「ウォーキング」の後にやると断然効果的…「脳を若返らせる成分」がドバドバ分泌される「朝イチの運動習慣」
プレジデントオンライン / 2024年10月13日 7時15分
■有酸素運動はセロトニンを分泌させる
運動には、健康促進という面の他に、心への効果も見逃せません。有酸素運動をすると、気分の向上をもたらすといわれる、幸せホルモンのセロトニン、快楽ホルモンのドーパミンなどの成長ホルモンが分泌されます。
セロトニンは、快楽ホルモンのドーパミンと怒りとやる気のホルモンであるノルアドレナリンの調整役として、適応力や心のバランスを整える効果があります。心のバランスが取れるので、幸せな気分になり、情緒が安定するのです。
■運動すると新しいニューロンが成長
みなさんにとってさらにいいニュースは、運動により脳のニューロンが結び付くという事実が発見されていることです。
運動することによって、脳の器官である海馬の幹細胞から新しいニューロンが成長することを促すのです。つまり、運動によっても、あなたの脳力がアップする可能性があります。
快適領域を超える習慣のところでご紹介したように、何か新しいことや難しいことに挑戦しようとする時、シナプスを通じてニューロンに情報が送られ、脳内のニューロンが新しい強い結合をつくります。
その時、ニューロンの回路の材料となるのがBDNF(脳由来神経栄養因子 Brain Derived Neurotrophic Factor)です。
■脳の土台をつくる「BDNF」
脳内から分泌されるホルモンであるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質が、ニューロン間の信号を伝える潤滑油のような働きをするのに対し、このBDNFはニューロンという回路自体をつくる栄養素にあたります。
つまり、BDNFは、脳力を上げるための土台、つまり脳のインフラをつくる要素なのです。
このように、BDNFは、成人になっても脳力を上げ続けることを可能にする栄養素でもあります。
■BDNFの明らかな増殖が見られた
このBDNFについての研究は、1990年代に研究者の間で大ブームとなりました。
BDNFと運動の関連について、まだ誰も明らかにしていなかった頃、カリフォルニア大学アーヴァイン校の脳老化・認知症研究所の所長を務めるカール・コットマンは、マウスによるある実験を行いました。
実験では、ステンレスのカラカラと回転する回し車の中でマウスを走らせるグループと、回し車を使わせないグループに分けました。その結果、回し車で運動を続けたグループのマウスの脳では、BDNFの明らかな増殖が見られました。
さらには、長い距離を走り続けたマウスほど、その増殖量が多いことも判明したのです。
■定着するプロセスが必要
一方、これはただ走り続ければ脳力が上がり続けるということではありません。
BDNFが増えるということは、ニューロンが新しい強い結び付きを持つ可能性がある土台ができる、ということに過ぎないのです。
例えば、野菜をつくるにしても、豊饒な土壌がある上に、しっかり耕しながら酸素を土の中に多く含ませたり、必要な日照を与えたりしながら育ててあげる必要があります。
同様に、BDNFが増え、結び付いたニューロンもちゃんとした回路として定着するプロセスを辿って行かなければ、残念ながら脳細胞となることなく死んでいってしまいます。
これでは、脳力を上げることには結び付きません。
■「創造的な仕事」を習慣化する
では、どうしたらいいのか?
まずは、有酸素運動をした後に、創造的な仕事をする習慣を持つのをおすすめします。
2007年に行われたある実験では、
50歳から64歳までの成人40人を、2つのグループに分け、1つのグループには、最大心拍数の60%から70%の間で有酸素運動を35分続けてもらい、もう1つのグループには、その間、映画などを見て過ごしてもらいました。
そして、その後両方のグループに、創造性を試すようなテストを受けてもらったところ、運動したグループは、答える速度や問題の認識力が著しく向上しました。
有酸素運動によって、BDNFが増加すると同時に、新しいニューロンの結び付きが生まれることで、脳が活性化し、その後の創造的な仕事を促進したのです。
■欧米のエグゼクティブの習慣は理に適っている
さらには、有酸素運動で生まれた新しいニューロンが、創造的なワークをすることによって、しっかりと定着するという効果も表れたと考えられています。
運動しただけでは、せっかく生まれた新しいニューロンが、その後死んでいってしまう可能性があったところ、続けて行った創造的仕事によって、新たな脳細胞としての定着が図られたのです。
有酸素運動をした後に、創造的な仕事をする。欧米のエグゼクティブの多くが、朝一のジョギングの後に、アイデアワークなど、クリエイティブな仕事に取り掛かるというパターンは、こういった意味でもかなり理に適っています。
■創造的な会議は午後イチにする
その他のアイデアとしては、午後の最初の仕事として、創造的な会議を設定して、昼休みのうちにジョギングなどの有酸素運動をしてから、その会議に臨むというやり方があります。
これにより、会議の生産性を上げると同時に、あなたの脳力を上げるという効果も期待できるのではないでしょうか?
■「フィールドアスレチック」で脳内のBDNFが増加
次にご紹介したいのが、有酸素運動をした後に、複雑な動きやバランス感覚を要する運動を行う習慣です。
イリノイ大学の神経科学者のウィリアム・グリーノーの研究では、ラットを2つのグループに分け、1つのグループには、単純に走り続けることをさせ、もう1つのグループには、フィールドアスレチックのような複雑な運動や、バランスを保つ運動を続けさせました。
その結果、複雑な運動やバランスを保つ運動をさせていたラットは、脳内のBDNFがより増加したといいます。
複雑な動きやバランスを保つ運動は、ニューロンを広めるとともに、結合を強くするので、より複雑な動きなどをすることによって、新しくできるニューロンの数と結び付きを強化し、脳細胞としての定着を促します。
■有酸素運動の後にやるべき運動
このように、有酸素運動を20〜30分した後に、複雑な動きをするダンス、ヨガのポーズやバランスを保つことを必要とするボルダリング、バランスボールなどをすることが、新しい脳細胞の定着に効果を発揮します。
すでにそういった運動をしている方は、その前に数十分の有酸素運動を取り入れてみる習慣を加えるだけで、脳力アップへの効果が期待できるのです。
また、複雑な動きが伴う活動であるピアノやギター、ドラムなど、楽器の演奏が趣味の方は、演奏の前に有酸素運動をする習慣を取り入れてみるのも効果的です。
■「苦しくない程度の運動」で体脂肪が燃える
さて、運動といえば、ダイエットについても気になる方が多いと思います。
運動の時、有酸素運動をすることで、脂肪を消費し、痩せる効果があることは有名です。
有酸素運動とは、あまり強くない力が筋肉にかかり続ける運動です。ジョギングやエアロビクス、ゆっくりした水泳などを20分以上続けることで、体内の脂肪燃焼が起こります。
ポイントは、大きく負担のかからない運動を続けることです。苦しさを伴うようなレベルまでいってしまうと、呼吸が浅くなり、酸素が不足してしまうため、体脂肪の燃焼が起こりません。
■無酸素運動で基礎代謝量を上げつつ、有酸素運動で脂肪を燃焼する
一方、筋力トレーニングや短距離ダッシュなどの運動は、無酸素運動で、筋肉を鍛え、基礎代謝量を増やす効果があります。
基礎代謝量は、20代をピークに年々落ちていきます。中年以降に太りやすくなるのは、これが原因の1つです。
脂肪と筋肉では、筋肉の方が消費エネルギーが大きいので、無酸素運動で筋肉質の身体をつくることによって、基礎代謝量は増加します。
そのため、無酸素運動で、基礎代謝量を上げつつ、有酸素運動で脂肪を燃焼するというのが、効果的なダイエットにつながります。
■「運動の順番」が重要
例えば、1時間の運動であれば、
筋力トレーニング(無酸素運動) 10分
ジョギング、エアロバイクなどの有酸素運動 40分
ストレッチ 5分
といった感じが、ダイエットを意識した運動としてよいでしょう。
ポイントは、筋力トレーニングを最初に行うことです。
筋力トレーニングを最初に行うことによって、体内の糖分を消費するので、有酸素運動の際、脂肪の消費がしやすくなる運動パターンができあがります。
ダイエットが目的であれば、有酸素運動を20分以上取り入れましょう。
一方、筋肉を鍛えることが目的ならば、筋力トレーニングの時間の割合を増やします。
この場合、ストレッチがポイントになります。
筋力トレーニング前の最初のストレッチで、筋肉を伸ばしすぎないこと。筋力トレーニングは、筋肉に圧力をかけて収縮させ、鍛えるトレーニング。だから、ストレッチで筋肉を伸ばしすぎると、筋肉を増強する効果が薄れてしまいます。
まずは、筋肉を伸ばしすぎない軽い準備運動から始めて、筋力トレーニングを行い、その後筋肉をしっかり伸ばすようなストレッチを行うと効果的です。
例えば、こんな感じで行うと、とても効果的です。この順番がとても大切なのです。
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チームダイナミクス代表取締役、人材育成・組織開発コンサルタント
大阪府立大学工学部卒業。英国立シェフィールド大学大学院修了(MSc:Master of Science理学修士)。早稲田大学オープンカレッジ講師。大手広告会社、リーバイス、ギャップなどの外資系企業を経て、「休み明けの朝、元気に仕事に向かう人をこの社会に増やす」を目的とし、人材育成・組織開発コンサルティングや企業研修プログラムを提供する株式会社チームダイナミクスを設立。アドラー心理学やコーチングの技術を駆使した手法で、リーダーシップと主体性のある人材の育成をサポートしている。「知識を能力に変える」研修プログラムの実績により、リピート率は、実に95%を超える。『相手を変える習慣力』『チームを変える習慣力』(クロスメディア・パブリッシング)、『リーダーのコミュニケーション習慣力』(三笠書房)他、著書は累計30万部を超える。
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(チームダイナミクス代表取締役、人材育成・組織開発コンサルタント 三浦 将)
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