでしょう。

最新式の圧力IH式炊飯器の中には、お米を炊くだけではなく、他の圧力調理もできるものもあるので料理の幅も広がることでしょう。

ご飯はほぼ毎日食べる食べ物です。多少高くてもそのリターンは大きいと言えるでしょう。ぜひ、自身で納得のいく炊飯器を選んでみてください。

■無洗米でも研いだほうがいい場合がある

お米を炊く前に大切な工程として、「お米を研ぐ」があります。研ぎ方1つでご飯の味は想像以上に大きく変わります。

お米を研ぐ際に最初に大切なのは、お米の状態の確認です。

無洗米は基本研ぎませんが、ブラシなどで仕上げられた簡易無洗米については、お米を見て、少し黄色みがかっているようなら研いだ方が良いでしょう。

一般的な精米の場合も、お米の状態を確認して研ぐようにしてください。そこで糠が多く付着しているようなら、少し強めに研いでください。

■お米はザルで研いではいけない

なお、お米をザルに入れて研ぐ人を見かけますが、そうするとお米が割れてしまい、食味が落ちる場合が多いので、おすすめしません。

お米を研ぐ際には、水にも気をつけてください。使う水によって味が変わってきます。

お米を研ぐ前には水に浸けますが、一番最初の水は天然水か蒸留水が適しています。ただし、水道水がキレイで美味しい地域は、あまりこだわる必要はありません。

なぜなら、お米は一番最初の水をよく吸収するからです。

お米はザルで研いではいけない
写真=iStock.com/Pawel Kacperek
お米はザルで研いではいけない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Pawel Kacperek

■捨てた水の状態をよく見る

さて、最初の水を入れたら2、3回かき混ぜた後、すぐに捨てます。

ここからの研ぎ方は、お米の状態によって様々ですが、それを判断するには、捨てた水の状態をよく見ることが大事です。

捨てた水の色が黄色くなっていたら、少し強めに3~4回親指の付け根で押し付けるように研ぎます。濃い目の白い色なら2回ぐらい研ぎます。薄めの白色、もしくは澄んでいるなら1回だけ、研ぐというよりもお米を洗う感じで良いでしょう。

なお、このときの途中で使う水は、水道水でも構いません。最後にすすぐ水と炊くために入れる水には、天然水や蒸留水といった良い水を使いましょう。

■研ぐ回数でご飯の味は変わる

この研ぐ回数によって、ご飯の味はビックリするほど変わってしまいます。

私の経験では、「つや姫」を3回研いだ時には甘みがあって香りも良い味のあるご飯になりましたが、4回研ぐと「ひとめぼれ」のようなさっぱりした甘味のご飯になりました。

粘りの強いお米であっても研ぎ方を強くすると、あっさりした感じになります。

■季節によって研ぎ方を変える

また、季節によっても研ぎ方を変えると、お米の美味しさも変わってきます。

新米が出てから翌年の1月中旬ぐらいまでは、お米の水分が保たれていることが多くて柔らかいので、研ぐ際に力を入れすぎるとお米が割れて美味しくなくなります。

逆に2月~4月ぐらいまでは、置いているうちにお米が乾燥しやすく、硬くなっていることが多いので、研ぐ際には少し強めにすることをおすすめします。

芦垣裕『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
芦垣裕『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

ただし、雪の多い地域の場合は、あまりお米は乾燥しないので気をつけなくて大丈夫です。

7月~9月は、水分がさらに飛びやすく、お米の品質が落ちてくる傾向にあるので、やはり強めに研ぐことをおすすめします。

実は、ここ10年くらいの間に精米機も進歩しており、普通精米の場合でも、お米はほとんど研がなくても良い時代になってきています。

とはいえ、お米をよく見て、お米の気持ちになって研ぐことをおすすめします。

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芦垣 裕(あしがき・ひろし)
米・食味鑑定士、初音屋代表取締役
横浜で3代続く米屋の店主。水田環境鑑定士・調理炊飯鑑定士・おこめアドバイザー。取り扱うお米は、田んぼの自然環境までを自ら確認し、気に入ったお米のみ。米・食味分析鑑定コンクール国際大会の審査員を20年以上務めている。そのほか、お米日本一コンテストin静岡の全国大会、天栄米コンクール(福島県)、栃木県産米食味鑑定コンクール、飛騨の美味しいお米食味コンクールなど、多数のお米コンクールの審査員を務める。また、ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」のお米特集をはじめ、フジテレビ「LiveNewsイット!」など、メディアでもお米に関するコメントを行い、お米の素晴らしさを伝えている。著書に『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

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(米・食味鑑定士、初音屋代表取締役 芦垣 裕)

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