中学受験「10月に第一志望を変えるのは時期尚早」…入試本番で子供の力を引き出す学校選び"最後のチャンス"
プレジデントオンライン / 2024年10月12日 8時15分
■10月時点で見切りをつけるのは早合点
入試本番が近づいてきた。この時期、親たちを最も悩ませるのが、志望校の選択だ。できれば偏差値の高い難関校に入ってほしい。でも、現実の学力も見えてきてしまった。このまま第一志望で進んでいいのか、諦めた方がいいのか――、そんな相談が増えてくるのは、毎年決まってこの時期だ。
親たちをザワつかせるもの。それは、志望校判定模試の結果と過去問の出来だろう。だが、10月のこの時点で見切りをつけるのは、早合点。なぜなら、ここから驚異的に伸びてくる子供たちを、これまで何度も見てきたからだ。
夏休み開けの9月から12月の半ばまで、月1ペースで合否判定模試が実施される。その結果に親たちは右往左往しがちだが、1回のテストの結果が悪かったからといって、すぐに諦める必要はない。まずは4回受けてみて、その結果を待つべきだ。よくやってしまいがちなのが、12月の最後の模試で偏差値がガクッと下がり、それが今の学力だと決めつけ、志望校を変えてしまうこと。
■その日のコンディションで集中力が大きく変わる
発達の途中にいる小学生の子供は、その日のコンディションやメンタルで集中力が大きく変わってくる。その日に出た問題がたまたま苦手な分野だったり、朝出かける前に親とケンカして気分が晴れなかったり、隣でテストを受けている子の鉛筆の音がやたらと大きくて気になってしまったりと、ほんのちょっとの違いで、実力を発揮できないことが多々ある。だから、「模試の得点力」=「今の学力」と思わないことだ。
もし、1つだけ見るのなら、4回受けたうちの一番良かった模試を子供に見せて、「あなたはこれだけの力を持っているのだから、大丈夫よ」と安心させてあげてほしい。たまたま調子が良くて高得点が取れた、ということも考えられなくはないが、これだけの点が取れたことは紛れもない事実。自信にはなるだろう。
だが、現実的には、9月~12月に受けた4回分の模試の結果を総合的に見て判断する方がいい。その際、4回すべてが合格可能性20%だったら、正直合格はほど遠い。なぜなら、「合格可能性20%」にはそれ以下の子もすべてカウントされているからだ。
■「12月中旬」が第一志望を変えるデッドライン
でも、合格可能性25%であれば、かすかな希望は持てる。例えば合格可能性25%の子が20人受けたら、2~3人の子は第一志望校に滑り込んでしまうのが中学受験。一昨年度の開成中の入試は、算数がやたらと簡単で合格平均点が90点を超えた。こういう年のときは、算数では点差が付かないので、国語の出来が合否の分かれ道となる。算数が得意な子には不利だが、算数はそこそこでも国語がものすごく得意な子には有利になり、「まさかの合格」になった子がたくさんいたのだ。
ただ、客観的に見れば、チャレンジになることは間違いない。そこで12月の最後の模試の結果が出た段階で、このまま第一志望にしてチャレンジするか、第一志望校を変えるか選択しなければならない。「憧れの学校」を第一志望と言えるデッドラインは、12月の半ばまで。それ以降は、現実を見据えて入試対策に励むべきだ。
■第一志望にこだわるなら、併願校選びが鍵を握る
チャレンジ校を諦めない意義。それは、学習へのモチベーションを下げないためだ。小学4年生、場合によってはもっとずっと前から「この学校に入りたい」と夢を抱いて受験勉強を頑張ってきた子供にとって、入試が間近に見えてきたこの時期に第一志望校を変えるのは、正直つらい。志望校を変えることによって、学習意欲が低下してしまうのであれば、合格の可能性は低いかもしれないけれど、チャレンジさせた方がモチベーションを保てるし、受験が終わった後に親子のわだかまりも生じにくい。
ただし、あくまでも挑戦者であることを忘れてはいけない。そこで、大事になってくるのが、第2志望、第3志望の受験校選びだ。ここで子供本人が気に入っていて、かつ確実に合格を勝ち取れる学校を選んでおく必要がある。そうすれば、思い切って第一志望校をチャレンジできるし、万が一、夢が叶わなかったとしても、納得して第2、第3志望の学校へ進学できる。
■「自分で決めた」と本人が感じられるか
一方、チャレンジ校を諦めて、現実的な受験に臨ませたい場合には、親のひと声が重要になる。「このままでは合格できないから、志望校を変えないと」と身も蓋もない言葉を投げる親は案外少なくないが、これは絶対に言ってはいけない。子供の気持ちに寄り添いつつ、「この学校も楽しそうだね」「あなたに合ってそうだね」と前向きな言葉をかけ続け、他の選択肢を提示してみよう。
小学生の子供だって、うすうすは「自分は第一志望校には行けそうにない」ことは分かっているのだ。それを分かった上でチャレンジしたいのなら、その気持ちを受け止め応援してあげればいいし、現状に納得した上で志望校を変えるのであれば、最大限のバックアップをしてあげればいい。大事なのは、子供本人に決めさせることだ。もちろん、実際は親の誘導や演出もある。だけど、「自分で決めた」と本人が感じられるかどうかが、その後の親子関係に大きく影響を及ぼすことを知っておいてほしい。
■第一志望を変えるなら、偏差値帯だけで選んではいけない
ただ、第一志望校を変える際には、気をつけなければならないことがある。それは、偏差値帯だけで選択をしないことだ。例えば、これまで開成中を第一志望にして勉強してきた子が武蔵中に変えたり、豊島岡女子を第一志望校にしていた子が鷗友女子に変えたりするのは、絶対にやってはいけない。なぜなら、両者は入試問題の傾向が極端に違い過ぎるからだ。偏差値帯だけで見れば「合格ライン」でも、入試となると「不合格」になってしまう可能性が高い。
第一志望校を変える場合は、それまで第一志望校として対策してきた学校の入試問題と傾向が似ている学校か、塾のテキストの内容から大きくかけ離れないような一般的な問題を出す学校を選択しよう。もちろん、子供本人が「ここなら行きたい」と納得していることが大前提だ。
■一般的に秋は成績が変動しやすい時期
9月の模試の結果に続いて、10月の模試の結果もイマイチだった……。そんなとき、親は「もうムリかもしれない」と早々に見切りを付け、志望校変更に走りがちだ。だが、一般的に秋は成績が変動しやすい時期であることを知っておいてほしい。「夏休みにあんなに頑張ったのだから」と、親はすぐに結果を期待するが、夏休み中に総復習した内容が定着するには、もう少し時間がかかる。また、子供はストレスに強く影響される。直前時期は、親はもちろんだが、子供にも大きなストレスがかかってくる。
慌てて第一志望校を変えてしまったばかりに、受験勉強に対するモチベーションがガクッと下がってしまう子供は少なくない。決断はもう少し後に延ばしていいだろう。わが子の不合格を今から心配するよりも、「毎日、本当によく勉強しているね」とわが子の頑張りを認め、褒めてあげてほしい。そして、「今から頑張れば十分間に合うよ」と気持ちが前に向けるような言葉がけをしてあげてほしい。
■子供の力は未知数、最後の10日で伸びる子も
小学生の子供の力は未知数だ。合格可能性80%だった子が、当日極度の緊張で実力を発揮できないまま終わってしまうこともあるし、それまで凸凹の成績だった子が、最後の10日間で人が変わったように勉強をし、合格してしまうこともある。「確かなものがない」中で挑戦するのはみんな同じ。このチャレンジこそ、尊いものなのだ。だからこそ、小さな身体で頑張っているわが子を、親は精一杯、愛情を持って応援してあげてほしい。
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中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。新著『受験で勝てる子の育て方』(日経BP)。
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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)
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