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「女を売る営業」は一流ではない…何歳になっても活躍できる「プロの仕事人」との根本的違い

プレジデントオンライン / 2024年10月19日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/champpixs

仕事で結果を出す女性とはどんな人か。20年以上にわたり女性営業を育成してきた社員教育コンサルタントの朝倉千恵子さんは「女性らしさを活かすのは良いことだが、一転『女を売る』営業スタイルになってしまうと、長期的に見るとデメリットが大きい」という――。

■結果を出せば「女を売った」と言われる現実

「女性はいいよね、女を売れば契約が取れるんだから」
「あの子はかわいいから契約をもらえてるだけだ」

はじめて営業の世界に身を置いてから27年。女性たちに営業を教えるようになって20年以上経ちますが、今もなお“女性”営業がこのような偏見の目を向けられることは決して珍しいことではありません。

多くの女性営業を悩ませるこの問題の根深いところは、こうした偏見が決してライバルである男性営業からだけ向けられるものではないことです。女性同士でも嫉妬の対象になることもありますし、当の本人でさえ「私の営業のあり方はこれでいいのだろうか?」と迷っていることも多々あります。

ジェンダー平等が求められる現代では、性別による違いに言及すること自体がタブー視される傾向もあります。しかし、本当の意味で「女性が活躍する時代」をつくるために、私はあえて一歩踏み込み、女性営業のあり方について真剣に考えていくべきだと思っています。

■「女性」でくくられているうちは未熟

「働く女性」「女性管理職」「キャリアウーマン」「女性起業家」「●●女子」など、あえて女性であることを強調するキーワードをビジネスの世界で見かけることもありますが、どんな職業であれ“女性”というくくりで見られているうちは、はっきり言って未熟です。

この記事も「女性営業」をテーマとしていますが、最終的には女性であろうが男性であろうが、最終的には性別関係なくヒューマンとして評価され、顧客と対等なパートナー関係を築くことを目指しています。

これは決して、女性らしくあることを否定しているわけではありません。女性らしさは営業の場面においても、大きな武器になることも多々あります。女性特有の柔らかさや細やかさ、気遣いのスキルは、顧客との心の距離を縮めるのに役に立ちますし、実際に、第一印象で相手に好感を持たれやすいのも事実です。

しかし、その一方で、“かわいい”や“愛嬌がある”という理由だけでチヤホヤされているだけでは、決して一流のビジネスパーソンとは言えません。一時的に好印象を持たれるだけでなく、最終的に長期的な信頼関係を築くためには、外見の印象力や性別だけに依存しない実力が求められます。これこそが「ウーマン」ではなく、「ヒューマン」として評価されるために必要な条件です。

■たしかに初期ステップでは女性が有利だが…

私はこれまで20万人以上のビジネスパーソンを指導し、育成してきました。中でも特に力を注いできたのが営業教育です。企業研修だけでなく、20年以上前から女性限定の営業塾TSL「トップセールスレディ育成塾」を運営し、多くの女性営業パーソンの成長を見てきました。

この経験を通じて確信していることがあります。それは、営業の初期ステップでは女性が有利だということです。

なぜなら、女性は一般的にやわらかい印象を与えやすく、高いコミュニケーションスキルを持つ人が多いからです。ビジネスにおいて、初対面の相手から警戒心を抱かれにくい、というのは大きなアドバンテージになります。「とりあえず話を聞いてみるくらいはいいかな」と相手に思わせることができるかどうかは、初期ステップの成功を左右する大きな要因です。

■「女を売る」には明確なデメリットがある

ただし、ここで重要なのは、女性というだけでその先の営業活動がすべてスムーズに進むわけではないということです。初回アポイントを取ることはたしかに女性に有利な点が多いですが、そこから2度目、3度目のアポイント、そして最終的な契約に結びつけるためには、営業力そのものが問われます。

女性であることを前面に押し出して、さらにその特性をアピールすることで契約を取ろうと考える方もいるかもしれません。また、一歩踏み込んで、いわゆる「女を売る」と言われるような、性的な魅力を武器にした営業スタイルを取る方も中にはいらっしゃいます。

実際、そのような営業スタイルで一定の成果を出せることはあるでしょう。「何が何でも結果を出す」という強い覚悟は、評価に値するかもしれません。

契約成立で握手する女性と男性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

しかし、私はこの方法をお勧めすることはありません。なぜなら、成功しやすいように見えるこのアプローチには、長期的に見て明確なデメリットがあるからです。

■「この人なら紹介できる」と思ってもらえるか

デメリット① 紹介がもらえない

本来、営業と顧客の関係には「信頼関係」が不可欠です。しかし、「かわいいから」「お気に入りの女性だから」といった理由で契約が取れた場合、その顧客は、あなたを本質的なビジネスパートナーとして見ているわけではありません。そのため、他の顧客を紹介してくださることはありません。

なぜなら「●●さんの紹介だから大丈夫だろう」と期待される中で、それだけの仕事ができなければ紹介した側の評判に傷がついてしまい、メンツが立たなくなるからです。

一方で、プロフェッショナルなビジネスパートナーとして信頼されていれば、紹介は自然と続きます。「この人なら安心して紹介できる」と思ってもらえるかどうか、それが営業の成功を長期的に支える鍵です。もし紹介を得られないとしたら、それは顧客から対等なパートナーとして認められていない証拠です。

■10万円、20万円の少額契約に留まってしまう

デメリット② 大口の契約がとれない

「かわいいから」「女性として魅力的だから」といった極めて個人的な理由で契約をいただく場合、多くは個人レベルの小口契約に留まります。

たとえば生命保険の営業で言えば、個人的に安い保険に申し込むことはあっても、「全社員の保険をこの人にお願いしよう」という判断にまでは至らないでしょう。本質的な信頼関係が築けていない相手に託すには、リスクが大きすぎるからです。

BtoBの契約でも、10万円や20万円の発注はいただけるかもしれませんが、数億円規模の大規模なプロジェクトを任されることは、まずありません。

「君かわいいから、契約してあげる」といった言葉で得られるのは、せいぜい個人的な決済権やポケットマネーで動かせる範囲内の小さな契約です。

「この人なら確実にプロジェクトを成功させてくれる」「長期的に良好な関係を築ける」と思われることがなければ、会社を巻き込むような大規模契約はまずあり得ません。

営業パーソンとして成果を出したいと考えるのであれば、短期的な成功を追うのではなく、長期的に信頼される存在になることが、遠いようで一番の近道です。

■女性らしさを隠してしまうのはもったいない

ここでいま一度強調しておきたいのは、「女性らしさを活かす」ことは決して否定されるべきものではないということです。むしろ、ビジネスにおいて女性らしさを上手に活用することは、とても大きな武器になります。

ポイントは、その女性らしさを単に「かわいい」とか「愛嬌がある」といった表面的なものに留めず、「プロの仕事人」としてどのように演出して、活かすかという視点を持つことです。営業やビジネスの現場では、顧客との信頼を築くために「仕事の結果」だけでなく、「人としての魅力」も重要な要素の一つです。

一方で、精力的に仕事をしている女性の中には「女性を売っているように思われたくない」という理由で、あえて女性らしさを隠そうとする人もいます。しかし、私は女性らしさを活かすことと、女性であることを単に強調するのはまったく違う、と考えています。

女性であることは、その人の数ある特徴の一つであって、それが全てではありません。性別に限らず、私たちには一人ひとり、それぞれが持つ多様な特徴があります。

大切なのは、その全てが強みとなり、ビジネスの現場で活かせることです。女性らしさを適切に強みに変えることができれば、性別を理由に評価されるのではなく、むしろ人間的な魅力として評価されるようになります。

■相手に良い印象を与える人になるために

「印象力」は大きな影響力を持ちます。実際のところ、相手が男性であれ女性であれ、美しく、清潔感のある良い印象を与える人と、そうでない人がいた場合、前者と仕事をしたいと思うのは自然な感情です。

ここで言う「女性らしさを活かす」というのは、単に女性特有の外見や魅力を過度にアピールすることではありません。そうではなく、相手が心地よいと感じるような雰囲気やコミュニケーションを演出するようなものです。

外見だけではなく、声のトーン、言葉遣い、立ち居振る舞いなど、細かな要素が積み重なってプロの仕事人としての魅力と信頼感が形作られます。

■大事な場面で声のトーンを使い分ける

先ほど、営業の初期ステップにおいて女性が有利になることがあるという話をしましたが、一方で、女性特有の特徴が弱点となる場面も存在します。その代表的な場面が、クロージング(取引や契約の最終段階)です。

一般的に、女性は男性に比べて声のトーンが高めで、これが初対面の挨拶や電話応対においては明るさや親しみやすさを感じさせる効果があります。しかし、契約の詳細を詰める段階や、お金に関する重要な話になると、この高めの声が逆にデメリットとなることがあります。

特に、クロージングの瞬間やシリアスな話し合いの場では、声が高いと軽く見られたり、頼りなさを感じさせたりすることがあるのです。

では、どうすれば良いのでしょうか?

答えは、声のトーンを場面に応じて使い分けることです。たとえば、クロージングの場面では、低めで落ち着いたトーンを意識して話すことで、相手に「この人は信頼できる」と感じてもらうことができます。

また、トーンだけでなく、話すスピードや間の取り方も重要です。クロージングの場では、ゆっくりと落ち着いたペースで話し、要所要所で間を取ることで「重要な話をしている」ことを印象づけることも可能です。

声のトーンや間の取り方といった話し方の技術は、トレーニング次第で誰でも身に付けることができ、意識的に調整が可能な武器です。どの場面では、どの話し方が適切なのかを知れば、営業力が飛躍的に向上します。

顧客に説明している女性
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

■桁違いの結果を出せば、批判は賞賛に変わる

営業の世界では、何を言われたとしても、最終的にものを言うのは「結果」です。たとえ最初は「女を売っている」「かわいいから契約が取れている」と揶揄されても、桁違いの成果を出せば、その批判は徐々に消え、最後には賞賛に変わります。

「出る杭は打たれる」ということわざがありますが、出過ぎた杭は誰にも打てません。中途半端に目立つくらいなら、とことん成果を出し続けてください。月に何十件という契約を取り、他を圧倒するトップセールスになることで、周囲の目は間違いなく変わります。最終的には「実力を認めざるを得ない」のです。

■愛嬌と知識・スキルを兼ね備えれば最強

ウーマンではなくヒューマンとして評価され、圧倒的な結果を出すために大切な方程式があります。

「愛嬌×IQ=最強」

「愛嬌」、つまり人に好かれ、親しみを持たれる力は、ビジネスにおいて男女を問わず大きな武器となります。特に女性は愛嬌が求められる場面がより多いかもしれません。しかし、愛嬌だけでは限界があります。良い印象を持っていただくことはできたとしても、それだけではいずれ飽きられ、長期的な信頼関係を築くことはできません。

一方で、知識やスキル、つまり「IQ」的な要素をいくら磨いても、それだけでは周囲と良好な関係を築くことは難しいでしょう。頭が良い、スキルが高いだけでは、相手に心を開いてもらうことはできず、疎んぜられることさえあります。ビジネスは人間関係が根底にあるため、数字や成果だけでなく、人とのつながりも欠かせないのです。

だからこそ、愛嬌とIQ、両方を兼ね備えることが、最強の営業パーソンの条件であると私は考えています。親しみやすさで相手の心を掴み、知識とスキルで長期的な信頼を勝ち取る。この両輪を揃えることで、他の営業パーソンが手にできないような大きなビジネスチャンスを掴み、さらなる成功を引き寄せましょう。

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朝倉 千恵子(あさくら・ちえこ)
新規開拓社長/「トップセールスレディ育成塾」主宰
1962年大阪生まれ。小学校教師、税理士事務所、証券ファイナンス会社などの勤務を経て、人材育成の企業に営業職として入社。営業未経験ながら、礼儀礼節を徹底した営業スタイルを確立し、3年で売上NO1、トップセールス賞を受賞。その後、自身の営業ノウハウを広く伝えるべく独立。2004年6月、株式会社新規開拓設立、同代表取締役に就任。女性の真の自立支援、社会的地位の向上を目指した、「トップセールスレディ育成塾」を主宰。開講から20年経ち、卒業生は延べ3800名を超える。これまでに著作は41冊(累計約48万部)刊行され、近著に『運を整える。』(内外出版社)がある。

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(新規開拓社長/「トップセールスレディ育成塾」主宰 朝倉 千恵子)

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