子供が口呼吸をしていたら要注意…子供の人生を決める"歯並び"のために今すぐやめたい習慣はこれ
プレジデントオンライン / 2024年10月13日 15時15分
※本稿は、多保学『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。
■指しゃぶりが続くと、上下の前歯の間にすき間ができる
指しゃぶり・おしゃぶりは歯並びに悪影響です。子どもの気持ちが安心するからといって、いつまでも続けさせてはいけません!
赤ちゃんの癖の1つに指しゃぶりがあります。成長するにつれ自然にしなくなりますが、中には、指に「吸いダコ」ができるほど続ける子どももいます。指しゃぶりの癖が、歯が生え始める頃まで残っていると、歯並びや噛み合わせに悪影響を与える可能性があります。
長期間にわたって指を吸い続けていると、上下の前歯の間にすき間ができる「開咬」という不正咬合になる恐れがあります(図表1)。
開咬になると、前歯でものを噛み切ることが難しくなります。また、歯並びの横幅が狭くなる「狭窄歯列弓」を引き起こす可能性もあります(図表2)。2〜3歳を過ぎても指しゃぶりを続けている場合は、徐々にやめさせた方が良いでしょう。
指しゃぶりをなかなかやめない場合は、爪に苦味のあるものを塗ったり、好きなキャラクターの絆創膏を貼ったりして「噛んだらかわいそう」と思わせるなどの方法があります。
■口呼吸をしていると、顎が育たない
また、指しゃぶりをする子どもは、鼻呼吸ができていない可能性もあります。指をしゃぶることで上顎が上を向くことで、気道が確保されて呼吸しやすくなるためです(図表3)。
鼻と口は密接な関係があります。本来は口ではなく鼻で呼吸すべきであり、鼻呼吸は顎の成長にとっても必要です。口呼吸をしていると、顎が育ちません。これは口呼吸をしていると常に口が開いているので、舌がスポットについていない状態です。
これでは顎は発達しません。口が常に開いている状態だと、舌は低位舌の状態になり、舌が原因で舌の後ろにある気道を圧迫していきます。結果的に口呼吸により気道が閉塞されてしまうのです。
ちなみに、人間は首を前にして、猫背の体勢をとることにより、気道が開き呼吸がしやすくなります(ストレートネック)。
そのため、子どもは代償的に、猫背の体勢をとることにより、呼吸がしやすい姿勢をとるのです。口呼吸の子がストレートネックで猫背になっているのはこれが原因です(図表4)。
悪習癖、不正咬合や顎の成長は呼吸や姿勢とも密接に関係しているのです。口呼吸の有無のチェックは、子どもがYouTubeなどの動画サイトやテレビを見て油断している時などに、口が開いてないか見てあげてください。
■鼻に疾患があり口呼吸になっているかを鑑別する方法
ほとんどの親御さんは「うちの子は大丈夫です」と言いますが、かなり高い確率で口が開いています。コロナ禍になりマスクを着用するようになってから口呼吸をしている子どもが急激に増えました。
マスクをすると、大人でも鼻呼吸が苦しくて口呼吸になるほどですから、子どもが口呼吸をしてしまうのは当然のことです。
口呼吸の場合、原因は単純に悪習癖として口呼吸になってしまっている子と、鼻に疾患があり口呼吸になってしまっている子を鑑別する必要があります。
後者の鼻に疾患がある子どもは、アレルギーがひどいか、鼻の粘膜が慢性的に腫れているか、上顎洞という副鼻腔に炎症があるか、鼻中隔が湾曲しているか、アデノイドが腫れているか、扁桃腺が腫れていることが主な原因です。
これらの診断は必ずコンビームCTを見て評価を行います。ここで重要なのが気道が診断できるCT(コンピューター断層撮影装置)です。我々の法人には複数歯科医院がありますが、小児歯科医院には一番性能が良い気道の評価できるCTを入れています。
アデノイドや扁桃腺で気道が狭窄している子どもの場合、やはり姿勢を猫背にして気道を開く姿勢をとります。本来の理想的な姿勢でCTを撮影することにより気道の体積が狭いか、問題ないかを診断できるのです。
仮にアデノイド肥大や扁桃腺の腫脹や鼻の疾患がある場合は、耳鼻咽喉科に紹介状を書いて適切な加療をお願いしています。街の耳鼻咽喉科ではネブライザーという鼻を潤す機械を当てるか、薬を処方して終わりになることが多く、小児期の耳鼻咽喉科疾患に対して根本的な治療を行ってくれるクリニックは非常に少ない印象です。
■おしゃぶりは1歳半くらいまでに卒業を
解剖学的にどうしても治らない場合は、全身麻酔などを行い、外科的に手術を行う必要もあります。これにより根本的な治療をするケースも数多くあります。
そのため、当医院では小児期の耳鼻咽喉科疾患に対する手術のオプションも持ち合わせた耳鼻咽喉科クリニックに紹介状を書いています。
最近の小児期の患者さんを診察すると、5人のうち4人くらいが不正咬合になっています。まさに不正咬合のパンデミック状態です。また、おしゃぶりも指しゃぶり同様、いつまでも続けていると歯並びに悪影響を与える可能性があります。
開咬や出っ歯の他、舌が上顎に当たらないため、上顎が十分成長せず、乳歯列の空隙が不足したり、上の奥歯が下の奥歯の内側に入ってしまう「臼歯交叉咬合」になったりする恐れがあります(図表5)。
おしゃぶりも1歳半くらいまでには卒業させるようにしましょう。母乳育児が6カ月未満の場合、2倍の確率でおしゃぶりの癖を助長するという研究結果があります。
また、別の研究では、母乳を12カ月以上授乳した子どもの臼歯交叉咬合の発症率は、母乳の経験がない子どもに比べて20倍、6〜12カ月授乳した子どもに比べて5倍低かったという報告もあります。
不正咬合のリスクを減らすためには、生後6カ月以上は完全母乳での育児をおすすめします。
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歯科医師、日本歯科大学付属病院臨床准教授
医療法人社団幸誠会 たぼ歯科医院 理事長、日本歯周病学会指導医、歯科博士。埼玉県浦和駅徒歩1分圏内に3店舗の歯科医院を経営し、スタッフは100名。日本歯科大学附属病院で教鞭をとり、国内外の学会での講演多数。予防と再生医療の知識・技術セミナーを毎月開催し、講師を務める。日本で数少ない日本歯周病学会指導医として歯周病専門医の育成に尽力。日本の8割が歯周病に罹患している事実を知り歯周病専門医資格を取得。「歯周病で歯を失い、物を噛めない」と訴える悩みを解決したく、米国ロマリンダ大学大学院へ留学。帰国後、2015年に生まれ育った浦和にて日本歯周病学会認定研修施設でもある「たぼ歯科医院」を開業。2022年「さいたま・こども矯正歯科」を開院。子どもが通いたくなる環境づくりと最新機器を導入し、0歳からの予防に力を入れる。著作は歯周病・インプラントについて20編以上。DVD4本。
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(歯科医師、日本歯科大学付属病院臨床准教授 多保 学)
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