日本で同性婚は認められていないが…入籍して夫婦になった「ゲイカップル」がSNSで結婚報告をした本当の狙い
プレジデントオンライン / 2024年10月13日 18時15分
※本稿は、YouTubeチャンネル「Bring.」の動画《「幸せ」を考える。人間関係/結婚・家族観/ネガティブ感情・孤独への向き合い方…》の内容を再編集したものです。
■ネガティブ感情への対処法
【澤円】自分の考えや価値観などに自信が持てない人が多くいます。特に職場では、周囲と自分を比較して落ち込んだり、「どうせわたしは……」とネガティブに考えてしまったりする人もいます。そういった自分へのネガティブ感情をうまく扱う方法があれば、ぜひ教えてください。
【ドリアン・ロロブリジーダ】もちろんわたしも自分に対するネガティブ感情を抱くことはたくさんあります。
まず前提として、ネガティブ感情って必ずしも悪いものではないと思うのです。よく考えてみてください。自分に対するネガティブな感情が一切ない、「わたしは完璧な人間だ」「わたしは一切間違っていない」という自信満々の人ってちょっと怖いですよね? 「自分はこういうところが駄目だ」「こういうところが足りない」といったネガティブな感情が成長を促してくれる側面もあるはずです。
【澤円】でも、そのネガティブ感情の扱いを間違って、「刃」のようなかたちで自分に向けてしまうと……?
【ドリアン・ロロブリジーダ】なんらかの対処が必要ですよね。自分自身をどんどん傷つけてしまうのですから、幸せが遠ざかっていくのは目に見えています。そういった人に必要なのは、そのネガティブな思いが真実なのかどうかを冷静に整理することでしょう。
「自分はこういうところが駄目だから、周囲とうまくいかない」などと思っていても、それが勝手な思い込みだという可能性だってあるはずです。あるいは、たとえ思い込みではなかったとしても、自分を観察して客観視することにつながります。
■「穴の中にいると気付いたら、せめて穴を掘り続けるのはやめなさい」
そのような人にお伝えしたいのは、わたしが若い頃に働いていたゲイバーのママの言葉で、「穴に落ちていると気づいたんだったら、せめて穴を掘り続けるのはやめなさい」というものです。自分を客観視した結果、自分のマイナス面に気づいたのなら、それ以上自分を責めることだけはやめたほうがいいということですね。
もちろん、その穴からはい上がるにはまた別の方法が必要だとは思いますが、少なくとも自分をさらに傷つけることは避けることができます。
■「ゲイカップル」なのに結婚できた
【澤円】人生において幸せを左右する大きなテーマとして、結婚やパートナーと暮らすことも挙げられます。ドリアンさんは先頃、ネイリストのキラさんと結婚されましたが、同性婚が認められていない現状において、レアなケースとして話題になりました。
【ドリアン・ロロブリジーダ】わたしのパートナーはトランスジェンダー男性です。身体的な性としては女性として生まれましたが、いまは男性として生きていて、なおかつゲイです。ですから、見た目ではわたしたちは男性同士のゲイカップルなのですが、彼は戸籍上の性別を変更していなかったため、男女のカップルというかたちで現状のトラディショナルな婚姻制度にのっとって入籍をしました。
そこであえて「X(旧:Twitter)」で結婚報告をしたのは、世間に対しての問題提起のためです。世の中には、同性だという理由で結婚できないカップルがたくさんいます。わたしたちは入籍できるのに、何十年も連れ添っている男性同士、女性同士のカップルはそうできないのです。婚姻の平等がない現状について、「それはおかしいのでは?」と少しでも考えてもらうきっかけになってほしいという気持ちもあります。
【澤円】婚姻制度は法律で決められているものですが、法律は変えられないものではありません。現状に即したかたちでアップデートされてもいいですよね。
■男女カップルでなければ幸せや愛情が生まれないなんてことはない
【ドリアン・ロロブリジーダ】法律は社会をいい方向で継続させるためのものですが、本来的には人が幸せになるために存在しているものだと思います。その幸せの価値観がどんどん多様になっているのですから、法律や婚姻制度などの仕組みもそれにアジャストしていく必要を感じています。
【澤円】いま、特に若い世代では結婚観の他に家族観も変わってきていますよね。家族観についてはどのような考えを持っていますか?
【ドリアン・ロロブリジーダ】同性婚について、「伝統的な家族観が崩れる」という理由で反対する人も多くいます。でも、そういう人がいう家族観というのは、僅かここ百数十年のあいだに生まれたものでしかありません。明治以降における、家父長制の側面がとても強い家族観を伝統的といっているだけなのです。
でも、人類の長い歴史から見れば、百数十年前にできたものを本当に「伝統的」といえるのでしょうか? ですから、今後も家族のかたちは変容を遂げていくでしょう。
それに、様々な家族のかたちがあるなかでなにより大切なことは、その家族を構成する人たち自身が幸せであることではないでしょうか。男女のカップルでなければ幸せや愛情が生まれ得ないなんてことはないですよね。
【澤円】本当にそう思います。
■「長生きしちゃうかも……」という幸せな不安
【澤円】いまは、「VUCA」の時代と呼ばれるように、先が見通しづらい世の中です。多くのビジネスパーソンがお金やライフプランなどに関する不安を感じているようです。ドリアンさんは、そうした将来への不安を感じることはありますか?
【ドリアン・ロロブリジーダ】もちろんありますよ! こんな根無し草のような仕事をしていて不安を感じないわけがありません……(苦笑)。ただ、心配したって不安が現実になることもあれば、そうならないことだってあるわけです。だから、「起こったことは仕方ない」と思って日々を生きるしかないですよね。
例えばお金のことが不安であれば、「NISA」を活用してコツコツと投資をしていくこともできるでしょう。でも、いつ天変地異や紛争が起きるかなんて誰にもわかりません。不安を抱えるなかでも、それこそ「どのようにしてご機嫌に生きるのか」と今日にフォーカスして、1日1日を積み重ねていくほうが大切だと思うのです。
ただ、わたしの場合、会社員時代と比べてはるかにストレスフリーな生活を送れています。不確実な仕事や生き方を選択したのに、ストレスが減ったことで「どうしよう、長生きしちゃうかもしれない……」という不安も持っていますけどね(笑)。
■あなたはもう「幸せ」
【澤円】(笑)。ドリアンさんにとって、幸せの基準とはどこにありますか?
【ドリアン・ロロブリジーダ】幸せの基準というのは、下げれば下げるほどいいのではないでしょうか。「これがないと幸せではない」「こういう状況でないと幸せではない」と幸せの基準をどんどん上げていくと、自ら幸せを遠ざけることになってしまいます。
それこそ、朝起きて綺麗な空気を味わうことだって幸せではありませんか? 様々な理由から、幸福を感じにくい状況の方がいることは理解しています。でも、あまりに劣悪な状況でない限り、あなたはもう「幸せ」なのです。小さなことに「ああ、幸せだな」「今日もいい1日だったな」と思えるくらいの基準にしたほうが、人生が幸せに満ちていくのだと思います。
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圓窓 代表取締役
1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年にマイクロソフトテクノロジーセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教授、武蔵野大学専任教員の他にも、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、またはセミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020年3月より、日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。主な著書に『メタ思考』(大和書房)、『「やめる」という選択』(日経BP)、『「疑う」からはじめる。』(アスコム)、『個人力』(プレジデント社)、『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)などがある。
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(ドリアン・ロロブリジーダ、圓窓 代表取締役 澤 円 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=清家茂樹)
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