「本日限り」「タイムセール」に騙されてはいけない…被害相談が急増する「詐欺サイト」の怪しい共通点
プレジデントオンライン / 2024年10月8日 8時15分
■「気軽にすぐ買える」に潜む落とし穴
オンラインモールやフリマサイトは、自宅に居ながら自由に買い物ができる便利な空間です。総務省の「令和3年 情報通信白書」によると、インターネットショッピングを利用したことがある人は73.4%に上り、日本人にとって当たり前のことになりつつあります。
欲しい物をAmazonや楽天市場、メルカリなどで検索して買う、SNSで流れてきた広告から公式サイトに移動して買う、といったことを多くの人が経験しているかと思います。その一方で、悪質な業者や公式サイトのように装った「偽サイト」「詐欺サイト」が登場し、届いた商品に問題があったり、交換や返品しようとしても販売業者と連絡が取れなかったりするトラブルも発生しています。
本稿では、こうした買い物トラブルを回避する方法のほか、もしトラブルに遭ったらどう対応すべきかについて解説します。
国民生活センターなどに寄せられた「表示・広告」に関する相談件数のうち、既存の広告媒体の相談は横ばいで推移していますが、電子広告の割合は増加傾向にあります(図表1)。
■相手の顔が見えないSNSだからこそ危ない
特にSNSが関係する消費者相談は年齢層を問わず増えており、2023年度は過去最多の8万404件となっています(図表2)。
相談内容は、SNS上の広告だけでなく、SNSでの勧誘がきっかけでトラブルになったり、SNSで知り合った相手との個人間取引でのトラブルなど、さまざまです。
SNS上で「話が合う」と思って友人になったつもりでも、お金を支払った途端、連絡が取れなくなることもあります。大幅な値引きや低価格をうたったり、商品の効果を過剰に強調する広告や、「簡単にもうかる」「会いたい」などの投稿やメッセージは要注意です。
ネットショッピングのトラブルから消費者を守るため、2022年5月に「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」が施行されました。
「取引デジタルプラットフォーム(取引DPF)」とは、ショッピングモールのように、さまざまな販売業者がサイト上に出店する消費者取引の場のことです。ネットオークションサイト、出前サイト、宿泊予約サイト、クラウドファンディングなども対象です。
■悪質な業者の正体を突き止めやすくなった
同法施行により、消費者庁はトラブルを未然に防ぐため、取引DPF運営事業者に対し、問題のある商品の出品削除などを要請できるようになりました。消費者の側からも、消費者庁に対し、商品に問題があったり、利益が害されるおそれなどがある場合、適切な措置をとるよう求めることが可能になりました。申出の手順は消費者庁のHPで確認できます。
返品や返金の交渉は販売業者と直接行う必要がありますが、連絡先が分からなかったり、連絡してもつながらないことが多く、なかなか解決に至らないのが現状です。しかし、同法が施行されたことにより、消費者はオンラインモールなどの運営会社に対して、販売業者の電話番号やメールアドレスなどの情報開示を請求できるようになりました。
情報開示を求めるには販売業者等の名称、取引日時、取引内容、損害額の合計、交渉の経緯、開示請求を用いて何を行おうとしているのかなどを記載し、取引DPF運営事業者へ請求します。ただし、開示を求めることができるのは、損害額の合計が1万円を超える場合です。消費者庁のHPから「販売業者等情報の開示請求書式」をダウンロードできますので、参考にしてください。
■詐欺サイトだった場合、対抗手段は使えない
しかし、取引DPF以外のサイトを利用してトラブルに遭った場合、このような対抗手段はありません。2023年4月1日~10月31日の間、消費者庁に申し出があった件数は205件ですが、そのうち144件が直販サイトや偽サイトなど、取引DPF以外のものでした(※)。
※第4回取引デジタルプラットフォーム官民協議会(2023年11月10日)の資料より
偽ショッピングサイトや詐欺サイトは、詐欺を目的としたウェブサイトを構築し、商品の注文・代金の振込を受けた上で、商品を発送しないか偽物の商品を発送します。多く見られるのが、次のような手口です。
● 「最大○○%OFF!」など、大幅な値引きを強調して商品購入を煽る
● 銀行口座等への前払いのみ、クレジットカードのみ、代金引換のみなど、支払方法が限定的
● 会社概要に実在しない住所が記載
■警察に行く前に「証拠」を保存する
被害に遭ったときは、直ちに次のことを行います。
① 被害の拡大を防ぐ
・クレジットカード番号などを入力してしまった場合
⇒クレジットカード会社に連絡して、支払いの停止を依頼する
・ID、パスワードなどを入力してしまった場合
⇒そのID、パスワードなどを利用している「すべて」のサービスにおいて、パスワードを変更
② 証拠を保存する
・商品が出品されていたショッピングサイトのURL、画像
・ショッピングサイト運営会社の情報(法人名、住所、電話番号等)
・落札日時又は購入日時
・送金先の金融機関名、口座番号、口座名義人
・代金を振り込んだことがわかる資料(振込明細等)
・取引相手とやりとりした際のメール(メールヘッダーも含む)、電話、郵便などの情報を時系列に整理したもの
③ 警察に通報・相談する
ショッピングサイトのURL、画像等の資料などを持参して、最寄りの警察署又はサイバー相談窓口に通報・相談する
■他人の評価は大事だけどステマには要注意
トラブルは事前に回避できればそれに越したことはありません。政府広報オンラインでも以下のような注意喚起をしています。「購入する」「申し込む」などをクリックする前に、これらのチェックを怠らないようにしましょう。
・一般の価格より大幅に安い場合、模倣品のおそれがあるので注意する
・配送方法や配送期間等を確認する
・支払方法が銀行振込のみで、振込先が個人名口座の場合は注意する
・キャンセル・返品条件、利用規約は事前に必ず確認する
通常の買い物と違い、ネットショッピングは商品を手に取って確かめることができず、売り手の顔も見えません。そのため、第三者の評価が消費行動に大きな影響を及ぼします。
2023年10月、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)の規制が導入されました。ステマとは、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことです。
たとえば、事業者がインフルエンサーに対して、商品を紹介する動画を投稿するように依頼し、インフルエンサーが事業者から依頼されたものであることを隠して投稿するといったものです。
■「第三者」を振る舞い、消費者を欺く行為
SNS投稿、レビュー投稿といったインターネット上の表示だけでなく、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌などの表示についても対象となります。ただし、個人の感想など広告でないものや、テレビCMなど、明らかに広告であると分かるものは対象外です。
企業による広告・宣伝であれば、ある程度の誇張・誇大が含まれているものと考え、消費者側もそのことを含めて慎重に商品やサービスを選ぶと思われます。
一方、広告・宣伝であることが分からない場合、企業とは無関係の第三者の感想であると誤って認識し、その内容をそのまま受け取ってしまう可能性があり、消費者が自らの判断で商品やサービスを選ぶことができなくなるかもしれません。
ステマ規制は、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守るためのものです。
■グーグルマップの星を増やした医療法人に処分
なお、規制の対象となるのは、商品やサービスを供給する事業者(広告主)で、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象にはなりません。
違反をすると、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」に基づく措置命令を受ける可能性があり、従わなかった場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金のいずれか、または併科となります。
景品表示法とは、消費者の利益を保護するため、景品類及び表示に関する規制を行う法律です。同法では「不当表示の禁止」と「景品類の制限及び禁止」の規制がありますが、ステマ規制は不当表示の禁止類型のうち、「その他、誤認されるおそれがあるとして指定された表示」に該当します。
ステマ規制が導入されて約8カ月後の2024年6月、インフルエンザ予防接種の割引と引き換えに、グーグルマップの口コミ欄に高評価を投稿するよう患者に働きかけた医療法人に対し、初の行政処分が出ました。
飲食店や医療機関を探す際によく参考にされるグーグルマップの口コミにも、ステマが潜んでいる可能性があるのです。
ちなみに、厚生労働省は「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業」を行っており、不適切な表示をする医療機関のウェブサイトをみつけたときは、消費者が情報提供できる「医療機関ネットパトロール」の制度が導入されています。
■根拠が分からないまま「No.1」と謳う企業も
不当表示の禁止には、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の類型もあり、合理的根拠のない「No.1表示」がこれらに該当するとして、2023年から24年にかけ、消費者庁が続々と違反事業者に措置命令を出す事態となりました。
問題となったのは、「お客様満足度No.1」「口コミ人気No.1」「女性に人気のダイエットドリンクNo.1」「3部門No.1」「7冠達成」といった広告です。中には、海外Wi-Fiレンタルサービスで有名な「イモトのWiFi」を提供するエクスコムグローバル(東京)も含まれていました。
「No.1表示」が不当表示とならないためには、「客観的な調査に基づいていること」「調査結果を正確かつ適正に引用していること」のいずれも満たさなくてはなりません。しかし、措置命令が出されたケースでは、調査対象者が当該商品やサービスの利用者であるかどうかを聞いていないとか、比較対象から強力な競合社を除外するといったことが行われていたようです。
No.1表示は調査会社が広告主に働きかけて行われる場合が多いのですが、違反を問えるのはあくまでも違反表示を行った広告主です。しかし、消費者庁が24年9月26日に公表した実態調査報告書では、調査会社に勧められるまま、根拠を十分確認せずに「No.1」などと広告に使っている事業者が多いということが分かりました。
■キラキラした宣伝文句より自分の目を信じる
あらゆるものに値上げの波が押し寄せ、生活防衛の視点から、価格に対する消費者の目は一段と厳しくなっています。買い物に際して重要なことは、モノやサービスの質とそれらの価格を比較し、適切な選択を行うことです。
その前提として、判断するための表示が適正に行われていなくてはなりません。もし、実体を反映しない表示が行われるとしたら、消費者は誤った選択により、無駄な出費をすることになってしまいます。
ひとたびトラブルに遭ってしまえば、その対処に多大なるエネルギーを消耗することになります。消費者である私たちは、きらびやかな宣伝文句を鵜呑みにせず、「果たしてこれはどういう意味だろう」「どのような根拠があるのだろう」と、立ち止まって考える冷静さを保っていたいものです。
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ファイナンシャルプランナー
1956年香川県生まれ。大手生命保険会社勤務の後、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。1996年から約5年間、公的機関において一般生活者対象のマネー相談を担当。現在は、金融機関に属さない独立系FP会社である生活設計塾クルーの創立メンバーとして、一人一人の暮らしに根差したマネープラン、保障設計等の相談業務に携わる。共働き夫婦からの相談も多く、個々の家庭の考え方や事情に合わせた親身な家計アドバイスが好評。著書に『医療保険は入ってはいけない!』(ダイヤモンド社)など。講演・セミナー等の講師としても活動。
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(ファイナンシャルプランナー 内藤 眞弓)
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