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「勉強しなさい‼」と命令するよりずっと効果的…現役東大生に聞いた「頭のいい子が育つ家庭」の常識

プレジデントオンライン / 2024年10月12日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

地頭のよい子を育てるにはどうしたらいいのか。『小学生が5日でできる 東大式 超速!読解ドリル』(実務教育出版)を書いた東大生作家の西岡壱誠さんは「普段の親子の会話から『なぜ?』と理由を尋ねるといい。因果関係を結びつける訓練を重ねれば、子供はどんどん賢くなっていく」という――。

■東大生の親は“遠まわしに”勉強を促している

賢い子が育つ家庭では、親子はどんなコミュニケーションを取っているのでしょうか?

子供が一番接する時間が長いのは、先生でも友達でもなく親であり、その親とのコミュニケーションの質が高いかどうかによって、子供の能力も大きく変わっていくということですね。

おそらくですが、多くの人は「親が、子供に対して、頻繁に『勉強しなさい』と言っている家庭は、子供が賢くなりやすい」と考えるのではないでしょうか。

宿題をやりなさいとか、テストのために勉強しなさいとか、そんなコミュニケーションが多い家庭の子供なら、学力が上がりやすいのではないか、と。

でも実は、そうではないのです。東大生の親御さんは、「勉強しなさい」とストレートに言うのではなく、少し遠回りをして子供に「勉強しなさい」と伝えています。

小さい頃から、「勉強しろ」と言われたこともないし、進路について口出しされた記憶はなかったが、勉強していないと「なんで勉強してないの?」と聞かれたし、進路に関しても「なんでこの中学に行きたいと思ったの?」と聞かれ、深掘りされた記憶がある(教育学部・4年)

このように、東大生の育つ家庭でのコミュニケーションは、「命令」ではなく「質問」である場合が多いです。

■子供に「なぜ?」と質問する頻度が多い

勉強に関しても、「勉強しなさい」ではなく「なんで勉強しないの?」「勉強しなくていいの?」と聞く。その質問に対して、きちんと答えを求める。「こう言う理由でやらなくていいと思った」と言われたら、そこから会話を発展させる。

そういう姿勢があると、子供がきちんと考える習慣がついて、頭がよくなることが多いです。

「賢い子が育つ家庭は、親のコミュニケーションスキルが高い」と言われています。でも、「そんなこと言われても、どんなコミュニケーションを取ればいいの?」と多くの親御さんは思うでしょう。

また、「であれば、子供に対してニュースの話をしたり、アカデミックな話をした方がいいのか?」と思う人もいるかもしれませんが、東大生にアンケートを取ると、実はそういうことではないということがわかります。

もちろんニュースや社会情勢に敏感な親御さんを持つ東大生もいましたが、別にそういう親御さんだけではありませんでした。コミュニケーションの内容自体は、子供の脳の成長にそこまで大きく寄与するものではないのかもしれません。

その代わり、1つだけ共通点と見られるポイントがありました。それは、東大生の親御さんは、子供に「なぜ?」と聞く頻度が多かったということです。

先ほどの、勉強に対しても命令口調ではなく質問口調で聞く、というのもその一環です。そしてこの姿勢は、勉強以外の面でも見られます。

■親子の会話で「因果関係」を訓練する

絵本を読み聞かせられているときに「これってなんでだと思う?」とよく聞かれた。「この登場人物はなんでこう思ったんだろうね?」という質問をされて、一緒に考えるのが楽しかった(理1・2年)

「理由になっていない」ということはよく言われた。「こういう理由で、こういうものを買って欲しい」とか「こういう理由で、こうしたい」って言うと、「それは理由になっていない」と言われて、何度も主張を改善した経験がある(経済学部・4年)

これらのコミュニケーションは、因果関係をしっかりと結び付ける能力を育ててくれます。

因果関係とは、「原因と結果の結び付き」のことです。例えばあなたは今、お腹が痛いとします。お腹が痛いということは、お腹が痛くなった原因があるはずです。

例えば、変なものを食べてしまったのかもしれません。お腹を冷やして寝てしまったのかもしれません。食べ過ぎかもしれないし、病気かもしれない。でもなんにせよ、なんらかの理由があるはずなのです。

接続詞でいうところの「だから」で結ばれているものや、「なぜなら」で結ばれているものですね。

文章の多くは、主張と、その理由が述べられています。「日本は16歳から選挙権を与えるべきだ、なぜなら〜」とその理由が文章として語られていたり、「人間はもっと挑戦するべきだ。その理由は3つある。1つ目は〜」と、主張を裏付けるための理由を複数個述べて文章になっていることもあります。

因果関係をしっかり理解すれば、文章を理解することができるようになるのです。

■東大生の親は「理由になっているのか」を見極めている

特に小さい子は、まだこの因果関係の把握能力が低い場合があります。

例えばよく小学生くらいの生徒が書く文章の間違いとして、「A駅には電車で行くべきだ。なぜなら、遠いからだ」のような間違いがあります。大人が読むと違和感がありますよね。「遠いからといって、電車じゃなきゃいけない理由は何?」と。

「A駅には電車で行くべきだ。徒歩で行くには遠すぎるし、車で移動するには回り道になってしまう。バスも出ていない。だから、電車で行くべきだ」というように、「電車で行くべき」という主張をするためには、しっかり「それ以外の選択肢がダメな理由」を述べなければなりません。

これが子供のうちはまだ、うまくいかないわけですね。

また、「答えっぽいけど、答えでない」という間違いのパターンもあります。例えば、「この傘はAくんがこの前買っていた。だから、この傘が欲しい」というような主張を子供がする場合がありますが、これも本当は違和感のある話です。

「Aくんが買っていた傘だからって、なんでこの傘が欲しいの?」となってしまいます。

「Aくんが買っていた傘で、自分もその傘を見てすごくいい傘だと思った。だから、この傘が欲しい」というように、論理的な「つながり」がないと、この文は不成立になってしまうのです。

東大生の親御さんは、これらの因果関係に対して敏感で、「理由になっているかどうか」をしっかりと見極め、指摘する場合が多いです。

会話する母と娘
写真=iStock.com/Milatas
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Milatas

さまざまな物事や主張に対して理由を聞き、しっかりと子供の頭の中で因果関係が結び付くような訓練をさせています。日常会話の中でそれが自然と行われていると、因果関係の把握能力が高くなっていくわけです。

■「雨の日に傘をさしたほうがいい理由」を考えてみる

さて、これで因果関係を把握することがとても大事だということが伝わったと思うので、ここからは東大生の親御さんとの会話を元にして我々が作った「因果関係を問うクイズ」を2つ紹介させてください。

(1)雨の日は傘をさした方がいい理由として、最も適切なものはどれか?
A 傘をささないと、濡れて風邪を引いてしまうかもしれないから
B 傘をささないと、雨に濡れてしまうから
C 傘をさすと、雨に濡れないから
D 傘をさすと、気分がいいから
雨の日に傘をさしてランドセルを背負う日本の小学生の女の子
写真=iStock.com/Satoshi-K
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Satoshi-K

BとCは、一見間違っていなさそうに見えます。でも、よく考えてください。「濡れてしまう」というのは、ただの情報です。濡れるのが嫌なだけなら、人間はお風呂に入らないでしょうしプールにも入らないでしょう。

「雨水に濡れて、身体の体温が下がって、風邪を引いてしまうかもしれない」というように、「濡れる」ことが原因となって、違う結果が生まれてしまうから、雨水に濡れることはよくないとなっているわけですね。

Dは、正しそうに見えるのですが、「雨の日に」さした方がいい理由ではないですね。気分がいいのは晴れの日も同じです。傘をさした方がいい理由にしかなっていません。だから、正解はAです。

■普段の会話から「なぜ」「どうして」を考えてもらう

もう一問、挑戦してみてください。

(2)お年玉は貯金した方がいい理由として、最も適切なものはどれか?
A 1年の最初に使ってしまうと、その後で本当に欲しいものが買えなくなってしまうから
B 貯金することは気持ちがいいものだから
C お金を過度に使いすぎてしまうと、将来ろくな大人にならないから
D お年玉を貯金しておけば、どんどんお金が貯まっていくから

Bは、「貯金することは気持ちがいい」となっています。この情報が正しいかはさておき、これは「貯金すること」の理由ですね。

でも、なぜ「お年玉を」貯金した方がいいのか、という理由にはなっていないですよね。ですからこれは間違いになります。

Cの「お金を過度に使いすぎてしまうと、将来ろくな大人にならない」は、「過度にお金を使わない方がいい理由」であって、「貯金した方がいい理由」ではないですよね。

同じようなことを言っているとは思いますが、「過度にお金を使わない」=「貯金する」と言うわけではないでしょう。適度に使うのであれば問題ないはずです。

Dは、「貯金するとお金が貯まる」と言うのは間違いではないでしょうが、理由にはなっていないですね。

お金が貯まって使えるようになるお金が増えたり、何か買いたいものが発売された時に買えたりするから、と「お金を貯める」ことを原因とした別の「結果」が出てきて初めて、「お金を貯めた方がいい」理由になります。ですので正解はAになります。

いかがでしょうか? これらの問題は、一見簡単そうに見えても、しっかりと深く考えないと答えが出ませんよね。

西岡壱誠『小学生が5日でできる 東大式 超速!読解ドリル』(実務教育出版)
西岡壱誠『小学生が5日でできる 東大式 超速!読解ドリル』(実務教育出版)

これと同じで、子供とのちょっとしたコミュニケーションの中でスルーしてしまっていることの中にも本当は、「厳密に言うと理由になっていないこと」が山ほどあるかもしれません。

ですから、親御さんはぜひ、普段の会話から子供に「理由を考える習慣」を付けることを促しましょう。「なんで?」「どうして?」と聞いて、考えさせる。そして「理由として適切かどうか」という点をしっかりと重視し、指摘していく。

これらを徹底すれば、子供がどんどん賢い子になっていくと言えるのではないでしょうか。

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西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
現役東大生 カルペ・ディエム代表
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中に開発した独自の勉強術を駆使して東大合格を果たす。2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教え、教師に指導法のコンサルティングを行っている。日曜劇場「ドラゴン桜」の監修や漫画「ドラゴン桜2」の編集も担当。著書はシリーズ45万部となる『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大算数』(いずれも東洋経済新報社)ほか多数。

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(現役東大生 カルペ・ディエム代表 西岡 壱誠)

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